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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > 『颯爽デザートナイツ/Replay:エムブリオマシンRPG』(2008年09月)
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エムブリオマシンRPG
『颯爽デザートナイツ/Replay:エムブリオマシンRPG』
掲載記念インタビュー
○はじめに
 
 ロール&ロール』48号(9月売り号)エムブリオマシンRPGシリーズの新作リプレイ『颯爽デザートナイツ』が掲載される。著者はバトルテック』シリーズの翻訳やサポートでお馴染みの清松みゆき
 『エムブリオマシンRPG』にとって『バトルテック』は原点とも言える作品であり、その伝道者である清松みゆきが企画に参加する意義は大きい。
 今回は『エムブリオマシンRPG』のデザイナー・秋口ぎぐるが清松みゆきにインタビューを行い、新作リプレイの内容や清松みゆきが抱く『エムブリオマシンRPG』観について明らかにしていく。
 
2008年09月 発行
記事作成 秋口ぎぐる


○GM側の有利さ

秋口 まずは『エムブリオマシンRPG』のリプレイを執筆することになった経緯について教えていただけますでしょうか。
清松 それは……秋口ぎぐるが泣いて頼むから、しょうがなく
秋口 そうですね。まったくもってその通りです(笑)。『エムブリオマシンRPG』はやはり『バトルテック』の影響を強く受けている――というか、『バトルテック』大好きな連中が自分たちなりの『バトルテック』を、というコンセプトで作ったものなんですね。だからこそリプレイを頼むなら清松さんしかいない、いつかは清松さんにお願いしたい、と思っていたわけで……やっぱり一般的には『バトルテック』と言えば清松みゆき、という認識があるじゃないですか。
清松 そんなことないよ。
秋口 いえいえ。少なくとも『エムブリオマシンRPG』制作チームの中にはそういう認識があって……それでですね。その清松さんから見て、ぶっちゃけ『エムブリオマシンRPG』という作品の印象はどうでしょう? これは、かなり厳しい話にもなるかと思うんですが。
清松 そうだね。バトルパート自体は面白いと思うよ、バトルパートのルール自体は(笑)。ただ、RPGとしてバトルパートをやろうとするとしんどいよね。
秋口 しんどいですか(苦笑)。
清松 これはべつにGM1人で4機、5機を操るのがしんどい、というわけじゃなくて、GMのほうが圧倒的に有利なシステムにおいていかにPCたちを全滅させずにおくか、というしんどさなんだけど。
秋口 なるほど。
 『エムブリオマシンRPG』ではプロッティングと呼ばれる方法によって機体同士の戦闘を処理します。
 これは「自機に行わせたいアクションをあらかじめ専用の用紙に記入しておき、一斉オープンすることで戦闘の処理を進めていく」というシステムなのですが、この際、各プレイヤーは味方プレイヤーとプロッティング内容を相談することができません。従って各プレイヤーはGM側のプロッティング内容を予測すると共に、味方プレイヤーのプロッティング内容をも予測した上で自分のプロッティングを行わなければならないのです。
 これに対し、GMは1人で敵側の機体すべてのプロッティングを行うため、つまり敵側の機体すべてを完全に連携させられるため、敵味方が同じ条件でバトルパートを行う場合はかなり有利となっています。
清松 一般的なRPGの場合、一見相手のほうが強いんだけどPC側は知恵と勇気でなんとかする、みたいな楽しさがあるじゃない?
秋口 そうですね。PC側の、ある種のヒーロー性を楽しむというか。
清松 だけど『エムブリオマシンRPG』の場合、GMがなにも考えずに「一見、強い相手」を出した場合、あっという間にPC側が全滅しちゃう。
秋口 そうですね。特にGM側が数を揃えてきた場合は、確実にPC側が負けてしまいますね。
清松 GMのほうが(複数の機体を)うまく連携させられるから、むしろこちらが知恵と勇気を持ってるように見えちゃう。今回もJGC用のシナリオでボス側が無差別範囲攻撃できる武装を持ってて、これを完璧に使っちゃうとプレイヤーから怒られるな、と思った。
秋口 Aランク武装の「エネルギーストーム」ですね。たしかに、あれをPC側が使った場合は味方を巻きこむ可能性がありますけど、GM側が使った場合、その心配はまったくなくなる。とことんPC側にとって不利な武装です。
清松 だから本当に苦労したよ。いかに合法的に敵側を弱くするか、ということを考えなくちゃならない。
秋口 ただ、GMが純粋に手を抜いてしまうとプレイヤー側も興ざめじゃないですか。ですから「合法的に敵側を弱くする」というのは、いかにGM側の機体の連携を外すか、つまりPC側に近い条件でプロッティングを行うか、ということですよね。
清松 そうだね。戦闘時における短い時間、味方と長々と通信したりできないような状況下で、それぞれの敵キャラがどんな判断をするか。より自然な動きはどのようなものか。これを形にしないといけない。
秋口 そのための手段として、今回のリプレイ『颯爽デザートナイツ』では「擬似AI」と呼べるような方法を採っていらっしゃいますよね。あらかじめ「1〜2の出目なら自機から最も近いPC機を狙う、3〜4の出目なら最も被ダメージの多いPC機を狙う」といった表を用意して、個々の敵の動きを半ランダムで決める、という形で。
清松 そうだね。こうした対応は今後もやっていくよ。GM側を有利にさせすぎないために、たとえばこういう方法もあるよ、こういう方法もあるよ、という例を提示していくつもり。
秋口 楽しみにしています。


○『バトルテック』と比較して

秋口 『バトルテック』との比較、という観点からはどうでしょう?
清松 『バトルテック』の良さというのは、僕は「お手軽ロボットバトルとしての良さ」だと思うのね。僕としては。
秋口 あれがお手軽ですか?(汗)
清松 そう、僕にとってはお手軽(笑)。『エムブリオマシンRPG』はそのお手軽さを突き詰めたな、というのは感じる。『バトルテック』よりもわかりやすいし、スピーディだし。『バトルテック』を本気でやると3時間、4時間はすぐに経っちゃうけど、『エムブリオマシンRPG』だと1時間で終わる。ゲームとしてはよくできてると思うよ。
秋口 『バトルテック』の場合は3時間、4時間やるのが楽しかった、というのもありますけどね(笑)。
清松 『バトルテック』との違い、という面で言えば、これは世界観のほうに話が行くんだけど、『エムブリオマシンRPG』の場合は重量と装甲による性能差がないじゃない?
秋口 と申しますと?
清松 SS軽は脆いぶん速い。LL重はたくさん武装を持てて頑強なぶん遅い。つまりSS軽とLL重の強さが同じなんだよ。『エムブリオマシンRPG』は意図的にそう作られてるゲームなんだけど、『バトルテック』はそうじゃない。20トンのワスプと85トンのバトルマスターは絶対に1on1では戦えない。バトルマスターのほうが圧倒的に強い。そのほうが世界としては自然かな、とは思う。まぁ善し悪しだけどね。
秋口 たしかに、わかりやすくはありますよね。先ほどおっしゃっていた「強大な敵をPCたちが知恵と勇気で倒す」という構図も出しやすいです。
清松 『エムブリオマシンRPG』にもそういう要素はあっていいんじゃないか、じゃあ自分でやってもいいよね、せっかくGMなんだから、なんて思ってたりして……。
秋口 おおっ。では今後、リプレイにそうした強大な敵が出てくると?
清松 そうした敵に立ちむかってみたいとは思わんかね?(笑) せっかくならワールドデザイナーに怒られるような、いろいろ変態的な敵を出そうかな、とか考えてるよ。
秋口 そう言えば、以前に「今週のびっくりどっきりメカがテーマ」、とかおっしゃっていたような……?


○リプレイの方向性

秋口 さて、肝心の『颯爽デザートナイツ』についてですが。こういう方向性の作品にしていこう、今後こういう特徴を持たせて展開していこう、といった考えはおありですか?
清松 アドベンチャーパートの結果がバトルパートに跳ね返ってくる、という構造は常に作ろうと思ってるよ。うまく立ちまわれば戦闘の初期条件が有利になるとか。そうでないとアドベンチャーをやる意味がないからね。いい行動にいい結果が返ってくるもの、ということで。
秋口 ほかには……?
清松 番棚のリプレイが特殊なやり方なので、僕はオーソドックスに進めていこうかな。なんせ古い人間だから。
秋口 いやいや(苦笑)。ただ、たしかに番棚リプレイはかなり特殊ですよね。PC2人vsPC2人のマジバトル、という。
清松 そうだね。こちらのリプレイでは僕の年齢のロボットアニメファンが好むような話をやっていくつもり。といっても『マジンガーZ』『ゲッターロボ』までは遡らない。初代『機動戦士ガンダム』前後ぐらいの雰囲気。
秋口 いわゆる富野アニメですね。
清松 『無敵超人ザンボット3』とか『伝説巨神イデオン』とか『聖戦士ダンバイン』とか『機動戦士Zガンダム』とか……。
秋口 あれ、『Zガンダム』まで入るんですか?
清松 いや、そこは、「全部、全滅エンドやないですか」というツッコミ待ち。
秋口 そんなツッコミ無理です。
清松 俺の年代には、飛び石全滅は、富野さんの法則として有名だったんだが……。
秋口 知りませんって。で、リプレイのPCも全滅なんですか!?
清松 まさか(笑)。ただ、「主人公たちが大きな船に乗って一蓮托生」という、富野さんパターンはやってみたいかなと。デザイナーに「大きな船を動かしていいか」と訊いたら「いい」と言われたので、好き放題やっちゃうつもり。
秋口 設定的にはまったく問題ありませんので、どんどんやっちゃってください(笑)。ちなみに全何巻ぐらいの構想でしょう?
清松 それなりの敵、それなりの展開を用意しているので、許してもらえるなら、少なくとも3巻。状況次第で巻数を伸ばすつもりだけど……打ち切られると辛いね
秋口 それはないですよ! 清松リプレイが打ち切りとか――。
清松 いや、富野さんという名前を出したから、「打ち切られると辛いね」、と来るんだが。もっとも、あのころは、富野さんに限らず、打ち切りは多かった。
秋口 ……清松さん……清松さんのネタ、たまに拾いきれないことがあります……(泣)。
清松 たまにじゃなくて、全然拾えてなくない?(笑)

○最後に

秋口 最後に、ユーザの皆さんにメッセージを。
清松 ワールドデザイナーには泣いてもらうことになるでしょう(笑)。「GMは自分の裁量で好きほうだいやっていいんだよ」という例を皆さんに示しつつ、それでいてオーソドックスなRPGをやっていこうと思ってます。どうかご期待ください。あとは……プレイヤーがPCの設定を作りこんでくれたので、どこまで拾っていこうかと考えているところ。このあたりの展開にも注目してください。
秋口 いろいろ面白い設定が出てきましたからね。
清松 ほんと……あのピンクカメレオン、どうしてくれようか。頭からチェーンマインて(苦笑)。
 『颯爽デザートナイツ』には基本色がピンクの、頭からチェーンマインを射出するPC機体が登場しています。
清松 完全に変態だ!
秋口 まさに「ピンクカメレオン」ですよね(笑)。――ではこれでインタビューを終わりたいと思います。本日はありがとうございました。
清松 ありがとうございました。



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