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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > オリジナル小説豪華3本立て (2013年01月)
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オリジナル小説豪華3本立て
■■はじめに
お待たせいたしました。
2013年01月の著者インタビューはオリジナル小説の豪華三本立てです。

『皇国のフロイライン』
2012年12月20発売
河端ジュン一/作 遙華ナツキ/イラスト
富士見ファンタジア文庫 定価(税込):609円
『フラワーカード探偵 咲
花妖精、あらわる!』
2012年11月30日発売
川人忠明/作 岸和田ロビン/イラスト
学研教育出版 定価(税込): 840円
『魔界王子レオン 猫色の月と歌えないウサギ』
『魔界王子レオン なぞの壁画と魔法使いの弟子』
(猫色の月と歌えないウサギ)2012年09月15日発売
(なぞの壁画と魔法使いの弟子)2013年01月15日発売
友野詳/作 椋本夏夜/絵 <br>
角川つばさ文庫 定価(税込):672円
    

奇しくもグループSNEの若手からベテランまでが揃いました。
それぞれに趣向を凝らした作品、著者本人の熱い思いを聞いて、興味をもってくださったなら、書店にてお手にとってくださいませ。

聞き手は笠井道子&柘植めぐみです。

2013年01月 発行
記事作成 笠井道子/柘植めぐみ

目次

皇国のフロイライン
聞き手:笠井道子
まずトップバッターは「河端ジュン一」です。ゲームデザイナーとして『エンドブレイカー! SGC』シリーズ((株)ブロッコリー)や『シルク・ドゥ・モンスター』(富士見書房)、作家として児童向けパズル・クイズブック『モンスタニア 1・2』(集英社みらい文庫)と精力的に作品を発表してきたSNEの最若手です。

【作品紹介】
 街に住まう「化物」にそれぞれ大切なものを奪われた
桐原有真宮真琴佐伯白乃は独自のシステム〈皇国(ファミリア)〉を作りあげ、復讐の機を待つ。そんな彼らの前に立ちふさがったのは――
 現在から過去へ、過去から現在へとつながる糸をたどりつつ、軽快な文章で魅せる異能力バトル

★本書が刊行されるまで
―― これまでにも児童書などを発表してきた河端さんですが、ライトノベルとしては――
河端 はい、これがデビュー作になります。
―― おめでとうございます。後書きを読むと「いろんな奇跡が重なって出版に至」ったとありますが、まずその「奇跡」についてお伺いしていいですか。
河端 グループSNEホームページの新刊案内でも触れたんですが、最初はカードゲーム『シルク・ドゥ・モンスター』(発売元:富士見書房/販売元:ブシロードGP/ゲームデザイン:安田均・秋口ぎぐる・河端ジュン一)の小説化という企画だったんです。
―― 元々こういう作品の構想があったわけではなく?
河端 ええ、そうなんです。「ケモナー」――ってわかります?
―― けもなあ?
河端 動物や獣人とかが好きな人のことを言うんですけど(笑)、ぼくもちょっとそういうところがあって、最初は獣人の活躍するお話を書いてたんですね。でも、あれこれやっているうちに、こういう異能力バトルものになりました。
―― みごとに別物になったね。
河端 はい(笑)。で、それを社長(安田均)にお見せしたら、幸運にもOKが出て。
―― 社長は獣人の小説を期待しておられたの?
河端 ええ、たぶん。でも「これも面白いからええよ」と言っていただいて、富士見書房の編集さんにも「これ、出せますよ」と。
―― おお。
河端 そういう幸運に幸運が重なってできた1冊という感じですね。
―― 現在の形で書き上げたのはいつごろでしょう。
河端 ほぼこの形になったのは4か月前の8月、JGC2012のころですね。ただ、あのころは「まだだめ、まだだめ」と必死に直していました。
―― そのころの原稿と、いま本になっているものとでは、どこがいちばん変わりました?
河端 う〜ん、シンプルになったことかな。8月より前からなんですが、ぼく、細かい伏線が好きで、そういうのを貼りすぎる癖があるんですね。で、結局この話の大筋はどこなんだ? となりがちだったのを、優しい編集さんが――
―― 優しい」は必須なんや。
河端 ええ(笑)。で、優しい編集さんが「これは違いますよね」と、それこそ何十回とアドバイスをくださって。プロットの段階から王道のもの、理解しやすいものを考えて、ずいぶんとわかりやすくなったと思います。いまもまだちょっと残ってるんですけど。メインヒロインとサブヒロイン、どっちがどっちかわからないとか。
―― あ、そうかも(笑)。でも、お話はすごくシンプルで、わかりにくいところはまったくなかったです。では、この作品で河端さんがいちばん伝えたかったことはなんですか。
河端 いちばん伝えたかったこと、ですか。……うーんとね。そこはばっと出てこないとダメですよね、えーっとね……(激しく悩み中)。
―― いい、いい、その質問は後にまわしましょう(笑)。

★☆登場人物、そして本書で書きたかったこと
―― 登場人物のなかで、河端さん自身がもっとも投影されているのはだれですか。
河端 それはやっぱり主人公じゃないですかね。ほぼ口だけのところとか(笑)。
―― 桐原有くんですね。彼は〈皇国(ファミリア)〉のなかでの役割こそ「皇帝」となっていますが、あとの2人、超人的な身体能力を誇る「騎士真宮真琴や天才ハッカーの「魔術師佐伯白乃に比べると、目立った能力はないんですよね。
河端 ええ、でも物語の中盤以降、とても重要な役割を担うことになります。自分がそうありたいなあ、と思って作ったのが桐原有かもしれません。
―― 平凡な自分にじつはすごい能力が潜んでいたっていう状況、あこがれますね。
河端 あとね、最初っから天才で、無条件に強いキャラって、あこがれはするんですけれど感情移入しづらいんです。ぼく自身がそうではないので。
―― ああ、なるほど。
河端 ちょっとゲーム的なんですけれど、能力に制限があったり発動条件があったりね。あるいはコンプレックストラウマとか、精神的にもろさがあって、そこを刺激されると弱い、みたいなのが好きなんです。
―― それはわかる気がします。
河端 で、もっとも弱点が多いのが主人公の桐原有、イコールぼくです。パラメーターが10個あったら、9個はダメで、1個しか尖ってない。
―― (河端さん、意外に尖ってると思うけど(笑)) ほかの登場人物にモデルはあるんですか、たとえば河端さんの身の回りにいるお知り合いとか――
河端 それはないです!
―― 間髪入れず否定しましたね(笑)。
河端 強いて言うなら、ほぼ全員、自分自身なのかもしれません。全キャラクター、どこかしらゆがんでると思うんですよ。それはぼく自身の部分だと思います。
―― 河端さんはキャラにトラウマもたせたがるよね、よっぽど大きなトラウマでも抱えてるの?って思う
河端 そういうわけじゃないですけれど(苦笑)、むずかしいんですよ、ふつうに良い子というのは書けないですねえ。
―― あ、でも有くんの同級生の室伏幸太くんやったっけ、彼なんかはトラウマなさそうやけど。
河端 ところがね、そうじゃないんです。小説には出てませんが、ぼくのなかでは彼もなにかしらあるキャラなんですよ。
―― なるほど、それを隠すために軽めのキャラになっている、と。
河端 そうそう、そういうイメージです。
―― と、ちょっと雰囲気がこなれてきたところで、さっきの質問にもどりましょうか。河端さんがこの作品を通して、いちばん伝えたかったことはなにでしょう。
河端 うーん、頭のなかにはちゃんと答えはあるんですけれど――あのね、すごく浅い言葉で言っちゃうと「友情」なんですよ。ぼく自身、友だちは多くないんですけれど、狭く深くつきあうんです。で、その狭く深い関係ってすごくいいな、と思うんです。
―― あ、ちょっとわかった気がする。この本では「家族」という言葉が一つのキーワードになっていますね。有が〈皇国(ファミリア)〉の仲間(真宮真琴佐伯白乃)を何度も「家族」と呼んでいます。ただの友だちじゃなくて、そこまで染みこんだ関係。
河端 そうです、あの感覚です。たとえば、真琴桐原有への感情、忠誠心は異常なほど深い。でも、ぼくのなかではじつはあれくらいの関係性のほうが好きなんです。
―― 人からそれほど深く思われたい、ということ?
河端 自分がというより、客観的に見て、だれかがだれかをそれほど深く思う、そういう構図をきれいだと感じるんです。見返りを求めるんじゃなく、無条件に信じつづけ、与えつづける、それほどだれかを思えるってすごくいいなあ、と。
―― そうなの……? (ちょっと意外)
河端 そうなんです。でも、なにをされても一方的に尽くしつづけるって、ある意味異常ですよね。で、どうしたらそういう人間ができあがるんだろう、と考えたら、やっぱり過去にトラウマを抱えているんじゃないかと。
―― なるほど、だから登場する人物の全員が心に傷を負っている、と。

☆印象的なシーン
―― 桐原有くんたちの住む街、天見ヶ関には化物(得体が知れない何者かの総称)が住んでいると言われています。その化物の一つに有は幼なじみを、真琴は両親を、白乃は記憶を奪われたんですね。
河端 そうです。
―― それに復讐するために3人が立ち上げたのが〈皇国(ファミリア)〉というシステム。そして有たちはまるで何でも屋のように、依頼された様々な仕事を解決しながら情報収集をしているわけですけれども。
河端 ええ。
―― その依頼に「高校生をターゲットにする化物毒の魔女(アップルジェリー)〉を退治してほしい」というのがありました。
河端 ああ、新米高校教師からの依頼ですね。
―― そうです、あの一連のシーンがね、大好きなんですよ。
河端 え〜〜〜っ、それはまたどうしてですか。
―― そんなにふしぎ(笑)? あれは印象的な流れやったと思うけど。ネタばれになるので詳しくは書けないんですが、ちょっと謎めいて、ぞくっとします。
河端 あのシーンをそこまで覚えていてくれる読者は少ないんじゃないかな――あ! そういえばファンレターが来てるんですが、「なんかあのシーンはよかったです」って書いてありました!
―― でしょ? 魂が宿ってるんですよ、あそこには。
河端 いやいやいや、魂は全編宿ってます(笑)!!
―― それはそうやね、ごめんごめん(笑)。ただ、プロローグにある戦闘シーンはいわば読者を惹きつけるためのもので、それを除けば〈毒の魔女〉のシーンが最初の本格的な異能力バトルになりますよね。
河端 ええ、ですね。
―― そういう印象に残るべきシーンが、ちゃんと印象に残るように巧みに描写されていたと思うんです。あと、ところどころはさまるアンバランスな場面も好きですね。たとえば、最後の最後、手に汗にぎる決戦でヒロインが相手を「巨乳バカ」呼ばわりするとか。
河端 ああ、あれはなんです。
―― 癖(笑)? 作品を通して、緊迫したシーンほど出てきますよね、ああいうセリフ。
河端 ええ、緊迫感のあるなかに、ちょっとふざけた言い回しが出てしまうのは「いやあ、そんなに気を張らなくていいですよ」って常に言いたいからなんです。
―― そうなんですね。
河端 改行の仕方とか、ページがどの程度文字で埋まってるかも含めて、最初から最後までみっちりって小説もあるじゃないですか。でも、ぼくは作家としてあるまじきことかもしれないけれど、一言一句、残さず読んでほしいわけじゃないんですよ。
―― なるほど。
河端 600円なりのお金出して買ってもらって、その人なりに最大限楽しんでもらえたらいいなって思って。ページの端から端まで読む人もいれば、斜め読みで楽しむ人もいる。そのどちらにも楽しんでもらいたい。だから、なにより気をつけたのは、どれだけ読みやすいかですね。息をするように読める文体が最高だと思っています。
―― この本も文章の一つ一つにはこだわりを感じるけれど、読んでいてしんどいところはまったくありませんでした。そこは河端さんの文章のもつリズム感かな?
河端 あ、はい、リズム感はむちゃむちゃ凝りますね。
―― 物語全体としては、過去と現在をつなぐ構成もすごく考えられていますね。
河端 過去を描くことで、なぜそのキャラがそうなったのかを説明すると、見え方が変わるじゃないですか。ミステリーなんかでも、犯人からの視点と探偵からの視点とで、物事がぜんぜん違って見える、その移り変わりがすごく好きなんです。
―― あとちょっと雑談っぽくなるけれど、登場人物の女の子が、喫茶店でメイドのコスプレして主人公の有くんを待ってるよね。なんでここでコスプレが必要なん?って笑いましたよ。
河端 あれはね、サービスです。
―― ……だれにたいしての!?
河端 ぼくと、読者さんにたいするサービス。
―― いやだって、ただ人を待つのにコスプレは要らないし、そもそも用があるなら直接、家に行けばいいじゃないですか。有の家わかってるんでしょ?
河端 そこはねえ、(しれっと) 突っこんじゃだめなところです(笑)。

☆これからのこと
―― わたし自身は仕事を離れるとライトノベルより一般小説を読むことが多いんですね。それもあって、なぜキャラクターたちがそういう境遇に置かれ、なぜそういう考え方をするようになったのか、その根幹のところもすごく知りたいと思うんです。
河端 あ、有たちの過去については2巻で言及しています。
―― おお、それは楽しみです。待望の2巻は現在、執筆中ですか。
河端 はい。というか、すでに原稿は書き上がっています。1巻では主人公たちがこうなってて、それがこうなって、こうつながって(と指でテーブルに図式を描く)――あ、すみません! これじゃ後で録音聞いても、なにもわかりませんね(笑)。
―― そうね(笑)。1巻ではどちらかというと、主人公とそれを取りまくキャラクターたちの円のなかでお話が収まっていましたよね。2巻はその円を出ていくんでしょうか。
河端 いえ、話自体は円のなかなんですけれど、登場人物の全員がなにかしら人生をぐちゃぐちゃにされているじゃないですか、その原因が外にあるんです。で、その外と戦う話ですね。
―― ガチで異能力バトル?
河端 はい、前半は主人公とヒロインの関係性に触れていますが、後半は異能力者がめっちゃ出てきます。もう怒濤のバトルですよ(笑)。
―― 発売は今年2013年4月の予定です。楽しみにお待ちください。というわけで最後の質問です。
河端 はい。
―― 今作がライトノベルのデビュー作ということですが、これからもいろいろとやりたいことがあると思います。作家河端ジュン一どこを目指しますか。なにを書きたいですか。
河端 書きたいもの――というより、小中高生の人気を得たいですねえ。
―― なんだ、それは(笑)?
河端 ぼくは作家というより、どちらかというとエンターテイナー的な立ち位置でいたいんです。たとえば「モンスタニア」もそうだったんですが――小中高生がなけなしのお小遣いで本を買ってくれる。で、難しいこと考えずに面白かったなあ、と思ってくれるものを目指したいです。もちろん大きな感動を与えられたら、それに越したことはないんですけれど、でも入り口はあくまでライトでいたくて。そういうのを勉強して書いていきたいです。
―― なるほど。
河端 接し方はよくわらからないんですが(笑)、ぼく、子どもが好きなんです。ですから、これからも小中高生に視線を向けておきたいなあ、と思っています。
―― これからも若い世代に向けて、どんどん楽しい作品を発表してください。期待しています。


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