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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > オリジナル小説豪華3本立て 魔界王子レオン (2013年01月)
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【魔界王子レオン】
聞き手:笠井道子
さて、トリを務めますのは、ベテラン友野詳です。
ガープス」や「ゲヘナ」等、本格TPRGを展開するいっぽうで、オリジナル作品を多数発表してきました。昨今はさらに児童書にもその活躍の場を広げています。
今回取りあげるのは、小学校中学年から中学生の女の子を対象にした、ちょっとふしぎな物語です。
インタビュアーは再び笠井道子が担当いたします。
―― 魔界王子レオン 猫色の月と歌えないウサギ』が2012年9月15日、『魔界王子レオン なぞの壁画と魔法使いの弟子』が2013年1月15日に発売されたばかりの友野詳さんにお話を伺います。この2冊は内容の時系列的にはいちおう発売日順になっていますが、構成としてはそれぞれ独立した物語と考えていいんですね。
友野 :はい。なので、もし本屋さんでいずれか一冊しか見つからなくても大丈夫。どちらを先に読んでいただいても楽しめるようになっています。

【作品紹介】
魔界王子レオン 猫色の月と歌えないウサギ』(以下『
猫色の月』) 
 主人公サオリの住むマンションの屋上にはふしぎな家「妖精館」が建っている。そこに暮らすのは魔女とうわさされるダイアンさん。その血を引く孫のレオンがダイアンさんと同居することになってから妖精館では怪現象が起こりはじめる。
 サオリとレオンは二人でその謎に飛びこむが――!?

魔界王子レオン なぞの壁画と魔法使いの弟子』(以下『
なぞの壁画』)
 学園の王子を自認し、「オレは天才だから」が口癖のレオンは、ただいま魔術師見習い真っ最中。そんなある日、町になぞの失踪事件が相次ぎ、ダイアンさんはサオリにレオンのお目付役を託し、自ら真相を探る旅に出る。
 けれど、サオリはそのとき親友アイラ(相性「かめちゃん」)の不審な態度に悩んでいた――

 ときに暴走し、つまずき、迷いつつ、勇気をもって謎に挑むレオンサオリアイラ冒険物語

☆モチーフと主人公について
―― 対象年齢は小学校中学年から中学生ということですが、友野さんとしてはそういう作品ははじめてになりますか。
友野 いえいえ、対象年齢だけでいえば、集英社みらい文庫の『ジョウスト! 空をつらぬけ』『同 嵐をつらぬけ』があります。
―― そうでした、そちらも私がインタビューしたんでした!
友野 でしょ(笑)? ただ、あっちは男の子向けでしたが、『魔界王子レオン』は女の子の読者を想定して書きました。だから、主役の視点を女の子のサオリにして、あとはラブな要素を盛り込んで――
―― ……(ラブな要素?)
友野 あ、ラブな要素といっても、だれとだれがくっついて、というのではなく、読者がいろいろ想像できるようなシーンを作ろうということで。
―― ああ、それはよくわかります。では、まずこのシリーズのモチーフについてですが、『猫色の月』の後書きによると、下敷きとして「クトゥルフ神話」があるんですね。
友野 なんですが、もちろん「クトゥルフ神話」を知らなくても、ぜんぜん問題なく楽しんでいただけるようにはしてあります。
―― ただ、SNEのサイトを訪れてくださる方は「クトゥルフ神話」に興味のある方も多いでしょうから、そうしたモチーフも踏まえてお話を伺いたいと思います。同じく後書きによると、主人公の二人、レオンサオリは以前から友野さんの脳内に住んでいたそうですが――
友野 ええ、児童書を書いてみたいという思いはずっとあったんですよ。レオンとサオリについては、漠然とですが4,5年ぐらい前から考えてたかなあ。
―― そんなに以前から! その当時からクトゥルフの物語の登場人物として考えておられたんですか。
友野 そうですね、児童書として考えたとき、ホラーというか、ちょっと怖い冒険譚はどうだろう、と。正統派のクトゥルフものラブコメの融合で、しかも女の子向けというのは、まだだれもやっていないんじゃないか、と思って。
―― なるほど。
友野 主人公たちはそうやって脳内で弄んでいるうちに、ちょっとずつできあがってきた感じですね。
―― 脳内にいたときの彼らと、こうして本になった彼らとで変わったところはありますか。たとえば、サオリの「怪力」なんかは最初からあった設定でしょうか。
友野 いや、あれは某テレビ番組のキャラがヒントになっているんですよ。
―― ほうほう、(こっそりその番組のタイトルを聞き) なるほど、それは友野さんならではですね(笑)。では、レオンはいかがですか。
友野 えっとね、脳内にいたときのレオンはもっとダメでした(笑)。いまより人の話をきかずに突っ走ったりね。でも「もっとちゃんとかっこよくしてください」と編集さんから要望がありまして(苦笑)。
―― あ、そういうことか。じつは、大人の私からすると、ほんのちょっともの足りないんだ、レオンくん。
友野 もっと暴走するレオンが見たい?
―― そうそう! でも、小学生に「ダメ男」の魅力はまだわからんですな(笑)。ただ、本書に登場するレオンにも、多少独善的な印象があると思うんですね。なのに、「つばさ文庫」のサイトに寄せられた感想を見ると、そんなレオンの向こう側にある「優しさ」とか「強さ」が、ちゃんと読者に伝わっているのがわかります。
友野 ああ、そうなんです! 最初の原稿ではね、ちょっと説明しすぎだったんです。けれど、これも編集さんから「大丈夫です、子どもたちはちゃんと読み取る力をもっていますから」と言われて、そこは思いきって削りました。
―― さっき話に出たように、ラブ要素が必要だから――
友野 そう、ヒーローのレオンをかっこよく思ってもらわないといけない。そこは頑張りましたよ。
―― あはは、「頑張らない」とかっこよくならない?
友野 うん、無理(笑)。ちょっとでも気を抜くと、違う方向に行ってしまうから。
―― いままでの友野さんを作品を知っている人から見たら、レオンがいちばん意外かもしれませんね。
友野 ああ、そうかもしれない。いままでのぼくにない引きだしという感じで。
―― 「ジョウスト!」のヒーロー「王子宮槍司」とはまたちがう。読んでて思ったんですけれど、レオンにはこれまで以上に友野さん自身の姿が投影されているのかな、と。
友野 うん、レオンの目立ちたがりなところとか、人に褒められるの大好き! というとこなんかは、ものすごーく自分を投影してる。
―― でしょう(笑)!
友野 ぼく自身はレオンみたいな天才でもなんでもないけれど――
―― 天才でありたいという思いはありますよね。
友野 そう、そういう自分の願望もレオンに投影しているかもしれませんね。
―― あと、主人公たちは中学生で、ライトノベルよりは年齢が下なんですけれど、決して子どもっぽいキャラではないですね。
友野 ええ、ちゃんと悩みもある、傷つきもする、等身大の主人公にしたつもりです。だから、大人の方が読んでも面白いと思ってもらえるんじゃないかな。自分たちの昔をふり返って、ああ、子どものころはこうだったなあ、と感じてもらえたらうれしいですね。

☆ストーリー展開とイラスト
―― このお話を読んでてなにより思ったのは、ストーリー展開キャラクターに無理がなくて、すっと頭と心に入ってくるんですね。
友野 そこは、主人公たちの気持ちの流れがスムースになるように、いちばん気にかけたところですね。
―― 異空間とか異世界とか出てくるとき、そこに違和感を感じると、引いてしまうんですよ。でも、そういう違和感をぜんぜん感じなかった。
友野 とくにいまの若い読者は、一足飛びに異世界に行くという考えにはなじみがないんじゃないかと思って。でも、ぼく自身は異世界とかこの世ならぬものが大好きで、ではいかにその面白さを無理なく感じてもらえるかを考えました。
―― 2冊とも同じなんですけど、まず主人公たちの身近に異世界と通じる場所があって、そこを経験してから異世界に旅立つ。そこ(異世界)に行かないと問題を解決できない、だから行くという、その流れがすごく納得できました。
友野 無理やり巻きこまれるのではなく、自分の意志で行ってほしいという思いがありましたから、そこの構成は頑張りました。言ってみれば、ゲームマスターとして、プレイヤーが自ら行動して、危ないところに突っこんでいくよう誘導するのと同じですね。
―― RPGのシナリオを書いて、レオンくんやサオリちゃんに「さあ、どうする?」と問いかける感じ?
友野 そうそう。なので、本当に脳内セッションをやってるような形です。
―― なるほど、それはものすごく納得です。
友野 だから『猫色の月』のほうは難しいかもしれませんが、『なぞの壁画』のほうはそのままクトゥルフ神話TRPGのシナリオとして使えるようになってます。
―― おお、言われてみればたしかに! ほかにもクトゥルフ神話ネタはあちこちに散りばめられていましたね。クトゥルフ神話ファンの方には、その辺りも読みどころの一つになっていると思います。
友野 でも、笠井さんはあまりクトゥルフ神話は――
―― うん、あんまり詳しくない(笑)。小説を数冊読んだのと、ボードゲームでちょっと触れたくらいかな。けれど、「クトゥルフ、面白そう」と改めて思いましたよ。
友野 そういうクトゥルフ神話を知らない方にも、入門書的に読んでいただけるかな、と。でも、まあ、あまりそこにこだわらずに読んでいただいていいんじゃないかな。
―― (小声で)というわりには、モンスター出しすぎ?
友野 (同じく小声で)うん、そこちょっと反省してる(笑)。
―― それから、椋本夏夜さんのイラストがすごく可愛いですね。
友野 椋本さんとは以前から知りあいで、一度組みたいですねえ、とお話ししてたんです。そしたら、ちょうど編集さんから「椋本先生の絵がいいと思うんです」って(笑)。
―― それはすごいですね! ほんとうにお話とイラストがあってて、サオリなんか、もうこれ以外のイメージはないってくらい。無愛想だけれど、可愛くて。
友野 ええ、まさにぴったりです。マンガ連載もかかえておられるのに、頑張っていただきました!

☆これからのこと、そして雑談
―― 魔界王子レオン』の今後の展開についてはいかがでしょうか。
友野 いまのところ予定は白紙ですが、ぼく自身はぜひ書きたいですし、みなさんの支持があればチャンスも巡ってくるかと思います。
―― 猫色の月』のテーマが音楽、『なぞの壁画』のテーマが美術、もし続編があったらそのテーマは――?
友野 ポエムか彫刻かそういう芸術系にしたいですね。レオンくん天才だから、なんでもできるしね。
―― というわりには、そういうところあんまり出てなくなかったですか。いまのところ自称天才という感じ?
友野 そうね(苦笑)、ストーリー的にどうしても、天才をもってしても及ばないなにか、となってしまうから。もし機会があれば、そういうとこ、もっとちゃんと見せてやりたいなあ。
―― 成長物語という位置づけは友野さんのなかにはあります?
友野 いや、あんまりこういうシリーズは成長しないんですよ。成長してもリセットかかります。
―― そうなんですか。でも、サオリちゃんなんかは少しずつ成長しているように見えるんですけど?
友野 ああ、ぼく自身にそういう意識はなくても、書いているうちに少しずつ変わっていく部分はあるでしょうね。あと、このお話は物語が進めば、時間も進むし、主人公たちの年齢も上がっていきます。
―― じゃあ、レオンも高校生、大学生と大きくなっていくんだ。大人になったレオン、見たいなあ。
友野 でも、レオンはいつまでたっても、大人になりきらないかもしれません。おとなである著者の、いまだに残っている子どもの部分をとりだしたキャラクターですから(笑)。
―― え〜〜〜(笑)。
友野 でも、サオリがそばにいるから、きっと大魔術師にはなるでしょう。
―― その辺りもお話もぜひ読んでみたいので、これからの読者のみなさまには応援お願いいたします。では最後に、友野さんの今後の予定を教えていただけますか。
友野 2月に『妖怪コロキューブ・花子スペシャル 鏡の国のクイーン』(学研教育出版)が出ます。ほかにも男の子向けの児童書大人向けの小説ライトノベルの企画を温めております。
―― 児童向け、ライトノベル、大人向け小説って全年齢対応ですね(笑)。
友野 具体的なことはぐらいにはお話しできると思いますので、そのときにはまたよろしくお願いいたします。
―― 本日はありがとうございました!


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