★ゲームノベル『魔女館からの脱出』ができるまで |
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本日は11月19日に配信が開始された『キャット&チョコレート 魔女館からの脱出(以下『魔女館』)』iGamebook版の著者、秋口ぎぐるさんにお話を伺いたいと思います。
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秋口 |
よろしくお願いします。 |
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この作品については、すでに何度もお話しされてきたと思いますが、iGamebook版ではじめて触れる方もいらっしゃるはずですので、作品の成り立ちからお伺いしていいですか。 |
秋口 |
ええ、本作のそもそものベースになっているのは『キャット&チョコレート』というカードゲームなんですね。 |
『キャット&チョコレート(以下C&C)』 初版は2010年発表。「なんの役に立つの?」というようなアイテムを活用して危機を回避し、幽霊屋敷から脱出するというコミュニケーション型ユーモアゲーム。2010年日本ボードゲーム大賞受賞。「幽霊屋敷編」「ビジネス編」「学園編」のシリーズ3作が現在、株式会社cosaicから発売中(公式サイト )。
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プレイヤーが口先三寸でストーリーを捏造する(失礼!)楽しいゲームですが、そのシステム自体には小説になるような、ひとつながりのストーリーはないですよね? |
秋口 |
それはそうなんですが、ある時期、ぼくがリアル脱出ゲームというのにはまったときがありまして。 |
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ああ、よくみんなで行ってましたね! (でも、それと『魔女館』がどうつながるんだろ?) |
秋口 |
で、そういうゲームを自分でもやってみたいという思いがあったんです。リアル脱出ゲーム風で、なおかつストーリー性のあるもの。 |
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はい…… (←まだつながりがピンときてない) |
秋口 |
それで、JGC2011のなかの1つのイベントとして「キャット&チョコレート 脱出ライブ」というのをやったんです。覚えてません? |
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あっ、ああ、やったやった、覚えてます!! |
【JGC】
毎年8月末〜9月頭に開催される宿泊型アナログゲームの祭典。(JGC2011「キャット&チョコレート 脱出ライブのレポートはこちら) |
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たしか、ボス(グループSNE代表:安田均)が白いシーツかぶって会場をうろうろしてましたよね。あれはなにをやってらしたんでしたっけ? |
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秋口 |
館をさまよう幽霊の役です(笑)。で、さいわい、そのイベントが好評だったので書籍化しようというお話をいただきました。 |
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それが『魔女館からの脱出』(新紀元社ネオゲーム文庫)なのですね。やっと話がつながりました。 |
秋口 |
それはよかった(笑)。 |
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そうして書かれた『魔女館からの脱出』ですが、これまであったパラグラフ選択型の「ゲームブック」とは異なり、アイテム選択型「ゲームノベル」という新しい形で登場しましたね。 |
【アイテム選択型ゲームノベル】
まず直面している問題を解決するために使用するアイテムを2つ選び、そのアイテムの使用順に、番号を組み合わせた2桁の数字のパラグラフに飛ぶ形式。
たとえば、「1.ネコ」を魔方陣に投げつけて魔神を追い払い、「8.チョコレート」をクレヨン代わりに魔方陣を書き換えるなら、進む先はパラグラフ番号「18」となります。正解ならお話がつづいていきます。 |
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「脱出ライブ」では、プレイヤーさんたちはアイテムカードをいっぱい手にもった状態で、どのアイテムをどのブース(館の場所)で提示するか、みんなで相談しながら謎解きをしましたね。 |
秋口 |
ええ、それがあのイベントの醍醐味だったと思うんです。そうした楽しさと感覚をいかに書籍で表すかというのをいろいろ考え、編集さんとも相談を重ねた結果、「アイテムを選んだ順番で行き先が決定する」というシステムに行き着きました。 |
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そのシステムを使って、以後『ゴーストハンター スペイン屋敷の恐怖』や『ゾンビーズ? ゾンビーズ!』(著:友野詳)などのゲームノベルがネオゲーム文庫から出版されたという経緯ですね。 |
秋口 |
そうです。この「アイテム選択&パラグラフジャンプ」という形式を、ボス安田が気に入ってくれまして、その後、SNEのゲームノベルに使われるようになりました。最初に世に出たのは、『Role&Roll』Vol.91(2013年4月)誌に掲載された「デスフロッグ・ダンジョン」じゃなかったかな。ダンジョン探索をアイテム選択でやったんですよ。 |
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―いまでは『Role&Roll』誌でほぼ隔月で掲載されるほど、SNEでは定番のシステムになりましたね。そして、2013年にはiGamebookという新しい形で登場しました。それではいよいよ本題に移りたいと思います。 |
★iGamebook版『魔女館からの脱出』 |
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いかがですか、iGamebook版を遊ばれた感想は? |
秋口 |
言葉にするとありきたりになってしまうんですけれど、マップ(地図)から行き先が選べたり、デジタルならでは便利さが出ていてさすがだな、と感心します。 |
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こういうゲームブック/ゲームノベルタイプの書籍とデジタルの相性は抜群ですね。メモ機能があるから鉛筆も不要だし――。 |
秋口 |
しおり機能があるから、指を挟んでおく必要もない(笑)。 |
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ストーリーはどういった内容になるでしょうか。 |
秋口 |
主人公は中学2年生の女の子まゆちゃんと、同級生の男の子圭司くん。その二人が心霊現象の証拠を見つけようと幽霊屋敷に忍び込みます。 |
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そこでちょっと怪しげな事件に巻きこまれてしまうんですね。 |
秋口 |
ええ、小説自体はコミカルなんですけれど、そこはホラーですからね、恐怖テイストが入っています。 |
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まゆちゃんたちはまず1階から探索をはじめ、いろいろ手がかりを見つけて別の階に進んでいきますね。 |
秋口 |
そうです、1階の探索部分はダウンロードしていただければ、無料でお楽しみいただけます。気に入っていただけたら、ぜひ別の階も探索してください。 |
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お話の内容で言うと、主人公二人のほかに、可愛い幽霊の女の子が出てきますね。 |
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秋口 |
(にやり)この可愛らしい幽霊、じつは(上述の)脱出ライブイベントでボスがやってた――
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うそっ?! |
秋口 |
ほんと(笑)。イベントでボスがシーツを巻き付けて扮していたアレが、書籍では可愛い女の子の幽霊になった、という。 |
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うわー、知らんかった。なるほど、イベントのときのストーリーが、そういうアレンジを経て書籍化されたってことなんですね。 |
秋口 |
なかなか気の利いたアレンジでしょう(笑)。ほかにも、イベントのときにはプレイヤーが2階から濡れた服のまま1階に降りるというシーンがあったんですけれど―― |
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あったねー、毛皮のコートをかぶって熱湯シャワーを止める場面。 |
秋口 |
それをどうやって書籍で再現するのか、とかいろいろ工夫しました。 |
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小説としてももちろん楽しいですし、「ペットボトル一本分の涎を垂らす巨大赤ん坊」とか、ぎぐるさんらしい小ネタが随所に仕込まれてて……もしもし、ぎぐるさん? |
秋口 |
……これ、あかんやん。虫を一網打尽にするて。 |
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はい? |
秋口 |
(スマフォをぽちぽちっ)えーっ、不正解? これ、解かれへんやん! ヒント、見てみよ(←どうやら、改めて『魔女館』iGamebook版を遊びはじめたらしい) |
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人が真剣にインタビューしてるのに、なに遊んでんですか! |
秋口 |
(聞く耳持たず)あ、わかったわかった、これとこれや! お、正解♪ |
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あの、話つづけてもいいですか……? |
秋口 |
なるほど(目がキラキラ)。これね、正解がわからないときには、ほかの部屋も回るんですよ。そうしたらヒントが出て、ちゃんと解けるようになってる。 |
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そうですよ、なにをいまさら(笑)。 |
秋口 |
(うきうき遊びながら)ようできてるなあ、最初にこのシステム考えた人、偉いんちゃいます――いや、ぼくなんですけど。 |
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はいはい、そうね(笑)。iGamebook版ではヒントの部分が太字になってて、後からメモ機能でも確認できる。ゲームノベルのシステムはそのままで、すごくやりやすくなってますね。あと、アイテムのイラストもカラーで、楽しいです。 |
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秋口 |
そう、いいですねえ、これ! 『キャット&チョコレート』のカラーイラストをそのまま使っていただきました。 |
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問題の難易度は高めかもしれませんが、自分で一生懸命考えて、正解にたどり着いたときの爽快感は格別。『魔女館』の場合は、どうしても正解がわからないときはアイテムの順列組み合わせで1つずつ消していくという力業も可能ですし。 |
秋口 |
「『魔女館』の場合は」というと? |
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じつは先に出ている『スペイン屋敷の恐怖』iGamebook版ではそれができないんですよ。狂気カードシステムがあるので。 |
秋口 |
あっ、狂気カードか! |
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「ゴーストハンター」シリーズの肝とも言える狂気カードシステムは、なんとiGamebook版でもちゃんと再現されてるんです! なので、ゲーム中に狂気カードを引かされたり、誤った答えを選択すると正気度(メンタルポイント)が減っていくんです。これもめちゃくちゃよく出来てて、二重の恐怖とスリルを味わえますよ。 |
秋口 |
それはすばらしい!! 制作元の(株)フェイスさんはたくさんデジタル版ゲームブックを配信しておられてノウハウをお持ちなので、そうした工夫を随所にしていただきましたね。 |
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それでは、最後にまとめの一言をお願いできますか。 |
秋口 |
iGamebook版については「遊びやすくなってますので、ぜひ楽しんでください」ということに尽きますね。『キャット&チョコレート』をご存じない方も、ネオゲーム文庫版『魔女館からの脱出』をお読みでない方も、これを機会にぜひ遊んでいただきたいと思います。デジタル版アプリについてはゲームノベルだけでなく、さまざまな可能性を秘めていますので、つぎにつなげていきたいですね。 |
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本日はありがとうございました! |