更新が3月中旬をちょっと過ぎてしまいましたが、I Gotta iPad! 第五回のはじまりです。
前回(I Gotta iPad! 第四回)でご紹介したとおり、アドベンチャー/アイテム探し系アプリはいずれもセンスがよく、ゴシック小説のような重厚な味わいのあるもの、ファンタジックな世界を再現したものが多くそろっています。女性に人気があるのもうなずけますね。
ただ――いや、センスの良さに難癖つけるわけじゃないんですけど――たまには、ちょっと「間の抜けた」アドベンチャーもやってみたくないですか。
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【Mushroom Age HD】
価格:\600
言語: 英語, フランス語, ドイツ語ほか
販売業者 : G5 Entertainment
PC用ダウンロード版:未確認 |
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参考URL:http://itunes.apple.com/jp/app/mushroom-age-hd/id372592824?mt=8 |
【お話】
なんでも数日後に結婚式を控えたフィアンセ、トムが行方不明になっちゃったんだって。
そりゃ大変だ。
ってことで、主人公のベラはトムの勤務先に行くの。
そこで出会ったのがトムの上司のこの人。
本人は「アインバッハ」と名乗ってはおりますが、まー、どう見てもアインシュタインですね。
結婚式を控えているのに、ここ2,3日、フィアンセと連絡が取れないと心配するベラに
「それがどうした、わしゃ30年も妻に会うとらん」
とかむちゃを言います。
そりゃ、あなたの奥さんが30年前に亡くなってるからでしょ?
このマッドな、というよりイディオットなサイエンティストの奥さんはこんな人 ↓
どうでもよすぎるこの手のこだわり、けっこう好きです。
捜索の手がかりはトムの残していった携帯電話。じつはタイムマシンになっているのです。
ベラはそれを使って過去から未来へと旅しつづけるというわけ。
恐竜に遭遇したり、ノストラダムスに出会ったり、未来の人類キノコ人と対峙したりと大変忙しい。
肝心のアイテム探しは……
右上にアイテムのシルエットが表示されます。画面上の探すべき箇所がきらきら光ったり、ヒントが使えたりと、かなりの親切設計。
上は3008年(だったかな)の画面と、そこで遭遇するロボット……ボロすぎません?
いまから1000年近くかけてこれですか?
頑張ってもうちょっと進歩しようよ、ホモ・サピエンス。
ま、進化した結果、上図のとおり「キノコ人間」になってしまうわけですが(それって進化か……?)。
同じ舞台(時代)を何度も行ったり来たりさせられて、正直、飽いてもきます。エンディングはめでたくトムとベラの結婚式で終わるんですが、もうそこはもうどうでもいいかな?って気分になるくらい、ボリューム満点です。
ちょっとしたミニゲームも入っていて、お得感は充分。
全編を通して漂う「垢抜けなさ」と「ベタなユーモア」が許せる方にはお薦めです。英語もそれほど難しくはありません(画面をタップするまでは場面が切り替わらないので、ゆっくり読めるのもうれしいですね)。
同じ G5 entertainment から出ている次の作品もよいゲームです(前回ご紹介した『Treasure Seekers』もG5 Entrertainment です)。
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【The Mystery of the Crystal Portal HD 】
価格:\450
言語: 英語, フランス語, ドイツ語ほか
販売:G5 Entertainment AB
PC用ダウンロード版:あり(『ミステリー・オブ・クリスタルポータル』) |
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参考URL:http://itunes.apple.com/jp/app/mystery-crystal-portal-hd/id363742993?mt=8 |
新聞記者ニコールが父を捜すために世界中を冒険し、不思議なポータルを発見する――というようなお話。
第二弾も登場しています。
『The Mystery of the Crystal Portal 2: Beyond the Horizon』
(ダウンロード版: 『ミステリー・オブ・クリスタルポータル:地平線のかなたに 』)
画面処理の洗練度や遊びやすさは文句のつけどころがありません。
しかも、なんと、ニコールのお父さんが向かった先は――
CHINAではありませんよ、「JAPAN」です。
お寺の名前が「咲桜寺」って。「勤勉は成功のもと」って。
どっちもいかにもありそうだ……
この妙な正確さというか律儀さに、なんだか背中がむずがゆくなります。
昔、アジアの異国の博物館に書かれていた「ごフリーにご覧ください」とか「どうぞおゆっくり」って案内を思いだしました。
アイテム探し系のアプリは、それこそ星の数ほど出ていますが、なんていえばいいんだろ?
ほんのミクロの差異、目に見えない微細な誤差で、なぜか「楽しさ」と「退屈さ」が明確に線引きされてしまいます。言葉をかえると、「センスの良さ」と「ダサさ」。
前回の「Treasure Seekers」シリーズ、この「Crystal Portal」シリーズともに、まちがいなく「楽しさ」側に針がふれきった名作です。
さて、いよいよ真打ち登場、というと大げさですが、筆者の超お勧め「Midnight Mysteries」シリーズ。現在、ipadでは3作、登場しています。
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【Midnight Mysteries: Salem Witch Trials 】
価格:\450
言語: 英語
販売 : MUMBOJUMBO
PC用ダウンロード版:あり
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参考サイト:
http://itunes.apple.com/jp/app/midnight-mysteries-salem-witch/id382373208?mt=8
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【Midnight Mysteries: Devil on the Mississippi】
価格:\450
言語: 英語
販売 : MUMBOJUMBO
PC用ダウンロード版:あり(『ミッドナイト・ミステリーズ:ミシシッピ川に棲む悪魔』) |
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参考サイト:
http://itunes.apple.com/jp/app/midnight-mysteries-devil-on/id445619676?mt=8
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【Midnight Mysteries: Haunted Houdini 】
価格:\600
言語: 英語
販売 : MUMBOJUMBO
PC用ダウンロード版:あり |
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参考サイト:
http://itunes.apple.com/jp/app/midnight-mysteries-haunted/id497856924?mt=8
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3作に共通しているのは、作家である「あなた」の元に不遇の死をとげた歴史上の人物の亡霊が現れ、事件を解決してほしい、と依頼してくるというもの。
『ミシシッピ川に棲む悪魔』のダウンロード版だけが日本語化されているのは、おそらくマーク・トウェインとシェイクスピアという日本人にも馴染み深い題材を扱っているからではないでしょうか。
ipad版第一作にあたる「Salem Witch Trials」の依頼人は『緋文字』のナサニエル・ホーソン(ホーソーン)が登場。題材は1692年、アメリカで現実に起こった有名な「セイラムの魔女裁判」。この裁判ではナサニエル・ホーソンの祖先、ジョン・ホーソンが判事をつとめたそうです。
主人公(あなた)がセイラム村を訪れて、ホーソンの死の謎、ひいては魔女裁判の真相を突きつめるというお話。
自分で書いてて思う、なんてマニアックな……。
しかも英語だしなあ。
正直、わたしも話についていけない部分が多々ありました。延々英語読むより、パズル解いたりアイテム探したりしたいですからね。
それでも。
わからないなりに、先に進める工夫がちゃんとなされています。
写真左は主人公(あなた)が書き留めたメモ。
これまでの経緯がすべて記されており、これを見ればいまなにをするべきかがわかります(アンダーラインのひかれた英文1行を読めばOK)。
また、イラストを多用して、ヒントになる箇所には○印がつけられています(最近、こうしたタイプが増えてきましたが、このメーカーはわりと早い時期から「遊びやすさ」を追求していたように思います)。
写真右はアイテム探しの場面。
英単語がわからなくても、右下のランプにシルエットが出ます。意外とこのシルエットで探し物は見つかります。
それでも詰まってしまったら、ランプの上のカラスが飛んでいって場所を教えてくれます。カラスは使うと一匹ずつ減っていきますが、またすぐに見つかるので、ほとんど困ることはありません。
相当に凝った重苦しい作り。
好みの分かれるところだと思いますが、ボリュームも充分すぎるほどありますし、アドベンチャーゲームとしての演出、操作感は秀逸。
この手の題材が好きな人は夢中になる、というか虜になること請け合いです。
だって、セイラムの魔女裁判ですもん!!
そうでない方もPCサイトに無料体験版がありますので、ぜひオープニングムービーだけでもご覧になってください。
Hounted Houdini オープニングの1シーン |
作り手側の「本気度」がひしひしと伝わってきて、お腹の底から震えますよ。
「これは遊ばな!」と思います(あれ、わたしだけ?)。
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仕事――です。 |
さてさて。
仕事中にipadを遊べていい身分だなあ、と思われそうですし、またわたし自身もそう思わないでもないのですが。
いちおう、仕事なんですよ、これ。
当初から感じていたことですが、アイテム探し、パズルは紙媒体と大変相性がいい。
これをグループSNE得意のストーリー展開と結びつけない手はないですよね。
というわけで、すでにご存じの方も多いかもしれませんが、集英社みらい文庫からパズル・クイズブックが登場しています。
『モンスタニア 1』
- 河端ジュン一(グループSNE)作
- あいやーぼーる 絵
- ISBN:978-4-08-321019-8
- 定価:630円(税込)
『モンスタニア 2 魔法いっぱいの夜』
- 河端ジュン一(グループSNE)作
- あいやーぼーる 絵
- ISBN:978-4-08-321068-6
- 定価:630円(税込)
上記2冊は小中学生の男の子向けの楽しい冒険物語。クイズや迷路がいっぱい入っています。
さらに、2012年4月15日(日)に角川つばさ文庫から
が出ます。
こちらは小学校中学年以上の女の子向け小説。
アイテム探しやまちがい探し、言葉遊びなどをふんだんに活用した豪華な一冊になりました。
豪華イラストは中村哲也さんほか、雪風ななつさんやグループSNEとも縁の深い合鴨ひろゆきさんが描いてくださっています。
書店で見かけたら、ぜひお手にとってご覧になってくださいね。
既刊、および既刊予定の作品は以上3冊ですが、現在、ほかにも複数の企画が進行しています。
どうぞ、お楽しみに。
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本日のオマケ |
書くほうがお腹いっぱいなら、もちろん読むほうの方々はさらにお腹いっぱいだと思います。
が、ボス(安田均)が「これこれ、今度のオマケにお薦め」とニコニコ恵比寿顔で教えてくれた、超絶ユーモアゲーム。
これを紹介しないわけにはいきません。
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【Tongue Tied!】
価格: \170
サイズ : 21.0 MB
言語: 英語
販売 : Mojo Bones Ltd 参考URL:
http://itunes.apple.com/jp/app/id482699417?mt=8
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「tongue-tied(舌が結ばれた)」―― 意味は「口ごもった、舌がもつれた(形容詞)」です。日本人にもなんと感覚的に理解しやすい英単語でしょうか。
しかしもちろん、ipad(iphone)アプリですから、そんな単純なお話ではありません。
というか、もっと単純というべき?
登場するのは愛敬たっぷりの犬たち。
彼らの舌が文字通り結ばれているのですね。
画面に指で触れて、どちらかの犬をぐいーんとひっぱると、結ばれた舌がぐいーんと伸び、指を放すと、犬がびゅーんとはねるのです(つまり、舌がゴムになっているんですね)。
で、なにが目的かというと。
びゅんびゅん飛びながら、骨の入った箱や袋に体当たりして、得点を獲得。
この上もなく単純です。
単純だけれど、そう簡単にいくわけもなく。
あわれ、犬たちは崖から墜落とか、しょっちゅう起こります。
これ、犬だからいいんだよねって気がします。笑ってられる。
ま、ダチョウでもコモドドラゴンでも笑えるかもしれないけれど。
ちなみに、「本日のオマケ」で取りあげるゲームはいずれも、何時間も延々遊ぶタイプのゲームではありません。
ちょっと時間のあいたときにさっと遊べるお手軽ゲーム。
だからこそ、こうした曰く言いがたいユーモアが不可欠。
Tongue Tied!というタイトルからして、とっても人をくった本作は、まさにその代表格といえますね。
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というわけで、第五回はこれにて終了。
第六回は伝統ゲームのアプリをご紹介しようかな、と思っております。
4月中旬に更新の予定です。お楽しみに。
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