篠谷: |
それでは、ソード・ワールド2.0の長編小説『剣をつぐもの』のインタビューを始めたいと思います。本日はよろしくお願いします。 |
北沢: |
よろしくお願いします。 |
篠谷: |
待望のソード・ワールド2.0の小説が、いよいよお目見えとなりますね! |
北沢: |
長らくお待たせしてしまいました。ですが、もう間もなく、みなさんのお手元にお届けできると思います。 |
篠谷: |
ソード・ワールド2.0移行後、初の小説となるわけですが、いかがでしたか? |
北沢: |
やはりプレッシャーは大きかったですね。本当によくできたなあ……。 |
篠谷: |
同じくソード・ワールドを冠している1stには、成熟したフォーセリア世界がありますもんね。 |
北沢: |
ええ。実は、『剣をつぐもの』は、初稿から2稿にするときに8割方書き直していたりします。 |
篠谷: |
うわ、それは大変だ。 |
北沢: |
編集さんやいろんな方々にご意見をいただいて、自分なりによく考えて、やっとでき上がったという感じです。それこそ、ソード・ワールド2.0のあらゆる要素を入れたかったんですが、さすがに詰め込みすぎだろうと、いくつかは見送りました。それでも、ちょっとお腹いっぱいかもしれません(笑)。 |
篠谷: |
では、さっそくですが内容に軽く触れていきましょう。とはいえ発売前なので、ダメそうなら黙秘して、可能な範囲だけ語ってください。 |
北沢: |
わかりました(笑)。 |
篠谷: |
ズバリ登場人物について、お伺いしたいのですが。 |
北沢: |
主人公は、アレクという名の14歳の少年です。物事を斜めに見てしまうお年ごろ。技能については、一応まだ伏せておきましょう。 |
篠谷: |
生意気少年だ(笑)。 |
北沢: |
ヒロインの名は、リリアンナ。アレクと同い年の、真っ直ぐな性格の女の子です。あと、アレクのツレのタビットが1人。とある事件がきっかけで集まったこの3人の周りに、今後仲間が増えていく予定です。 |
篠谷: |
原稿を拝見しましたが、もう1人重要人物が出てきますよね。 |
北沢: |
そちらはまだ秘密ということで(笑)。そうそう、イメージを掴むためにキャラクターを使って、1度セッションをしたんですよ。もう原型も留めていないけれど。 |
篠谷: |
えっ!? そうだったですか。 |
北沢: |
第1章や2章は、比較的そのときの雰囲気が残っているかな? とりあえず、駆け出し冒険者たちとそれ以外ってことで、バラバラのレベルでやってもらいました。作成直後のキャラクター2人に対し、4レベルの敵を出したりしたなあ。 |
篠谷: |
それはひどい(笑)。普通に考えれば勝てませんよね。 |
北沢: |
でもだから、誰かに助けてもらったら勝った(助かった)としました。なかなか楽しかったですよ。 |
篠谷: |
主人公のアレクは冒険者なんですか? |
北沢: |
いいえ。駆け出し冒険者並みの実力を持つ、一般人です。あこがれてはいるけれど、なかなか踏み出せないでいるという。その一線を越えられる者だけが冒険者になるのだ、というところを見せたかったので。 |
篠谷: |
なるほど。その彼が冒険者になると決め、旅立つ物語なんですね(ネタバレ気味のこぼれ話 1)。 |
篠谷: |
冒険の舞台はどちらになりますか? |
北沢: |
ザルツ地方です。今回は、テラスティア大陸最北にある、ダーレスブルグ公国にしました。 |
篠谷: |
ここを選ばれたのには、何か理由が? |
北沢: |
ルールブックに載っていたから、というのが一番の理由ですね。すでに紹介されている場所を小説で描くことによって、遊んでくださっているみなさんに、ラクシアという世界のビジュアルや雰囲気を伝えることを優先しようと思ったんです。話を進めやすいように小説オリジナルの地方を作って、そこを舞台にという話もあったんですが、いろいろ考えてこちらで行こうと。 |
篠谷: |
なるほど。 |
北沢: |
その中で、冒険の舞台にしやすそうだったのが、ザルツ地方だったんです。 |
篠谷: |
ザルツ地方には、ほかにもいろいろ国がありますよね? |
北沢: |
ええ。実は、初稿の段階では、ルキスラ帝国を舞台に書き進めていました。ルキスラ帝国がピンチになって、それを何とかするという話。でも、ルキスラ帝国がピンチになる気がしなくて(笑)。 |
篠谷: |
確かに(笑)。内地にあって、蛮族が苦手とする守りの剣が8本あるルキスラ帝国は、立地的にも防衛力的にも、よほどのことが起こらなければピンチになりそうにないですね。ダーレスブルグ公国は、守りの剣の数は6本と多いですが、人族が支配するテラスティア大陸と、蛮族が支配するレーゼルドーン大陸をつなぐ巨大な橋を有している……。 |
北沢: |
今は橋の向こう側にも街ができていて、人族が暮らしています。とはいえ、自治を見逃してもらっているぐらいの感覚なので、常に蛮族とのいざこざが絶えません。 |
篠谷: |
領土の境界線が、そのまま人族と蛮族との境界線になっている部分がある、不安定な国なんですね。つまりダーレスブルグ公国は、冒険者御用達の国だと。 |
北沢: |
まあ、人族最前線の国ですからね(笑)。そういう意味でも舞台にしやすかったわけです。 |
篠谷: |
ラクシアでの冒険を描くにあたって、意識されたことはありますか? |
北沢: |
ずっと心がけてきたことは、「ソード・ワールド2.0という世界を感じられるようにしよう」ということですね。具体的には、リルドラケンやタビット、ルーンフォークなどの異種族をなるべく出そう、と。 |
篠谷: |
いっぱい出てきましたね! ルールブックやリプレイを読んで、「こんな感じかな〜?」とぼんやり思い描いていた彼らが、急にフルカラーになって動き出したって感じがしました(ネタバレ気味のこぼれ話 2)。 |
北沢: |
それは嬉しいですね。人間ではない、タビットやリルドラケンなどが街を歩いて生活をしているさまを、ごく普通に感じられるように心がけたので。 |
篠谷: |
街ですれ違う人の様子とか、舞い上がる土埃とか、とにかく雰囲気を感じてドキドキしました。そういえば、主人公たちが出入りする冒険者の店の店主はリルドラケンでしたね。 |
北沢: |
そこも舞台をダーレスブルグにした理由のひとつですね。なじみやすいように、店主もルールブックに載っているNPCから選んだんですが、ルキスラ帝国の方の店主は人間だったんですよ。イラストつきで載っているんですが、それならイラストもないリルドラケンの方が、またみなさんにお伝えできる情報が増えるかと思って。 |
篠谷: |
種族だけでなく、技能もたくさん出てましたよね。聖印や魔動機械などの描写もあって、すごくイメージしやすくなりました。技能やアイテムの面からも、ラクシアという世界のアピールを受けた感じがします。 |
北沢: |
魔動バイクとか、何の説明もなく勢いで出しましたしね(笑)。あと、意識したのは蛮族の存在ですね。ソード・ワールド2.0では1stと違って、「蛮族」というキャラクターたちにとって明確な敵が存在します。いかに人族と相容れない存在かというところを、わかりやすく伝えたいと思いました。 |
篠谷: |
まだまだお伺いしたいところなのですが、これ以上は内容に深く踏み込みそうなので、このへんで。また発売後にいっぱい語ってください。 |
北沢: |
そうですね(笑)。まあ、『剣をつぐもの』は、いろいろ出かけていくキャンペーンっぽい小説にしようと思っているので、ダーレスブルグ公国から離れるかもしれません。盛り込みすぎということで1巻では減らしたNPCも、どんどん出していきますよ。 |
篠谷: |
小説1巻の正式な発売日は、いつになりますか? |
北沢: |
5月20日です。イラストレーターさんは、bobさんとおっしゃって、少年漫画っぽい、元気でとても雰囲気のある絵を描かれる方です。主要キャラクターのラフを上げていただいたんですが、これがいい感じで。僕はリリアンナがお気に入りです(笑) |
篠谷: |
楽しみが1つ増えました。あ、そうだ。他のソード・ワールド2.0作品とのコラボはありそうですか? |
北沢: |
実現できるかわからないんですが、いつかルーフェリア(『ソード・ワールド2.0リプレイ 新米女神の勇者たち』シリーズの出発点の国)に行ってみたいという野望があります。 |
通りすがりの秋田みやび: |
お? いつでもお待ちしていますよ。カモーン! |
篠谷: |
ルーフェリアは、秋田さんが世界設定を担当されている、フェイダン地方の国ですもんね。実は、私の頭の中では、ザルツ地方とフェイダン地方の位置関係があやふやなんです。なので、地図をつなげていただけると大変嬉しいですね(笑)。 |
北沢: |
ものすごーく遠いんですけどね。 |
篠谷: |
ソード・ワールド2.0には飛行船や飛空艇があるんですから、それで行けばいいじゃないですか。 |
北沢: |
ま、ね。……すぐ落ちるけど(ボソリ)。 |
篠谷: |
それは言っちゃダメ!(笑) |
北沢: |
まあ、行けたとしてもずいぶん先の話になるでしょう。今は、2巻の原稿をもりもり書き進めています。文庫だけでなく、ドラゴンマガジン(刊:富士見書房)7月号にて、短編を書かせていただきましたので、そちらも楽しんでいただければ。 |
篠谷: |
5月20日発売のドラゴンマガジンですね。ドキドキしながら待ってます。では、最後にみなさんに一言どうぞ。 |
北沢: |
ソード・ワールド2.0が、またここから新しいスタートを切ることになります。ぜひ小説を読んで楽しんでください。そしてこれを機会に、新しい冒険仲間を増やしていただければと思います。どうぞこれからも期待していてください! |