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2015年4月 著者インタビュー(2)

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3.『つれづれ、北野坂探偵社(4) 感情を売る非情な職業』、階段島シリーズ(2)『その白さえ嘘だとしても』』

―― 先ほど「作家」らしい発言のあった河野裕さん(笑)、3月にはついに「つれづれ、北野坂探偵舎」シリーズ(以下「つれづれ」シリーズ)の第4巻が刊行されました。
河野 1年ぶりになってしまって申し訳ありません。
『つれづれ、北野坂探偵社(4)感情を売る非情な職業』
 著:河野裕 イラスト:秀良子 角川書店

 神戸北野坂に佇むカフェ「徒然珈琲」には2人の「探偵」がいる。1人は元編集者、1人は天才的な作家。彼らは幽霊にまつわる謎を、まるで物語を創るように会話しながら事件を推理する。

 2013年夏に第1巻が刊行されてから、本作で第4巻を数える人気シリーズ。グループSNEの地元、神戸を舞台にした異色探偵物語です。

―― このシリーズはバディタイプのちょっとライトなミステリですが、実は「ブラックストーリーズ」に通じるところがあるんじゃないかな、と。
河野 ええ、そうなんです。
安田 んんっ? (一瞬、目を白黒)
―― 2人の探偵が謎に対して会話しつつ真相に近づいていくというところに、ちょっと通じるものがありません?
安田 ああ、言われてみれば、たしかに。で、みなさん、この第4巻はぜひ楽しんでください! 作家の新人賞レースがテーマになってるんだよね。
河野 ええ、そこは非常に興味のあるところだし、もともと小説業界に踏み込んでいこうとしてはじめた企画だったので。
安田 そういうのは小説を書く人はもちろん、読む人にとってもやっぱり興味のあるところだと思うんだよね。
―― はい、すごくあります!
安田 もちろん裏話ばっかりになっちゃうのはよくないけれど、この小説はそうじゃない。面白いので、ぜひ読んでほしいですね。まあ、ぼくの望みとしては2冊出たら嬉しいんだけど。
河野
・笠井
……? (上下巻でってことかしらん?)
安田 2冊は無理かなあ。でも、年に1.5冊出ると最高なんだけどな。
河野 ああ、一年に、ですね(笑)。
安田 ぼくはミステリが好きですからね、1巻のときのインタビューはぼくがやってるでしょ。(→2013年9月著者インタビュー)。それからも、このシリーズは原稿だけじゃなくて、本が出たらすぐに読んでますよ。
河野 ありがとうございます!
安田 でも、河野はすごいね。3月(本書)、4月(『ブラックミステリーズ』)、5月(『その白さえ嘘だとしても』)、と3ヶ月連続で本が出ます。月刊河野だね。
―― というわけで、安田均一押しの「つれづれ、北野坂探偵舎」シリーズ第4巻『感情を売る非情な職業』絶賛発売中です! テーマは文学賞の賞取りレース。ぜひ、書店にてお手に取ってくださいませ。そして、いま話題に出た『その嘘さえも白……』――あれ?
河野 そのさえだとしても』です(笑)。
安田 タイトルが覚えにくいな。(笑) いいタイトルなんだけどね。
―― ごめんなさい(汗)。で、本書は2014年夏に新潮文庫nexから出た階段島シリーズ第一作『いなくなれ、群青』(以下『群青』)の続編になるんですね。
階段島シリーズ
2014年夏に第一作『いなくなれ、群青』が新潮文庫nexから刊行されました。
舞台は階段島と呼ばれる不思議な島。「魔女」が統べると言われるこの島に、人々は直前の記憶を失って送りこまれてきます。だれもがなにかしらの「欠陥」(欠けた部分)をもっていて島に「捨てられた」のです。
主人公の高校生、七草もその1人です。七草が出会うはずのない少女、真辺由宇と再会したところから、物語は徐々に動きはじめます。

(右のカバーイラストは第1巻『いなくなれ、群青』です)

―― というように、いかにも謎に満ちた舞台ですが、1巻の『いなくなれ、群青』の最後で、その最大の謎「階段島」の真実はすでに明らかになってるんですよね?
安田 河野くんはそうやってちゃんと結末をつけるんですよ。なのに続編? って思う気持ちはわかるよ。
河野 そうですね、私の場合、他のシリーズでも同じなんですが、1巻は基本設定をきちんと説明するという意識で書いているんですよ。だから、そこからストーリーがつながっていくのは、私としては当然のことなんですけれど。
―― そこは2巻を読んで、すごく納得しました。たしかに、まだたくさんの謎が残されているんですよね。階段島のすべてを担っている魔女のこととか、ふつうなら階段島にはやってこない小学生の男の子とか。
河野 あ、2巻では魔女が登場しますよ。
―― あれにはびっくりでした! 謎の魔女がどこでどのように登場するかは、ぜひみなさんご自身の目でたしかめていただきたいと思います。
で、ちょっと世間話になるんですけど、我々はみんな、なにかしら内部に欠けた部分を抱えてるじゃないですか。失敗を極度に怖れるとか、知らない人と話せないとか。階段島の住民はそこがちょっと強く出てしまった人たち。だから、この小説から性格診断ができるんじゃないかな、と。
河野 あはは……。
―― たとえば、悲観主義のあなたは七草くんタイプとか、間違ったことを見逃せないあなたは真辺さんタイプとか。
安田 なるほどなあ(笑)。
―― じゃあ自分はだれなんだろう、と考えると、さんだったんですよ。で、堀さん気分で2巻を読んでて、最後に「ぎゃわわ」ってなりました。「ちゃうちゃう、そんなつもりやなかってん」って。
河野 あははははは!
堀さん:階段島に住む七草の同級生。口にした言葉が誤解を招くのを怖れるため極端に無口。そして一週間分の言葉をまとめた分厚い手紙を七草に送る。
安田 そういうことってあるね、読んでて、それ違うって思うこと(笑)。でも、感情移入できるっていうのは大事なことです。「ああ、わかる」と読んでる人に納得してもらえたら、作者としては勝ちなんだよね
―― そういう意味では、どの登場人物にも共感できますね。彼らは少し極端なだけで、我々みんな欠落した部分を持ってます。歳を重ねるうちに、そうした部分はうまく隠せるようになってくるんだけれど、そこをまたえぐり出されたみたいな感じ、と言えばいいのかな?
河野 そうですね、人ってこういうものだろうと考えながら書いていますので、そういうふうに感じてもらえる作品になっていれば嬉しいです。
安田 (独り言のように)タイトル、か。フレドリック・ブラウンに『真っ白な嘘』というのがあるなあ。(フレドリック・ブラウン:1906年~1972年 アメリカのSF/ミステリ作家)
河野 おお、そんな本があるんですね?
安田 あるんだよ。河野くんはね、最初の作品ときにも言ったと思うんだけど、なんだかブラウンを連想させてね。ブラウンは日本だとよくできたユーモア・ショートショートの作家と思われてるけれど、他では哲学的とかニューロティックな感覚もあって読んでて面白いんです。取り憑かれた論理的な部分というのかな、ちょっと不気味な部分もある。逆に、泣かせもうまいしね。
―― 少し話がずれるかもしれないんですけれど、河野さんの場合もインタビューするとき、うまく1つのジャンルに当てはまらないんですよね。とくに階段島のシリーズはミステリともファンタジーとも学園ものともくくれなくて。
安田 そうでしょう! でも、河野くんがいい話を書くのはわかってるんですよ。そして切なさもある。
―― そして、2巻のほうがより甘酸っぱい
河野 そして、2巻のほうがエンターテインメントしてる(笑)!
安田 甘酸っぱいというのはなにも若い人だけのものじゃない。大人だって甘酸っぱい感覚というのはあるわけだからね。その辺のところを、上手く書ける人だな、と思ってます。
河野 ありがとうございます。
―― ……ごめんなさい、これじゃ、インタビューじゃなくて座談会ですね?
河野 いえいえ、大丈夫ですよ(笑)。
安田 ミステリ的な部分があるからインタビューは難しいんだよね。そして、河野くんの作品は言いたくなるんだよ、実はこうなんだって(笑)。
―― そうなんですよ。では、ちょっと軌道修正しましょう。1巻は主人公の七草くん視点で語られていましたが、2巻では登場人物たちのそれぞれにスポットがあたっていますね。
河野 ええ、主人公の七草の他、委員長こと水谷さん、ゲーム音楽を手放せない佐々岡くん、郵便局の職員である時任さんの4人の視点で描かれています。
―― ストーリーとしては、どういったものになるのでしょう。
河野 クリスマスイブ1日の出来事なんですが、彼らが絡みあっていろんなことが、うん、本当にいろんなことが起きます。
―― 読んでて大変でした。もう時間ない、間に合わない、ああ忙しい忙しいって『不思議の国のアリス』の白ウサギの気分でした。
河野 ですよね。インタビューとしては、あとは笠井さんの感想を書いておいてくだされば、それでいいですよ?(笑)
―― ほんと? じゃあ言いますね。私は階段島に住みたいです
安田 ああ、その感覚わかるなあ。
―― えっ? (ボスはとても現実世界に順応しておられるように見えますが?)
安田 なんとなく気楽な感じがするんよね。日本の原風景というのかな。階段島は言ってみれば共同体なんですよ。
―― たしかに。そして、だれもが欠陥を持っていて、そのために自分が「捨てられた」ことを知ってるから、人の欠陥にも寛容な気がします。衣食住の不安もないし。
河野 なかなかいいとこでしょう、階段島(笑)。
―― もう一つ言うと、「階段島」シリーズと「つれづれ」シリーズを比べると、「階段島」の文体のほうが河野さんらしくて、「つれづれ」シリーズはストレートな感じですね。
河野 ああ、そうですね! 実は私のなかに「サクラダっぽさ」みたいなのが漠然とあるんです。それが「階段島」シリーズをはじめたおかげで、そういう「サクラダっぽさ」を全部「階段島」に預けることができたのが大きいと思いますね。
「サクラダリセット」シリーズ:多くの読者を獲得した河野裕の長編デビュー作。角川スニーカー文庫から全7巻で刊行されています
安田 ああ、それはすごくよくわかる!
河野 だから、特に「つれづれ」の4巻はいい感じにサクラダっぽさが抜けて、より「つれづれ」っぽくなってると思います。
安田 ところで、『その白さえ嘘だとしても』は比較的うんうん悩まずに書いていたように見えたけれど?
河野 それは、この作品については最初にきちんとプロットを詰めていたからですね。ふだんは、あまりそういう書き方はしないんですけれど。
安田 そうだね、小説を書くときって話が思わぬ方向に進んでしまうことがあって、でも逆にそのほうが広がりが出たり、いいアイディアが出てきたりするんだよね。
河野 ええ、壁に当たって悩んで、それを乗り越えたときに成長を実感できるような気がするんです。でも、この作品は最初に細かくプロットを立てて、それに沿って書きましたし、そういう書き方をした甲斐のある作品に仕上がったと思います。
―― おっしゃるとおり、2巻の最後は緻密な伏線が回収されていき、ぱちんぱちんとパズルのピーズがはまっていくような快感がありました。でも読者のみなさん、それに騙されちゃだめですよ、階段島にはまだまだ多くの謎が残されていますからね!
安田 ぼくは初校の段階で読んだけれど、ちゃんと本の形で読めるのが楽しみですね。
―― 5月28日(木)、階段島シリーズ第2作『その白さえ嘘だとしても』を楽しみにお待ちください。
安田
河野
よろしくお願いいたします!


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