諸星: |
それでは、途中にもお話が出ておりました『ガープス』第4版について伺いたいと思います。率直に、何が一番変わったのでしょうか? |
友野: |
細かいところはいろいろと変わったが。 |
黒田: |
非常に観念的な話になりますが、美しくなりました。 |
諸星: |
洗練された、という感じですか。 |
友野: |
従来の『ガープス』ももちろん、シンプルなシステムにいろいろなデータをつけ加えることで成立しているんだけど、時間が経ち、どんどんつけ加えられているうちに……。 |
黒田: |
「ひずみ」のようなものが出てきたんです。 |
友野: |
世界ごとにつぎはぎ感があったり、ところどころにうっかりした「裏ワザ」ができてしまって、「何となく理屈に合わないが、ゲーム的には有利」みたいなことが生まれてしまったのだよ。体力がやたらに低くて、敏捷力だけが高い相撲取りが出現してしまう、というような部分が。 |
黒田: |
第4版ではそれが修正されました。たとえば、ある特定の世界を与えられたら、そこで自分がやりたいキャラクター。あるいはまったく自由な環境を与えられたら、ゲームマスターとして自分がやりたいキャンペーン。これらを作るのがわりと簡単に、思った通りにできます。 |
友野: |
今までは「こういうキャラクターをやりたい」と思ったときに、そのイメージ通りに能力を獲得していくと、ゲーム的には「あれ? ちょっと不利じゃない?」とか「無駄が多いんじゃない?」っていうキャラクターができてしまった。本当に好きなようにキャラクターを作るためには、ルールをある程度読み込まないと難しい、というところが残っていたのだね。が、第4版は全体が非常にすっきりされたので、思ったように能力を選んでいっても、ルール的にそれほど不利ではなく、普通に遊べるキャラクターが作れるようになったのだ。 |
諸星: |
好み優先で作ったキャラクターでも、充分ゲームを進行できる、と。 |
友野: |
そう。見るからに「これ不利になっちゃったなあ」っていうようなことはありえなくなったね。それを実現するために、第4版では細かいキャラクター作成の部分で修正とか、技能の中身とか、不利な特徴の中身とか、様々な面で修正が加えられているけれど、実際遊んでみると、プレイ感覚はまったく変わってない(笑)。 |
黒田: |
変わらないですよね。 |
諸星: |
何か真新しいものが加わったりとか。 |
友野: |
新たな要素、データはもちろんいろいろあるよ。背景世界のサンプルも加わったし。 |
黒田: |
ですが何より、従来からあるものが整理されて、洗練された究極の形になったと言うか。おもしろい舞台を作って、おもしろい冒険をすることに、より重点が置かれたシステムになりました。 |
諸星: |
ふむふむ。 |
友野: |
具体的にどこが変わった、とか言うようなことはまた、いろんな記事などで紹介していくので、ぜひご覧ください。 |
黒田: |
感覚としては……『ガープス』の第3版というのは非常に強力なツールだったのですが、それが「超」強力なツールになって、ライブラリも充実。 |
諸星: |
それは、ほぼ完成形に近づいたと思っていいんでしょうか? |
黒田: |
うーん。でもきっと、5版出るよ(笑)。10年経ったら。 |
友野: |
10年経ったらね。RPGの進歩は、「これ究極!」と思いつつ、止まらないものなので。ロールプレイの部分であるとか、シナリオの組み立て方であるとか、RPGのシステムにはいろんな方向性での進化があるのだけれど、『ガープス』の方向性はその汎用性の部分。「いろんな世界を作っていく」という時に、どういうデータを使えばいいのかが、『ガープス』では非常にクリアに見える。「このデータを参照すると、こういうバランスが取れるんだな」っていうのが、少し考えればすぐに飲み込める形になっているところが、『ガープス』はやはり優れていると思うね。 |
黒田: |
だいたい見ていると、ルールで想定外のこと、不測の事態が発生したとしても、「これは『ガープス』的にはこうだよな」っていうのが、すぐにわかるようになるのです。 |
友野: |
データを整理する過程で、第4版ではちょっとだけ数字の計算が増えちゃったけど。それもほとんどキャラクター作成のところだけ。 |
黒田: |
キャラクター作成のときに計算してしまえば、ゲーム中に使うことはまずないです。 |
友野: |
というわけで大丈夫。それに、多少の手間をかけるのも、キャラクターへ愛情を込めていくプロセスだ!(笑) そこが楽しいのだからね。 |
諸星: |
キャラクター作成といえば、僕の仲間内でも作ったことがあるのですが、選択肢がいろいろありすぎてみんな困ってましたね。いろいろあって楽しくもあるんですけど、目移りしてしまうところもありまして。 |
黒田: |
実は今回、それをちょっと楽にする工夫もあるんです。第4版はそこら辺もちゃんと考えてあるんですよ。「キャラクターテンプレート」というのがあってですね。作成するキャラクターの外枠のようなものが用意されています。「吸血鬼って言ったらだいたいこんな感じだ」セットとか。 |
諸星: |
ああ、妖怪基本セット(ガープス『妖魔夜行』および『百鬼夜翔』参照。『ガープス百鬼夜翔』は富士見書房、小説『妖魔夜行』『百鬼夜翔』は角川スニーカー文庫より好評発売中!)みたいな。 |
友野: |
そんな感じだけど、もっと範囲を狭くして、そのぶん個々のキャラクターを表現できるようになっているよ。最終的には各世界ごとに応じてゲームマスターが作らなければならないけれど、向こう(海の向こう:アメリカのこと)で出る作品ではフォローされているし、こちら(海のこちら:日本のこと)で出る『ガープス・ユエル』でももちろんそうしている。ほぼ作成済みの「アーキタイプキャラクター」や、「テンプレート」とはまた別の形の、簡単な作成システムなどを用意して、よりスピーディーに遊んでいただけるようになった。最初からキャラクターを作るとどうしても時間がかかるけど、一覧から項目を選ぶだけならすぐだからね。 |
諸星: |
なるほど。……発売に関しては聞いてもいいんでしょうか? |
友野: |
いや、そら聞かんとあかんがな(笑)。まず『ガープス・ユエル』は7月29日。 |
黒田: |
『キャラクター』が8月末。『キャンペーン』は10月になります。 |
友野: |
原書のほうが大量すぎて、『キャラクター』と『キャンペーン』という二冊に分かれているので、翻訳版もそれを踏襲して、二冊の形で出るよ。 |
黒田: |
分け方もまったく同じです。 |
諸星: |
原書通りで。 |
友野: |
そう。『キャラクター』はキャラクターについて。作成法ほか、それに関するさまざまについて書いてある。『キャンペーン』は各種の判定のことや、サンプルのワールド、シナリオの作り方やキャンペーンの組み立て方についても書いてある、非常に勉強になる一冊だ。 |
諸星: |
うわー、いいなあ。読もう。 |
黒田: |
読みたまへ。ぜひぜひ。 |
友野: |
『ガープス』を遊ばないマスターさんも、RPG全般の参考書として、『キャンペーン』編だけはお買い上げいただきたい。 |
諸星: |
それは確かに。そういうの、ほしかったですからね。 |
黒田: |
後ろのほうには「RPGってのはこうなんだよ!!」っていう、スティーブ=ジャクソン先生の魂の叫びが(笑)。 |
友野: |
ここは読んどけ、とは思うね。 |
諸星: |
お披露目はやはり、JGC(Japan
Game Convention:日本最大のアナログゲームイベント。グループSNEも参加します!)ですね。 |
友野: |
『キャラクター』編をJGCに間に合わせるべく、奮闘中だ。スティーブ=ジャクソン先生がいらっしゃるのに、「翻訳間に合いませんでした〜」っていう恥ずかしいことだけはっ。 |
黒田: |
がんばります。 |
諸星: |
はい。では、わざわざありがとうございました。 |
友野: |
待てぃ。締めとして、今後の展望ぐらい聞きなさい。 |
諸星: |
うわあ、すみませんっ(汗)。 |
黒田: |
サポートですね。『マジック』は出るらしいぞ! ……「らしいぞ」って他人事かよ。 |
友野: |
他人事じゃねーだろ。というか、出さないと困るよね。 |
黒田: |
どこかで言ったような気がするけど、やっぱり「ソード&ソーサリー」(sword
& sorcery:「剣と魔法」のこと)はRPGの華なのですよ。 |
諸星: |
そうですね。 |
黒田: |
で、魔法はたくさんあった方が幸せに決まってる。というわけで、『マジック』が最初に来るのは必然。 |
友野: |
『ユエル』のサポートも含めて、『マジック』は出したいな。『ガープス・ユエル』にも魔法は載っているけど、いっぱいあればいっぱい使えるようになるので。それから、アメリカの方でファンタジー全般の組み立て方というか、ファンタジー世界全体に関するガイドみたいな『ファンタジー』っていうのが出ているのだけれど、これも出したい。 |
黒田: |
日米の好みの差って言うか、プレイ事情の違いがあっていろいろ難しいのですが。 |
友野: |
やっぱり役に立つ記述がある。機会があれば、その辺りも何らかの形で紹介していきたいね。それからもちろん、『ガープス・ユエル』の方のサポートもやっていこうと思っている。今回、こういうスタンドアローンの形を取るにあたって、PCを「双子の月を崇める人間キャラクター」にしぼったので。 |
黒田: |
それでもいろんな人が住んでいるわけですよ。そして、そういう人々を再現するのに、第4版は非常にやりやすくなったわけですよ。 |
友野: |
わけですので、ぜひ! 『ユエル』の『異種族サプリメント』は出したい! というか、『ユエル』という作品はこれを出してようやく完成するんじゃないのか、と、個人的には思っているので、がんばりたいね。みなさんに買っていただかないと出ないんだけど(笑)。ぜひとも出したい! |
諸星: |
はい。 |
友野: |
以降、いろいろとサポートの予定はあるけれど。『ユエル』はリプレイ第2段から、小説の企画も進行中。これらを用いて、ストーリー面でのサポートを。それから雑誌『Role
& Rall』での連載も続くので。ここでは『ユエル』以外にも『ガープス』のいろいろなサポートのページをいただけるようにお願いしている。なのでみなさん、雑誌を買って、アンケートで「『ガープス』のページを増やせ」と。 |
一同: |
(笑) |
友野: |
送っていただければ『ユエル』以外のさまざまな世界のサポートもできるかな、と。当然、『ガープス』は汎用システムだから、『ユエル』一本だけで終わらせるつもりは毛頭ないよ。いろいろと計画を立てている。 |
黒田: |
第3版のときも『百鬼夜翔』と『ルナル』の二本立てだったわけですから。二本立てぐらいはやりたいですよねー。 |
友野: |
ねー。 |
黒田: |
みたいな。 |
友野: |
みたいな。そういえば秋に何だか新しいシェアード・ワールドとか始まるしねー。みたいな。 |
諸星: |
みたいな(笑)。 |
友野: |
最低でもね。それぐらいはやっていきたいと思っているよ。 |
諸星: |
はい。 |
友野: |
でもまあ、最後はやっぱり『ガープス』は自作してナンボのゲームだと思うので。ぜひ自分たちの好きな世界を作って、OSとして活用していただきたい。 |
黒田: |
思ったとおりの世界が格段に作りやすくなったので。「好きに遊べ!」っていう感じです。 |
諸星: |
そのためにもお買い上げください。 |
友野・黒田: |
よろしくお願いします。 |
諸星: |
本日はお忙しい中、ありがとうございました。 |
友野・黒田: |
はい。ありがとうございました。 |