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2015年11月 著者インタビュー(2)

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『三宮ワケあり不動産調査簿 賃貸マンション、怪談つき』
インタビュー

KADOKAWA「富士見L文庫」から『三宮ワケあり不動産調査簿 賃貸マンション、怪談つき』が10月に発売されました
兄は不動産鑑定士で神主!? 噂の心霊物件、正しく査定します!
神戸三宮にある「高比良不動産鑑定事務所」。主人公の茅夏(ちか)が働くことにした、兄・陸生(りくお)の営むその職場は、事実上その手の“霊的物件”専門の鑑定事務所だった!
今回著者である秋田みやびにインタビューを決行。
秋田節が炸裂する今回のインタビュー、どんな話が飛び出すのか、その模様をご覧ください!
インタビューアーは黒田尚吾が務めさせていただきます。
2015年11月
記事作成 黒田尚吾


―小説を書くことになった経緯―

――: 「三宮ワケあり不動産調査簿 賃貸マンション、怪談つき」についてお話を聞かせていただきたいと思います。よろしくおねがいいたします。
秋田 よろしくです。
――: リプレイであったりとかゲーム小説のイメージが強い秋田さんなんですが、今回現代をモチーフにした小説を書くことになったきっかけを、まずは聞かせてもらっていいでしょうか?
秋田 あとがきでも書いたんですが、JGCでTRPGリプレイを担当していただいてた元担当さんとお話……というか雑談をするきっかけがありまして、その方が今はL文庫で働いているという経緯で、今回のお話を頂きました。
「秋田さんどんな小説好きなんですか?」みたいないわゆる心情調査というか雑談から始まって「あぁ! 探ってる! 探ってるぞ!」っていう感じのやりとりをしました(笑)。好きな傾向の物とかやってみたいことを話したり、実はこういう部署におりましてというお話を聞いたりしつつ、トントン拍子で話が進んでいきましたね。
――: 今回ホラーやミステリーなど様々な要素が混ざっているジャンルの小説なんですがその方向性も雑談の中で決まったということでしょうか?
秋田 はい、オカルトもの好きとか推理小説好きとかはもともと言っていたので、方向性というのは初期から決まってました。後、ありがたいことにプロットを出したら割と1発OKだったのでそこに関しても非常にスムーズでしたね。


―個性豊かな登場人物―

――: まずはキャラクターですよ、個性豊かで見てて飽きないですね。僕イケメン大好きなんですよ。イケメンは見ててスカッとします。
秋田 あははは(笑)。一人もイケメン出てこなかったですね。
――: ええ!? イケメンパラダイスじゃないですか。
秋田 だってよく考えたらマッチョ、ヤンキー、デブ、チャラ男ですよ?
――: いやいや、その尖った感じがいいんですよ。よくある完璧超人もいいですが足りてない所に魅力があるのです!
秋田 でもまぁ、なんでこの設定が通るんだよって思いながら書いてましたから。もう好きなようにやらせていただきました。
――: 僕は荻桂一郎というプヨプヨしてるキャラがなんか好きなんですよね。見た目的に一般的にはイケてないんですが雰囲気が癒し系といいますか。
秋田 彼の言動は出てくる男どもの中で一番マトモですよ。担当さんも荻桂一郎が一番のお気に入りですし。気が付いたら「ベイマックス」っていうあだ名をつけてたりして。
――: 僕もインタビューメモのキャラクター特徴の所に「マシュマロマン」って書いてます。
秋田 愛されキャラですね、荻桂一郎は(笑)。
――: ちなみに、ご自身が書いていてが一番好みの男性は誰でしょうか?
秋田 うーん、どれも嫌だなぁ。
――: ええええ!陸兄(主人公の兄)とかいいじゃないですかー。
秋田 私キャラクター書くとき短所から決めるんですよ。
――: へぇー、そのキャラ設定の決め方は興味あります。
秋田 小説書いてると読者はそのキャラクターの良いところを見出してくれるというか感情移入なりして好きになってくれるんですよね。物語においてカッコいいって普通じゃないですか。主人公と関わってゆくことで、優しいところとか、良いところとかが出てくるわけですよ。私の思う良いキャラクターというのは、短所が魅力的に見えるキャラクターだと思ってるんですよね。
――: では志水颯(しみずそう)というキャラクターを例に挙げるとどうでしょう?
秋田 素行の悪さがまず短所として挙げられますよね。最初はやな奴じゃないですか。見た目もヤンキーですし。でも少しずつ少しずつ良いところが見えてくるんですよね。博識であったりとか、可愛いところあったりとか。地道にポイント稼いでいくわけですよ。
――: 御前尊(おんまえたける)も個人的に好きなキャラクターの1人ですが短所が魅力的にっていうのは当てはまりますね。女癖が悪いという短所も目立ちますが憎めないんです。
秋田 彼も普段はヘラヘラ女の子を追いかけまわしてはいますが、決める所はバシッと決めますから。
――: 主人公は高比良茅夏(たかひらちか)という娘さんなんですがそんなポンコツばっかりに囲まれて完全にツッコミ役に回ってますよね。彼女は一番読者に近い立ち位置のキャラクターというイメージなんでしょうか?
秋田 そうですね、物語は彼女の1人称で書いてますし。ただ少し、他の女性向け小説の主人公と違う所は、そこまで感情的にならずに割と冷静に考えて動ける娘なんですよね。出来るイケメンに囲まれているわけではないので、彼女がアホだと物語が進まないんです(笑)。
――: 言われてみれば、おバカちゃんだと物語が先に進まずそのまま終わっちゃいそうですしね。
秋田 なので彼女は割と空気の読める、人並みの知識を持った、少し引っ張っていってくれる感じの女性として書きたかったんです。
――: 実を言うと割と茅夏ちゃんタイプです。
秋田 ありがとうございます。ちゃんと「それちがうでしょ!」「ソコ駄目でしょ!」って言っていいながら、自分も勿論足りていないところもありつつ周りに振り回される、そんなキャラクターになっていればいいなと。
――: 僕は駄目なタイプの人間なのできっとツッコミ入れてほしいんでしょうね。「コラ」って(笑)。
秋田 周りがボケだらけなので彼女ツッコミスキルは高いですね。
――: 彼女の兄である陸生(りくお)は駄目な感じが他のキャラクターよりマシかなというイメージなんですがどうでしょう?
秋田 実は彼もダメな人ではあるんですが、彼女の家族という事で加点されてるという(笑)。落第点が低く設定されているキャラクターですね。
――: 茅夏ちゃんの他の兄弟なんかもいるみたいですし、その辺の設定も気になるところですね。
秋田 荻さん活躍してませんしね、まだ。
――: おお! 荻スキーの僕としては、荻さんが活躍する回は是非とも見てみたいです。後カーバーイラストで切れてる荻さんかわいそう
秋田 イラストでは腹しか出てないですからね。


―秋田みやびの恐怖論―

――: この小説を語る上でオカルトが欠かせません。ご自身はそういったホラーなんかがお好きということで、文章で恐怖を感じるのと映像で恐怖を感じるのとどちらが好きですか?
秋田 小説ですね。
――: ああ、一緒です。僕の場合は小説は読めるけど映像がダメで。急に驚かされたら誰だってビビりますよ! なんかあれズルくないですか?
秋田 私の場合映像は昼間見ます(笑)。
――: あははは(笑) 怖くないときに見るわけですね。
秋田 でもホラー映像の怖くなるタイミングとか、雰囲気を文章に起こしたり単語にしなきゃいけないんで見ざるをえないんですよね。
――: 今作は1人称で書かれているという事で、特にホラーの部分で自分が体感しているかのような感覚になるんですよね。特に第一話なんかはシチュエーションと描写が中々に恐ろしくって。僕あれ丁度夜読んでて、いやだなぁーって思いましたもん。
秋田 そう思ってもらったら作者としては成功ですね。
――: エレベーターの中の描写があるんですが特にリアルでしたね。何か参考になさったものはあるんですか?
秋田 あの時の描写は体験談を元にしてます。
――: ええええ? マジですか?
秋田 ホラーでというより、阪神大震災での経験ですね。その時、私アパートに閉じ込められまして。
――: そうなんですか!?
秋田 その時は神戸に住んで半年ぐらいだったんですが、アパート全壊窓あかないわで、その時のヒヤッとした焦りみたいなものをベースに書き出したというのはありますね。
完全に部屋がつぶれちゃってる状態でバキバキ音がなったりガス漏れのにおいとかがしてくるわけですよ。
――: 凄まじい体験ですね。だからこそ、僕はその部分を生々しい恐怖と感じたんですね。
秋田 「どうしよう、どうしよう!」という周囲の状況についていけない感覚は特にその経験を参考にしました。
――: 秋田さんは恐怖、心霊、オカルトといった要素のどの部分に惹かれるんだと思いますか?
秋田 自分の知らない世界であったり、人の情念であったりでしょうか。後者に関しては私が割と淡白な方なので、そこまで執着するものがあるかな~的な感覚とかもあります。あと本能に訴えかけてくるじゃないですか、ゾクゾクするあのアドレナリン出る感じ
――: ああ~分かります、分かります。
秋田 やはり、ホラーのそういった非日常的な恐怖やそれを体感させてくれる所に魅力を感じますね。
――: 今作『三宮ワケあり不動産調査簿』なんですが起こりうる事件事象に対して科学的な視点オカルト的な視点双方の分野から切り込む面白い構成ですよね。先にホラーミステリーものを書こうとお決めになったとき、そこに科学的視点を盛り込む構成は頭の中にあったんでしょうか?
秋田 最初からその感覚はある程度ありました。何でもかんでも怪奇現象でまとめてしまうのはそれはちょっと違うんじゃないかなって。これはこれとしてあるけれど、こういう違った考え方もできるんだよ、っていうのは否定しちゃダメだと思ってまして、どっちかが的外れであったとしてもこういう解決方法があるよ、こういう視点があるよって所は必ず入れていこうかなみたいな感じはありますね。
――: 科学的視点というオカルトの逆方向から見るって構図がすごくエンターテイメント性を高めていて、読んでて面白いなって感じたんです。
秋田 ありがとうございます。


―プロットの組み立て方―

――: オカルト要素だけではなくてミステリー要素もこの物語に引き込ませてくれる重要な要素だと思うのですが、そのあたりのプロットはどのように組み上げてるんですか?
秋田 1話に関してはキャラクター紹介的な位置づけの構成を念頭に置いて組んだお話で、2話は世に出ていない「ソード・ワールド2.0」のシナリオなんですよ。
――: えええ! なんか今日驚いてばっかりな気がします。書いちゃっていいんですかこれ?
秋田 ツイッターとかで言っちゃってるんで大丈夫です(笑)。もちろん現代風にはアレンジしているんですが。
――: 全然気づきませんでした。
秋田 それ気づかれたら私失格なので。
――: あ~でも言われてみればそんな感じはします。
秋田 全部ヒント公開して、起こりうるイベント全部起こして、事件の道筋を追っていくっていう構成ですよね。
――: でもそれって読んでる側からすれば情報がまとまってるので読みやすかったんですよね。しかも、読みものとして、ドラマとして、しっかり盛り上がりどころもあり面白いってのが凄いところです。
秋田 2話目どうしようかなと考えた時にこの温存してたシナリオ使えるじゃん、みたいな。
――: そういう意味ではすごく経験が生きている小説ですよね。小説家とTRPGって相性いいんでしょうか?
秋田 短編の探偵小説とかだったらTRPG近しいものがあるんじゃないかなと思ってまして。さぁ犯人は誰でしょうとか、さぁこれは何が起こったでしょうとかそれを、プレイヤー達が話を聞いたり、ヒントを探したり、そこから推理したり、TRPGは小説の探偵がやってる事をまんまやってるんですよね。
――: 友野詳さんにインタビューさせていただいたときにそれに近しい事をおっしゃってて、GMがいてキャラクターがいてそのキャラクター達が動いて物語を作るっておっしゃってたんですよね。秋田さんの場合はシナリオ先にありきでしたが。
秋田 なのでまだ読んでない「ソード・ワールド2.0」好きな方はちょっと見てほしいですね。そこから逆にシナリオ組んでもらえれば(笑)
――: 科学的な観点からという単語が何度か出てきたんですが、そういった科学的な事についてはどうお調べになったんですか?
秋田 この一冊分に関してはまだ何とか今まで読んできた本の情報量で書きあげることが出来ました。
――: 知らない単語いっぱい出てきて、そういう現象があるんだみたいな思わぬ面白い発見がありましたね。それは志水颯が教えてくれたわけですが。
秋田 彼は現実的な視点をもつリアリストなんで。純粋なホラー好きな人には邪魔なキャラクターかもしれませんけどね。
――: 志水颯は科学知識いっぱい知ってるのに見た目ロックってギャップ凄いですよね。
秋田 あれは担当さんとも話してたんですけど、です、ヤツの。いわば戦闘服です。
――: どういうことですか?
秋田 「なめんな!」って周囲に言ってるようなもんで彼のプライドの現れなんですよ。
――: 負けず嫌いな面ありますもんね。
秋田 それが短所でもあり長所でもあり彼の魅力でもあるわけです。
――: 神事や不動産などそれ以外の設定に関しても今までの蓄積でお書きになったんですか?
秋田 そうですね。もちろんそれが合ってるかどうか確認するために調べたりはしますが。
――: 今までのリプレイや仕事の中でその知識は備蓄していったんでしょうか?
秋田 いいえ、趣味ですね完全に。好きな本があってそれを読んでるときに気になることがあったらその事柄について調べたりとかしちゃうんです。浅く広く物事を知りたいという感じでしょうかね。


―はじめての挑戦―

――: 今までリプレイをお書きになってきたわけじゃないですか。普通の小説とリプレイを書く違いって何かありましたか? 物を書くという事について印象変わったとか。
秋田 小説書いてたら私、頭どうにかなるって思いました(笑)
――: あはははは(笑)。
秋田 本当に人にかかわらなくなるんですよ。ひたすら1人で作業して周り見えなくなっちゃうんで、ああ、私リプレイ書かなきゃダメなんじゃないかなーって。
――: 本当に自分だけの世界になるんですね。
秋田 そうそうそう。リプレイは何だかんだいって、セッションを録音したものを聞きながら作業するんですが、このプレイヤーはどういう立ち位置でこういう発言をしたのかとか、どういう考えで行動したのか考えながら書くわけじゃないですか。だから間接的に人と関われてるって感じがするんです。
――: そういう意味では小説ってロンリーですね。
秋田 何ていうか小説は1人でトンネルの中にいる感じで、リプレイと小説の違いは明確に感じましたね。
――: リプレイと小説の書き方って全然違うんでしょうか?
秋田 私の場合、リプレイはセッションでの大きなポイントを抜き出して書いて、それが大きな話として成立しているかチェックします。そのあと書かれなかったどうでもいい出来事は全部捨てちゃいます。私の記憶に残らなかったと言う事は、読者もきっと同じでしょうから。そのあとその大きな流れに細かいピースを当てはめていく作業なんですよ。
――: では小説の組み立て方はどうなんでしょう?
秋田 プロットという形で大きな流れが最初にあって、そういう意味ではリプレイ書くのに似ているのかもしれません。ただ、そこにプレイヤーがいなくて自分で考えるという点が大きな違いですが。だから今までリプレイを書いてきた身としては変な感じでしたね。大変は大変だったけど、初めての経験だったので世界が広がったと言いますか、それが面白くもありました。小説を今まで書いたことが無いというわけではないんですが、ルールとか世界とか設定が決められたものを書いていたので、そこも今までと違った点でした。小説はブロック積みをしてる感じで、整合性を取りつつ話を進めないといけません。だから実際に配管やらまでしっかり書き込んだかなり詳しいマンションの間取り書いたり、家系図書いたり、あれ? 私小説かいてるのに何やってるんだろう、みたいな事を考えながら作業をすすめてました(笑)。
――: めちゃくちゃ大変ですね。
秋田 ここがこう対応して、あそこがああなってっていうのを考えながら間取りやら何やらの舞台装置を作っていきますし、対応するジャンルも幅広いので「あれココ合わないな」とか色々と手直ししながら書き上げました。実質的な作業期間は3ヶ月といった所でしょうか。
――: 書き終えた後、どうでしたか?
秋田 その直後リプレイが入ってで余韻無かったですね~(笑) これを書いてた数ヶ月は忙しくて私もつのかなと思いながら書いてましたが何とかもちこたえました! JGCもありましたし修羅の様でしたよ。


―最後に―

――: それでは最後に何かメッセージありましたらどうぞ。
秋田 リプレイのイメージが強い秋田ですがこちらも秋田みやびの1面でもありますし楽しく仕事させていただいた度合いではほとんど遜色なく書かせていただきましたのでもしよければ手にとってみてください。
――: あ、最後にもうひとつだけ!餃子は何つけて食べる派ですか?
秋田 酢醤油ラー油派です。
――: おお、仲間です。その辺の餃子に何つけるという話も作中に出てきますので。
秋田 たまに酢醤油に唐辛子だけとかもあります。
――: 話ふっといてなんですが、この話してると終わらないですね(笑)。
秋田 というちょっとした生活の雑学も入っております、『三宮ワケあり不動産調査簿 賃貸マンション怪談つき』よろしくお願いいたします!


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