――: |
では、キャラクター名なんかはどうやってつけてらっしゃるんですか? |
河野: |
浅井ケイは、まず 「ケイ」 という名前が決まっていました。その由来はアルファベットの 「K」 です。 |
――: |
「 K 」 ? |
河野: |
理由を説明し始めるとちょっと長くなるのですが……。一人称で書かれる小説には、主人公の名前を「私」や「僕」で統一して、本名を明かさないものがあります。その変形として、あだ名で呼ばれ続けるとか。 |
――: |
ああ、ちょうど乙一さんの小説にもそういったものがあったように思います。 |
河野: |
「なぜそういうことをするんだろう?」と考えた時、「たぶん名前でキャラクターに個性がつくのが嫌なんだろうな」と思ったんです。大抵、人名は漢字だし、漢字には意味があります。どうしても、その意味に引っ張られると思うんです。で、読者が感情移入しやすい主人公を作る時、名前は邪魔なんだろうな、と。 |
――: |
サクラダの主人公も、そのようにしたかったと? |
河野: |
はい。でもサクラダは、三人称小説の体を取っていることなどもあって、名前を伏せるのが難しかったんです。だから「最も意味を持たない名前」としてアルファベットを考えて、そこから人名にしやすい 「ケイ」 を選びました。浅井、はなんとなく、ケイに繋げた時、音の響きが良いような気がしたからで、深い意味はありません。 |
――: |
けれど春埼美空、は全て漢字ですよね? |
河野: |
春埼美空は、「春埼」という苗字が先にありました。というか、ハルキ、という読み方が、ですね。主人公がこのキャラクターを苗字で呼ぶことは、早い段階から決まっていたのですが、二人はそれなりに親しい設定でもありました。だから苗字なんだけど、どこか下の名前っぽく聞えるものにしたかったんです。 |
――: |
「アサミ」とか「マキ」とかですか? |
河野: |
そうです。そういった、苗字、名前のどちらにも使えそうなものを考えて、その中から「ハルキ」を選びました。美空の方は、音の響きで。意味はありません。 |
――: |
キャラクターを書くときの、モデルはありますか? |
河野: |
キャラクターに関しては、基本的にはないです。漠然と、いろんな人の色んな要素を集めて作る感じですね。ただ、作中の描写なんかは、かなり実際の経験を元にしていると思います。例えば学校は、通っていた高校と中学を混ぜ合わせて描写していたり、という感じです。 |