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緊急レポート!
神戸芸術工科大学 公開講座
執筆:笠井道子

 今年9月からSNEのボス安田均が、神戸芸術工科大学メディア表現学科非常勤講師として週一度、講義を担当することになりました(ちなみに同大はグループSNE所属の北沢慶やアークライトの編集者刈谷圭司さんの母校でもあります)。
 ボスの講義がはじまる前は、古いマックのコンピュータを倉庫から発掘したり、手に入りにくい書籍や廃刊になった雑誌をそろえたりと、ええ、そりゃもう大騒ぎでした。今度は総勢60名を超える受講生を相手にゴーストハンターRPGを遊ぶのだとボスは大張り切りです。
 このようにグループSNEとは因縁の深い神戸芸工大で、去る11月10日(金)公開講座「メディア・コンテンツ産業に就職するために」が開催されました。
 講師はボスのほかに、角川歴彦氏(株式会社角川書店代表取締役/株式会社角川ホールディングス代表取締役兼C.E.O、神戸芸工大メディア表現学科客員教授)大塚英志氏(同大メディア表現学科教授)の3名。大塚英志氏は『多重人格探偵サイコ』『MADARA』シリーズの原作者であり、著名な批評家・編集者・民俗学者でもあります。
 じつはこの3名は数十年来の旧知の仲。サブカルチャーの担い手である大塚氏とボスはいいとして、かくも長々しく立派な肩書きをもつ角川歴彦氏がなぜ? という謎から講座は幕を開きました。司会は大塚氏が務め、隠されたエピソードが過去から現在へと紡がれていきます。
 いまから20年前の12月、当時、同社の専務だった角川氏がとつぜん、我らがボスを神戸に訪れました。角川氏は巷で噂のゲームブックなるものをやらないか、とボスにもちかけたそうです。けれど、すでに多くの出版社から雨後の竹の子のようにその手の本が刊行されていたこともあり、ボスは「もう遅いですよ」と門前払いを食わせかけた、というお話。若気のいたり、いま考えると、ホント、冷や汗ものですね。
 しかし、角川氏は一時は将棋のプロを目指したほどゲームに造詣が深く、アメリカのゲームショーでいちはやくTPRGに目をつけたといいます。もちろん、当時日本では、まだほとんど注目されていない新たな分野でした。
 新しもの好きのボスもSF翻訳家・評論家として活躍するいっぽうで、ゲーム全般にアンテナを張っていたはず。二人がたちまち意気投合したのは想像にかたくありません。
 そんな印象的な出会いから、名作『ドラゴンランス』の翻訳がはじまり、『ロードス島戦記』オリジナルTPRG『ソード・ワールドへとつながり、現在に至ります。
 また、司会を務める大塚氏も当時から批評家と活躍しておられました。角川書店の雑誌に掲載されていた漫画を「つまらない」と酷評したことが逆に角川氏の目にとまり、「そんなに文句があるなら自分でやってみなさい」と挑戦状をつきつけられたことから、大ヒットシリーズ『MADARA』が生まれたのだとか。
 大塚氏は以前から、TRPGを小説技法を習得する優れた手段の一つと注目されていたそうです。ボスが同大の講師として招かれことで、ようやくその考えが認められることになるかもしれません。もちろん、だれにでもあてはまる方法論とは言えませんが、TPRGというシステムにキャラクター造形やプロット作成の基本が内包されているのは間違いないでしょう。
 さらに大塚氏によれば、現在では一分野として市民権を得たライトノベルも、じつは角川氏とボスとの出会いに一端を発していると言います。東京一極集中のなか、神戸から情報を発信しつづけるグループSNEは貴重な存在だ、と。もちろん、神戸にある大学の学生を叱咤するための発言ではありますが、われわれにとっても励みになる言葉でした。
 印象深かった角川氏のお話をもう一つ。角川氏が今年10月アメリカのGoogleを訪れたその日GoolgeによるYouTubeの買収が発表されたそうです。また「YouTubeは映像のコミケ。コミケから優れたクリエーターが多く輩出されたように、YouTubeからも新たな才能が生まれるかもしれない。一方的に抑えつけるばかりでなく、そこに新たな可能性を見いだす道もあるのではないか」といった広い視野からの発言が飛びだしました。
 じっさい、角川書店では意欲あるクリエーターを支援する体制が整えられているそうです。
 いくつもの肩書きをもち、日本最大手出版社の責任者でありながら、つねに第一線に立ち、精力的に世界を飛びまわる経営者の姿がそこに見えるかのようでした。

「みんなが新しいというものはもう古い」

「ぼくたちは成功すると思ってやってきたんじゃない。ただ自分が面白いと思うものをやってきただけ」

「いまあるものは、ぼくたちの世代が作ってきたもの。これから社会に出ていく若者にはまたべつの可能性がある。それを探すのがきみたちの仕事」

「突拍子もないなにかを考えるのではなく、いまの気持ちに素直に進めば、きっと道はつながっていく」


 三人の口からつぎつぎと心に残る言葉があふれてきました。
 講座終了後、聴講に来ておられた株式会社アスキーの社長佐藤辰男氏と、「ほんとに興味深い講座でしたね」と挨拶もそこそこに言葉を交わしました。
 二十歳前後の学生さんにはまだ100%ピンとは来なかったかもしれませんが、1、2年後、いざ就職戦線の現場に出たとき、これらの言葉がいかに重く意味のあるものだったか、きっと心に響くにちがいありません。
 グループSNEの若手にもぜひ聞いてもらいたい、内容の濃い講座でした。



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