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株式会社グループSNEオフィシャルサイト

『ソード・ワールド2.0 RPGスタートセット』

 2015年8月8日、末広がりの日についにヴェールを脱いだ『ソード・ワールド2.0 RPGスタートセット』(以降、『スタートセット』)
 『ソード・ワールド2.0』(以降、『SW2.0』)は日本でいちばん遊ばれているテーブルトークRPG――そんな自負はわれわれにあるものの、初めて遊ぶ人にはちょっと難しいかなという不安もずっと抱いていました。
 そこで、
「ここから始めるTRPG」――初心者の入門にぴったりの作品を目指し、SW2.0班と、ボードゲームのメーカーとしてのグループSNE/cosaicがタッグを組み、すばらしい作品ができあがりました。
 今回のインタビューでは、制作メンバーが抱く思いや裏話などを聞いています。参加してくれたのは、陣頭指揮を執った
藤澤さなえ、オブザーバーの清松みゆき、シナリオの作成にあたった川人忠明の3名です。また最後に、監修の安田均からのコメントもありますのでお見逃しなく!

プレイ人数 1~6人
プレイ時間 60~120分
対象年齢 13歳以上
監修 安田均
北沢慶/藤澤さなえ/グループSNE
発売日 2015年8月8日
価格 4,500円+税

※企画ページはこちらへ。製品情報、エラッタなどが掲載されています。
2015年07月
記事作成 柘植めぐみ




1.スタートセットのスタート

―― 本日はよろしくお願いします。
一同 よろしくお願いします!
―― まずは発売おめでとうございます。
藤澤 ありがとうございます。まさか出るとは!
―― な、なにをいきなり。
清松 まあまあ。ここまで来るのに紆余曲折があったからねえ。
―― ほほう。では、そのあたりからお聞きしましょうか。そもそも初心者向けのセットを作りたいと思われたきっかけは?
藤澤 じつは『SW2.0 ルールブックⅠ』が出たときから、初心者用のものをずっと作りたかったんです。
―― そんなに前から?
藤澤 はい。技能を絞って、ルールをめっちゃ少なくして、箱でも本でもいいから、とにかくそういうものがほしかったんです。なぜなら……。
―― なぜなら……?
藤澤 ルールブックを読むのが苦手だから!!!
一同 (笑)
藤澤 それで一時期、コミック形式のルールブックをやろうという話が出て、実現化しそうになったんです。TRPGってよく「接触感染する」って言われるように、1回やれば面白さがわかるんですけど、その1回目がなかなか難しくて……。その1回を乗り越えるにはコミックがいちばんだと思ったんです。楽しんでる表情とか、キャラクターとか、目で見てわかるから。でも結局はその企画も頓挫しちゃって。
清松 そんなとき、グループSNEがメーカーとしてゲームを出すようになったんだよね。
藤澤 はい。それで「SNEで出せるんじゃないか」という話になって。「やります、やります!」って飛びつきました。わたし自身は、まさかここまで豪華なBOXになるとは思っていませんでしたけど。
―― せっかく大きなBOXになるなら、ああしようこうしよう、と考えた?
川人 やっぱり最初に思ったのは、『D&D』の赤箱、あるいはスターターセットみたいなものにしたいってことかな。
清松 少なくとも「筆記用具を使わずに遊べること」は重要だったね。
藤澤 はい!
清松 で、思いついたのは、キャラクター用紙を型抜きみたいにして、そこに能力値のチットをぺこぺこはめていくってもの。でもそれをすると、数字のチットがいくつあっても足りない(笑)。コスト的にあかんのちゃう、と。
藤澤 一応わたし、サンプルを作ったんですよ! デザインも考えて。チットをはめ換えるなら、隙間は4mmがいいなとか、全部やりました。でも……現実的じゃなくて(苦笑)。
―― それでキャラクターカードの形になったんですね。
清松 うん。裏表を使って2回まで成長できるようにして。
川人 やっぱりビジュアルで理解できるっていうのは大事だよね。
―― そういうところから企画が始まったわけですが、リーダーシップは藤澤さんがとることになったんですね。
藤澤 はい。ただ、BOXになったということで、わたしがもくろんでいたものとは全然違って……最初はなにをどうしたらよいのかわかりませんでした。
清松 でも、藤澤さんが動かないと俺たちも動けないからね。あくまでイニシアティブは藤澤さんにとってもらって、俺たちは実働部隊として作業をしただけ。
藤澤 ほんと、みなさんに助けられながら進めました。じつはわたしが書いたのはソロアドベンチャーだけなんです。あとはみなさんに書いていただいて。
川人 でもコンセプトは藤澤さん一任だったよ。
藤澤 キャラクターや装備品をカードにしたら、というお話は最初から社長も清松さんもおっしゃっていましたし、タイルの案は、今回の進行役を務めてくださった秋口ぎぐるさんが言い出しっぺです。
清松 じっさいにタイルを誰に作ってもらおう? となったときに、川人くんに参加してもらったんだよね。
川人 そう。じつはそこから加わったので、詳しい事情は知りません(笑)。
藤澤 カードはこんなふうに並べたらいいんじゃない? というのは清松さんから意見をいただきました。
清松 昔、『ソード・ワールド カードRPG』という作品があってね。あれ自体は商業的にはうまくいかなかったんだけど、数値の場所合わせて一覧的に組み合わせるという部分の実用性は、評価高くてね。捨てることもなかろうと。
藤澤 最終的には、ルールブックを読むのがめんどくさいわたしが(笑)、これくらいならいけるかな、という取捨選択をしました。マギテックを入れると説明が増えるからやめよう、そうすれば魔動機文明についての記述は不要、片手と両手の両方で使える武器を入れると戦闘中に持ち換えるときのルールが必要になるからやめよう、というふうに。
清松 俺たちがやると、あれも入れたい、これも入れたいになってただろうからね。ちょうどよいくらいに絞ってもらえた。
藤澤 はい、わりとわたしが好き勝手にナタを振るいました。


2.内容物てんこもり

―― コンセプトが固まったところで、各自で作業を分担したわけですね。ルールブックはどなたが?
藤澤 北沢さんです。本日はお忙しくて来られていませんが。
―― で、タイルを川人さんが作って……。
藤澤 シナリオブックはソロアドベンチャーをわたしが作り、複数人シナリオ3本を川人さんにお願いしました。
川人 もちろん最初に藤澤さんと、どういう構成にしようか、一緒にプロットを立てたよね。
藤澤 はい。それからわたしはカードのデザインをすごく考えました。キャラクターを中心に置いて、装備品やアイテムをどう配置したらわかりやすいかとか。
―― カード自体の見やすさも重要だよね。
藤澤 魔法カードやモンスターカードはデータの列記なのでDTPデザイナーさんにお任せできたんですが、キャラクターまわりはどうしても……。ここだけの話、じつは最後の最後に、抵抗力の数値が入っていないことが判明して焦りました(苦笑)。
清松川人 (爆笑)
―― へっ?
藤澤 入っていなかったんですよ~。いまはHP・MPと一緒に抵抗力の数値が入っているんですが、ここにHPとMPしかなかったんです、ずっと。
―― おいおい。
藤澤 てへ。やばかったです。いまとなってはよい思い出ですが。
―― あ、そうだ。デザインについて1つ訊きたかったんだ。普通ならキャラクターカードの左右に武器と防具を並べそうなものなんだけど、どうして防具は縦長のカードで横に置いて、武器は横長のカードで下に置くの?
藤澤 だって、武器には威力表が必要じゃないですか!
―― あ……そうか!
藤澤 威力表がちゃんと見えるようにしたかったんです。アイテムも魔香草みたいに威力表が必要なものがあるので、やっぱり横長です。
―― なるほど、めちゃくちゃ納得した。
藤澤 掲載するデータは、これを使って『SW2.0』本体も遊べるように、すべてのデータを入れています。
―― 導入するかどうかは取捨選択するけれど、導入するからには全データを入れる、と。そういうコンセプトなんだね。
藤澤 セッションのときにそのままコンバートできるようにしてあります。刃のついた武器なのか、魔法の武器なのか、魔法の発動体として使えるかどうか、ということも全部アイコンで入れました。
清松 『スタートセット』では飛び道具の射程距離は必要ないんだけど、あえて入れたりね。
―― モンスターも全データが入っていてわかりやすいですよね。同じモンスターのカードが複数枚あるので、たくさん出てきたら並べて使えるし。
藤澤 これまで何度かイベントでGMをしたんですが、みなさんどんなモンスターだろう? って興味津々で。みんながモンスターカードを見たがるので、結局戦闘で使われるのは1枚だったりしましたが(笑)。
清松 モンスターカードについても、最初はすごいこと考えてたよなあ。部位ごとに1枚ずつにしようか、とか(笑)。
藤澤 3枚セットとか言ってましたね。戦闘で部位がなくなるごとに1枚ずつ落ちていくと面白いかな、とか。
―― また無茶を。結局、部位のあるモンスターは入れなかったんですっけ?
清松 いや、キプロクスだけ3部位。
藤澤 「部位」モンスターソード・ワールド2.0「ならでは」なので、残したかったんです。
―― 藤澤さんのこだわりがあちこちに見られますね。
藤澤 データは削りたくなかったので、それゆえの苦労もあって。『スタートセット』にはエンハンサーがいないので、「練技」が特殊能力扱いになっていたり。
―― ああ、このボガードソーズマン。
藤澤 『SW2.0』をご存じの方には、なんでこいつだけ練技使えるんだよ~って怒られるかもしれませんが。
―― でも初心者さんなら、いずれ本格的に『SW2.0』を始めたときに、「あ、自分もエンハンサー技能を取れば使えるんだ!」と気づいて嬉しいかもしれませんね。
藤澤 そうなるといいなと思います。
―― カードにはルールブックの参照ページも書かれていますよね。
清松 初心者さんにやさしく、と同時に、普通に遊んでいる人にも楽しめるものを、というのがコンセプトとしてあったからね。
―― そうだ、マスタースクリーン! 『SW2.0』では初めてですよね。
藤澤 はい。
川人 ほしいという声はずっとあったよね。とくに行為判定一覧がいちばん嬉しいんじゃないかな。GMするときに。
―― でもこれ、デザインは大変だったんじゃ?
藤澤 なにを入れたいかはさくっと決まったんです。これだけの情報を載せたいんです、とデザイナーさんにお渡ししたら、ぎっちぎちでしたね。
―― 3面分の今野隼史さんのイラストもすごいですよね。向かって左面のイラストがBOXにも使われていますっけ。
藤澤 マスタースクリーン正面は、「ソード」ワールドという世界の象徴的な意味合いが強いものです。それを挟んで左側に冒険者、右側に蛮族という構図なんですが、BOXの表紙としては、相談して主人公である冒険者たちを選びました。
清松 今野さんはラフを描いてくださったときに、「これこれこういうイメージです」ってアツい文章を添えてくださって……ありがたいことです。
―― 全体的にイラストの出来もすばらしいですよね。
藤澤 とくにピンゾロチットはバカウケですよ。
―― そこも不思議だったんだけど。『スタートセット』には経験点の概念がないから、ピンゾロを振っても意味がないんじゃ?(『SW2.0』ではピンゾロ=ダイス2個が両方「1」の場合、50経験点がもらえます)
川人 そう、あくまでこれは勲章(笑)。
藤澤 イベントではすごくウケますよ。「あちゃ~(汗)」ってなったときに「はいっ」と渡されるとなごむそうです。一度GMしたとき、5人中4人がピンゾロを振って、あとの1人が「ぼく最後までもらえませんでした」ってすごく寂しそうにしていました。
川人 あれ、「ティキラ」だってわかってもらえてるかな?
―― ティキラ?
藤澤 『SW2.0』にはピンゾロを振ったら笑う魔神がいるんです。
―― そうだったのか。
清松 出目が悪いということを笑い話にできる、場をなごませるものがほしいというのは最初から言ってたよね。
藤澤 どういうチットなら笑えるかな、ということで、ティキラさんに「ドンマイ!」と言ってもらうことにしました。コンポーネントのなかでいちばん明るいチットです。
―― これ、笑われてるんじゃなくて元気づけてもらってるんだ!
藤澤 はい、そうです。
―― 内容物について他には……ダイスも入ってるし、HPやMPを記録しなくていいようにダメージ用のマーカー入っていますよね。いたれりつくせり。
清松 HPダメージマーカーも悩んだな。最初はチットにするはずだったけど、結局、宝石みたいなトークンになったっけ。
川人 ボードから抜かなくていいし、よかったかなと。
藤澤 じっさいにプレイすると使いやすいです。1点と5点の大きさの区別もしっかりつきますし。HPダメージマーカーは赤いから、みなさん、ケガをしたら「わあ、血が出た!」ってキャラクターの絵の上に置くんです(笑)。
川人 不思議とみんなやるよね。血がダラダラ……って。
藤澤 数字の書かれたチットより、感覚的にわかるものでよかったなと思います。
―― MPのマーカーもありますけど、『スタートセット』ではMPにダメージを受けることはありませんよね?
藤澤 だからMPのほうは、MP消費カウンターという名前です。
―― 内容物についてはあと、タイルの話をうかがいたいですね。
川人 じつはあの2倍以上作ったんだけど、半分以上カットせざるを得なかった……。じっさいにプレイしていると、やっぱりあんなタイルやこんなタイルがほしいなあと思います。
清松 もう少し枚数があれば、「ランダムダンジョン作成」もできるようになるからね。
―― そのタイルなんですが……マスに分かれてたりしないんですよね。ざっくり1枚のタイルに見えますが。
川人 そんなことないよ。
藤澤 じつは! こっそりドットが打ってあるんです。
―― え? (まじまじと見て)あ、ほんとだ。区切りの黒い点がさりげなく打ってある!
藤澤 ふふふ。
清松 ルールでは全然触れなかったんだけど、もしかしたらなにかの役に立つかもしれないなあと。
川人 言われれば気づくくらいの目立たなさ。
藤澤 熟練戦闘をしたいプレイヤーさんには目安にしてもらえるかなと思います。
―― 点と点のあいだは何メートル?
藤澤 そこはご随意に(笑)。
清松 使いたいように自由に使ってください。
―― なるほど、あらためて、初心者さんにわかりやすく、ベテランさんにも活用しがいのある作品になっていると思います。


3.ルールブックとシナリオブック

―― さて、ルールブックシナリオブックについてうかがいましょう。ルールは藤澤さんが取捨選択したそうですが……。
藤澤 かなり削りましたけど、それでもちょっと多かったかもしれません。
―― ルールを読んで、シナリオを最初からやればわかる?
清松 いや、ルールは読まなくていいシナリオブックのソロアドベンチャーをプレイすれば、ひととおりのルールはわかるようになってるよ。ルールブックは、困ったときに参照すればいいだけ。
藤澤 はい、ソロアドベンチャーには必要なことはもらさず書いたつもりです。
―― ソロアドベンチャーを作るのはどうだった?
藤澤 夢中になって作りました。ストーリー性もほしくて。ソロアドベンチャーにはドワーフの兄妹が出てくるんですけど、お兄ちゃんがドワーフで、妹がナイトメアなんです。
―― ほほう。
藤澤 これに主人公の人間(名前はブルーノ)を加えて、3人でソロアドベンチャーをクリアするんですけど、そのあとのシナリオもその3人でなんとかなるように作ってあります。ブルーノは主役なのであまり色をつけられませんでしたが、あとの2人をがんばって書いた記憶がありますね。
―― その設定から、『SW2.0』の世界観もわかるよね。ドワーフとナイトメアという一見別の種族がどうして兄妹なのか、とか。
藤澤 お兄ちゃんはちっちゃいのに、妹は大きくて美人、というのがぜったい面白いだろうなあと思いました。このあいだのイベントでも、初めて『SW2.0』を遊ぶ人が物静かな人だったんですけど、みんなが「お兄ちゃん」「お兄ちゃん」って呼ぶのでけっこうロールプレイしてくれて嬉しかったです。ナイトメアの子に対して「妹を助けます」って言ってくれたり。
―― 物語に入りこむ1つのきっかけになったんですね。
藤澤 はい。
―― あとの3本のシナリオは川人さんですよね。思い出はありますか?
川人 殺さないようにするのが大変だった(笑)。……というのは冗談です。BOXに登場するモンスターだけなら、もともとデスシナリオにはならないから。
清松 最初のシナリオは初期レベル、1段階成長して2つ目のシナリオ、さらに成長して3つ目のシナリオといった感じかな。
川人 はい、最後のシナリオの段階でだいたい3レベルになります。
藤澤 サシャ(ナイトメアのソーサラーファイター)だけ2レベルですが。
川人 ソロアドベンチャーのつづきで遊べるようになってて、ブルーノの行方不明になったお父さんを探して、〈星降る都〉という古代遺跡を探すという話です。
―― ほう。3話目でお父さんに会えるのかな?
川人 ひ・み・つ。
藤澤 じつは壮大なプロットがあるんですよ。これは小説になりますよね、って川人さんと言いながら立てました。
川人 3話じゃ終わらないなあ、って。
―― ところでBOXには1プレイ60~120分とありますが、そんなにかかりますか?
清松 慣れしだいじゃないかな。
藤澤 ロールプレイにどれだけ盛り上がるかも関係してきますからね。それでも最大120分だと思います。
川人 イベントでプレイしていても、慣れているプレイヤーさんだとやっぱりNPCに突っこんだりして会話が多くなってしまうから。でもTRPGはそこが面白いんだし。
清松 さくさくっと進むと1時間でじゅうぶん終わるよ。
―― 先ほど、コンバートできるという話が出ていましたが、SNEのホームページにもすでに記事が載っていますよね。
藤澤 はい。まずはキャラクターカードのデータをどうキャラクターシートに書き写したらよいのかというところを記事にしました。
清松 本格的にやってみたいと思った人は、『ルールブックⅠ改』さえあれば遊べるよ。


4.たくさんのイラスト

―― イラストレーターさんについてお訊きしましょう。BOX、マスタースクリーン、キャラクターは今野隼史さんに描いていただきましたよね。他のアイテムやモンスター、タイルも、見栄えするすばらしいイラストだと思いますが、どなたが?
藤澤 岡田真奈さんという若手の方です。
川人 モンスターの気持ち悪さを出していただくのに苦労されたと思いますが、最終的にとてもよいものになりました。
―― アイテムは?
藤澤 やっぱりその方です。イラストは、今野さんの他にはこの方だけなんです。
―― えっ? す、すごい量だよ?
藤澤 タイル、アイテム、モンスター、チット、全部この方です。ものすごくがんばっていただきました。
―― す、すごいですねえ。
清松 そういえばあと、ルールブックのマップのイラストレーターさんがおられるね。
藤澤 本当は布マップを入れたかったんですが、コストの都合で無理でした。
―― やっぱり拡張は出したいですよね?
藤澤 お客さんからも「つぎはいつですか?」とよく訊かれます。ぜひやりたいなと思っております。
―― どういうものが求められているのかな?
藤澤 『ルールブックⅠ改』『Ⅱ改』に収録されている他の種族でも遊べるようにしてほしいとか、追加する技能ではコンジャラーを入れてほしいとか。コンジャラーがいないのでモンスターのゴーレムが出せないし。
川人 マギテックシューターがやりたいという声もあるかな。
清松 でもそれを言ってるとキリがないからね。『スタートセット』はあくまでスタートするためのものであって、慣れたら『SW2.0』をやってもらえばいいという考え方もあるよ。
藤澤 そういう意味では、わたしがやりたいのはソロアドベンチャーの充実かな。今回、ブルーノ用だったので、つぎはノントン(タビット)のストーリーとか。どのキャラクターにどんなことができるのか、わかりやすく。ルールブックを読まずに理解できるようにしたいです。これはわたしの勝手な思いですが。
川人 遊びの幅を広げるという意味で、純粋にタイルは増やしたいかな。
―― シナリオについてはどうですか?
川人 作れるものなら作るけど、これをきっかけに自分でGMとしてシナリオを作ってもらうことが大切かなとも思うよ。
藤澤 わたしたちとしては、あまり凝ったことはしないでいこう、と思っています。
―― シナリオと言えば、「Role&Roll」誌の7月売り号(Vol.130)に紹介記事が掲載されて、8月売り号(Vol.131)にシナリオが2本載っていますよね。
藤澤 はい、ぜひ遊んでください。続けて遊べるようになっていて、対応レベルは1レベルと2レベル。3レベルのシナリオは終わり方によって自由に作ってください!
―― 本日は面白いお話をありがとうございました。最後にひと言いただけますか。
清松 とにかく楽しく遊んでください!
川人 これを使って自分でもシナリオを作ってもらえると嬉しいです。普通のセッションにも大いに利用してください。
藤澤 わたしたちが考えもしなかった使い方を思いついてもらえると嬉しいです。これからも応援よろしくお願いします!
―― ありがとうございました。



 ……インタビューはまだ終わりません! 今回、藤澤さなえを支えてあれこれ助言と監修を行った安田均に、『スタートセット』に対する思いを聞きたいと思います。


―― 『スタートセット』は思ったとおりの作品になりましたか?
安田 なったなった、これだよ! グループSNEがボード/カードゲームのメーカーとなったことで、そうしたゲームを定着させたいとか最先端のものを作りたいという思いは間違いなくあるけれど、同時に最初から、「RPGのスタートになるもの」を作りたいという思いもずっとあったんだ。
―― 『ゴーストハンター13 タイルゲーム』もストーリーのゲームですよね。
安田 あれは「ボードゲームでRPG風のものを」というのがコンセプト。いま、雑誌の「Role & Roll」「RPG新転回」という記事を連載しているけれど、あそこで「こういう形があるよ」と紹介しているようなゲームと言えるかな。
―― 『スタートセットは』その逆だと?
安田 そうだね。「ボードゲームのよさを取りこんだRPG」を出したくて、それなら『SW2.0』のスタートセットしかない! と思ったんだ。メーカーを始めて1年半、ようやくそういったものを出すことができて嬉しいよ。やりたいこと全部を入れられなかったのは残念だけど――布マップ、来年には? これが今後の課題(笑)。
―― じっさいにあれこれ指示を出されましたか?
安田 ぼくがやったのは、内容のバランス、なにを取りこむかの注文くらい。ゲームブックスタイルのものとかね。ぼくとcosaicの秋口くんが注力したのは、できてくるものをコンポーネントなどどう製品化するか、ということかな。
―― BOXという形はとても新鮮だったかなと思います。
安田 いやいや、「BOX型のRPG」は、ぼくたちの世代にとっては基本形だよ! 『トラベラー』だってそうだし、そもそもシミュレーションゲームもドイツゲームもBOXじゃないか。ぼくたちにとっては心の故郷の形――時代がラセン的にひと巡りして、改良されて、それを提示したかったんだ。
―― なるほど。では、最後にひと言いただけますか?
安田 『スタートセット』は、RPGファンだけでなく、ボードゲームファンにも喜んでもらえるものになっていると思います。ぜひ、いろんな人たちに遊んでほしいですね。
―― 本日はありがとうございました。
安田 『ブラインド・ミトス』もよろしく。こちらはストーリーゲームでも、RPG+ボードゲームの別の面白さがぎゅっと詰まった作品になっていると思います。
―― よろしくお願いします!


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