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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > 六門世界RPGセカンドエディション&モンコレノベル〈六門世界〉(2007年07月)
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六門世界RPG セカンドエディション

 モンコレノベル 〈六門世界〉

○ 改めて、ファーストからセカンドへ

篠谷: 時間を改めまして、今度は〈六門世界〉の監修者である社長に、セカンドについてお話をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
安田 はい、よろしく。
篠谷: 加藤さんにも同じ質問をさせていただいたんですが、ファーストからセカンドへ移行するに当たって、一番気をつけたこと、力を入れたことはなんでしょうか? 社長からは、「戦闘をシンプルにできないか?」という意見をいただいたと、加藤さんから伺いましたが。
安田 うん。加藤くんに「わかりやすくしろ」と言ったらね、「同じものではわかりやすくはならない」……とは言わなかったけど(笑)、「別のものにしたい」といって行為判定のサイコロの振り方を若干変えてしまいました。
篠谷: はい(笑)。
安田 でも、全部変えてしまうとそれは困るので、E〜Sまでの評価を残してもらいました。でもね、判定の仕方は変わったのだから、どうして0〜5段階に変えなかったんだろう、と思わなかった?
篠谷: そういえばそうですね。なぜですか?
安田 それはね、ファーストから遊んでくれていた人も大事にしたかったから。評価表を見るだけで、「ああ、判定が変わっても、同じ感覚で遊べるんだな。安心だな」というのが伝わるでしょう? なので、あえてE〜Sの評価は残っています。
篠谷: なるほど。判定方法が似ているとはいえ変わった上に、結果の参照の仕方も変わるとなると、慣れるのに大変ですもんね。
安田 でしょう? あまり変わってしまうと、頭が混乱してしまいますから。「ここまで変えたのに、何で評価表だけ残っているんだー!」と思われるファーストからのファンの方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう理由です。遊ぶときは、E〜Sの評価でも、成功度や評価ダイス(※ ダイス=サイコロ)の0〜5でも、好きな方を使ってもらってかまいません。馴染んでいる方を使ってもらえばいいと思います。
篠谷: 楽しく遊ぶのが一番ですもんね!
安田 大元のところは変わっていなくて、システム面はよりわかりやすくなったと思います。あ。ただ、トレジャーハンターが「薬を味方に投げつける」ということに違和感があったので、そこは変えてもらいました。セカンドでは「準備ステップ」という区切りで、きちんと飲めるようになっています。
篠谷: キャラクター全員が、スロットに入れている薬を飲むための時間ですね。
安田 ファーストで戦闘に入ると、回復系の薬はたいてい飲まずに全身に浴びていたからね。それは何か変でしょう?(笑)
篠谷: 確かに(笑)。あと、大きな変更といえば、キャラクターも召喚獣も、マルチに能力を伸ばせるようになりましたね。
安田 そうね。キャラクターはもちろんですが、召喚獣ももっと自分のより望むように育てたいという意見は、ファーストの頃からあったんですよ。それがやりやすくなるかな、と思います。
篠谷: 次のサプリは、『サザンの闘技場』ということですが。
安田 六門RPGは、戦闘ももちろん面白いけど、そういったフレーバーの部分も大切ですから。シナリオとかサプリで、六門世界の雰囲気をお伝えできればいいかな、と思います。
篠谷: ファーストのころと時間軸は変わっていませんから、どんどん広がっていく感じですよね。
安田 そうそう、小説とも繋がってくるしね。


○ モンコレノベル〈六門世界〉の世界観

篠谷: ちょうどお話もでましたので、今度は小説〈六門世界〉について、お話をお伺いしたいと思います。
安田 僕の執筆している、モンコレノベル〈六門世界〉の6巻目『魔道救世の主』は、最初は今年の7月の予定だったのがなんだかんだと延びていますが、9月下旬にお届けできると思います。
『モンコレノベル 〈六門世界〉シリーズ』
 著=安田均/グループSNE
 単行本=富士見書房・富士見ファンタジア文庫

 幼いころ、魔の精霊(カース・エレメンタル)に記憶の一部を奪われてしまった青年リコル。召喚術師となった彼は、無心教のモンクで姉代わりのファラータと、頭のいいフクロウのクロックと共に、六門世界を巡る旅に出ます。西部地方の街ウォーレスで出会った盗賊のガスパーニュとの意外な関係も見えてきて、物語はクライマックスの6巻へ……。
安田 これで六門世界全体のストーリーの大きな流れが、一部マリアを除いて(※ 『召喚士マリア シリーズ(監修:安田均/著:北沢慶 刊:富士見ファンタジア文庫)』のこと)ようやく見えてきました。
篠谷: あとはマリアの時代だけ、ということですね。
安田 マリアは、父親のイエルの時代から、兄貴のエルリクの時代に続いてだから、それほどぶれはないけどね。これで、六門世界の各時代の流れや地方の状態などが、ほぼお伝えできたと思います。ちょっとゲームの話に戻るけど、これら小説リプレイも遊ぶ参考にしていただければと思います。
篠谷: 『スカーレット・オーバード』も始まったところですからね。
安田 召喚娘スカーレットシリーズももちろんあるけど、その前からの北沢くんの中原北部地方を舞台にした『新六門世界RPGリプレイ』や、あなた(篠谷)の西部地方を舞台にした『六門世界RPGリプレイW』とか(※ どちらも、富士見ドラゴンブックより発売中)もね。六門世界RPGの時代を一番お伝えしているのはリプレイですから、ぜひ。
篠谷: そうですね。みなさん、よろしくお願いします(ぺこり)。……では、そろそろノベルについて突っ込んだお話を。
安田 はい、どうぞ。
篠谷: 六門世界の北部地方から始まったリコルの冒険も、西部中原南部東部と旅して、再び大元の中原へと戻って来ました。
安田 みなさんおわかりだったかと思うのですが、リコルの冒険は、最終的には四つの地方と聖と魔という領域をめぐる成長のストーリーにしたかったんです。それは最初から考えていました。
篠谷: すべての謎が中原へと向いていました。ちょっと1〜5巻に出てきたキャラクターのネタバレになってしまうので、読んでいらっしゃらない方には恐縮なのですが……、とうとうリコルのお母さんガスパーニュカース・エレメンタルのオティスとの謎が明らかにされていくようですね。
安田 オティスとか魔界や天界の関係もね、全体を見せないことにはわからないだろうと思って考えていたら、えんえん十年かかっちゃいましたが、これで全体の大きな構図は見えたと思います。
篠谷: 魔界と天界の関係、ですか。オティスが出張っているぶん、魔界はときどきリコルに姿を見せますね。
安田 魔界については、(モンスターにも)いろんなものがいます。もちろん、加藤くんや北沢くんの描く魔のイメージというものがあると思いますから、僕にとって聖と魔の対立というか構図は、こういう風に捉えていますというのを、この6巻を通じてお伝えできたと思います。
篠谷: 私見なのですが、オティスのいやらしい感じがとても「魔」っぽくて好きです。思わせぶりにチラチラ姿を見せて、リコルに何か投げかけるんですが、けっきょく肝心なところは教えてくれないという、綱引きみたいないやらしさが。
安田 ああいういやらしいヤツは、いっぱいいます(笑)。オティスはものすごい大物というわけではなかったんですが、いやらしさは何とか出したいなと思っていました。そういう部分が、「魔」の基本的なところにあるんじゃないかな、と。
篠谷: 魅力的なんですが、近づいたら怖いな、っていう。
安田 「悪ばっかり」みたいに単純すぎるのは、僕はあまり好きじゃないんです。「混沌と秩序」「悪と善」という考えが、例えばD&D(※ 『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のこと。最初に遊ばれたTRPGで、宗教や世界、魔法、モンスターなど魅力的な設定がいっぱい。キャラクターの性格傾向を、カオティック(混沌)やローフル(秩序)、中立(ニュートラル)などで表します)には構造的にあるでしょ。そういうのを含めたものが、「魔」というものなんだと思います。
篠谷: はい。彼らを見ていて、悪と魔は別モノなんだと強く思いました。
安田 例えば、一見もっともらしくても、二重人格のように人格的にひどいやつとか。そういうヤツこそ「魔」じゃないのかなって思ってますんで。悪ぶっているガスパーニュは、魔界……ん、いやいや言えないが(笑)。
篠谷: なんでしょう? 気になる発言でしたが……?(ドキドキ)
安田 どうなんだろうね?(笑)
篠谷: これ以上はヒミツなんですね(笑)。
安田 最終巻ですし、これ以上あまりストーリーをばらしてもなんですので、この辺で(笑)。


○ リコルとファラータの関係は?

篠谷: あまり、バラすわけにはいかないのはわかっていますが、もうひとつだけ。リコルとファラータの関係なんですが、どうなるんでしょう? リコルがどんどん頼もしくなっていくのを見て、彼女の心は揺れ動いているように見えるのですが。
安田 ああ、ファラータだね。
篠谷: はい。最初はお姉さんっぽい視点でリコルを見ていたファラータが、「リコルって頼りになるな」と思って、最近は嫉妬のような感情を抱き始めているのが、とても気になるんです。なのに、とてもいい雰囲気になっても必ず邪魔が入るので、「ああ〜、じれったい〜」と思ったりしてました。
安田 小説では、リコルとファラータガスパーニュとメイファーという、二組のお話を書かないとダメだったからね。違いは見せたいな、と思っていました。
篠谷: その二組だと、ガスパーニュの方がストイックという感じがしました。
安田 それは、やっぱりメイファーがお嬢様ですから。ファラータはお嬢様というわけではなく、庶民の育ちだから。
篠谷: なるほど、ガードがメイファーよりは甘いんですね。ガスパーニュは悪ぶっているくせに、ちゃんと紳士なところがありますよね。
安田 そうだね。性格的には、リコルはちょっとうじうじっと最初のころは悩んでいたはずなんで、そのところは違うかな。
篠谷: なのにリコルったら、「焦らしているのかい?」なんて言い出すから、「おやおや、リコルくんったらどうしたの?」って(笑)。変わってきたなって思いました。
安田 ああ、そうですか。感じていただけましたか。
篠谷: それはもう。「あらあら」って感じで、すごく好きです。で、二人はどうなるんだろうと。
安田 あの展開もね、間にフクロウでもいないとちょっとね。えんえん二人でやってしまいそうなんで(笑)。
篠谷: クロックは、すごくいいですよね。引っかき回し役じゃないんですけど、ええと……。
安田 やっぱりファンタジーって、動物っていうかペットっていうか、使い魔みたいなものは絶対いるでしょう。クロックは道化まではいかなかったですけど、そういった役割のものが。
篠谷: はい。「いる」っていうのは、すごくクロックで感じました。いてくれると、すごく安心できる存在なんです。
安田 うん。僕はそこが大事だと思ったんで、最初からクロックには、リコルとファラータの間に入ってもらいました。僕は、ドラゴンランス(※ 『ドラゴンランス シリーズ(著:マーガレット・ワイス/トレイシー・ヒックマンなど 刊:アスキー)』のこと。悩み多きハーフエルフのタニスや、気難しい魔術師のレイストリンなど、個性豊かなキャラクターたちが活躍する壮大なファンタジー小説で、TRPGの『アドヴァンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ』の設定を踏まえて描かれています)のタッスル・ホッフが好きなんで。ヤツの場合は、道化ですけれども。
篠谷: ええ、道化でした。だからタッスルは私も好きなんですが、苦手な部分があって……。
安田 ねえ(笑)。レイストリンと一緒で、「このキャラクターはいいんだろうけど、そばにいたらイヤだろうな」っていう。
篠谷: そうなんですよ!
安田 なので僕は、クロックには「老賢者」のイメージでいて欲しいなと思っていました。


○ イメージを喚起させるもの

篠谷: イメージといえば、もうひとつ。リコルは〈六門世界〉のすべての地方を巡りましたよね。それぞれの場所で、その地方独特の風のようなものを感じましたが、何か参考とされたものはあるのでしょうか?
安田 ヨーロッパに実際行くことで、いろんなイメージが浮かんだ部分はあります。特に、パリの地下墓地カタコンベというのはすごいですよ。骨が本当に転がっているんですよ。そのイメージは、サザンの地下で使わせてもらった。あれは、実際に体験したイメージです。
篠谷: カタコンベ? ローマの地下が有名だと思ったのですが、パリにもあるんですね。恥ずかしながら、知りませんでした。
安田 ローマだとちょっと違うんですよ。あそこは骨がゴロゴロしているわけじゃないんだよね、やっぱり。
篠谷: パリは、骨がゴロゴロしていたんですか……(汗)。
安田 パリはね、中世のころに地下に放り込まれた無縁仏と思われる人たちの骨が、ものすごい数あって。ヨーロッパ人は残酷じゃないのか、と思ってしまったよ。葬り方が違うからなんだろうけど。土葬みたいなものじゃないですか。
篠谷: はい。
安田 やっぱりこれは怖くて、これはもうアンデッドとか出るよねって思った。
篠谷: 文化の違いは、聞くのと体験するのでは、ずいぶん違うんですね。
安田 あと、トルコカッパドキアという、あの岩に穴が空いている風景もね。すごくゴブリンとかが住んでいそうだと思った。今回の6巻にはないけれど、僕が書いたモンコレの短編のゴブリン王のときには(※ 『モンスター・コレクション短編集 月の舞姫(著=安田均/三田誠/小川楽善  刊:富士見ファンタジア文庫)』収録、『放浪王の帰還』のこと)、そのイメージを使わせてもらいました。あれに出てくる女の子は、「ファル」だから誰だかわかるよね?(笑)
篠谷: はい、それはもう(笑)。


○ 最後に

篠谷: あとひとつと言いながら、たくさんお話をお伺いしてしまいました(笑)。最後に読者のみなさんに、ひとことお願いいたします。
安田 好きなように書かせてもらえたんで、僕としてはもう本当に好きなことを、この6冊で全部書きました。最後の6巻目が遅くなったのは、別に苦しかったわけじゃないんです。すっと書けたんですが、実は四方を回るので4、5巻、特に5巻あたりでちょっとわき道をしています。それは、読んでいる方はおわかりだと思います。
篠谷: はい。
安田 でも、最初から考えていたというわけじゃなくて、書いているうちにスッスッスと出てきたんで、うまく何とかまとめることができたなあ、と。書きたいことは、最初から決めていたような気がします。
篠谷: この6巻目で、それがついにすべて明らかになるんですね!
安田 はい。最後に出てくるモンスターは、書いているときに「モンコレTCGの中で、一番的確なモンスターはどれだ? ……うん、コレだ!」とすぐくピンときたので。
篠谷: うわ、何だろう?? リコルの戦闘は、モンコレTCGのカードのイメージが浮かぶので、最終戦闘がすごく楽しみです。
安田 とにかく、何とか書けたのでホッとしています。ぜひ読んでください。
篠谷: 今が8月上旬なので、もうひと月半ぐらいですね。楽しみに待っています。
安田 期待していてください。
篠谷: といったところで、お開きにさせていただきます。本日はお忙しいところ、ありがとうございました!


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