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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > 3D小説『bell』インタビュー(2014年12月)
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よう! そろそろまた救うころだぜ!
3D小説『bell』インタビュー

著者:河野裕/河端ジュン一
イラストshimano
スーパーバイザー:安田均
富士見書房 1200円(税別)
2013年5月、「少年ロケット」という謎の人物から予告状が届く。

さあ、リアルへ飛び出そうぜ!

その言葉の通り、小説の内容が現実へと飛び出し、相互にリンクする大型企画「3D小説」のプロト版It's A MIRACLE WORLD』がWeb上で展開され、大団円を迎えました。

そして2014年7月――少年ロケットから再び予告状が届きました!

よう! そろそろまた救うころだぜ!

7月から8月にかけて夏休みをフルに使った3D小説bell』は、前回よりもさらにWeb上と現実世界縦横無尽に駆け回るイベントとして復活。

そしてこのイベントで展開された小説が12月20日には富士見書房から書籍化されました!
今回はそのイベントの内容と書籍について少年ロケットに代わり、執筆担当の河野裕河端ジュン一にインタビューを行いました。
3D小説の魅力についてたっぷりとお聞きすることができましたので、みなさまぜひとも最後までご覧ください。
2014年12月
記事作成 西岡拓哉


■3D小説とは
―― 本日はよろしくお願いいたします。
河野
河端
よろしくお願いします。
―― 遅ればせながら、夏の長期間にわたった3D小説でしたが、おつかれさまでした。
河野
河端
ありがとうございます。
―― それではまず、3D小説という企画を簡単に紹介していただけますか?
河野 すごい企画です。スタッフがいうのもなんですが(笑)。本当に楽しいイベントになりました。
河端 でも本当にすごい企画なんですよ。基本的には、小説内でバッドエンドが提示されて、作中の主人公と現実の読者さんがやりとりしながらそれをクリアしていく、ちょっと変わったweb小説です。
―― やりとりの方法にもTwitterニコニコ動画のコメント機能など様々なものがありましたね。
河野 こういう読者さんと絡む企画って、狙って作るとどうしても色ものというか、確かに面白いんだけど、それって小説としてどうなの? みたいなことになってしまいがちだと思うんです。でも3D小説の場合、もともとオリジナリティがあるものを作ろうとしたわけではなくて、「小説の面白い形」を考えた結果生まれてきたものだと思っているので、本質はむしろ王道的です。
河端 一見変わっているし、確かに新しいけど、小説としての面白さは王道。
河野 骨格は、群像劇の視点のひとつに「この物語を読んでいる現実の読者たち」をノンフィクションで取り込むという、わりと無茶苦茶なことをしているんです。でも、それも別に初めから狙ったことではないんですよね。
河端 はい。ただ小説としての面白さを考えたらそうなりました。
―― そもそも「3D小説」という言葉の意味はなんでしょう?
河野 スタッフ間でも微妙に齟齬があるので、「こうだ」と答えられるのは企画原案者の少年ロケットだけですね。執筆担当の、河野、河端にとっての3D小説の定義でいいですか?
―― はい、お願いします。
河野 私にとっては、「物語に感情移入させる手段に現実を使う」手法が3D小説ですね。
河端 ああ、そうですね。一般的な小説と違って、読者さんの現実での行動が本文に関与するので、キャラクター読者さんがずいぶん近い
河野 もともと3D小説というのは、「Z軸に飛び出す物語」というキャッチコピーと一緒に登場したのですが、物語が現実に出てくるから、読者さんにとって身近なものに感じやすい。感情移入させやすい。
河端 実際、読者さんからみて助けられる場所に主人公がいるからいいんですよね。
河野:餌をあげた猫になんとなく感情移入するのと一緒で(笑)。読者たちが助けた主人公、というのは、感情移入しやすいと思います。
―― 現実と物語を近づけて感情移入を強める手法が3D小説、ということですね。
河端 少年ロケットは、また違う認識かもしれないですが。
河野 ロケットさんのイメージは、もっと広いと思います。この企画を元にみんなでわいわい騒ぐこと自体が、現実に現れるひとつの物語であり、3D小説である、みたいな。よくわからないですが(笑)。
―― 作者である、少年ロケットとは一体何者なのでしょうか?
河野 3D小説の監督です。
河端 監督らしい仕事をしているのか、というとどうなんだろう。
河野 いや、それはしているでしょう。3D小説の本質は、少年ロケットがイメージした遊びを形にするのがすべてだから。3D小説の作風は、少年ロケット的である、というほかには言いようがないです。そうなっていないと失敗。
河端 確かに。でもだからこそ、今回は無茶ぶりが多くて、どうやって実現するのかが大変でした。

■『bell』という企画について
―― 前回のプロト版と、今回の『bell』の違いについて教えてください。
河野 かかわる人数が増えましたね。とはいえ、関係者はかなり大量の情報を把握していなければいけないので、スタッフを増やすのが難しい、というのはあるのですが。
河端 スタッフが増えたので、使えるツールも増えました。僕たちはネット周りに弱いから、本当に助かりました。
河野 私たちにできないことができる人たちに協力してもらえたので、大きく可能性が広がりましたね。先月末に、スタッフリストを公開したのですが――
※スタッフリストは、11月30日に公開された「3D小説『bell』告知資料」内に掲載しております。http://j.mp/3dn_bookinfo)
河端 とくに深く関わっていただいたのが、制作、運営に名前があるラ・シタデールLLC.代表の竹内ゆうすけさんです。竹内さんは僕たちと同じ、メインスタッフくらいの位置にいます。
河野 企画全体の打ち合わせにも入っていただいたし、webページの管理をしていただいたり、さらにいろいろと協力者の方をご紹介いただいたり。
河端 レオン(仮称)さんとか、リチャードゥさんとか、826さんとか。
河野 企画中の謎作成や、リアルイベントのお手伝いをしてくださった方々ですね。
―― 人数が多くなったぶん豪華な企画を作れるようになったのがプレ版とのいちばんの違い、ということですね。
河野 豪華というか、幅の広い企画を。予算はあまり多くいです(笑)。西岡さんは外からみていて、どこがいちばん変わったようにみえましたか?
―― とくにニコニコ動画内のサービスを利用したコンテンツですね。これは各所でも話題となっていたように見えました。
河端 そうですね、それも広がった幅のひとつです。
河野 ドワンゴさんには本当にお世話になりました。そもそも企画の頭で、時報を流していただいたことで、3D小説を知ってくださった方も多かったです。
河端 生放送なんかでも、現地までスタッフの方がカメラを持って来てくださったりしました。
河野 ドワンゴさんのご協力がなければ実現できなかったことも、たくさんあります。とくにイベントの内容をライブネットでみられるようにする、という部分を、とても強化できました。
―― SNE側のスタッフについてもご紹介ください。主に関わっているのは、河野さん、河端さんと社長である安田均の3人ときいていますが。
河野 そうですね。
河端 僕たちは執筆担当ですね。社長は、最初期の段階からこの企画を評価してくれていて、後押しの面で力を貸してくれました。
河野 企画を自由に運営する土壌を作ってくださった、という感じ。プロト版でも、あっさりSNEのTwitterアカウントを使う許可をくださいました。『bell』でも、最初期のドワンゴさんや富士見書房さんとの交渉があると、SNEからは社長含め3人で参加して。
河端 やっぱり会議に社長がいてくださったのはありがたかったですね。
河野 私たちが、偉い人に会うのに慣れてないから(笑)。本当にお世話になりました。
―― 社長がイベント等で3D小説の話題を出すのをよく耳にします。
河端 そうそう、山本弘さんや水野良さんにもお話をしてくださったみたいで
河野 社長がお話してくださったので、けっこう色々な方がこの企画に興味を持ってくださった、というのはあります。山本先生には、書籍の帯に推薦までいただきました。
河端 この企画を評価してくださっているんでしょう。嬉しいです。

■読者について
―― 3D小説にはさまざまなイベントがありますが、それに参加する読者さんたちへの印象はどういったものでしたか?
河端 謎解きがめちゃくちゃ速い(笑)。
河野 すべてが速かったですね。コミュニティの形成とか。
河端 とにかく一体感がすごかった。運営をしているスタッフサイドにそれがよく伝わってきて、更新を重ねるごとに僕たちとしても充実感が増していきましたね。
河野 たしかに、企画自体はもちろん自信をもって臨んでいたのですが、こちらの想像以上に読者さんたちは反応してくれました。
―― ネットだけでなく現実でも読者が動くイベントがあったので、一層コミュニティが強固になっていましたね。
河野 はい。それはとてもありがたかったですし、読者さんが動いてくれなければそもそも成立しない企画です。一方で運営側としては、強いコミュニティができてからどう企画を回していくのか、という課題もあります。
河端 まだ参加していない方々から見て、敷居の高い企画だと思われたくない、というのは常に考えていることですよね。
河野 ある程度トレードオフなところがあって。仲のよいコミュニティを作りたいけれど、それができてしまうと新規の方からは敷居が高くみえる、という。
―― その点で、イベント開始から現在までの流れを紹介した「まとめwiki」の存在は新規の方にとって優しいものだったのではないでしょうか。あれは読者さんが自発的に作ってくださったものですよね?
河野 そうです。
河端 「新規参入が難しい企画だ」ということは、完全に運営側が考えるべき問題なんですが、既存の読者さんたちも気にしてくださっていて(笑)。
河野 新規さん用の、この企画のまとめなんかも作ってくださっていたりします。本当にありがたいです。
河端 でも、そこに甘えてはいけないですね。運営側でも「新規さんの入りやすさ」のサポートと、「知らない人が見ても入りたいと思える企画内容」の構築は、ずっと意識し続けていこうと思います。
河野 そもそも少年ロケットいわく、3D小説の本質は「参加して楽しい」ではないらしいんですよね。実は、「みんな参加しよう」という企画ではなくって。
河端 参加者のみなさんも含めてひとつの物語で、本当の読者はさらに外においている、みたいな意識でしょうか。
河野 そういうことだと思います。傍観しているだけで楽しい、を作りたいんですよね。
―― 小説を読むだけでも楽しめる企画でなければいけない、ということでしょうか?
河野 その意識は強くもっています。でも本質は、「楽しんでいる人たちを眺めるのって楽しいよね」ということなんです。
河端 大事なのは、いつでも入っていける場所で面白いことをやっている、という感覚で。
河野 そうそう。ツイートひとつするだけで企画の中に入れるんですが、企画側から手を取って中にひっぱり込むつもりはないんです。貴方のためにドアは開けておくから、気が向いたら来てね、という距離感です。
河端 でも来なくても、遠くから眺めるだけで充分面白い。
河野 お祭りを遠くから眺めてもいいじゃない、みたいな。常に傍観者に向かってストーリーを作っている、という意識を徹底できれば、いろんな人が、いつ目にしても面白いものにできるんじゃないかと思っています。
河端 ひとつひとつのイベントも、それを前提に考えています。
河野 参加した人が面白いのはもちろんとして、あとから話できいても面白いように。
河端 それがまとまっている書籍版は、なにも知らない人が読んでももちろん面白いですよね(笑)。
河野 もともと本の形にまとめることがひとつのゴールとしてあった企画ですから。読み物として面白いですし、じゃあオレもちょっとだけそっちに遊びに行ってみようかな、という気持ちになってくださる方もいるのでは、と期待しています。
河端 3D小説の初体験はぜひ書籍で。本当におすすめです(笑)。

■書籍版について
―― ストーリーについて、教えていただけますか?
河野 物語の中で起こっているのは、「誘拐された幼馴染みを追いかける主人公」という、とても王道的なストーリーです。そこに謎の組織超能力的なものが絡む、という。
河端 でも、それだけじゃないんですよ。
河野 制作者」と名乗る人物が作中の主人公と現実の読者双方にコンタクトを取ってくるんですね。そもそも作中の時間と現実の時間がweb小説で公開された時点ではリンクしていたりして、あからさまにフィクションとリアルが繋がっていく。読者が送ったメールが作中に届き、動画上のコメントで読者と作中人物が会話する。
河端 主人公はヒロインを救い出せるのか?」という王道ストーリーをベースに、「そもそもこの『bell』っていう世界はなんなの?」という、大きな謎がのっかってきます。
河野 いったいどこまでがフィクションなのか? ということを考え始めると、かなり面白いんじゃないかと思います。
―― リアルを作中に取り込むという意味では、書籍にも「読者の反応」が掲載されていたり、コメントが小説の中に反映されていたりしてますよね。
河端 そうそう。読者さんのツイートがたくさん載っていて、それがなければストーリーがわからないところもあるんですが、それだけではなくて。
河野 ただの雑談とか、ただ驚いているだけとか、そういうコメントも積極的に載せました。これがあることで、小説本文の読み心地が全然違うんです。
河端 リアルタイムで、読んでいる小説の感想を共有できることって、まずないじゃないですか。でもそれを味わえる
河野 作りたいのは、教室の週刊少年ジャンプなんですよ。
河端 うん、そうなんです。
―― えっと……どういうことですか?(笑)
河野 あの「物語を自分たちのものにする」感覚なんです。
河端 ほんの十数ページのストーリーで、驚く、笑う。そのとき隣に友人がいて、感想を共有する感覚ですね。
河野 物語って、感想を語り合う時間にも独特の楽しさがありますよね。わいわいした雰囲気もいいし、友達が自分とは違うところに注目していて、その話を聞いて一気に想像が広がる、とか。そういう感じを詰め込みました。
―― 読者が抱いているツッコミを参加者が代弁してくれていますよね。そこでも参加者に共感できて身近なものとして楽しめるように思います。
河野 そうなんですよ。ほかの人の意見があるから、思考が一段深いところにいく。
河端 ね。すごく真剣に物語を楽しめます。

■3D小説2部に関して
―― さて、イベントの2部が正式に発表されましたね。
河野 予定では、12月24日、25日が本番、ということになっています。
河端 短い(笑)。
河野 とても短い。そして平日(笑)。
―― どうして極端に短くなったのでしょう?
河野 ロケットが「それでいいじゃん」と言った、というのが最大の理由ですが(笑)。たぶんそういうパターンもみたかったんじゃないでしょうか。
河端 夏企画でも、本編が始まった直後から、もう出来上がってる感じがあったんですよね。読者さんの方が。
河野 そうそう。企画を回していくうちに作られていくだろう、と考えていたものが、頭でもういきなりできていました。
―― それは、読者さんが3D小説を受け入れる姿勢が、ということですか?
河野 その通りです。ひどい話なんですが、運営側は積極的に参加する読者の方々は、お客さんというよりも作り手側だと考えています(笑)。
河端 作、少年ロケットとおまえらみんな、ですからね。
河野 その精神。で、夏では読者さんたちの中で物語を担う人たちが生まれるのにそこそこの時間がかかる可能性も考えていたんですが、もうそこに怯えなくてもいいな、と。エンターテイメントとしては、短くずばっとやる方が、普通は面白いんです。
河端 なので、次は短くずばっとやるイベントを、ということですね。
河野 反対に、薄い企画を長めにやる、みたいな方向も考えたんですが、ロケットが「そうじゃない」と(笑)。
河端 僕もそう思いますよ。「夏は濃すぎた」っていいながら、じゃあ薄めるのは違うだろ、って気持ちはあります。
河野 運営が必死な感じも面白みなんですよね。実際、必死だし。作り手側に立つと、「それは無理だろ」と思うことを積極的に取り込みたい、という意識はあります
―― たとえば、どういう部分ですか?
河端 原稿の書き方もすごいですよ。
河野 このシーンの原稿はあと3分であがる見込みだから、2分余裕をみて5分後に公開、みたいなやり取りが日常的に行われています。
河端 2分余裕ってなんだよ、と(笑)。
河野 あとは、読者を信頼しすぎている。
河端 本当に予防線を張らない企画なんです。「なんとかしてくれるだろう」と、根拠がなくても信じるところから始めるという。
河野 ぜんぶ本気だから面白いんですよね。
河端 もし読者がイベントに失敗したとき、いちばん慌てるのは確実に運営ですよ。もちろん失敗することも考えているんですが、そんなもの作り込むくらいなら成功したときをもっと面白くしろ、というのがロケットの考え方なので。
河野 ガチな感じは、イベントを体験していただければわかると思います。スタッフにさえ情報規制がかかったりしますからね。
河端 僕は、失敗したパターンもちょっとみたい(笑)。
河野 ストーリーとしては面白いですよ。でも運営が死にかけるからみたくない(笑)。
―― あまり2部の話題になりませんね。
河端 ばれた(笑)。
河野 まあ、頑張って作ってます、とだけ。本番は24日、25日ですが、すでにプレイベントが行われていたり、小説の更新が始まっていたりしますので、その辺りをチェックしながらお待ちください。

  →第2部の情報はこちら
■最後に
―― 最後にひと言ずつお願いします。
河野 本当に、ほかの人に3D小説を作って欲しいですね。少年ロケットだけじゃなくて。
河端 僕たちがロケットに付き合うのも限界があるから(笑)。
河野 うん(笑)。今の時点で、私たちは全力で3D小説を作っているので、これ以上は難しい。
河端 単純に物量を作れないんですよね。
河野 だからいろんな人が作ってくれると嬉しいです。3D小説という構造自体面白いと思うので、ぜひ。
河端 たぶん作る人によって、いろいろ違ってくると思うんですよね。
河野 幅広いアイデアを載せられる企画なので、作り手が変わると面白みも変わると思います。だからこそ他の人が作った3D小説を遊んでみたい
―― 3D小説の新たな切り口での誕生に期待ですね。もちろん少年ロケットこれからのアクションにも大注目しております! 本日はありがとうございました!
河野
河端
ありがとうございました。
■3D小説『bell』関連twitter/webサイト  主に、「3D小説公式サイト」と「少年アカウント」をチェックしていただければ、おおよそ企画の流れはわかる構造になっております。

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