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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > オリジナル小説豪華3本立て(2014年01月_2)
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『あやかし秘帖千槍組』
『からくり隠密闇成敗 孤兵衛推参(まい)る(仮)』
著:友野詳
●『あやかし秘帖千槍組』
―― つづきまして『あやかし秘帖千槍組』(廣済堂モノノケ文庫/2014年3月刊行)について友野詳さんにお話を伺います。
作品紹介あやかし秘帖千槍組(ひちょうちやりぐみ)』】
 時は江戸三人の美女男ひとりの旅芸人〈白羽一座〉が町から町へと巡業中。しかし、旅の一座は世を忍ぶ仮の姿。半妖半人の彼女たちは、天狗の若大将千槍白羽丸から指令を受け、妖怪と人間のもめごとを解決する、その名も〈白羽一座〉改め、あやかし守りの〈千槍組〉。海比呂藩に次々と妖怪が現れるという噂を聞きつけ、事件の調査に奔走する千槍組の痛快活劇

◆刊行にいたる経緯など
―― あやかし秘帖千槍組』は廣済堂モノノケ文庫さんから出版されます。モノノケ文庫さんといえば江戸時代を舞台にしたファンタジーで、好きな方にはたまらないレーベルですよね。今回、どういった経緯で書かれることになったのでしょうか。
友野 同じくモノノケ文庫さんで作品を出している大ベテランの作家、朝松 健先生がきっかけですね。朝松先生とはSNS上でよくお話させていただいてて、「妖怪時代劇とか良いですよね」って先生に言ってみたら、「じゃあ友野さんも書いてみる?」とご紹介していただけまして(笑)。僕も朝松先生のファンなのでとても光栄なことです。
―― SNEで「妖怪」といえば友野さんというお話を聞いたのですが。
友野 ふっふっふ(笑)。23年前に『妖魔夜行』というシリーズがあったんですけれど、僕も企画の立ち上げから参加させてもらいました。妖怪、大好きですからね。その後も『妖怪コロキューブ』(学研教育出版)『妹トラップ!外道な兄と使われ妖怪』(KCG文庫)とか妖怪物をいろいろ書いてきました。

◆イラストは弘司さんが担当!
―― 今回、イラストを担当された弘司さんはグループSNEとも親交が深いと聞いています。昨年9月に出た『ゴーストハンター13 タイルゲーム』のイラストも手がけていただきましたし、友野さんはデビュー作「コクーンワールド」シリーズ以来のおつきあいだそうですね。
友野 今回も最初は誰にお願いしようかと、担当さんといろいろ相談していたところ、弘司さんがイメージにぴったりだなあ、ということで、正式にお願いすることになったんです。
―― 弘司さんの描く妖怪時代劇イラスト、非常に楽しみです。
友野 作者の僕自身、待ち遠しい限りです。現時点ではまだ描いていただいている途中ですので、みなさんしばらくお待ちください(笑)。

◆作品の舞台と世界観について
―― 今作では、幕末のある小さな藩が舞台となっていますね。平安時代や戦国時代ではなく江戸時代というのは?
友野 モノノケ文庫さんなので、まず時代物というがありますね。その上でエンターテイメント時代物定番といえば、僕としては江戸かな、と。西岡たちの世代だとテレビで時代劇がバンバン放映されてなかったでしょ?
―― ええ、なかったですね。ご老公が里見浩太郎の『水戸黄門』くらいです。
友野 僕たちの世代が小中学生のころ、ゴールデンタイムで毎日何かしらの時代劇が放送されていて、お昼にも再放送の時代劇がしょっちゅう流れていたんだよね。だから、大人向けとはいえ、子どもにとってもチャンバラをやる時代劇の主人公特撮ヒーローと同じくらいヒーローに見えた。
―― 馴染み深いヒーローたちが活躍した時代なんですね。
友野 そうそう。子どものころに観ていた面白い時代劇。それがやっぱりほとんど江戸時代だった。しかも漠然とした江戸ね(笑)。歴史小説的な舞台じゃなくて、ある意味ちょっと架空の存在というか、エンタメのためにあるような日本。そこに強い思い入れがあります。だからこそ自分でもそういう面白さを書いてみたい、ということで江戸時代にしました。
―― なるほど。それでは、つぎに友野さんの「妖怪観」をお聞かせ願えますか。
友野 作品ごとに妖怪観はいくつもあって、『妖怪コロキューブ』や『妹トラップ!』を書くにあたって、そのつど「妖怪とは何なのか」について考えてきました。
―― では、今作の妖怪観とは?
友野 今回、時代小説は自分にとって初めての挑戦だったので、奇をてらうよりは、登場する妖怪をなるべくオーソドックスなものにしようと思いました。ただ、自分のなかのオーソドックスな妖怪ってなんなんだと(笑)。
―― たしかに。作品ごとに違っていますからね。
友野 やはり、十数年書き続けてきた『妖魔夜行/百鬼夜翔』における妖怪像が自分にとって一番書きやすいんですね。なので、「人の心、人の思いが凝って生まれてきたもうひとつの命」というものが妖怪ですよ、という設定を、もう一度使ってみました。自分の新しい挑戦慣れたフィールドを上手く融合できたのではないかと思います。
―― これまでの妖怪作品のパロディではないわけですよね。
友野 ええ、名前が似ているキャラが脇の脇にいるくらい(笑)。ですので、今までの作品のパラレルや続編ではなく、独立した一作品として読んでいただけると嬉しいです。

◆個性がまったく異なる千槍組の面々
―― 妖怪の話題が出たところで、主要な登場人物である千槍組の面々についてお聞きします。個性はまったくバラバラの千槍組、しかし息はピッタリ、という印象でしたが。
友野 そう読んでくれてありがたい。
―― 幽霊船に憑りつかれたセクシーなお姉さんの。雪女と人間の間に生まれた母親と雪男のハーフである木刀と拳法使いのクールな。糸車の付喪神であるキュートなお輪。そして天狗の苦労人黒丸
友野 苦労人というか、なんというか……掴みどころのない男ですけども(笑)。
―― このキャラクターたちと妖怪をあてはめていくというのは、どういった感じで行ったのでしょうか?
友野 妖怪のヒーローが悪い妖怪を退治する痛快なエンタメとして書くのであれば、格好良い男より女性かなと。他と差別化を図る意味もありますしね。イメージはチャーリーズ・エンジェル
―― なるほど!
【チャーリーズ・エンジェル】
探偵事務所に所属する三人の女性探偵が、その美貌と変装術、そして男性顔負けのアクションで事件を解決するアメリカのドラマシリーズ。
友野 それをイメージすると、やはり女性三人と、それをサポートするちょっとカッコ悪い男っていう配置を作って、その次に女性のタイプを分けていこうと。エロいお姉さん、クールで武闘派のお姉さん、そしてロリっ子(笑)。そこに試行錯誤して妖怪をあてはめていきました。
―― 個人的なことながら、作品を読んでいてセクシーなさんの色香心乱されて大変でした(笑)。
友野 ふっふ、惑わされたか。アカンよ、あんなお姉さん本当におるから気をつけて(笑)。
―― それだけ魅力的なキャラクターということです! ところで、妖怪と人間の間に立つ、半妖半人の彼女たちは「妖怪と人間の住み分けをきっちりすること」のを目的に旅しているわけですが、共存共栄ではないのですね。
友野 ええ、そこはこだわりましたね。共存共栄はなかなか難しい、かといって完全に人間と妖怪を別物と言い切るのはさみしい。だからお互い上手い距離感を保とう、良いラインを引いて生きよう、というテーマを設けました。でも、決してシリアスに書こうとは思っていないのでご安心を。
―― たしかに、シリアスな印象は感じませんでした。
友野 住み分けを目指しているものの、実際は上手くいかないこともある、そういった場面をドラマとして面白おかしく書いたのが今作です。

◆千槍組の活躍を痛快に描く文章
―― 彼女たちの活躍を描く地の文ですが、講談調の語り口ですよね? これぞ活劇! という感じでワクワクしながら読ませていただきました。声に出して読みたい日本語ですね。
友野 そこはかなり意識しています。僕はああいった文章を書くとき、声に出しながら書くことがあるから(笑)。
―― 実際に口にしながら読むと気持ちの良い文書でした。
友野 なんかえらいヨイショするなぁ(笑)。でも、うれしい感想です。

●『からくり隠密闇成敗 孤兵衛推参(まい)る(仮)』
―― 最後は、同じく時代小説『からくり隠密闇成敗 孤兵衛推参(まい)る(仮)』についてお伺いします。
作品紹介 『からくり隠密闇成敗 孤兵衛推参(まい)る』】
 八代将軍吉宗が将軍の座に着くや、吉宗子飼いの御庭番衆が登用され、根来・伊賀・甲賀忍者たちはそれぞれの国へ帰るよう命じられた。しかし根来忍者の
孤兵衛はある事情から幕命に従わず、表の世界で暮らすことにした。ところが孤兵衛、忍働きはできても、江戸の一般社会では再就職もままならない中年男性だったのだ。
 放浪先で暴漢に襲われそうになっていた少女
弓乃を偶然助けた孤兵衛は、彼女とその母千明が立たされている苦難と、裏で暗躍する悪の存在を知る。
 ちょっと情けないけどここ一番では格好良い中年忍者
孤兵衛と、男たちを惑わすセクシーな甲賀忍お蜜、腕は立つが頭は弱い伊賀忍才蔵が繰り広げるドタバタコメディ
友野 2013年12月創刊された富士見新時代小説文庫からの新作の忍者物でございます。
―― 千槍組妖怪と人間の間という面がありましたが、こちらは表の世界と裏の世界の間に生きる忍者が登場しますよね。
友野 根来忍者の孤兵衛甲賀忍者お蜜伊賀忍者才蔵とこれまた三人組です。今回、富士見さんから時代小説のお話をいただいたとき、書くべきは忍者物だろうと。小学生のころ読んだ山田風太郎さんの忍法帖シリーズが、僕が小説を書きたいと思った根っこの部分でもありますしね。
―― 妖怪と同じくらい思い入れのある存在というわけですね。
友野 ええ、そうです。しかし、時代小説の読者層って僕と同じ年代かそれ以上の方々ですので、そういった世代の読者が面白く読めるテーマを探しました。それで偶然、友人たちとの会話のなかで気になるワードに「リストラ」ってのがあったんですわ(笑)。これは面白いなと、使ってみました。
―― 忍者のリストラ話がそこからきていたんですね。
友野 最初の企画段階では『リストラ忍者』という仮題がついていたくらいで。それで忍者がリストラされる瞬間っていつだろうかと考えたら、徳川吉宗が八代将軍となったとき今までの隠密組織解散させて、これからは子飼いの御庭番衆を使うぞっていうときかなと。
―― 裏享保の改革とでもいうのでしょうか。
友野 そうやな(笑)。たしかに表沙汰にはできない。暴れん坊シリーズでおなじみの吉宗が活躍していた裏で、孤兵衛さんは「俺はまだまだ働けるぞ!」っていう気持ちがありながら解雇された中年です。
―― 最初のデキる男という雰囲気からの激しいアクションで読者を魅せたかと思いきや、次の章の哀れな姿で「あれれ?」となりました。
友野 孤兵衛さんは良い人なんです。っていうか良い感じにダメな人でしょ?
―― 任務のためなら非情になることも辞さない忍のプロのはずが……
友野 お前本当は根っこが義理人情に篤い、忍者としてアカン奴やんけ! という人物。でも太平の世が舞台なので、実際のところ心の芯から冷酷非情になれないだろうということで、読者にも馴染みやすいようにしました。
―― たしかに、孤兵衛さんって表情が豊かで親しみやすそうな人ですよね。
友野 最初はまさしく冷酷非情な忍者を考えていたけど、どうも馴染まなかった。自分の能力の高さを信じて疑わない孤兵衛が再就職できなくて悩んでいる場面を書いたとき、あっ孤兵衛ってこんな奴なのね。と、自分で納得できてすらすらと書くことができましたね。
―― 甲賀忍者・お蜜と伊賀忍者・才蔵はどんな人物でしょうか。
友野 お蜜さんはやたら色っぽい、会社の部長と不倫していると噂されてそうな人のイメージ。才蔵くんは自分の得意なことをさせると超一流だけど、社会人としては疑問符が付く若いおバカキャラ。どちらもリストラされて、もう自分の好き勝手に生きます、という人物です。
―― 忍びたちよ、それでいいのか(笑)。いや、だからこそはじけるようなコメディになっているんですね。
友野 ええ、何をしでかすかわからないぶん、爆発力があるはずです。
―― では、本編の内容についてもさらに聞いてみたいと思います。そのリストラされた忍者が幕府から里に帰るよう命じられたわけですが、孤兵衛さんは冒頭からそれに逆らっていましたね。
友野 ある事情が孤兵衛をそうさせているのですが、まあ彼の意固地ですね。幕府が俺をクビにしたんやし、何したってええやろと。
―― 大人に逆らう中学生ですかっ!
友野 オヤジの心のなかのどこかには中学生が住んどるんやで。覚えときや(笑)。
―― そして自由を得て威勢よく表の世界に飛び出した孤兵衛さん。しかし現実は厳しかった。
友野 髪なし、職なし、家なしの三拍子。これは辛い。
―― その状況で出会ったのが今作のヒロイン弓乃ですね。
友野 ヒロインその1やけども、実際の孤兵衛さんにとってのヒロインは弓乃のお母さんである千明さん。年齢のつり合いからしてみてもそうですし、かなりの美人ですから。
―― 孤兵衛さんが、弓乃が関わっているトラブルに首を突っ込んでいくうちに、自身とも因縁がある「死能衆」という悪忍が一枚噛んでいることを知るという。
友野 死能衆は悪忍というより、孤兵衛たち忍者にとってのネガな存在ですね。忍者の善悪は立場によって入れ替わりしてしまうものなので。まあ悪い奴らであることは間違いないでしょう。
―― ほかにネタバレにならない範囲で話していただけることはありますか?!
友野 そうですね、弓乃千明に関して頑張って書きました。彼女ら二人に人としての魅力があるからこそ、忍者三人は力になろうという決意をします。読んでいただく際にそんなふうに感じていただければ成功だなと思います。
―― 千槍組と孤兵衛、どちらの作品にも気持ちの良い、サッパリとした人物が登場しますね。
友野 そこは時代劇ということで意識しています。敵がひねくれているので、そのぶん主役たちは自分をきっちり貫いてもらっています。時代劇は読んでてとにかくスカッとしてほしい。
―― たしかに、子どものころに見たヒーローのような存在ですね
友野 そうした純粋なワクワク感を思い出していただけるような存在であり、それこそ孤兵衛さんと同じように新しいことに挑戦してみない? っていう同年代へ向けての呼びかけみたいなものとしてもあってくれればと思います。

◆千槍組と孤兵衛、両作品のイメージ造りの裏話
―― さんとお蜜さんを見ていると、由美かおるさんがチラッと頭をよぎったのですが。
友野 ふっはっはっはっは(笑)。なるほどねえ。でも実はどっちかっていうと千槍組に関しては脳内のヴィジュアルはアニメーションかなぁ。
―― そうだったんですか!?
友野 声のイメージも声優さんが演じているような感じで。まあ具体的なお名前は控えさせていただきます(笑)。逆に孤兵衛実写キャストをイメージしましたね。ちなみにお蜜はそのまま壇蜜さんです(笑)。
―― いかにも世の男性を骨抜きにしそうな配役!
友野 そして千明さんは、栗山千明さん。これは絶対に譲れないっ!
―― あの端正な顔立ち黒髪に目を奪われたという男性も多いはずです!
友野 そして孤兵衛には自分を投影してみたり。イメージとしては竹中直人さんに近いのかも。ただ僕は孤兵衛と違って髪の毛フサフサなので、みなさん勘違いしないように!
―― もちろんでございます(笑)。竹中直人さんのクールさとコミカルさを兼ね備えたところがたしかに孤兵衛さんらしさを感じます。

◆今後の新刊について
―― 今後の予定についても簡単にお聞きしたいのですが、まずは2月に『クレイとフィンと願いの手紙』(MF文庫)が発売されますね。
友野 ええ。昨年9月に出た作品の2巻目です。今回も前作と同じく、前後編の連作短編集でして、届かない手紙や失われた手紙を届ける郵便屋二人のお話です。お話自体は独立したものですので、2巻目から読んでいただいても支障なく楽しんでいただけるはずです。
*前巻については著者インタビュー 2013年09月号「クレイとフィンと夢見た手紙」をごらんください。
―― そして、3月、4月に今回ご紹介した2作品。さらに……
友野 それ以降については新しい企画が進んでおります、とだけお伝えしておきましょう。続報をお待ちください。これから続々と作品が出ますので、皆様ぜひ応援よろしくお願いします!


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