安田: |
ドイツではAEG社の社長だけじゃなく、デザイナーであるマイク・エリオットにもいろいろ話を聞いてきたよ。 |
柘植: |
おおっ! |
安田: |
詳しくは、この冬発売の 『ゲームリンクVol.6』(アークライト) に掲載される秋口ぎぐるのエッセンレポートをどうぞ! |
柘植: |
(がくっ)……そ、そうおっしゃらずに、ちょっとだけでも。 |
安田: |
AEG社の社長はジョン・ジンサーという人なんだけど、じつはぼくが会うのは初めてじゃなかったんだ。むかしまだAEG社ができたてのころに、Gencon(アメリカで真夏に行われるゲームの祭典)で会ってるんだよ。言ってみれば、AEGという会社が大きくなるのをぼくはずっと見てきたんだ。とても他人とは思えない会社だね。 |
柘植: |
そういえばAEG社はむかしから、TCGやRPGを作っていましたよね。 |
安田: |
うん、『Legend of the Five Rings』 というTCGが人気を博した。「Five Rings」、すなわち「五輪の書」。ぼくが行ったときも、「日本人なら五輪の書くらい知ってるだろう、 ぜひ買ってくれ!」 と言われたっけ。 |
ちなみに 『五輪の書』 とは、宮本武蔵が記したと言われる兵法書です。五輪とは、地・水・火・風・空のこと。おや? 「空」を「雷」と考えれば、『サンダーストーン』 の拡張セット第1弾に出てくる5体の精霊王と同じ……?
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安田: |
当時はちょうど、スティーブ・ジャクソン・ゲームズ社やホワイトウルフ社が伸びていたころでもあったんだ。 |
柘植: |
ということは……もう15年くらい前ですか? そんなにむかしからAEG社はあったんですね。 |
安田: |
とても元気な会社で期待していたら、ぐんぐん伸びていった。 |
柘植: |
最近はボードゲームもたくさん出していますよね。 |
安田: |
ドイツで盛んだったボードゲームがアメリカに伝わって以降、Z-man社やFantasy Flight Games(FFG)社が大きくなったけれど、AEG社はなんといっても、『ドミニオン』 につぐデック構築型/セレクトカードゲーム、『サンダーストーン』というヒット作を出したことで注目された。 |
柘植: |
なるほど、AEG社という会社のことがよくわかりました。 |
柘植: |
さて、ゲームの内容ですが……やはり 『ドミニオン』 っぽい(苦笑)? |
安田: |
デザイナーのマイク・エリオットに言わせると、「『ドミニオン』 はよいゲームだけれど、なにかが足りない。そうだ、“目的”だ!」と思ったらしい。彼は 『D&D』 が大好きなので、RPG風味を付け加えたというわけだ。 |
柘植: |
確かにそういうゲームに仕上がっていますね。 |
安田: |
ただ意外だったのは、彼(エリオット)がゲームのすべてを作って売りこんだのかと思っていたら、じつは世界観は全部、社長のジンサーが作っているらしい。 |
柘植: |
ほう……? |
安田: |
〈サンダーストーン〉という石が順番に発見されて、それにつれて世界が広がっていく……という構想は、すべて社長が思いついたものなんだそうだ。 |
柘植: |
それってどこかで聞いたような……。 |
安田: |
うん、まさしくぼくたちの 『モンスター・コレクションTCG』 『六門世界RPG』 みたいだね。ぼくの作った〈六門世界〉という舞台で、加藤ヒロノリがゲームをデザインするという。 |
柘植: |
……ますます他人とは思えなくなってきました(笑)。 |
安田: |
『サンダーストーン』の世界は、これからどんどん明らかになっていくらしい。日本でもストーリー展開したいと言ったら、ぜひやってくれ、と言われたよ。 |
柘植: |
つまり、小説を書いてもよいということですか? |
安田: |
うん、みなさんからの応援があれば、そういうこともできるかも。 |
柘植: |
そのためにも、まずはこのゲームを面白いと思ってもらわないと。 |
柘植: |
基本セットにつづいて、アメリカではすでに拡張セットが2つ発売されていますよね。第1弾が 『Wrath of the Elements(精霊王の怒り)』 で……。 |
安田: |
第2弾の 『Doomgate Legion(〈宿命の門〉の軍団)』 は、ちょうど2010年のエッセンで発売されたばかり。 |
柘植: |
じつはまさにこのインタビューの10分前、わたしたちはその拡張セット第2弾を遊びました。ちなみに結果はボスの圧勝! |
安田: |
(頭かきかき)……もちろんAEG社の社長もゲームが大好きで、エッセンでぼくたちが持ちこんだゲームも快く遊んでくれたんだけど……彼もゲーマーだったよ。『サンダーストーン』 ではどうしてもディベロッパーのマーク・ウートンという人に勝てなくて、「でもやっとこのあいだ勝てたんだ!」と嬉しそうに話していたっけ。 |
柘植: |
どこの社長も、ゲームを遊ぶときは本気なんですね。 |
安田: |
ウートンという人が、「ふふふ、ぼくに勝ってみなさいよ、社長」 ってけしかけるらしいよ。 |
柘植: |
……いますいます、そういうタイプ(苦笑)。話は戻りますが、日本でも拡張セットはしっかり出していきたいですよね。 |
安田: |
拡張セットには新しい要素も入っていて面白いからね。第1弾には罠が、第2弾には宝物が登場する。 |
柘植: |
まさにRPG! |
安田: |
もちろん、モンスターや装備品の幅も広がってるよ。村人に“傭兵”というカテゴリーができたり。それに、なんといっても英雄カードがすごい。 |
柘植: |
基本セットには英雄が11種類入っていたんですけど、拡張セットではさらに7種類ずつ増えているんですよね。『サンダーストーン』の英雄って、職業(クラス)じゃなくて“種族”みたいなんですが……この世界、いったいどれだけ多種族が住んでいるんだか。 |
安田: |
エルフやドワーフはともかく、魔法に秀でたセルーリンとか、食べ物で強くなるシリアンとか面白いよね。 |
柘植: |
拡張セット第2弾では病気の種類も増えていてびっくりしました……おっと、話がつい先走ってしまいました。まだ基本セットが出たばかりですのに、すみません。 |
安田: |
いやいや、そのくらい世界観が気になるゲームなんだ。早くストーリーとか知りたいよね。 |
安田: |
『サンダーストーン』 の遊び方については、雑誌でも記事を連載しているので、ぜひ参考にしてほしい。 |
柘植: |
『Role & Roll』 では大井雄紀が 「正しい雷石のつかみ方」 を、『ゲームリンク』 では河端ジュン一が 「サンダーストーンの雷撃!」 という紹介&攻略記事を書いています。 |
安田: |
攻略と言えば、『サンダーストーン』 では 「民兵」 を廃棄してデックを圧縮するという方法があるけれど……柘植はどうしても 「民兵」 が廃棄できなくて勝てないんだよね? |
柘植: |
うっ……だ、だって、「民兵」も英雄なんですよ? 集まれば強いんですよ? なのにみんな、すぐに 「民兵」 をお金に換えたり経験点に換えたり……。 |
安田: |
「道場主」 や 「質屋の主人」 っていう村カードがあると、どうしてもデックの圧縮に走ってしまうんだよ。効率いいし。 |
柘植: |
……というのを実感したい方は、早く遊んでみてください。そして、「民兵」 を大切にした勝ち方を、誰か教えてください! |
安田: |
無理無理(苦笑)。 |
柘植: |
(ぐすん)……そういや、最初にお聞きするべきだったんですが、SNEで翻訳することになったきっかけはどういうことでしたっけ? |
安田: |
AEG社が 『サンダーストーン』 というデック構築型/セレクトカードゲームを作ったという話は聞いていたんだけど、最初はあまり話題にならなかったんだ。2009年のエッセンで出るはずだったのが遅れて、年を越して出たこともあってね。でもじっさいに遊んでみたら、ちゃんと
『ドミニオン』 みたいなゲームで、でもすごくファンタジー風味があって、「これはいいじゃないか!」 と、ぼくからアークライトに話を持ちこんだんだ。 |
柘植: |
今年の春ごろでしたよね。 |
安田: |
AEG社もあまり売れないと思って、少ない数しか作らなかったんだろうね。人気が出たとたんに品切れになって、しばらく手に入らない時期がつづいたっけ。 |
柘植: |
でもボスはちゃっかり目をつけておられたんですね。初めて遊んだときのこと、覚えていますよ。ボスが素読みでルールを説明してくださって、すごく面白かった。自分だけの冒険者パーティを作るのも楽しいし、毎回違う英雄やモンスターが登場するのも新鮮で飽きが来ないんです。 |
安田: |
もともと、AEG社ならしっかりしたものを作るだろう、という信頼もあったからね。そういえば、AEG社は来年(2011年)、ホラーを題材にした新しいデック構築型の 『Nightfall』 というカードゲームを出すらしい。 |
柘植: |
ホラーのセレクトカードゲーム? どんなゲームになるのか楽しみですね。 |
安田: |
これからもAEG社には要注目だ。ぼくたちも、負けないようにがんばっていきたいね。 |
柘植: |
おっ、いよいよ発表ですか。じつはSNEからも、デック構築型カードゲームを出すことが決まりました! ぱちぱちぱち(拍手)。 |
安田: |
まずは第1弾として、この冬に 『エンドブレイカー!』 のカードゲームが発売される予定。まったく新しい形を呈示しているから、ぜひとも期待してほしい。もう1つ、ぜんぜん違うタイプのデック構築型/セレクトカードゲームもテストプレイ中。そちらも楽しみにしておいてください! |
柘植: |
1つの大きな流れが来ているのを肌で感じますね。それでは、最後に一言、お願いします。 |
安田: |
『サンダーストーン』を初めとするデック構築型/セレクトカードゲームは、新しくて面白いゲームスタイルです。ぜひともみなさん、遊んでみてください! |