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日々つれづれ 12年09月
テーマ 「 ダイス 」

【12年09月24日 柘植めぐみ】

 9月も最終週。今月のエッセイはじつにテンポよく掲載され、気づくと残るはわたし1人。
 このエッセイコーナーは毎月4人が指名され、ボスの出す(無茶な)お題に悪戦苦闘します。で、今月は
ダイス? 確かに最近のドイツゲームは、サイコロを使ったものが多く見受けられますが……。
 ううむ、「ダイス」のエッセイは思いがけず手ごわかった。
 というのも、わたしは数々のゲームを翻訳してきましたが、日本語にするとき、どうしても「
サイコロ」と訳したくなってしまうタチなのです。おそらくいままでに訳したものすべて、「サイコロ」になっているんじゃないかな。
 理由の1つはおそらく、前回のエッセイでベーテ・有理・黒崎が書いたように、
ダイスって複数形じゃんと思っているから。
 ゲームで振るサイコロの数は、ボードゲーム、TPRGを問わず、とても重要。「ダイスを振る」と書くだけでは、「1個なん? でもダイスっていうくらいやから複数なん?」と思ってしまう。だからって「1個のダイスを振る」というのは、なんだかお尻がもぞもぞする。
 英語のままのほうが伝わりやすい言葉があるのは重々承知で、最近は「エンジョイ」とか「チャーミング」とかを、「楽しむ」「魅力的」とは書かずにカタカナにしたりするのですが、どうしても……「ダイス」と書くのには抵抗がありまして。
 もしかすると単純に、「サイコロ」という言葉の響きが好きだからかもしれません。だって、
「賽」が「転がる」んですよ。かわいらしいじゃないですか。
 1か月前、東京に住む姪っ子から、
おばちゃんの職業(翻訳家)についてインタビューしたいと言われました。なんでも夏休みの宿題で、1つの職業を取り上げ、その仕事に就いている人に取材をして「新聞を書く」必要があるのだとか。
 自慢になりますが、2人の姪っ子はそりゃあもう、ゲーム勘がすばらしい。小学生のときから(いまは上の子は中学生)『アグリコラ』『アクワイア』『カルカソンヌ』……とクドいゲームを遊びまくり。『サンダーストーン』の大ファンでもあり、こんなヤクザなおばちゃんを、とても尊敬してくれています。
 そういうわけで、「一翻訳家」としての自分を見つめ直す機会を得ました。翻訳に対するこだわりは、これからも手放さないでおこうと思います。
 とはいえ……
「サイコロ」より「ダイス」のほうが、1文字少ない!
 ルールブック1冊で考えるなら、トータルでどれだけ文字数が違うことか。
 簡潔さが求められる昨今、わたしもそろそろ「ダイスの世界」に足を踏み入れなくてはならないのかもしれません。

【12年09月18日 ベーテ・有理・黒崎】

 去る八月二十二日、朝起きて朝食を食べようとした俺は、咀嚼するのが少し難しい、という形で違和感を覚えた。
「これは……まさか……」
 すぐに洗面所に向かい、自分の顔を映すと、恐れていた通り、顔の右半分が完全に静止していた。

 特発性片側性末梢性顔面神経麻痺――通称ベル麻痺

 大学生の頃、一度罹ったことがあり(その時は顔の左半分だった)、治る可能性が極めて高いことは理解しながらも、まさかの再発(しかも今度は右!)に戦々恐々しながら、即座に病院へ向かった。
 診断結果は予測していた通り。医師の薦めで翌日入院。麻痺に対する投薬自体は五日ほどで大体終わったものの、その際投与されたステロイド系抗炎症薬の副作用から回復するのに更に数日を要し、結果今年のJGCは不参加となってしまった。

 以上は、JGCに参加できず心配してくれた人が多かったと聞き、自分になにがあったか簡単にでも説明できればと思い、書かせてもらった。
 投薬は終わったとはいえ、顔の動きが完全に回復したとは言えず、今もまだ顔の動きはだいぶぎこちないが、少しずつ改善していっている。薬の副作用もだいぶ抜けたので、恐らくあと一ヶ月もすれば元に戻るだろう。
グループSNEコンベンション(詳細は近日掲載予定)には元気な姿を見せられると思うので、楽しみにしていてくれ!

 さて、現状報告はこれ位とし、お題である
ダイスについていつもの薀蓄話でも展開するとしよう。
 日本のTRPGユーザーの間では、すっかり
サイコロを意味する用語として定着している単語であるこの「ダイス」だが、実はこれ、複数形なのをご存知だろうか?
 英語の名詞には対象が複数の場合と単数の場合とで変化すること、その多くが「単語+s(もしくはes)」といった形で、最後の音が「ズ」か「ス」になるのは周知の事実だろう。しかし、英語という言語は何事にも例外が(時に大量に)存在する言語であり、当然ながらこのルールにも例外は多い。例えばを意味する「オクトパス(Octopus)」の複数形は「オクトパイ(Octopi)」雄牛を意味する「オックス(Ox)」の複数形は「オクセン(Oxen)」人物を意味する「パーソン(Person)」はニュアンスによって「パーソンズ(Persons)」「ピープル(People)」を使い分ける始末。
 ダイスもそんな例外の一つで、単数形である
ダイ(Die)になぜか真ん中にcが付き、ダイス(Dice)になるというものだ。しかし、語源は違うとはいえ、英語におけるサイコロの単数形が死と同音異義語(しかもスペルも同じ!)というのは、TRPG好きとしては妙な符号に色々と妄想膨らむ事実である。
 そもそもサイコロは
骰子とも書き、英語でも俗語で「ボーン(Bone)と呼ばれるように、骨と関係が強い。これはかつて動物の骨で作られることが多かったためだが、こういうところでも死と符号するところは面白い。
 かつての呪具にはやはり、神秘的な偶然が付き纏うものなのだろうか?

 なお、かつて「あなた」を意味する「ザウ(thou)」が廃れ、複数形である「ユー(You)」に取り込まれて一体化したように、現代英語においてダイスの単数形にダイを使うのは一般的ではなく、今や「One dice」という言葉に違和感を感じる人は少ないだろう。
 ボーンという俗語も聞くことは少ない。
 言語とは変化していくものであり、硬直した言語は死んだ言語であることは百も承知だが、しかし、サイコロを取り巻く妖しい符号が減っていくのは、少し物悲しいものである……


【12年09月14日 笠井道子】

 我々にとってダイスと聞いたら、すぐにコレ↓を思いうかべますよね。
 ちなみに、こちらはJGC2012で販売した「ドラゴンを倒せ! 記念ダイス」です。
 北沢慶によれば400個作成したそうですが、最終日にはすべて売り切れました。
 ご協力くださったみなさま、ありがとうございました。

 それはさておき、世の中には「ダイスの世界の住人」と「賽(さいころ)の世界の住人」がいることを忘れてはいけません。
 たとえば世のサラリーマンに「ダイス」と言っても、おそらく通じないと思います(普通の人がこの言葉に触れるのはカエサルの名言 The die is cast としてか、不規則複数形名詞の代表として(die →dice)くらいでしょうか)。
 
 かくいうわたし自身、ほんの四半世紀(
)前まで「賽の世界の住人」でした。
 本日はわたしが「ダイスの世界」に移住した、その経緯をお話ししたいと思います。

 いまからン十年前、SNEのボスにして翻訳家の安田均は大阪の翻訳学校で講師をしていました(グループSNEがまだ存在していなかった頃です)。
 講座の題材は
SF、私はそこの生徒でした。
 安田均という翻訳家も知らず、SFにもとんと疎かったのですが、希望するモダンホラー/サスペンスのジャンルがなかったため、(
やむなく)ボスの講座を選んだのでした。

 さて、どきどきわくわくな初日、人の好さそうな先生が教室に入ってこられました。なんだか、全体にとっても軽やかで福々しい雰囲気です。
 先生は緊張する生徒を前に開口いちばん――

みなさん、
ゲームはお好きですか

 そのときの20数名の生徒の気持ちを代弁すると「なにそれ? ここ
SF翻訳講座ちゃうん?」でした。
 
 ゲームったって、当時は「花札」とか「麻雀」とかポーカー、ばば抜き、セブンブリッジ、よくてナポレオンくらいしか知りませんでしたがな。

 われわれの戸惑いをよそに、先生はにこやかに「いまこういうゲーム(たぶんゲームブックやRPG)がはやってましてね」と得々と話してくださるのですが、ま、正直「ええから早う授業して」でした。
 しかし、こういうとき必ずいるんですよ。わけもわからず「ゲームの翻訳にも興味あります!」って手を挙げる輩。きみ、ほんの10分前までゲームの「
」の字も興味なかったやろ?

 このSF翻訳講座はいろいろと面白い出来事があって書きはじめるととまらないんですが、どんどん話題がダイスから離れていくので端折ります。

 同じ講座にとても翻訳の上手な方がおられました。それが後にボスとともに『ドラゴンランス』シリーズを翻訳された鷹井澄子さんです。
 ある日、その鷹井さんにわたしともう一人の友人が声をかけられました。

安田先生にお茶に誘われたのだけれど、一緒に行ってくれません?」

 清楚な美女の鷹井さん。さすが安田先生、お目が高い。
 っていうより、めちゃくちゃ警戒されてますやん、先生(笑)。
 
 もちろん、先生は鷹井さんに翻訳を依頼したかっただけですから、ボディガードよろしく登場した我々を見て、まさに「豆鉄砲を喰らった鳩」でした。
 しかし、来てしまったものを追いかえすわけにいかず、先生はその後、我々三人を月に一度程度、自宅に招いて翻訳の手ほどきをしてくださったのでした。

 鷹井さんの翻訳された人気小説『ドラゴンランス』シリーズは、ご存じの方も多いと思いますが、「アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ(R)」(ADD)というRPGシステムをベースにしています。

それなら一度はゲームを遊んどかなあかんやろ
 というボスの一声で、われわれは初のTRPG体験をすることになりました。
 システムはもちろんADD
 ただ、ファンタジーとかよくわからないわたしは、どんどん話をエロティックバイオレンスにふくらませていきまして、ゲームマスターさんをさんざんに困らせてしまったのでした。
 そのゲームマスターがだれあろう、当時まだ学生だった社友のMさん。
 いま思いだしても、ほんとうに冷や汗たらたらです。
 M先生、無理やりエロティックシーンを演出させられたこと、忘れてくださってるといいなあ……
 
 そのときにはTRPGを「ごっこ遊び(あるいは心理療法の一つ)」としか認識していなかったわたし。
 その後、ボスがグループSNEの事務所を開設されるさい、お茶くみとして入社し、現在にいたる。
 いまや完全に「賽の世界」から「ダイスの世界」に移住しています。
 友人との会話で「ダイスがね」「ダイスってね」を連発し、怪訝な顔をされるまでに成長しました。
 たぶん、もう「賽の世界」にわたしの居場所はありません。
 それでもいいのだ、楽しいから。
「真中あずさ」につづき、ちょっといい話、いわゆる感動秘話――にはなりませんでしたか? それは残念!


【12年09月12日 真中あずさ】

プレイヤーをすると妙にダイス目が悪くなることがあります。どうも、真中あずさです。

今月のテーマは
ダイスだそうで。
ダイスと言えばTRPGというくらい私たちにはなじみ深いアイテムですが、だからといっていきなりTRPGで書くのもひねりがない。
うーん、ダイス、サイコロ、六面……6、シックス……シックス面……
シックスメン……ハッ!
というわけで、
バスケの話でもしましょうか。
(*シックスメンとは、バスケットボールの試合においてベンチスタートのサブメンバーの中でも特に活躍できる選手のことです)
因みに某少年漫画とはなんの関係もありません。

突然ですが、私には二歳年下の妹がいます。歳の近い姉妹というのはとても仲が良いか、悪いかのどちらかだと思うのですが、うちは後者です。
とても仲が悪い。
姉妹喧嘩は日常茶飯事。内容は一々覚えていないのですが、ただの口喧嘩から始まってクッション、リモコン、携帯電話が空を飛び、プリンを投げ合ったこともありました。
私が大人気ない? いえいえ、全ては生意気な妹が悪いのです。
そんな妹は中学生の頃バスケ部に所属していました。
妹が中学三年生になったある夏の日。
私は母に、
妹の部活引退記念ビデオを作ってほしいと頼まれました。試合風景を撮影しBGMやスライドショーなどを編集して、なんとなくイイカンジのビデオを作ってほしいというのです。
当時、私は放送部に所属していたのでそれくらいのことならお手のもの。
聞けば今度の大会が妹の中学最後の試合だと言うではないですか。
それならば、と珍しい姉心を発揮して、私はビデオカメラとデジカメを持って妹の試合を影からこっそりと撮影することにしました。
初めて見たバスケの試合は思いのほか面白いものでした。
バッシュが体育館の床を擦る高い音、ボールが弾む振動、少女たちの掛け声。
妹のチームは1回戦、2回戦を勝ち進み、次勝てば県の大会に進むことができます。
しかし来たる3回戦。試合が始まって5分、バスケ素人の私でもすぐわかりました。

(相手が強すぎる……)

妹のチームも決して弱いほうではないでしょう。
家では女王様の如くわがままな妹が毎日休まず練習してきたのです。決して弱くはない。
しかし相手が強すぎた。
聞けば、去年の県総体準優勝校だと言うではありませんか! 恥ずかしながら、スポーツをあまり観戦しない私は早々に(これは負けるな)と思っていました。
20点以上点差が離れて迎えた後半戦。広い全面コートを走り回って、赤いユニフォームを着た妹のチームには疲れが見えてきました。
カメラのレンズ越しに赤いユニフォームを追いかけていると、
(あっ!)
と思ったら、背番号6番がボールを追いかけてバランスを崩し、派手に観客席に突っ込みました。
背番号6番―――妹です。
どうやら足首を痛めた模様。タイムがとられ、控えの2年生と交代します。
「おい、大丈夫か? やれそうか?」
足首にテープを巻きながら顧問の先生が聞きました。
「大丈夫、やります」
妹は力強い声で答えます。
このときの様子を、私は背後からビデオで撮影していました。
20年以上同じ家で暮らしているというのに、妹のあんなに真剣な声を聞いたのはあの時が初めてでした。

しかし背番号6番が戻っても試合の状況は変わらず、結局妹のチームは3回戦敗退。
妹が赤いユニフォームを着る機会も、二度となくなりました。
試合後、泣きながら保護者に礼をする少女たちの姿を、私は撮影することができませんでした。涙でぼやけて、画面が見えなかったのです。
だから妹のビデオにはその時の礼は収録されていません。
未だに「なんであの時の礼が入ってへんねん」と文句を言われることがありますが、それに関してだけ私は素直に謝ることにしています。理由は伏せつつ。
「あんたの試合してる姿に感動して泣いてたから撮れへんかってん」なんて言えません。
だって、私たちは仲の悪い姉妹ですから。
昨日も妹が録画していたAKBの歌番組をHDDから消してしまい喧嘩したばかりです。あんたこないだ一回見てたやん。え、保存するつもりだった? 知らんがな!
そんなわけで昨日から会話をしていないのですが、これを書いたらあの時の頑張ってる姿を思い出したので、明日にでも謝って「ガリガリくんコーンポタージュ味」を奢ってやろうと思います。
「ダイス」から転じて、真中あずさのちょっと良い話でした。ではでは。


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