文:笠竜海
「どうして自分はここにいるのだろう?」きみは考えた。だが、記憶をたどろうとすると頭が痛んだ。そこでまずは、周りを見てみることにした。 格子つきの窓から差し込む光で、少しずつ周辺の様子が見えてきた。きみが横たわっているのは、汚れた小部屋の石の床だ。地下牢だろうか? すばやく窓に目を戻す。確かに、窓は硬い鉄の棒で塞がれている。不安な気持ちで再び周囲を見渡した。床にぼんやりとした影がいくつか見えた。扉の下には黄色い光がちらついている―― |
『アドベンチャーゲーム』シリーズは『EXIT 脱出:ザ・ゲーム』シリーズで知られるKOSMOS社が2019年にリリースした協力型ボードゲームです。
本作の舞台は地下牢(ダンジョン)。主人公たちは暗い牢獄で目を覚まし、この場所に関する記憶をすっかり失っていることに気づきます。
プレイヤーは自らの分身となるキャラクターを動かし、ダンジョンの謎に挑みます。4人のキャラクターは得意分野を生かして危険に対処し、しだいに記憶を取り戻してゆきます。謎の答えのすべては、ダンジョンに眠っているのです。
本作は3章構成で、展開によって異なるエンディングにたどりつきます。繰り返し遊ぶことも可能で、高評価を求めてのやりこみプレイも楽しめます。
このゲームの根幹を成すのが、エントリー番号を使った参照システムです。ストーリーブックには文章を細切れにしたエントリー(パラグラフ)がいくつも書かれていて、それぞれに対応する3~6桁の番号を正しく読むことでストーリーが展開します。
とりわけ特徴的なのは、アイテムとアイテム、アイテムと特定の場所を組み合わせるシステムです。
例:あなたはアイテムとして、アドベンチャーカード10(ネコ缶)と15(缶切り)を見つけました。場所601にあるベッドの下からは、可愛らしい鳴き声が聞こえています。 あなたはネコ缶を開けることを思いつき、カード10とカード15を組み合わせました。エントリー1015を探します。 エントリー1015は存在し、「すばらしい、きみは缶を開けるのに成功した。アドベンチャーカード10と15を箱に戻し、アドベンチャーカード12を受け取ること」と書かれています。 カード12は「開いたネコ缶」でした。では、ネコはどこにいるのでしょう。ひょっとしたらベッドの下? 次の手番を迎えた仲間が、カード12と場所601を組み合わせ、エントリー12601を探します……。 |
本作には様々なアイテムが登場し、いくつもの障害を乗り越える鍵となります。試行錯誤して正しい道を見つけたときの快感は、デジタルな「アドベンチャーゲーム」と一緒です。もし行き詰っても、ヒントを使えば簡単に進めます。
『アドベンチャー・ゲーム』シリーズは全世界で高評価を受け、続々と新作が発表されています。現在6作予定で、第4作が発表されました。弊社も本作を皮切りに、順次翻訳・出版していく予定です。 日本語版第2弾として、巨大企業に挑むサスペンスアクション『モノクロームINC.』が2020年10月発売予定です。
さらに第3作『火山の島(仮題)』(原題は『Adventure Games - Die Vulkaninsel』)の翻訳も計画中です。また、第4作は廃ホテルをテーマにした次回作も発表されています。
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