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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > 『T&T第7版ルールブック』(2006年12月)
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T&T第7版ルールブック

○はじめに

 12月8日、『TUNNELS&TROLLS(以下T&T)第7版ルールブック』翻訳版が新紀元社より発売されました! もちろん、翻訳/監修には我らがグループSNEが携わっています。また、それに先駆けて『T&T第7版リプレイ&ソロアドベンチャー傭兵剣士』も、11月28日にすでに出ております。
 そこで今回は両者の発売を記念して、第7版ルールブックの監修を行なった安田均、翻訳者である柘植めぐみの両名に直撃インタビューを行うことになりました。ほぼ毎週『T&T』の実践プレイを行い続け、『T&T』フリークと化した新人・番棚葵がお送りいたします。
 なお、第7版のインタビューを行う前に、旧版『T&T』について簡単におさらいするため、当時の翻訳者である清松みゆきにも話を聞いております。「『T&T』ってどんなTRPGなの?」と言う方もおられるかと思いますので、まずはそちらのインタビューからどうぞ。
2006年12月 発行
記事作成 番棚葵


○『T&T』とは?

番棚: そういうわけで、まずは清松さんに『T&T』の簡単な解説をうかがいたいと思います。よろしくお願いします。
 清松: よろしく。
番棚: 『T&T』は1975年に第1版が発表され、日本では1987年に第5版が紹介された、歴史あるTRPGだそうですね。その時の翻訳を清松さんが手がけたと。
 清松: はい、そうです。
番棚: 世界観的には武器と魔法があって、エルフやドワーフなどの異種族もいるというベーシックなファンタジーですが、内容的にはどのような特徴を持っているのでしょうか?
 清松: そうですね。現在のTRPGなどに比べると、バランス感覚が独特です。というか、あまりバランスを取るつもりがないというか。全体的に大雑把なゲームですね。
番棚: 大雑把ですか。
 清松: ええ。しかし誤解のないように言いますと、大雑把でも、いやだからこそ、初心者でもとっつきやすいゲームだと思います。キャラクターを作るのも簡単で、三つダイスを振るだけで作成できます。ですから、プレイしながら新しいキャラクターを作成なんてことも、ざらにありますね。
番棚: ……それは言いかえると、プレイ中に死ぬこともざらにある、ってことですか?
 清松: それは、もう(笑)。全体的に非常にシンプルな作りなんで、死ぬ時は潔く死んでしまいますね。1レベルの幸運度のセービングロール(行為判定)に失敗した結果、トラップで死亡なんてのもざらです。
番棚: 今のTRPGでは考えられませんね(笑)。そんな以前の『T&T』と、今回出た第7版とでは大きく違うんでしょうか?
 清松: そんなに違いません。大きな違いがあるとするなら『悪意ダメージ』(註1)のルールが追加されたことです。これは以前の『T&T』の戦闘ルールでは、PCとモンスターの戦力が均衡していると膠着状態に陥ることがあったので、その緩和に役立っています。他にもレベルの算出方法が変わったなど変更点は色々あります。が、これらはあくまで細かいルールであり、大きな意味での変更はないかと。
番棚: 以前の『T&T』ファンにも、今回の第7版は安心して楽しんでもらえるわけですね。
 清松: そうですね。
番棚: では最後に、これから『T&T』をプレイしてみたいという、T&Tビギナーの方に助言をお願いします。
 清松: 最初にも言いましたが、今風のTRPGとは違う魅力を持つゲームです。GMもプレイヤーも細かいことは気にせずに、その場のノリを楽しんで遊んでみてください。
番棚: 大味のアジを楽しもう、というわけですね。ありがとうございました。


註1)『悪意ダメージ』
 戦闘の判定で6の目を出したダイスがあれば、その個数分だけ相手に確実にダメージが通るというシステム。



○『T&T第7版』について


そして日にちは変わり、いよいよ『T&T第7版』翻訳関係者にインタビューです。

番棚: それでは、第7版の監修を行った安田社長、それに翻訳者である柘植さんにお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
 安田&柘植 よろしくね。
番棚: まず最初に、これは清松さんにも軽くお訊きしたのですが、旧版『T&T』と今回の『T&T第7版』の違いについて説明をお願いします。
 安田 魔法の名前が変わりました(笑)。いや、それはともかくとして。『T&T』は、根本から変更するのが難しいゲームだと思うんですよ。バランスを無視して独特の楽しさを追求したTRPGなので。旧版『T&T』でそれは確立されたので、第7版で変わっていたらどうしようと思っていたんですが、見てみたら相変わらずなので安心しました。相変わらず、大味で変で、それでいておもしろいゲームバランスだと(笑)。
 柘植 このバランスのないバランス感覚がなくなったら、逆に『T&T』じゃない気もしますね。
番棚: では、やはり両者に大きな違いはないんですか?
 安田 そういうことです。ちなみにこの第7版なんですが、『T&T三十周年記念パック』の本体として作られました。この記念パックには、昔のコンピュータゲーム版『T&T』や、一番最初にフライング・バッファロー社(註2)が作ったソロシナリオ『バッファローキャッスル』なんかも、そのまま(笑)入ってたりします。そのうちの第7版と付録の小冊子の内容を翻訳したのが、今回発売となる『T&T第7版ルールブック』なんですよ。


註2)フライング・バッファロー社
 原版『T&T』を発表したゲーム会社。


○翻訳で苦労した点

番棚: 今回、翻訳や監修などで苦労した点はありますか?
 安田 苦労と言うか、『T&T』は基本となる部分を清松君が翻訳して僕が監修していたわけですが、今回は書き方が一新されていたので、柘植めぐみが全部一から翻訳しました。その結果、『ショック効果』(註3)はなくなったのか、単に書き方を変更した時に記述を簡略化したのか、どうなんだ」というような、問題がありそうな部分は出ましたね(笑)。
 柘植 翻訳自体はそんなに難しくないんですよ。ただ、書き手の意図をくみ取らなければならないので。「こういう解釈でいいのかなぁ」と思うことが何度かありました。
 安田 あと、呪文でしょう。なぜ《氷の嵐(アイスフォール)》がいきなり《凍ってください(フリーズ・プリーズ)》みたいなダジャレになったんだとか。
 柘植 そうですね。T&Tの呪文のタイトルはもの凄く凝っていて、洒落たものがついているんですよ。《治癒(ヒーリング・フィーリング)》とか《粉みじん(ブレーカー・ブレーカー)》とか。で、今回の第7版では呪文の効果は同じなのに、なぜか名前が変わっているのがいくつかあって少し戸惑いました。単に洒落で変えたんだと思いますが(笑)。旧版を持っている方は、その辺を見比べても楽しいと思いますよ。
番棚: なるほど、それは楽しみです。ちなみに、システムの監修なんかで苦労などはありましたか?
 安田 全体的に簡略化して短く作ろうとしているから、説明が書いてない部分もあったんですよ。先ほどの『ショック効果』とか、魔法の教わり方はどうするんだとかね。その辺は、オフィシャルルールにこだわる人は首を傾げるかもしれませんが、『T&T』は割とその場の楽しさ優先なので(笑)。仲間たちも「ここはこうなんですよ」と、GMやプレイヤーが自分で決めてもいい部分ではあると思います。
 柘植 原作の方も、書いていない部分は自分達で決めちゃってくれていいよ、って書き方なんです。


註3)『ショック効果』
 戦闘で攻撃魔法を使うと、そのダメージは戦闘の優劣に関わらず相手に届くというシステム。
 サイコロの目が均衡しそうなとき、これでバランスを崩せる。


○『T&T』の醍醐味は?

番棚: そういういい意味で大雑把なところも、『T&T』の持ち味ですよね。
 安田 そもそも、著者であるケン・セント・アンドレが変わっていて、彼は『T&T』のバランスを、ユーモアでフォローしていますね。敵を追い払う《行っちまえ》の魔法は、失敗すると術者に敵の攻撃が集中したりとか。攻撃魔法の《これでもくらえ!》は強力ですが、そればかり使ってる人に《これでもくらえ!》用の罠とかモンスターが特別に出るシナリオを作ったりとか(笑)。
番棚: 面白いギミックというか、発想ですね。
 安田 そうです。こういう発想法でプレイヤーを驚かせて、楽しませようというのが『T&T』じゃないですかね。GMは理詰めでシナリオを組み立てるのでなく、「ここはこうして驚かせてやろう」と企んで、プレイヤーもそれを受けてノリに乗ったり、企み返したりするのが醍醐味だと思います。
番棚: そういえば、個人的に『T&T』をやってみた感覚では、TRPGよりボードゲームに近い楽しさを感じましたが。
 安田 プレイヤー同士のインタラクションは、ボードゲームに近いですね。コンピュータゲームでは体感できない楽しみです。でも、かと言って感情に走ってばかりでもいけなくて。自分のキャラが死んだ時に笑い飛ばせるような余裕も必要です。「なんで死んだんだ!」とか怒りだすのは、ちょっと。
 柘植 『T&T』でそれをやるのは、少し違うと思いますね。
 安田 死んだのが納得いかないなら、GMが弁舌さわやかにとか、感動させて納得させるのも手です。大抵は死んだことをサカナに大いに盛り上がった後、新しいキャラクターを用意するわけですが。自分のキャラクターが死んだからといって、つまらないということは全然ないですよ。楽しんだもの勝ちなんで。
番棚: そういう部分は、第7版になっても健在だと。
 安田 まったく変わっていません。というか、酷くなっています(笑)。レベルの算出方法が変わり、初期作成キャラクターがレベル7なんてこともあったりしますから。
 柘植 逆に言えば、どんなにレベルが高いキャラでも罠にかかったりすれば結果は同じということですけど(笑)。
 安田 性能の高いキャラほど、前に出て危険な役を請け負うことが多いですしね。でも、慣れれば慣れるほどトラップを見破るコツなんかが分かって楽しめるようになるので、物怖じする必要はないです。プレイヤーが『T&T』に早く慣れるために、トラップやシナリオの紹介なども今後は行っていく予定です。


○『T&T』のこれから

番棚: T&Tの今後の展開としては、シナリオなどの紹介を視野に入れているわけですね。
 安田 ええ。『Role & Roll vol.29』でも第7版対応のシナリオが掲載される予定です。ケン・セント・アンドレが作ったので、一風変わった面白いシナリオですよ。
 柘植 訳しました。一度遊んでみて下さい。これからも『Role & Roll』誌上では、先ほど社長も言われましたが、トラップやシナリオなどを紹介していく予定です。また、12月発売の『Role & Roll vol.28』では、背景世界である〈トロールワールド〉の歴史を紹介しています。
 安田 この世界観と歴史は大変面白く、シナリオを作るのにも役立つと思います。既刊の『T&T第7版リプレイ&ソロアドベンチャー傭兵剣士』もあわせて、皆さんにはぜひご支援のほどをよろしくと(笑)。特に『傭兵剣士』はソロプレイシナリオと、そのシナリオを実際にプレイして北沢慶君が書いたリプレイが、それぞれ前後から読めるダブルブックになっていますので。中味はもちろん、その仕様も面白いですよ。
 柘植 評判がよければ、『傭兵剣士』の続きであるソロプレイ『青蛙亭再び』もぜひ紹介したいと思っています。
番棚: それはとても楽しみですね。では最後に、お二人からこの記事を読んでくださっている方々に、一言お願いします。
 安田 そうですね。『T&T』はルール的にもなじみやすいRPGであることは間違いないので、ぜひ何度も遊んでみてください。設定なんかはそれこそどこから引用してきても構いませんし、そういうふうに自由に遊べるゲームですので。これはRPGの宝だと僕は思っています。ですから、次がちゃんと出るようにルールブックを買って遊んでね、と(笑)。
 柘植 私、SNEに入って一番最初にやったTRPGが『T&T』なんですよ(笑)。それで今までTRPGの仕事を続けられたのは、『T&T』の魅力に一目惚れしたからかな、とも思いますので。いつまでも『T&T』で遊べるように、皆さんにもぜひ応援をお願いしたいですね。
番棚: 今後の『T&T』の展開は、ファンの皆さんのご助力次第ということですね。では、本日はインタビューにご協力いただき、ありがとうございました。



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