安田: |
六門世界には『モンスター・コレクションTCG』の影響もあって、時代がいっぱいあってねぇ。 |
杉浦: |
『モンスター・コレクション2』以降は、時代がコンセプトでカードセットを作ってましたもんね。ええと、最初の時代はTCGでいくと『魔法帝国の興亡』の時期ですかね? |
安田: |
そう。次に小説『ホーリィの手記』の暗黒時代があって。ここで加藤ヒロノリが、好き勝手やりまして(笑)。そして『六王国の戦火』の時代があって、TCGの1ブロックを作ってましたね。 |
杉浦: |
次の時代は、TCGで言うと『新聖紀の胎動』『聖王の刻印』の新聖紀ブロックあたりですね。 |
安田: |
さらに北沢の小説のイエルやエルリクや『召喚士マリア』の活躍する時代があって、次に私の小説『六門世界』のリコルが活躍する時代、と続くんだよ。 |
北沢: |
そのへんの現代は、特に細かいんですよね。リコルの次には『魔獣使いの少女』のカッシェも活躍してますし。 |
安田: |
おまけに『灼熱の百年戦争』の時代まで行くと、火薬まで登場して、ごっつい未来世界になっとるんや(笑)。 |
杉浦: |
それらが全部まとまってるんだとしたら、スゴイ本になってそうですね! |
安田: |
そのまま全部は、詰め込めなかったんですね(笑)。なにせ冒険するためには、各時代ごとの六門世界の諸国を描かないとならないんですよ。 |
北沢: |
そこを冷静に考えると、各時代ごとにワールドガイドが1冊は出せるんじゃないかという情報量になってしまいまして。 |
安田: |
普通に執筆すると、6冊くらいにはなるだろうね(笑)。 |
杉浦: |
一冊に6冊ぶんのボリュームですか(笑)。 |
北沢: |
もちろん、それは無茶なんで(笑)。結局、冒険の中心として使いやすい時代を選んで、そこを中心に各時代を解説していく、というスタイルになりました。 |
安田: |
この構成に辿り着くまでにすごい時間がかかってね。おかげで各時代ごとに、表に出ない膨大なデータが蓄積されました(笑)。 |
杉浦: |
すると、「現代」っていつになるんでしょう? |
北沢: |
リコルが活躍していた50年後くらいですね。 |
安田: |
そうだね。ところがそれからも、色々と頭を悩ます問題が出てきたんですよ。ワールドガイドの制作にとりかかった頃、メルラルズの制作が進んでいたんだけれども。 |
北沢: |
加藤のリプレイにもなってる、サプリメント第1弾の『迷宮都市メルラルズ』ですね。 |
安田: |
あれがすごい設定でね。最初は「現代」のつもりで作っていたのが、また加藤ヒロノリがとんでもないものを作ってきて(笑)。 |
北沢: |
現代に組み込もうとすると、何か大がかりすぎる設定だという話になりまして。 |
杉浦: |
確かに、スゴイものが迷宮の奥底に眠ってますもんね(汗)。 |
安田: |
メルラルズも結局時代をちょっとずらすとか、そういう微調整が各所に必要になって、これまた手間取ったわけです。 |
北沢: |
企画の初期段階では、現代は「イエルの活躍した時代後〜リコルの活躍する前の時代」って言ってたんですよね。 |
安田: |
そうそう、召喚術の規模とか国の情勢とかを考えても、そのへんが落ち着くと思ってたんだよ。でも、メルラルズが入るとおかしくなるということになって(笑)。作品で行くと『魔獣使いの少女』のカッシェの雰囲気が、RPGの冒険を続けていくにはちょうどいいだろう、という話になったんだよね。 |
北沢: |
はい。イエルやマリア前後の時代じゃ大事件が多すぎるし、リコルの時代ではストーリーが完結してしまうということで(笑)。大きすぎず、小さすぎない事件を起こしやすい時代ってことで、リコル後50年です。 |
杉浦: |
なるほど、ゲームバランス的のも、大納得です(笑)。 |
北沢: |
なので、他の時代は参考程度に記載されているという感じで、まとまってます。 |
安田: |
といっても、イエルやリコルの時代も事件がいくつかあるだけで現代に近いから、その時代で遊ぶことには支障はないですよ。 |
北沢: |
そうですね。読者の方の工夫次第で、他の時代も充分遊べるようになってるはずです。 |
安田: |
でも、さすがに『ホーリィの手記』の時代だけは、遊ぶのが難しいかもしれないですね。加藤が「あれは伝説とかおとぎ話なんで、放置しておいてください」とか言うから、何か別の世界になってるので(笑)。 |
北沢: |
でも『ホーリィの手記』の暗黒時代でも、ちゃんと地図はついてます。 |
杉浦: |
もしかして全時代に地図があるんですか? それはすごい面白そうですね! |
北沢: |
といっても設定上、現代の地図が一番精密で、時代が遡るほどに信憑性が低くなるということになっていますが。 |
安田: |
地図はかなりの力作です。大塚くんが必死にまとめあげただけはあって、見てるだけで冒険のイメージが膨みますね。 |
北沢: |
でも、魔法帝国時代だけはどれだけ調べてもよくわからなくて、ほとんど白地図でした(笑)。 |
安田: |
イラストレーターの小林さんに「この地図、何もありませんが、いいんですか?」とか言われてたね(笑)。 |
北沢: |
魔法帝国時代は価値観も違うし、まあ、いいかなと(笑)。 |
安田: |
年表も作りましたが、魔法帝国時代はだいたい2000年くらい前ですから。例えば、現代日本で「邪馬台国はどこだ?」って言ってるようなもんです(笑)。 |
杉浦: |
それは、地図の作りようもないですね(笑)。 |
北沢: |
だから、魔法帝国時代についてはまた別の機会に、サプリメントを作れればいいなぁ〜……と考えてます。 |
安田: |
本当に、各時代ごとに本が1冊作れちゃう世界ですからね、六門世界は。とりあえず今回のワールドガイドでは、もっともなじみやすい世界観を中心にご紹介します。 |
北沢: |
ちなみにRPGのルールブックも、最初から「現代」あたりを想定して作ってたんですよ。 |
杉浦: |
確かに、そういう話がありましたね。リコルからカッシェくらいの時代でないと、他の時代だと派手すぎる……みたいな話があったことは覚えてます。 |
安田: |
とにかく、地図をはじめとした地理的な情報量はいっーぱい作ったね(笑)。 |
北沢: |
大塚くんからもらったデータに僕が手を加えると、ファイルのサイズが2倍になったりして。「あれ〜?」って(笑)。 |
安田: |
時代ごとにデータを作っていたもんだから、地理だけで原稿用紙にして800枚くらいに膨れ上がってしまいました。 |
杉浦: |
各時代ごとに、地理も作りこまれたんですか。それは、際限ないですね(笑)。 |
安田: |
しかし、それじゃ読みにくい、ということで。諸国をまとめた地理的ガイドになりました。クレオン師というキャラクターが諸国を巡る、ストーリー仕立ての読み物にまとまってます。 |
杉浦: |
ストーリーを楽しみながら、地理までわかるんですか! いたれりつくせりですね〜。 |
北沢: |
クレオンのエピソードも、なるべくRPGのシナリオ・ソースになるように心がけました。冒険のきっかけなどを、掴みやすくなっているはずです。 |
杉浦: |
それは、かなり使いやすそうですね。ちなみに、六門世界の地図って、これまで空白地帯や未踏地域が多かった気がするんですが……。 |
安田: |
もちろん、ほとんど全部うまりました(笑)。北西にスキュラの王国ができたり、南東の砂漠に砂上船団がいたり。あんな船団あったっけ? |
北沢: |
小説『六門世界』の5巻で出てたじゃないですか(笑)。 |
安田: |
いやいや、あそこまで大規模な設定にするつもりは無かったんだよ(笑)。というわけで、これまでに明かされなかった設定も満載です。とはいえ、それぞれのGM新たな設定を作り出せる場所もちゃんと残されていますから、ご安心ください。 |
北沢: |
地理ガイドを見ているだけで、充分楽しめて、いろんなシナリオを作れると思いますよ。 |
杉浦: |
RPGのサプリメントということで、追加のデータとかも掲載されてるんでしょうか? |
安田: |
直接的なデータは、あまり掲載されていませんね。むしろ、元から大量にデータのある『六門世界RPG』から、いかにイメージを膨らませてもらえるのか、という構成になってますね。 |
北沢: |
そうですね。とはいえ、冒険に必要な数値などは解説されています。例えば、旅にかかる日数や費用については、具体的に示されています。具体的といえば、街や都市の人口が書かれていたりして、面白いですよ(笑)。 |
安田: |
人口も、かなり悩んだねえ(笑)。 |
北沢: |
エルフの街が5000人とか書かれていて「え? 5000人もいるの?」みたいな感じで(笑)。 |
安田: |
でも、2000人だと近隣の様子や商業・交易的に少ないなあとか(笑)。 |
北沢: |
一時期は1万人とか書いてあって、「それはやりすぎだろう」とか言ってましたね(笑)。 |
杉浦: |
確かに、エルフの街の人口が書かれている本って、なかなか記憶にないですね(笑)。その他の事柄についても、イメージを膨らませやすい形で紹介されているんでしょうか? |
安田: |
アイテムについても、そうですね。アーティファクト(強力なマジック・アイテム)をいくつか紹介しているんですが、具体的なデータは掲載していません。代わりに、それらのアーティファクトについての伝承や歴史について詳しく解説していて、これを読むだけでいろんな冒険が思いつくはずです。 |
杉浦: |
アーティファクト1つごとに、キャンペーンがひとつ作れそうな感じなんですね。 |
北沢: |
ええ、そうですね。キャンペーンと言えば、シナリオソースとしては、キャンペーン・シナリオが1本掲載されています。最初の1回目のシナリオだけは、データを含めて完全な形で掲載されていますから、すぐにでも冒険に使えるものになってますね。 |
安田: |
このキャンペーンが実際にプレイしたものなんですよ(笑)。テープに記録していて、リプレイや小説にしようという話もあったくらいで(笑)。 |
杉浦: |
それは完成度が高そうなキャンペーンですね! どんな題材かなんでしょう? |
北沢: |
シスターが六門世界の各地を巡礼するというスタイルですね。 |
杉浦: |
巡礼しながらの冒険ですか。これまでに、あまり聞かないタイプのキャンペーンですね。 |
安田: |
遊びやすい冒険のスタンスから、新しい冒険の形まで、いろんなアイデアを盛り込んでみました。 |
杉浦: |
かなり遊びこめそうな感じですね。 |
杉浦: |
今後の『六門世界RPG』の展開について、お教えいただけますか? |
北沢: |
とりあえず、7月にリプレイ集第3巻『やりすぎ射手と燃える森』が出ます。 |
杉浦: |
やりすぎあちゃー? |
北沢: |
「射手」=「アーチャー」=「あちゃー」で(笑)。 |
安田: |
なかなか、ええセンスしとるやんか(笑)。 |
北沢: |
(拳を「ぐっ」と握り締めながら)思いついたときは、「これだ!」って感じでしたね(笑)。 |
杉浦: |
3巻で完結だとうかがっておりますが……失礼ですが、あのパーティ構成で、ちゃんと終われたんでしょうか?(笑) |
北沢: |
ええ、まあ(苦笑)。 |
安田: |
ここだけの話ですが……実は、最後の戦闘をやり直したようです(笑)。 |
北沢: |
それ言っちゃうんですか、社長!(笑) |
杉浦: |
つまり……全滅したとか?(汗) |
北沢: |
いや、そのまったく逆で(笑)。 |
安田: |
プレイヤーがものすごいアイデアを思いついて、実行したらあっけなく(笑)。「その作戦はバランス的に問題だ!」と、加藤ヒロノリからクレームがついたんですね(笑)。 |
杉浦: |
そういえばリプレイ収録時に、何かルールについての相談を受けたおぼえがあります(笑)。 |
北沢: |
結局、落ち着くところにおちついて、一旦終了という運びになりました。楽しく仕上がったので、ご期待ください。 |
杉浦: |
むむ、どうしてやり直すことになったのか、リプレイを読む楽しみが増えました(笑)。では、次のサプリメントについても、お聞きしていいですか? |
安田: |
これは、期待してもらって結構ですよ! 現在、私と加藤が中心になって『海賊都市クロスボーン(仮)』というサプリメントを、鋭意作成中です。 |
杉浦: |
海洋冒険モノですね! すごい楽しそうー……って、僕もお手伝いさせていただいてるんですが(汗)。 |
安田: |
これは、10月ごろ発売予定です。同じ頃には、クロスボーンと同じく海を舞台にした、新リプレイをご紹介できるかと思います。 |
北沢: |
これまであまり紹介されなかった西方を舞台にした冒険が、充実しそうな予感ですね。 |
杉浦: |
それでは、小説の展開について、お願いします。 |
安田: |
『六門世界』完結編の第6巻は、もうすぐお目見えします。 |
北沢: |
現在『召喚士マリア』の第4巻を執筆中です。 |
杉浦: |
マリアの巻末には、追加のモンスター・シートと簡易モンスター・データが載ってるんですよね。 |
北沢: |
ええ。すでに、プチ・サプリメント状態ですね(笑)。 |
杉浦: |
では、最後にコメントをお願いします。 |
安田: |
今後の展開としては、まず『六門世界RPG』の上級ルールを、早急に調えて行きたいきたいですね。これまでに様々な情報を蓄積してきた六門世界は、まだまだ奥深いです。今後の展開に、ご期待ください。 |
杉浦: |
本日は、ありがとうございました。 |