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安田均の「ゲーム日記」 第3回 (1997年6月30日版) |
この前、第2回を書いてから、あっというまに3か月が過ぎ去った。
わお、月1回更新といいながら、季刊のペースになってしまったゾ、早く書かなくっちゃと思っていたら、さらに、それからもひと月が過ぎようとしている。
もともと“原稿が遅い”と、SFの翻訳をしていた頃にはよく編集さんにぼやかれていたが、ゲームの仕事が中心になってからは、そうでもなくなっていたのだ(嘘だと思うなら、元SFマガジンの編集者で、いまはコンプティークの副編集長のK君に確かめてごらん)。
今回、このアップがどうして遅れたかというと、そう、なんと言っても、『六門世界2 魔神封印の壷』(ファンタジア文庫近刊)にかかりきりだったことがある。
前回(2月末)、最後に“鋭意執筆中”と書いたけれど、実は“そうなればなあ”との願望をこめてのこと。なかなか進まないまま3月に入ると、いろんなことで急に忙しくなり、執筆がいったん中断。4月半ば、もう本格的にかからないと間に合わないぞ、という段になって、ようやく頭の50枚(全体の8分の1くらいかな)から再ダッシュすることができた。
それからは順調そのもの。5月の25日には、ひと月くらいで一気に400枚ほどを書き上げられたので、この分だと7月にはなんとか出版されそうだ。
おかげでゴールデンウィークなんて、どこへも行けず、ゲームもできず、篭りきりだったのだけれど、不思議なもので執筆が進んでいると、そんなことまったく気にかからない。
いつもこんなにスピードが出るのなら、どうしてもっと早くからかかれないのだろうと自問するのだけれど、これだけはよくわかりません。ぼくの場合、最初はうだうだと進まないが、なにか書ける臨界点みたいなものを突破すると、途端に筆が走り出すみたい。
でも、こうしたやり方だと、反動もきついんだね。終わったぞう、さあ、ゲーム日記の第3回を書かなくてはと思っていて、はっと気がつくと、それからまたひと月が経っていた(6月末現在)。その間、ほとんど落ち着いて他の仕事はしていません。もちろん、会社には出て、いろんなメンバーと打ち合せたり、ゲームやセッションはしているけれど、自分の仕事となるとね。
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モンスターコレクションカード
イラスト:末弥純 |
あっ、そうそう、『モンスターコレクションTCG』(富士見書房)の最終ゲラチェックというのがあった。これの最後のテストプレイをリキを入れてしたっけ。おかげさまで、なんとか8月末のJGCには間に合いそうだ。でも、あのカード362枚のイラストは凄いぞう。こんなそうそうたるイラストレーターのみなさんの力作が集まるとは、ほんとに感謝感激。
かくして、またまた、次の長編『ゴーストハンター3 アルケリンガの魔海』(スニーカー文庫)やスチャラカRPG小説の翻訳『ドラゴンはダメよ!』(『ある日、どこかのダンジョンで』の続編)の締切が迫ってくる。
これはおちおちしていられないということで、さあ、ゲーム日記の第3回をいってみよう! |
今回はゲーム界をとりまくニュースから。
まず、最大のびっくり大ニュースは、ご存じかもしれないが、アメリカでRPGの最大手D&DのTSR社が、これまた“マジック・ザ・ギャザリング”でTCG(トレカ)をリードする最大手ウィザード・オブ・ザ・コースト(WOC)社に買収されたこと。
これをもって、RPGからTCGへの流れが決定的になったと考える人もいるだろうが、ぼくに言わせると、まあ半分は当たって、半分は外れってとこかな。
じつはWOC社というのは、もともとRPGを出すために、社長のアドカイソン(『プライマル・オーダー』という神々をデザインする、凝ったRPGのデザイナーでもある)がシアトルに作った会社で、その意味ではRPGへのこだわりは強い。
今回もTSR社が資金難に陥って、このままではまずいということで、あえて他社(おそらくゲーム関係でない会社)よりもWOC社にということでまとまったものらしい。
その資金難の原因だが、いろいろ憶測されていて、はっきりしない。ぼくなんかから見ると、あまりにもRPGのラインがAD&Dに偏っているなあと思っていたのだが、一説によるとRPGよりも、たくさん出していた小説関係でつまずいたという説もある。
とにかく、TSR社はランダムハウスという大手出版社の流通ルートに乗ることで大発展したのだが、そこが取り引きをストップしたことで作品が出なくなり、今回の危機説がささやかれていた。いまだ、今年初頭から予告された新製品は(たぶん製作はされているものの)市場に出ておらず、WOC社がどのような方針を取るのか注目されている。おそらく、今年夏(8月)のジェンコン(来年からはシアトルで行なわれるんだろうなあ)で、AD&Dを含めた今後の方針が打ち出されるのではと見る向きも多いようだ。
もちろん、ファンとしては、これを機に“マジック”のドミニア世界をAD&Dで遊べるようにするのではないか、とか、逆に、“マジック”にAD&Dのキャラクターやいろんな世界のバージョンが登場するのではないか、とか期待しがちなんだけれど、当面そうした可能性は薄いようだ。
いずれにしても、これからはWOC社がTSR社の財産を使ってRPGに力を入れていくだろうことは予想され、それがどんなものになるのか注目したい。
一方で、他のRPG各社は、こうしたTCGブーム(アメリカでははっきりしている)をうまく利用しつつ、堅実にRPGを展開している。
バトルテックやシャドウランのFASA社は、これらのTCGでも成功しつつあり、それと同時に、この二つのRPGに加え、アースドーンをきっちりとサポートしている。
もっと巧妙に動いているのはケイオシアム社で、ミソス(クトゥルフTCG)の成功などで相変わらず才気を見せながら、そろそろルーンクエストをアバロンヒル社から買い戻して新たな展開をしようかと考えているらしい。
スティーブ・ジャクソン社なども、ガープスを順調に出しつつ、イルミナティのTCGなどきっちり抑えるところは抑えながら、新作RPG『アン・ノミネ』を発表した。
もともとアメリカのRPGはウォーゲームやTCGとファンを共有するところから、そのどれもを遊ぶファンが多く、流行によって、ひとつが消えて次のものに完全になるという極端な日本のような動きはしない。もちろん、現在はTCGがこうしたデータ型ゲームのチャンピオンになりつつあるのははっきりしているが、それをいろんなゲームのなかのひとつの形という点でもはっきり認識している。これはゲーム界とファンがある意味で大人も含み、ホビーとして成熟しているということでもあるのだろう。ぼくは日本もこうなっていってほしいと願っているのだけれど……。
そして、ぼくなどにはむしろもっと興味のある、向こうでのニュースをもうひとつ。
鉄道ゲームや新たなドイツ・ボードゲームを紹介して、好調だった(はずの)メイフェア・ゲームの倒産という出来事だ。これは前回にも書いたが、倒産というよりは経営者の都合で会社を売りに出していたのだが、予想どおり、すぐに買い手が見つかった。
それが『指輪物語RPG』などで有名なアイアン・クラウン社(ICE)だ。
ICE社としても、指輪物語RPG以降の展開には悩んでいたのだろうから、この辺りは渡りに船だったのではないかと思われる。
で、鉄道ゲームはもちろん、『カタンの開拓』をはじめとするこれまでのクラウス・トイバーの諸作は、これからICE社がアメリカでどんどん出していくらしい。それと、トイバーに限らず、ランドルフやクラマー、アラン・ムーンらドイツの名だたるデザイナーのボードゲームもそれに続くというから、期待大だ。
これに刺激されたのか、本家ドイツでもゲーム中心メーカーのひとつ、F・X・シュミット社が、いよいよアメリカに現地法人を作って、今年の秋から、いま盛りのドイツボード/カードゲームを出していくというのはビッグニュースだろう。
その第1弾が、なんとぼくも大好きな『ブラフ』と『テイク・イット・イージー』。あともいろいろおもしろそうなタイトルが並んでいる。おお、このラインナップは……と、よく見ると、それらを指揮しているのが、アラン・ムーンというボードゲームでもかなりの目利き(兼ゲームデザイナー、かれの『エアラインズ』は、アクワイア・ファンには絶対のお薦め)であるとわかって納得。
そして、一方のドイツでは、こちらは大手のラベンズバーガー社がさっきのF・X・シュミット社を買収したり(ラベンズの一部門になるらしい)、大手のシュミット・シュピール社が倒産する反面、“マジック”ドイツ版で成功したアミーゴ社やゴルトジーバー社、あるいは『カタンの開拓』で成功したフランク=コスモス社が急速に台頭するなど、動きが急だ。
アメリカVSドイツという、第2次大戦でぶつかりあった両国が、今度はTCG対テーブルゲームというRPGの後の次世代ゲームで“平和な戦い”を今年の秋から繰り広げそうというのが、いまぼくのもっとも注目している流れではある。
考えてみりゃ、WOC社長のアドカイソンがRPGのファンなら、“マジック”を作ったガーフィールドはTCGの発明者ながら、じつはそれ以上に(と、ぼくは信じている)ボードゲームやカードゲーム(特にトランプのハーツ)が大好きなのだ。
だから、これからのゲームには、これまでのウォーゲーム→ゲームブック→RPG→TCGみたいな線的な流れではなくって、それらに、さらにボード/カードゲームなどまでを含んだ、より面的な側面の把握 いろんなゲームを楽しめる、余裕のあるゲームマインド――が必要なんじゃないかと思うのだけれど、どうなんだろう。 |
ということで、海外のニュースの方はこれくらいにして、ここ1ヵ月のゲーム生活で思いついたものから。
まず、ウォーハンマーRPGのキャンペーンを再開した。
これは、以前の友野詳のリプレイ(『破壊の剣』『プラーグの妖術師』現代教養文庫)を読んだことのある人なら、覚えているかもしれない。
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あのとんでもない剣を持ったまま、とあるボーダープリンスの街の崩壊から逃げ出した健気な羊飼いの少女ロビンちゃんと、それをめぐるパンク・ドワーフ、あやしげな怪人ムッシュー、どぶドワーフじゃないが汚いところが大好きなプープ、エルフに育てられた戦闘機械ザナルディら、例によって落ちこぼれのとんでもない一行が、北の外れの街キスレフくんだりまでいって、混沌による世界の破滅を救う、いや、破滅しかけたのを先に延ばした大冒険 その後日譚である。
今回はGM友野が“敵は血みどろコーンではなく、病気持ちのナーグルだあ!”と叫んでいることから、ぐちゃぐちゃぬるぬるの納豆(うぉっ、関西人にはたまらん)みたいな化け物が続々登場する予定。
まあ第1回はプレイして自分でもおもしろかったので、これが続くようなら、このホームページに混沌のデータとともにリプレイが登場するかもしれないので、期待していてください。
ウォーハンマーに続いては、恒例のSNEマジック・ザ“ギャザ皇”杯第2回トーナメント。
レポートにもあるので、詳しくは書かないが、なんと前回最下位だった神坂一さんが、復讐の念に燃えて作ったデッキが大暴れ。あれよあれよという間に、なみいる強豪を破りまくって、ついに優勝! SNE全員が唖然としたのであった。
こちらは、最近“アライアンス以降、ミラージュとビジョンのようなパワーゲームに向かうエクスパンションは許さん!”と宣言していたので、5thのみで組んだというデッキで参戦(これなら、負けても言い訳がたつ、いやいや)。比較的ストレートなこの5thで負けないためには 青白デッキを組んで粘りまくった。
これが意外に効を奏して、16人中7位。
でもねえ、ホントは2位だったんだよ。前回優勝の北沢慶と対戦した時、あいつはライフポイントが1点になって、こっちが勝ったなと思ったら、突然“あっ、社長、時間が切れてます。これ、引き分けですね”なんて言い出すんだから……。
その後は、これも恒例の第7回SNEボーリング大会。
初回優勝の遥か彼方の経歴をもつぼくだが、さすがに年齢には勝てず、これは9位。でも全34人中なら、まあいい方かな。ちなみに名誉のためスコアは書きません。
2度優勝の経験を誇る高山浩が欠場し、専用グローブを持つ水野良も3位とベテラン勢が低調ななか、新鋭の西奥隆が優勝。でも、2位の加藤ヒロノリいわく。“やったあ、これで次の幹事は逃れたぞう”(セコイんだよ、おまえは!)。
これでぐたぐたになったものの、まだまだゲーム三昧の一日は続く。宴会の後、カラオケ派とマージャン派に別れると、こちらはマージャン派。
だが、悲しいかな、さすがに体力知力の限界に達したのか、もうメロメロ。ゲームショップ・ギルドの店長渡辺君(まだ26歳)の体力マージャンに屈したのであった(もうちょっとで、役満振り込みかけたぜい)。
実は、その翌日も、今度は恒例のSさん家でのボードゲーム・パーティに行ったのだが、恥かしいので、前日ゲームで遊びまくったことは内緒にしていた(ボーリングとマージャンでちょっと腕が痛かった)。
すると、Sさんの長男で大学生のマコトン曰く。「安田さん、きのうマージャンしてられたそうですね。今日、ギルドに行ったら渡辺さんが、嬉しそうに“安田さんに勝った、勝った!”と言ってましたよ」
あっちゃー、バレバレなの? 世の中って狭いねえ。 |
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