皆さんは『トンネルズ&トロールズ』(愛称「T&T」)という名前をご存じでしょうか。本国アメリカにおいて、フライング・バッファロー社から1975年に発表された歴史あるテーブルトークRPGです。その後も版を重ね、2015年には集大成とも言える『Deluxe
Tunnels & Trolls』 が40周年記念として刊行されました。まさに愛されつづけるテーブルトークRPGの代表格です。 日本ではグループSNEが1987年に第5版の翻訳を手がけ、数多くのシナリオやソロ・アドベンチャー(1人で遊べるゲームブック)を紹介してきました(社会思想社刊)。 さらに2006年には第7版のルールブックやソロ・アドベンチャーの翻訳、リプレイ執筆などを手がけてきました(新紀元社刊)。 グループSNEのメンバーにとっても「T&T」はとても思い入れのある作品の1つなのです。 そして、このたび(2016年9月)、上述の最新版を『トンネルズ&トロールズ完全版』として、グループSNEから出版する運びとなりました。 日本語版オリジナルのボックス入り豪華セット――深い愛の詰まった作品になりました。
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『トンネルズ&トロールズ完全版』 | |||||||||||||
まずは、デザイナー(K.S.アンドレ)もびっくりなコンポーネントをご紹介。 日本版オリジナルの豪華ボックス仕様です。
「こりゃボックス仕様でないと入らんわい!」とご理解いただけたでしょうか。 ここで問題になるのは ○「なぜダイスが30個も入っているのか」 ○「なぜわざわざ電卓をつけたのか」 の2点でしょうか。 『T&T』は歴史のあるゲームなので、古くからのファンの方は「なるほどね」と納得してくださると思いますが、ルールにも関わることですので、これについては後ほど簡単にご説明します。 そうだ、もう1つ、「ルールブック3冊のテーブルトークRPGなんて、難しくて初心者には無理でしょう?」という誤解を、ここで解いておきたいと思います。 ルール自体はとてもシンプルなので「T&T」は「初心者向き」と言えます。 にもかかわらず、3分冊(原書400ページ近く)になっているのは、背景設定からオプションルールまでが網羅されているからです。 たとえば、「ブック3:〈トロールワールド〉」。 こんな感じで、〈トロールワールド〉の歴史が100000B.K.(B.K.=カザン暦紀元前)から紀元後1200~1300年まで計X年間に渡って紹介されています(X年間=1001200~1001300年? 自信がないので「X」に(笑))。 ドラゴン大陸やイーグル大陸、その他の小さな島についてはもちろん、主要都市の詳細な記述まであるという親切設計。 もちろん『T&T』の人気を後押ししてきた「ソロ・アドベンチャー」(1人で遊べるゲームブック)と「シナリオ」も掲載されています。 「ブック2:さらなる詳細」では、基本ルールでは使用しないモンスター種族で遊ぶ場合や過去の版をこの「完全版」に適用させる場合の指針など、ありとあらゆるオプションルールが紹介されています。 また、そうしたルールについてのデザイナー自身の考えが記されていて、まるで彼らの肉声が聞こえてくるようです(訳者による「訳注」も随所に織り込まれ、デザイナーとの直接のやりとりが反映されている箇所もあります)。 正直、いったい、だれが使うの、これだけのデータ? と思わなくはないのですが、「読んで楽しいルールブック」になっているのは間違いありません。 基本的には「妥当な範囲でGMとプレイヤーで相談して決めてね」「好きなルールだけを採用すればいいよ」というスタンスなので、肩肘張らずに楽しめるゲームになっていると思います。 |
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ゲームの概要 | |||||||||||||
ゲームについて、ざっくりと説明しておきましょう。 まず、プレイヤーが自分の分身として使うプレイヤー・キャラクター(PC)についてです。 基本ルールで選べる種族は人間、ドワーフ、エルフ、フェアリー、ホブ(ハーフリング)、レプラコーン。それぞれに特徴があります。選べる職業(キャラクター・クラス)は戦士、魔術師、盗賊の3種類。 能力値は体力度、耐久度、器用度、速度、知性度、魔力度、幸運度、魅力度の8種類。このなかで意外に重要なのが「体力度、幸運度、器用度、速度」です。これら4つが平均より高ければ、戦闘のさいのボーナス(「個人修正」と呼ばれます)が得られます。 キャラクター作成はダイス3個を振り、その合計値で決まりますが、このとき3個のゾロ目が出たら振り足すことができるので、ちょっと強いキャラクターが作れます。 行為判定はこれらの能力値に加えて対応するタレント(技能)を基準に、ダイス2個を振って行います。このとき、2個のゾロ目が出たら振り足すことができます(ダイス目は常に高いほうが有利です)。 さて、すでに「ゾロ目が出たら振り足し」という言葉が2度も出てきましたね。 そうです、『T&T』の大きな特徴として、様々な状況でゾロ目を振り足すことができます。つまり理論的には上限は「∞」。 なので、「ゾロ目なら任せろ!」という方は、ぜひぜひ一度遊んでみてください。もちろん、ゾロ目はあんまり出ないなあ……という方も楽しめます、念のため。
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T&Tの戦闘 | |||||||||||||
テーブルトークRPGの大きな見せ場である戦闘についても少しだけ触れておきましょう。 基本的にはプレイヤー側とモンスター側がそれぞれに戦闘のダイスを振り、陣営ごとにダイス目(+戦闘ボーナス)を合計して比べ合います。合計値で負けたほうがその差分をダメージとして受けます。 魔法や飛び道具によるダメージは、それぞれの特徴に応じた処理をしますよ。
重要なモンスターはキャラクターと同じように能力値を持ち、魔法や飛び道具を使いますが、多くはモンスタ・レート(MR)というシンプルな数字を使います。戦闘で振るダイスの数は「MRの数値÷10+1」、たとえばMR40なら「4+1」個となり、戦闘力はダイス5個です。これに、MRの半数の個人修正(戦闘のボーナス)が加わります。ダメージを受けたらMRが減るので、個人修正も減り、どんどん弱くなっていく、というわけです(ダイス個数は減りません)。頑張って、モンスターを倒しましょう! ちなみにPCはダメージを受けると耐久度が減り、これが0になると気絶し、-10になると死亡します。 『T&T』では案外あっさりPCが昇天することがあります。ルールブックにも、そういう場合に備えて「2人以上のキャラクターを担当する」なんてコラムがあるほどです。 とはいえ、キャラクターの成長は冒険の醍醐味。『完全版T&T』ではさまざまな手段で冒険点が手に入り、かつ冒険途中でもPCを成長させる機会が与えられています。運良く生き延びられたら、あなたの分身が〈トロールワールド〉最強の英雄に成長することだってあり得ます。 あと1つだけ大切なこと。『T&T』では常に「ダイス目は高いほうが有利」です。なので、頑張って「6」の目を出しましょう。とくに戦闘でダメージ決定のダイスを振るさい、6の出目1個につき(その戦闘ターンでたとえ敗北していていも)必ず1点のダメージを敵に与えます。これを悪意ダメージと呼びます。たかが1点と侮ってはいけません。防御点無視の悪意ダメージは勝敗を決する大きな要素になりますので、忘れないようにしてくださいね。 |
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ダイスと計算機 | |||||||||||||
それでは、最後になりましたが、今回のセットに「ダイス30個」と「電卓」が同梱されている理由を説明しましょう。 上に述べたとおり、『T&T』では「ゾロ目」が猛威をふるいます。 これが最も顕著なのが「バーサーカー(狂戦士)戦闘」です。武器や攻撃の種類によってダメージ決定で振るダイス(d)の数が決定されますが(例:剣なら2d6)、このときゾロ目が出たら「振り足せる」のです! 強い武器(ダイスの数が多い武器)を持てばそれだけゾロ目の確率は高くなり、延々と振り足しがつづきます。 電卓が必要な理由がおわかりいただけたでしょうか。他にもダメージの割り振りで割り算にも使います。 GMの扱うモンスターもレベルが高くなってくると、かなりの数のダイスを振りますので、ますますたくさん必要になりますね。 「バーサーカー戦闘」は白兵武器または素手で戦うキャラクターなら、だれでも使える戦闘オプションの1つです。圧倒的な強さを誇りますが、すべてをなげうって攻撃に専念するため大きなデメリットもあります。個人修正などの恩恵を失い、かつ1戦闘ターンごとに1d6の体力度を失うのです。なので、知性度が「16以下」のときでないと「バーサーク(狂戦士化)」できません。あんまり賢いと、「ちょっと待てよ? そんな戦い方は危険すぎないか?」と理性が働いてしまう、というわけですね。 余談ですが、過去の版では一度「バーサーク」したキャラクターはなんらかの手段(魔法や行為判定)で慰撫に成功しないかぎり暴れつづけ、味方を攻撃します。今回の「完全版」ではそのルールがなくなり、個人的にはちょっと寂しい……少しプレイに慣れたら「ハウスルール」として復活させたいところですね。 |
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最後に | |||||||||||||
簡単な紹介になりましたが、とてもシンプルで遊びやすいルールであることを感じ取っていただけたなら嬉しいです。 長く愛されるゲームには愛されるだけの理由があります。デザイナーたちはもちろん、翻訳を手がけてきたわれわれにとっても思い入れの深い作品。この機会にぜひその魅力に触れてみてください。 JGC2016(9/3、4:新横浜プリンス)のSNEブースにて先行販売を行います。 正式発売は9月17日(土)となっています。 また、今後も日本オリジナルのファンブックや完全版対応のシナリオの翻訳など、充実した展開が予定されています。お楽しみに! |