諸星: |
とりあえずですね、こんなこと言うのもアレなんですが、「聞き手が『ガープス』のことを勉強中」という前代未聞の状態でして(汗)。 |
友野: |
いや、まあ、うちのインタビューでは、「聞き手が勉強中」ってパターンは意外とありがち。 |
諸星: |
そうなんですか? |
友野: |
うん。新人が入ってきて、SNEの作品を知るために「かわら版」のインタビューを書く、というのは基本だな。その場合、作成中のタイトルや、あんまりそれまで触れられていないタイトルについて聞くというのは、けっこうある。 |
諸星: |
そうなんですか。それではせっかくですので、ここで「『ガープス』とは何ぞや?」というお題でお話しいただきたいと思います。 |
黒田: |
……そう哲学的に問われると、「何だろうな」と、ふと我に返って考えてしまうわけですが(笑)。 |
諸星: |
いや、そんなすごい話ではなくて。あくまでSNEの「かわら版」、ゲーム紹介ですので。 |
友野: |
だね。で、諸星くんはだね。 |
諸星: |
はい? |
友野: |
『ガープス』というのはどのようなゲームであると、勉強してきたのだね? |
諸星: |
ぎゃー! |
友野: |
うん? |
諸星: |
いや、えーと、ゴホンゴホン。イメージというかですね、形としてはいわゆる、ゲームの「ハードウェア」に当たるのではないかな、と思うのですが。 |
友野: |
ほお、なるほど。 |
諸星: |
たとえばドラ○エであり、マ○オであり、というふうにソフトがいろいろありますよね。でもそれが、ファミコンというひとつのハードで遊ぶことができます。そのファミコンの立場にあるものが『ガープス』ではないかな、と。 |
黒田: |
非常に正しいのだが、近年の若人にしてはハードのたとえが古いぞ。 |
諸星: |
あはは。いや、誰でも分かるように、と。 |
友野: |
でも、もうそろそろ小学生は『フ○ミ通』の「フ○ミ」がどういう意味なのか分からなくなるんじゃないのか? |
諸星: |
うえぇー!? |
黒田: |
ああ、そんな気はしますね。って、話がそれましたけど。 |
諸星: |
そうでした。では改めて、『ガープス』とは? |
黒田: |
まったくもって、さっききみが言った通りかな。 |
友野: |
もう一歩踏み込むと、ハードというよりはOSかな。『ガープス』もソフトウェアではあるからね。まあでも、非常に的確なたとえではあった。 |
諸星: |
ありがとうございます(ほっ)。それで、『ガープス』の「売り」と言いますか、「どんなゲームを考えても対応できる汎用システム」が『ガープス』である、と聞いているのですが。何でもOKなんですか? |
黒田: |
うん、わりと。 |
友野: |
わりと。 |
諸星: |
はぁ、わりと(笑)。 |
友野: |
従来の第3版は、ファンタジーからホラーからSFから、スーパーヒーローからギャング&ポリスアクションまでできる、と、こういうコンセプトで作られている。ということで、日本語のほうでも、猫がPC(プレイヤーキャラクター)とか(『ガープス・パワーアップ/ミステリアス・キャッツ』)、イルカがPCとか、そんなところまで広がったね。ホームページにも載ってるでしょ? |
諸星: |
ウサギのリプレイ(GURPS 『バニーズ&バロウズ』)とイルカのリプレイ(GURPS 『ドルフィン』)が載ってますね(グループSNEホームページ 「ユーザーコンテンツ」内の「TRPGリプレイ」でご覧いただけます。抱腹絶倒! 必見です!)。 |
黒田: |
細かなことを言うと、第3版では猫やウサギがキャラクターというのは、『ガープス』の汎用性の中でもイレギュラーな形だったのですよ。 |
諸星: |
ほお。 |
友野: |
プレイするには、多少のルール改変を必要としていたわけだね。 |
黒田: |
それが第4版になって、猫、ウサギ、イルカ、全然OKに。 |
友野: |
さらにルールが統一されて、もう本当に幅広く。「ウル○ラマン」から「とっとこハ○太郎」までが同一のルールで表現できる、と、こういう形になったのだ。まあ、彼らが同じ世界で冒険できるかどうかは、ゲームマスターに大きく左右されるわけだが。 |
黒田: |
記述であるとか、処理のしかたも統一されたので、特にそういうイロモノ好きにはやりやすくなったかな、と。 |
友野: |
従来よりさらに、ね。もちろん、正統派のゲームとしても非常にきっちりしたシステムになっている。「こういう世界でゲームを遊びたいなー」という思いを叶えてくれる汎用システム。それが『ガープス』第四版。 |
諸星: |
さらに汎用性に磨きがかかったわけですね。 |
黒田: |
その汎用であることの利点というものを、最近ひとつ気づいたんですよ。たとえば、ユーザーさんに提供されるキャンペーン(TRPGの、連続した大型シナリオのこと)がありますよね。それらは吊るし売りの服のようなもので、だいたいどんな人にも合うけれど……。 |
諸星: |
手直しが必要になります。 |
黒田: |
そう。そのまま着ても問題はないのですが、どうしても手直ししたい人っているじゃないですか。そういう人が修正するのにも、汎用性の高さというのは役に立つな、と思いますね。 |
諸星: |
どう手直ししてもついていける、ということですね。はあー、とことん便利ですね、『ガープス』。 |
友野: |
うん。便利。 |
諸星: |
そんなお話しの最中にこれを聞くのもどうかと思いますが、困った点とかあるんでしょうか? |
黒田: |
えーと、量が多い。 |
諸星: |
(笑) |
友野: |
そうだな。『ガープス』で唯一戸惑う点は、量の多さ。 |
諸星: |
なるほど。 |
友野: |
プレイヤーに関しては、世界ごとに選択されたデータだけを覚えればいいよね。自分のキャラクターに使うデータだけを知っていれば済むわけだ。が。 |
諸星: |
はい。 |
友野: |
ゲームマスターに関しては、自分で世界に合わせてルールを選択しなければならないのだな。たとえばファンタジーで遊びたい人に、宇宙船のルールとかビーム兵器のルールはいらないのだが、『ベーシック』(『ガープス』の基本的なルールをまとめたもの)のルールブックにはそれらが全部載っている。「コミカルなギャグタッチで使ってね」っていう部分もあれば、「どシリアスな状況で使ったほうがいいですよ」っていうルールも一緒に載っているわけ。そこから取捨選択することがちょっと大変。 |
黒田: |
『ガープス』の必須ルールって、本当は最初の何ページ目かに書いてある一枚か二枚ぐらいで書き尽くせちゃうんですよ。 |
諸星: |
え? |
黒田: |
「判定はサイコロを三個振って、目標値以下を出す」。「人と会ったらサイコロを振って、大きいほうがいい」。「ダメージはでかいほうがいい」。それと、「キャラクターはCP(キャラクターポイント)で作ります」。以上。 |
友野: |
そのCPでキャラクターを作るためのデータと、各状況で、細かいことを細かく考えるためのルールがざあーっと、五百数十ページに渡って並んでいるわけね。そこで、「この量を相手にするのは大変ですので、こういうふうに取捨選択したものを、サンプルとして提供します。とりあえず一度、これで遊んでみてください」という狙いで作られたのが『ルナル』という世界。 |
諸星: |
『ルナル=サーガ』(角川スニーカー文庫より好評発売中!)ですね。 |
友野: |
そう。そして、その発展形として、『ガープス』にある様々なデータから、ファンタジー世界で遊ぶのに必要な部分を抽出し、新たな世界設定をつけ加えた『ガープス・ユエル』。完全にそれ一冊で遊べるように作られたこれが今回、『ベーシック』に先行して出るのだよ。 |
諸星: |
はい。 |
友野: |
まるで計算されたような流れでトークが進むね(笑)。 |
諸星: |
ええ、もう(笑)。 |
友野: |
というわけで。『ガープス』の豊富なデータ量を、より簡単に使いこなすためのサンプルとして、『ガープス・ユエル』がまず出ます! |
諸星: |
おめでとうございます。 |
友野: |
いえいえ、ありがとうございます。 |