●20日朝 相棒と共に |
3月20日、午前6時。旅立ちの刻。
田中は貫徹のまま新調したカバンに着替えやルールブックを詰め込み、JR三ノ宮駅へと向かっていました。
普段車で移動がデフォとなっている身にとって、大荷物を抱えての移動はなかなかに大仕事。しかし今回の旅程は空路で「神戸空港⇒新千歳空港」という、海を跨いだ大移動。直線距離だと1000kmを超える大移動。その距離の前に「車」などという地べたを這いずり回る交通手段は通用しない……!
そういうわけで、三ノ宮から神戸市自慢の移動手段「ポートライナー」を使って空港まで移動しようとしていたところ、駅には見覚えのある後姿が。
「おはよっすー」
おぉ、力造さん。空港で合流する予定だったから、力造さんは車かと思ってましたよ。
「神戸空港の駐車料金がタダの時なら、車もよかったっすね」
田中と力造さんはSNEでは珍しい車使い。互いにそのメリットとデメリットは熟知しています。隣の県程度のイベントやコンベンションなら、車で行っちゃう事もしばしば。
「ま、今回はジャンボっすからね。堪能しましょう」
そうして空港に移動し、搭乗手続き。
実は田中は神戸空港を訪れるのは初めてだったのですが……搭乗受付のカウンターがなんともコンパクト。新幹線の駅より小さいんじゃなかろうか?
就航4周年の新しい空港だから、日本人っぽく小型化に成功したのかね?
力造さんに手配していただいたチケットを受け取り、機内へ。
番号が指し示す座席に向かうと、なんとそこはビジネスクラス。
り、りり力造さん、これ、お高いんでしょう?(←動揺)
「コンベンションの主催者様からチケットを送っていただいたんすよ」
チケットを見直すと燦然と輝く「株主優待券」の文字。
もしかして、スゴイお方にお会いしに行くんじゃないだろうか……? と、本来とは別の緊張をしたりしていました。
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●20日昼 日中から全開 |
新千歳空港に降り立ち、荷物を受け取って辺りを見回します。すると出口中央に「デモンパラサイト」のルールブックを掲げていただいている方が。
「どうも、はじめましてー」
ご挨拶をさせていただいたのは、今回力造さんと田中を招待してくださった「さくらコンベンション」の主催者、齊藤さん。田中がビビッて想像していたのとはまるで違う、物腰の穏やかな紳士の方でした。
そこから電車で一路札幌市内へ。田中は札幌市内に来るのは初めてで、イロイロ目に付くものが。
外寒っ!
道路広っ!
人多っ!
20日の札幌の最大気温は3℃。対して朝の神戸は12℃。朝出て昼に着いたはずなのに、なぜ気温が下がっているのか……。あと根雪とか見えるし。
道路が広い理由は「雪が積もるの前提の広さ」だからだそうです。普通の側道でも片道2車線なのは、そういうことね。
人はかなり多かった印象です。正直もっと少ないと思っていたのですが、土曜昼間の混み具合は、神戸や大阪と変わらないほど。札幌と言う街を実感しました。
コンベンションは明日21日の予定なので、前日の今日は観光などに案内していただけるというお話。昼飯まで少し時間があったので、
「どこか、見たい場所とかありますか?」
とお声をいただきました。しかし札幌そのものに疎い田中は、何が見たいか分からず。石原裕次郎館は、たしか小樽だしなぁ。
お、そうだ! 確か「時計台」ってのがあるんじゃなかったでしたっけ?
「あ、あぁ〜。アレですか……」
おや? 微妙な反応。そういえば時計台は「日本3大がっかり名所」とかなんとか紹介されていたことがあったような。
「み、見れば分かりますよ」
そうしてタクシーで連れてこられたのは、何だか普通のベージュ壁の建物。確かに尖塔には時計があるけど、学校なんかによくある時計と、あんまり大きさ変わらないような?
「だから『がっかり』とか言われるんですけどねー」
「でも、年に1度、壁は掃除すると真っ白になるんですよ」
田中たちの時計台トークにタクシーの運転手さんも加わり、しばし車内から鑑賞。
信号待ちでちょっと目にした程度でしたが、なんとなく得した気分になりました。
そして昼飯。なんと齊藤さんが寿司の予約を取ってくださっている、ということでごちそうになりに、店まで向かいます。昼から寿司なんて贅沢、したことなーい!
力造さんと期待を膨らませながら待つことしばし。職人さんが丹精込めたにぎりの数々がテーブルに並びます。
ぱくり。
ンマーイ!
ネタが舌の上で解ける! 踊る!
特にラス前に出てきたウニがやばかった。常温では溶けてなくなるウニだそうで、ソレほどまでに鮮度の高いウニをいただくのは初めて。これはちょっと忘れられませんね。
まさに「オレのテンションは有頂天!」(※用法間違い)って感じ。このような贅沢品を腹いっぱい平らげられる場所、札幌。幸せいっぱいになりながら、職人さんにお礼を言って店を出ました。
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●20日午後 田中は深い眠りに誘われた! |
腹ごなしにお土産屋やプラモ屋を観光がてらにぶらぶらと。プラモ屋は結構有名なところらしく、たまにすごい値段のモデルガンやラジコンヘリ、果てはキセルなんかがあったり。
いくつかは手が出そうになりましたが(笑)。しかし、着いた矢先から荷物を増やすのもなぁ……と思っていたところ、力造さんがなにやら探しているご様子。
「せっかく札幌来たのなら『ニポポ人形』買って帰ろうかと思ってるんすよ」
おぉ『ニポポ人形』! アイヌの郷土玩具として知られる、木彫りの人形ですな。知る人ぞ知る、オホーツクに消えそうなゲームにも登場していたことで有名ですよね。
「そうそう、あのゲームやってから、どうしても欲しくって。自分用に」
なるほどー。でも、今までの店では見かけませんでしたね。民芸品屋とかに行かないとないのかな?
「まぁ、帰るまでに見つけられたらいいっすよ」
その後小休止のために喫茶店に入り、コーヒーを注文。フレンチローストが主体で、内装はレンガ造りという雰囲気のよいお店。流れる控えめなジャズもとてもマッチ。
もしお金とか運とかあれば、こういうお店でコーヒー入れるナイスミドルなおっさんを……目指し……たかっ……zzz。
「田中さん!? 意識が飛んでますよ!?」
声をかけられ、かわいいウエイトレスの募集をかけていた夢の中から引き戻されます。うわ、マジ寝しちゃいましたよ。注文してからコーヒー来るまでも待てない睡魔。
明日のシナリオの詰めを家出る直前までやってたのがまずかったのか……。結局、この場で一度ホテルに戻り、小休止の後で改めて晩御飯に連れて行っていただくことに。なんとも申し訳のないお話です。
タクシーに揺られ、ホテルに戻る頃には雪が降り出していました。気温がさらに下がり、こりゃあ夜は冷え込みそうだなぁ……と思いながら部屋へ。寝冷えするのは避けたいので、壁に付いている暖房のツマミを「LOW」にセットします。
ごおおおおおぉぉぉぉ!
やおら部屋に響き渡る気合の入った音。ドアの上部に備えつけられた暖房が作動したのですが、それは軽く畳を3枚重ねしたくらいの大きさで、もはや暖房ってよりは「必殺! 熱風吐き出し機」のようなシロモノ。
そして途端に南国と化す室内。北海道には「コタツ」がほとんど存在しないと聞いたことがあるのですが、その理由をなんとなく察してしまいました。
そういや、北海道来てから「寒い」なんて思ったのは屋外だけだったな……どこの室内もこういう暖房があるってことか。
そうして暖気から再び眠気に誘われ、パンツ一丁でしばしの眠りについたのでした。
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●20日夜 前夜祭 |
2時間ほど充電させてもらった後、晩御飯へ。よし! もう眠くない。ビール何本でもいけまっせー!
連れて行ってもらったのはかの有名な「札幌キリンビール園」。カニとジンギスカンをこれでもかと食い尽くすために遠方から人々が集う場所。現地で明日の「さくらコンベンション」に参加するスタッフの皆様と合流し、力造さんと田中を入れた総勢8名でいざジンギスカンへ!
園内は入り口から想像もできないほどの広さ。え? これ、コンサート会場とかの間違いデスカ?
そして卓にはすでにラム肉やらカニやらが用意されている状態です。もう上着を脱ぐのももどかしい!
「北海道の人間はもう食い飽きてるんですけどねー」
うそ!? こんな旨いもの食い飽きることなんてあるの?
「ほぼ毎日ですからねー」
なんと。恐るべし道民。
そんなうらやましい会話をしながら、手際よく鍋の端に野菜を並べ、空いてる真ん中でラム肉を焼いていくスタッフの皆様。レアに焼けた肉は野菜の上に避け、肉を次々焼いていく。
あれだ。大阪の人間がみんな串1本でたこ焼きひっくり返せるのと同じ感覚。
そんなことを話す間ももどかしく、肉や野菜をビールと共に貪り食う神戸人のふたり。
ンマイ! 旨すぎる。
そしてカニ。焼いて食うと甘みが出て旨いが、そのまま刺身で食える、という驚きの鮮度&味。目の前にあったこともあって、田中だけで足10本は片付けてしまいました。食い物に関しては自重しない!
隣で力造さんが「コレは神戸にはない」と絶賛していたのはじゃがバター。じゃがの甘味とバターの濃厚な香りがベストマッチング。じゃがバターをおかずにご飯が食べられること間違いなし。力造さんは5枚ほどたいらげていましたよ。
2時間ほど肉、カニ、イモを食い続け、時間は午後8時前。すると、スタッフの方が力造さんに声をかけています。
「ニポポ人形、あるところ見つかりましたよ。行きます?」
「ま、マジスカ! 行きます行きます!」
なんと午後の散策のときに話題に出していたのを覚えていただいてて、ここに来るまでの間に調べておいてくださったと言うのです。なんという仕事の速さ。
閉店になる前に、とキリンビール園を出て車で案内してもらい、木彫り人形の並ぶお土産屋さんへ。実物は高さ50cmほどで、一品ものなのだとか。手に入れた力造さんはホクホク顔で人形を抱き上げていました。
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●21日朝 いざ、コンベンション |
朝の9時に齊藤さんとホテル下で待ち合わせ。
ところが朝モタモタしていた田中は、用意されていたホテルの朝食を頂き損ねる痛恨のミスをしてしまいます。
なんてことだ! 貴重な北海道の食事を1回抜いてしまうとは……。
「何も食べずではつらいでしょう。コンビニに寄りますよ」
申し訳ありません……昨日といい今日といい、迷惑をかけどおしです。
せっかくなので北海道ならではのコンビニに行きましょう、と着いたのは「セイコーマート」。コンビニとしては最初期の頃からある、道民の皆様にとっては馴染みあるコンビニなのだとか。
店内に案内されてまずビビるのは、その大きさ。
なにこれ、神戸のコンビニの2倍くらい広いんですけど……。
そして次にビビるのはパンの大きさ。
なにこれ、神戸のコンビニの2倍くらいデカいんですけど……。
2個買ったけど1個で腹いっぱいになったよ!
そうしてお行儀悪く車内で朝食を済ませ、いよいよコンベンション会場に到着。西区民センターの3階に用意された会場も、コンビニと同じくでかいでかい。バスケットコート1面ぶんくらいの広さがある上、天井には証明と音響、緞帳なんかが並んでいました。普段は演劇とかに使用してる場所のようですね。
コンベンションのGM参加者は力造さんや田中、それに飛び入りの方も入れて11名。この広さなら11卓でも問題なく並ぶぞ、と思っていたのですが、そこに残念なお知らせが。
なんと、21日は朝から近年まれに見る強風のため、飛行機の運航が全滅、電車や高速道路も一時運休、通行止めとなっている事態だそうです。そのため、参加者の中でも来られなくなってしまった人がいるのだとか。天候は仕方ないとはいえ、少し残念です。
GMの皆さんが用意されていたタイトルは「セイクリッド・ドラグーン」「ダブルクロス3rd」「ハンターズ・ムーン」といった最新タイトルから「D&D3.5版」「D&D4版」に加え「深淵」といったややディープなタイトル、さらには「アルシャードガイア」「サタスペ」などもあり、ラインナップは非常にバラエティに富んでいましたよ。
後で聞いた話ですが、北海道のコンベンションでは「D&D」は3.5版も4版もほぼ必ず行われるほどの人気ぶりだそうです。また、コンベンションの開催時間も朝11時から晩6時30分までと、かなりのロングスケジュール。しかもひと月に2〜3回の頻度で集まるというのですから、北海道のTRPGユーザーは、じっくりしっかりと遊びこむスタイルが主流なのかもしれませんね。
そして力造さんと田中が持ってきたのは「デモンパラサイト」。それぞれ自作のシナリオを用意して参加者のみなさんと遊ばせていただきました。田中のシナリオはサプリメント「ディアボロス・スクールガイド」の舞台である、須佐山学園に美人転校生がやってくる、というものでした。参加者の皆様は悪魔憑きの力を存分に発揮して、転校生が抱える謎に挑んでくれました。ひとつのシナリオをじっくりとやるスタイルは久し振りだったのですが、なんとか息切れせずにやり通せました。PCも動物2匹にボディビル部の女子など、皆熱演してくれました!
力造さんの卓も「デモンパラサイト」でしたが、こちらは基本ルールブックのみを使った、初心者対応のシンプルなシナリオをプレイされたそうです。
そちらのPCたちも、医療関係者(放射線技師)や古武道道場の師範代を勤める高校生、ちょっと子悪魔な猫など、実にデモンパラサイトらしい味のあるキャラクターたちが大活躍だったとか。力造さんもセッション終了後は「プレイヤーたちのおかげで楽しかった!」と大満足だったそうです。
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●21日夜、豪雪? |
セッションが終わった後、こちら側の希望で残った時間を軽いトークにいただきました。メインは「デモンパラサイト」の近況について。昨年末に発売されたサプリメント「ディアボロス・エボリューション」の開発秘話や片山泰宏のリプレイ「異形たちの煉獄」の宣伝などです。さらに「ソード・ワールド2.0」は、連休前に発売された北沢慶の長編「剣をつぐもの
4」、サプリメント「フェアリーガーデン」、それに拙作リプレイ「マージナル・ライダー
3」の3冊を宣伝させていただきました。
会場を出た後は再びスタッフの皆様と打ち上げへ。今度は石狩鍋ですよ! 鮭ウメー!!
そして今晩もお目見えするカニ。昨日はタラバガニだったが、今日は毛ガニだ! ほじってもほじっても身が出てくるこの幸せ! さらに甲羅に日本酒を垂らしてカニミソと同時にいただく甲羅酒ですよ! タマンネー!
それらの飯をつつき、ビールを飲みながら今日のセッショントークに花を咲かせました。それによると、北海道の方々のシナリオ内容は、ダンジョンアタック型が多いとか。ダンジョンの規模も大きいものが多いようで、JGCなんかのセッション時間が4時間以下であることを伝えると驚いてらっしゃいました。地方によってもTRPGの遊び方って違うんですねー。
打ち上げが終わった後に外に出ると横殴りの雪。
今日午前の強風で流されてきた雲が降らせているようで、5分も外に立っていれば頭やコートが真っ白になるほどの雪。
さみぃー! 外にいると死んでしまう!
しかしスタッフの皆様は落ち着いたもの。いわく「やっと北海道らしくなりましたねぇ」だとか。昨晩はチラホラといった雪だったが、どうやらあれは珍しい方だそうで。
つまり、毎晩こんな雪に降られておるというのか。北海道、恐怖のプレイス。
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●22日朝 帰郷 |
コンベンション終わって月曜日。今日の午前の飛行機で神戸へと戻ります。新千歳空港でSNEのメンバー宛てのお土産を買いあさる力造さんと田中。
イベントは終わったと言うのに、その日も齊藤さんに空港まで見送っていただき、お土産まで頂いてしまいました。
思い返せばこの3日間、ただはしゃいでいただけの田中たちに始めから最後までご一緒していただき、本当にありがとうございました。齊藤さんには感謝の言葉もありません。
その齊藤さんなのですが、今回のコンベンションを最後に、札幌を離れられるということでした。その壮行会というか、追い出し会みたいな側面もあったということで、今回力造さんと田中が呼ばれることになったそうです。
そんな記念の場所にお招き頂き、齊藤さんや皆さんと楽しいときを過ごせたのは、本当に嬉しいことだと思います。ありがとうございました。この先も、TRPGが好きであり続ければ、きっとどこかでご一緒する機会があるかと思います。そのときはまた、一緒に遊んでくださいね!
最後に齊藤さんと堅い握手を交わし、飛行機に乗り込んだのでした。
後日談になりますが、頂いたお土産の中にあった「ビールドロップス」「いかめしドロップス」「スープカレードロップス」「クリオネドロップス」「うに丼ドロップス」などのお土産は、かなり個性的なものでした。ありがとうございます。頑張っておいしくいただきます。
……若手が(ぼそり)。
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●最後に |
北海道という遠い地でのコンベンションだったのですが、大変楽しませていただきました。飯のことばかり書いてあるかもしれませんが(笑)、それだけではなく、北海道のTRPGユーザーの、寒さに負けない熱い心に触れさせていただきました。
少しでも「呼んでよかったね」と思っていただけたのなら、コレに勝る喜びはありません。もしよろしければ、もう一度と言わず何度でも一緒に遊びましょう! というか、自腹でも行きたいぜ北海道! 今度プライベートでもプレイヤーとして遊びに行こうかしら……?
本当に、ありがとうございました! |