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株式会社グループSNEオフィシャルサイト

モンコレデックビルディング:エレメンタル・ストーム

 今回のインタビューのタイトルにもある「モンコレ」といえば〈六門世界〉を舞台にしたノベルシリーズの『モンスター・コレクション』をはじめとする、トレーディングカードゲームテーブルトークRPGデジタルゲームなど様々なメディア展開を果たした作品のことで、すでにご存じの方も多いかと思います。
 特に人気を博した
「モンスター・コレクションTCG」は、昨年の2017年3月には1997年の初リリースから20周年を記念した「20th Anniversaryブースターパック『太陽の金の竜姫』『月の銀の魔狼』」も発売されました。
 その「モンコレ」がTCGの枠を飛び出し、
「デック構築型ゲーム」として2018年2月10日に新たに登場します!
 タイトルは
『モンコレデックビルディング:エレメンタル・ストーム』
 本作のゲーム内容や制作秘話についてデザイナーの河端ジュン一杉浦武夫の両名にインタビューしてきました。

モンコレデックビルディング:エレメンタル・ストーム
監修 安田均/加藤ヒロノリ
ゲームデザイン 河端ジュン一/杉浦武夫
制作・発売 グループSNE/cosaic
発売日 2018年2月10日
予価 4,500円(税別)
2018年01月
記事作成:西岡拓哉



〈六門世界〉を破滅に追いやるエレメンタル・ストーム!
―― それでは「モンコレデックビルディング:エレメンタル・ストーム」(以降、モンコレES)についてインタビューさせていただきます。
杉浦河端 よろしくおねがいします。
―― 本作のタイトルにもある「モンコレ」と聞けば「あっ『モンスター・コレクション』のことだな」と、すでにご存じの方も多いかと思います。ですが「デックビルディング」「エレメンタル・ストーム」という単語についてまだピンときていない方々のためにご説明を……。
杉浦 そうですね。まず「エレメンタル・ストーム」とは何か。これはモンスター・コレクションシリーズの舞台ともなっているファンタジー・ワールド〈六門世界〉を破滅に追いやる、終末の天変地異的な大規模災害の名前です。
河端  〈六門世界〉は/////の6つの元素で成り立っていて、一定の時代を経るとその元素のバランスが崩れてしまい、エレメンタル・ストームを引き起こします。その結果また新たな世界が再構築されていく……というモンコレと共通した世界観を本作のテーマにも据えています。
―― そのエレメンタル・ストームにおいてプレイヤーはどういう立場の存在なのでしょうか?
杉浦 プレイヤーはモンコレTCGと同様に「召喚術師」となり、モンスターを使役して「エレメンタル・ストームに立ち向かい、世界崩壊の危機を防ぐ」ことを目指します。
河端 実は企画当初の段階だと、エレメンタル・ストーム関係なく〈六門世界〉を舞台に、マップを移動して、判定をして、クエストをクリアしてゆくストーリーゲームを制作していたんですよ。。
杉浦 最初にできあがったゲームは当然しっかり遊べるものを作ったのですが、同じくSNEで人気のファンタジーゲーム『ソード・ワールド2.0』とどう違うのか、「モンコレ」らしさがちょっとぼやけていたんです。
河端 そうそう。モンコレらしさのひとつ「召喚術師がモンスターを使役して戦う」という特徴は重要なんですが、ゲームシステム的に、モンスターのカードを場に並べるだけなら目新しさはないし、ファンタジーの世界を移動・攻略するだけならソード・ワールドの冒険者でもよくない? モンコレである必要性は? って視点に立ちかえりまして。そこで安田社長やモンコレTCGのデザイナー加藤ヒロノリに相談してみるとゲームシステムのことはもちろん、テーマ面についても意見をいただけて。
杉浦 あれこれ考えていたところ、「じゃあモンコレにおいていちばん印象的で劇的なシーンがどこか」といった話題になって、「それなら『エレメンタル・ストーム』というのがあってね」という話になったのを覚えています。モンコレのTRPG版である「六門世界RPGセカンドエディション」の5冊目のサプリメント「エレメンタルストーム」でも深く掘り下げられたテーマですね。
河端 世界の存亡にかかわる大イベントですから、ゲームシステムのメインテーマにできる耐久力があるテーマだろう、と。
杉浦 そのとき河端くんが何か思いついたらしく、ひとまずゲームを一旦彼に預けまして……。
河端 いちおう杉浦さんに「全然違うゲームになったらゴメンナサイ」って一言断っておいたんです。
杉浦 そうしたら本当に全然違うゲームになって出てきて、あれは驚いた(笑)。そこからだんだん洗練されていって、本作の原型が誕生しました。エレメンタル・ストームを表す、乗り越えなくてはならない「序/破/急の3つの大きな波(ウェーブ)」ですね。もちろんモンスター召喚をデック構築型のシステムに落としこんだ要素は引き続き残っています。
河端 ストーリーゲームから、他のプレイヤーと競い合うデック構築型ボードゲームに変化して、あらためてテストに入ってくれた安田社長からもさすがに「ゲーム変わってる!(笑)」って驚かれましたね。



デックビルディング――デック構築型という要素
―― 続いて、ゲームシステムに関して。さきほども一瞬、「デック構築型」について触れていましたが、デックビルディングとはいわゆるドミニオン』を始祖とする「デック構築型ゲーム」のことでしょうか?
河端 そうです。「TCGの、デック(山札)を構築する面白さに焦点を当てたゲーム」が「デック構築型ゲーム」と呼ばれるものですね。
杉浦 安田社長もゲームマスタリーマガジン創刊号「デック構築型のいま」というテーマの記事を書いているのですが、『ドミニオン』『サンダーストーン』といったデック構築に比重を大きく置いたゲームが発展して、新たな形式としてデック構築型にボードゲームや協力ゲームを結びつけたゲームが誕生しています。とくに真新しいタイトルとして『エルドラドへの競争』『クランク!』がそうです。
河端 なので、ボード/カードゲームを制作しているSNEが発信するデック構築型ゲーム制作としての「新たな流れ」を汲んだシステムであることと、モンコレの20周年を祝した、モンコレの世界観もちゃんと感じられるゲームであることからも社長から強く推していただきました。
杉浦 TCGとして長年親しまれてきたモンコレは、デック構築型との親和性がかなり高いのは間違いないですから。デック構築型の新たな流れに注目していた安田社長の着眼点と、モンコレらしさが大いに活かせるシステムの結びつきはごく自然な流れでしたね。
河端 テスト段階では、カードテキストで複雑なコンボを組む感じのデック構築型対戦カードゲームを考案したこともあったんです。でも、モンコレでそういうゲームを作るとなると加藤さんの領分かなというのもありましたし、今回は「ボードゲーム」の側面を強める方向で詰めていきました。
杉浦 どんどん盛り上がりつつあるSNEのボードゲームならではの形で出したいというこだわりは強かったです。
河端 とはいえデック構築型の、新たなカードを獲得して自分なりの強いデックを構築する、この一連の流れはTCGファンのみなさんのみならず初めてデック構築型に触れる方にもやりがいのあるものとなっていると思います。
杉浦 ゲーム開始時にプレイヤーが任意に入れ替えるカードの種類と、山札からめくられるカードの種類によって、遊びのパターンがいくつにも変化するので、そのぶんカードテキストは極力簡単に、ほぼアイコン化しています。一目見て理解できるよう徹底しているので、自然と自分の戦略を練る時間が取れるよう工夫しています。



エレメンタル・ストームに立ち向かうには
―― デック構築型+ボードゲームの形が新たに誕生している、という点についてモンコレESはどういったゲームになっているのでしょうか?
河端 さきほどもちょっとだけ言いましたが、まず本作には3つの「序/破/急のウェーブ」という区切りがあって、各ウェーブの最後にエレメンタル・ストームの「ボス戦」が発生します。これが発生する前に各プレイヤーはデックを構築しつつ、カードを使って自分の盤面を整えていくことになります。
杉浦 カードの使い方として「カードの召喚」「カードの購入」「クエスト参加」「基本施設の利用」を行います。モンスターを表すユニットカードを召喚することで、各ウェーブのボス戦で戦力となる「元素力」を増やし、ユニットをクエスト参加させることで勝利に直結する「名誉点」や、「資金チット」「戦闘チット」を獲得します。各種チットは、カードの購入・クエストの攻略・ボス戦に必要になってきます。
河端 ユニットカードは、順次公開されていく全プレイヤー共通の「基本市場」(破ウェーブからは追加市場も増える)の中から購入するので、ここで自分のゲームの方針や戦略が固まっていくことでしょう。
―― そこはデック構築型の醍醐味でもありますね。
河端 はい。ただ、「自分の戦略を突きつめたカード選び」をするだけでは勝てません。盤面を複数プレイヤーで共有しているので、ついさっきの状況とは別の展開に変化することを読んでカードを購入する必要性があり、そこがボードゲームならではの面白さのひとつになっています。
杉浦 補足すると、同じ公開クエストには2回まで参加でき、参加条件として必要な元素力が指定されているのですが、同じクエストでも1回目と2回目の参加条件が異なっています。つまり他プレイヤーはどのクエストに挑むつもりなのか、挑まれたとき自分はどう戦術を変えるのか、ゲームの大きな流れを乗りこなしたプレイヤーが勝利しやすくなっています。
河端 そしてボス戦も、他プレイヤーとの読み合いです。ボス戦では、ボスごとに決められた資金チットや戦力チットを供出し、最も多く出したプレイヤーから順に高い報酬が得られます。しかし、このチットは手に握りこんでから、みんな一斉に公開しなければなりません。
―― つまり誰がどのくらいチットを所持していて、どこまでボス戦に協力してくれるかお互いに腹を探り合う瞬間があるんですね。
杉浦 これは安田社長のアイディアですね。その瞬間だけものすごく協力ゲームの雰囲気を醸しながら、いかに自分が損せず優位に立てるかという駆け引きも発生していて、今までにないデック構築型+ボードゲームの特徴になっているかと思います。
―― それは対人ゲームとしてのメリハリもかなり効いてますね。
河端 プレイヤー共有の盤面が引き起こす状況の変化に驚かされる仕組みにはこだわっています。自分ひとりでデック構築に注力する遊び方も個人的には好きなんですが、今作品ではゲームを一緒に遊んでいる一体感がどうしても欲しくて。
杉浦 競争相手と協力や対立しながら、感動を共有できるのってゲームとして理想だと感じますね。エレメンタル・ストームという危機的状況が上手く効いているところでもあり、システムと上手くかみ合っています。
河端 これはストーリーゲームではないんだけど、序破急のウェーブと、プレイヤー間の駆け引きといったゲーム展開が、自然と物語になっていると感じていただけるのではないでしょうか。そういうシステムが好きです。
―― 同感です。ゲームの良い思い出はそこに尽きますね。さて、ボス戦が終って次のウェーブへと移ると盤面に何か変化が生じるのでしょうか?
河端 ボス戦の後、召喚した戦力は消えてしまいます。つまりデックの枚数が減って(圧縮して)しまうんですね。カードが減った分、また盤面を整えていく必要があります。
杉浦 カードが減ることで自分が引きたいカードを手繰り寄せられる可能性は高くなりますが、次のウェーブのための戦力がなくて困るのは間違いありません。自分に得がないとわかればカード召喚を控え目にしてカードを温存する戦略ももちろんあります。
河端 破、急と公開クエストの参加条件が厳しくなる一方で、報酬はより良いものになっていきますし、前のウェーブにはなかったような強力なカードが登場するのでここでもまた状況が変化していきます。とくに急はダイナミックな展開が待っています。
―― なるほど。カードを購入したらずっとそのカードを持っているわけではないわけですね。
杉浦 はい。それと、公開クエストとは別に、ゲームスタート時に各プレイヤーに配られる「秘密クエスト」という個別のミッションみたいなものもあります。条件達成を満たすことで名誉点の獲得に大きく関わっていますので、これによってカードの使い方ひとつひとつの判断がとても悩ましくできています。
―― 公開クエストとボス戦までの盤面の形成と秘密クエストの存在が、状況に応じて柔軟にデックを構築していくプレイと相関していてとても遊びがいがありそうです。
河端 そう言っていただけると嬉しいです。初めて遊ぶときはちょっと手さぐりになるかと思いますが、破ウェーブ、急ウェーブになってふと自分の勝ち方に気づくんですよね。
杉浦 これまでテストプレイ版をいろんな場所で遊んでいただいて、みなさんから一様にそういったご感想がいただけました。
河端 ゲーム的に盤面が完璧に整って、すべての力を発揮できるいちばん気持ちのいい瞬間に急ウェーブが終わる……というゲームのリプレイ性にもこだわりました。
―― 心地の良いフラストレーションと言いますか、そうなるとたしかにもう1回遊んでみたくなりますね。
河端 実際、各種ゲームイベントでの体験会ではみなさんから「次はきっと上手くやれるから!」と、2戦目をたくさん熱望されましたね(笑)。
杉浦 同じプレイヤーさんでも、2戦目ではプレイングが変わっていて驚かされます。
―― プレイ時間はどれくらいかかるのでしょうか。
河端 ルール説明をのぞけば、60~90分ですね。
杉浦 ただ、満足度でいうと120分くらい遊んだような感覚があります(笑)。



アートワークについて
―― 本作のパッケージとカードを拝見させていただいて、率直な感想として「ものすごく格好良い」です(笑)。
河端 ありがとうございます。約100種のカードはすべてモンコレTCGの人気カードのイラストをそのまま使っています。
杉浦 これまでTCGを遊んでくれた方には「ずいぶんと懐かしいイラストだな」と感じていただけることでしょうし、初めて見る方にも一見して格好良いものをチョイスしました。

初期デックのカード。
まずはこれらのカードを
もとに盤面を固めていく。
市場で獲得できるカード。
デックを強化するには必要不可欠。

河端 さっきもチラッと杉浦さんが言ってくれましたが、カードを使ってやれることや戦略が多い分、カードのテキストは極力排して、描かれているアイコンさえ見れば何をどうすれば良いか一見してわかるよう徹底して調整しています。
―― たしかにこうして見てみるとカードごとに効果は違っていても、難しいことはまったく要求されてませんね。
杉浦 カードがわかりやすい分、自分の盤面と全体の状況で悩んでもらう時間を確保しています。コアのルールさえ伝えられれば、そのまま海外の人とも隔てなく遊んでいただけるのではないかと思います。

公開クエスト:ゴブリン逮捕戦
クエストの参加1回目(カード上部)と
2回目(カード右側)で
必要な元素力が異なる。
 戦力チットはボス戦だけでなく
公開クエストにも必要なことも。
ボス戦
 参加条件(カード上部)の
元素力を満たし、 戦力チットを
多く出したプレイヤー順に
カード中央に書かれたボーナスが得られる。

―― パッケージも緑を基調として、ロゴと〈六門世界〉を構成する6つの元素のシンボルのみというシンプルさ。高級感と重厚感があってこれも格好良いです。
河端 僕は初期からモンコレを買って遊んでいて、その頃のカードパックを思わせるようなパッケージデザインを強く推しました。
―― いわゆるTCG黎明期特有のスターターセットを思わせるようなイメージですね。
河端 そうそう。特に目立った装飾はないんだけど、それが逆にキマっているというか。とくに男の子が自然とわくわくするような印象を与えたかったので。
杉浦 モンコレの20周年を記念するボードゲームとしてこれ以上にないパッケージだと思います。



さいごに
―― 最後に発売に向けて一言いただけますでしょうか。
河端 1回やると2回目もやりたくなって、やればやるほど遊びの幅の大きさを感じていただける作品になっているかと思っています。TCG好きの方はもちろん、みんなで楽しく遊べて、やりごたえのあるゲームを求めている方にぜひオススメです。ぜひお手に取っていただければ幸いです。
杉浦 本作についてより細かく紹介、攻略ポイントについて特集した記事が『ゲームマスタリーマガジン創刊号・第2号』にそれぞれ掲載しております。SNEの公式HPでも「サクッとわかる! モンデビES」を公開中です。ゲームを始める前にこれを読んでもらえると、よりカードの使い方と盤面を理解した状態でゲームが遊べるような記事になっていますので、本作とともにぜひよろしくお願いいたします。
―― ありがとうございました。これにてインタビューは以上です。
杉浦河端 ありがとうございました!


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