ローズ |
お客さん? めずらしいね。 |
GM |
「うん。しかも、もっと珍しいことに、全身血まみれだったそうだよ」 |
リーフ |
それ、お客様というよりは行き倒れっていうんじゃないんですか? |
GM |
「今は巣穴の奥に運ばれて、薬草師のチューリップさんの手当をうけてるよ」 |
ハービィ |
お師匠様の? じゃあもう心配はないかな、もうろくしてても腕は確かだから。 |
GM |
……いま、さらっと失礼なこと言わんかったか、ハービィ。 |
リーフ |
王様のところにいく前にちょっと様子でも見にいきましょうか。 |
ローズ |
邪魔にならないかな? |
ルー |
そーっと覗こうね。 |
GM |
では巣穴の一番奥の寝床。チューリップ先生に付き添われて、全身にぺたぺた傷いやしの薬草をはりつけた若いうさぎが、横たわっている。王様と王妃様もここに一緒にいて、なにやら深刻そうなご様子だ。 |
ハービィ |
あ、お師匠様ー。何か手伝うことありますか? |
タイガー |
おっす王様。何のようだ?(相変わらず礼儀作法を学ぶ気は皆無らしい) |
GM |
入ってくる君たちに気づいて、傷だらけの若いうさぎが顔をあげるよ。 |
ローズ |
……薬草の山がもぞもぞ動いてる。 |
GM |
「みなさん、はじめまして。ボクはピョン太と申します」……あー、君たちとは名前のつけかたの系統がちょっと違うみたいだね。 |
リーフ |
おや、輸入種なんですか? |
タイガー |
輸入……。なんかイヤな言いかただな、それ。 |
GM |
うーん。確かに君たちとはちょっと違う雰囲気を醸しだしてはいるけど……ちょっと《動植物知識》で判定してみて。 |
リーフ |
(ころころ)3成功です。 |
GM |
それならわかるな。うさぎのなかには、野原を走り回って生活している種類の他に、人間と一緒に生活しているうさぎがいる。 |
リーフ |
真白な毛並みと真っ赤な瞳の、なかなか見目のよい種類ですね。私たちには多少病的に思えますが。 |
GM |
そう。ピョン太くんは、その血が少し混じった野うさぎなんじゃないか思えるよ。 |
リーフ |
おやおや、これは珍しい。 |
GM |
そこで王様いわく「今から冬がたくさんたくさん来る前……つまり、今から冬が4回以上くる前のことである(どうやら王様も4以上の数を数えられないらしい)」 |
ルー |
つまりルーたちが生まれるずっと前のこと? |
GM |
「そう。なにしろ、わしがちっちゃな仔うさぎだった頃のこと。この丘の草や木が、ぜんぶ枯れそうになったことがある。何日も何日も雨が降らなかったのだ」 |
ハービィ |
うわー、それは大変。 |
ルー |
ごはんは? ごはん食べられなくなっちゃうよ。どうしてたの? |
GM |
「そう。食べるものが全てなくなってしまっても、まだ雨が降るようすはない。そこで当時の王様の弟が言いだしたのだ『このままではみんなが飢えて死んでしまう。勇気ある者はオレと一緒に新天地をさがしにいくのだ』と」 |
リーフ |
はあ、それで旅に出たんですか? |
GM |
一族の3匹に1匹くらいがね。 |
ローズ |
すごーい。それで、お引っ越しは成功したの? |
GM |
なんとかね。ピョン太くんが少しばかり誇らしげに言うよ。「それがボクたちの御先祖なんです」 |
ハービィ |
じゃあ、このピョン太くんって遠い兄弟にあたるんだ。でも、なんだか別の種類の血も混じってるみたいだけど? |
GM |
「ボクたちの御先祖は、長い長い旅をして、ついに草の生えている広い広い土地にたどりつきました。そこで白いうさぎたちと出会ったのです。……そこに至るまでの数々の冒険譚を聞きたいですか? 聞きたいですよね? そうまでおっしゃられてはお話しせざるを得ませんね……ふふ」 |
タイガー |
このガキャ、語りべか。 |
ハービィ |
はいはい、それはまた後でゆっくりとね。 |
GM |
「はあ、そうですか? では、その初代の王様である放浪王と、白いうさぎ一族の王女との恋物語のほうを……」 |
リーフ |
なるほど、そうして白い種族のうさぎたちと結びついたわけですね。 |
GM |
「おお、まだなにも語っていないと言うのにすばらしい洞察力!(そうかぁ?) さすが、この巣穴の勇者と誉れの高い方々だけのことはある!」 |
一同 |
……。(なんかちょっと空気が白い) |
GM |
「われわれ一族はその新天地、鉄の鳥の巣の真下にある緑の野原に落ち着き、何世代ものあいだ平和な日々を送ってきました。ちょっとばかり鉄の鳥がやかましかったこともありますが、おおむね幸せな毎日でした」 |
タイガー |
……(空港の近くかぁ?)。 |
ローズ |
……(白いうさぎって、動物の検疫所から脱走したのかな)。 |
GM |
「その土地には森や林はなかったけれど、狼もきつねもフクロウもいませんでした。しかし、最近イタチの集団が現れるようになったのです」 |
リーフ |
……(イタチ……最近流行りのフェレットというやつですか?)。 |
ルー |
……(脱臭してあるからかわいいよ)。 |
GM |
「そのために、ボクたちの巣穴は今、絶滅の危機にひんしています」 |
リーフ |
(おごそかな顔で)……わかりました。 |
GM |
「わかっていただけましたか!」 |
リーフ |
ええ、わかりましたとも。あなたがたの悲劇はわたくし、シンキングリーフの名に賭けて、一大スペクタルストーリーとして永遠に語り継いでさしあげましょう! まずはプロットを練りますので3日ほど時間をいただいて……。 |
タイガー |
誰かそいつをコブシで殴れ。 |
リーフ |
え? そういう御依頼で呼んでいただいたんじゃないんですか? |
GM |
「ちがうんですううぅぅぅっ!」 |
ハービィ |
怪我人の血圧上げてどうするの。はいはい、落ち着いて深呼吸しましょうね。 |
GM |
ではピョン太くんが過呼吸に陥ってるあいだ王様が話そう。「そうではなくて、その失われた兄弟たちの巣穴を絶滅から救うべく、我が巣穴が誇るお前たち勇者に立ち上がってもらいたいのだ。がんばれ、勇者たち」 |
ルー |
王様ってば、かんたんに言うー(泣) |
ローズ |
みんなでこっちに逃げてくるっていうのはダメなのぉ? |
ハービィ |
そうそう。草木が枯れて新天地を求めたのなら、今度はイタチに追われて新天地を求めるっていうのも悪くないと思うけど。 |
GM |
立ち直ったピョン太くんが言うことには、そういう意見もあることはあるそうだ。でも今の巣穴の立地条件があまりにもバッチグーで離れたくないといううさぎたちも多い。 |
ローズ |
鉄の鳥が飛びかってるのにぃ? |
GM |
「もちろん誰かが説得してくれれば話は別なんですが……」 |
リーフ |
それならまかせてください。説得したり、おだてたり、脅迫したりするのは得意ですから(笑)。 |
タイガー |
いばるな。 |
GM |
あと、じつはピョン太くんが、この遠く離れた兄弟たちの巣穴を訪ねることにしたのには、助力を求める他にももうひとつ理由があるのだ。 |
ルー |
りゆう? |
GM |
そう。遠い兄弟たちだからといえ、ただやみくもに助けをもとめても、イタチの大群相手にうさぎが戦えるとは思えない。 |
タイガー |
それはやってみなけりゃわからん。 |
GM |
言っておくけど、ピョン太くんの巣穴にだって拳法使いはいたんだぞ。でも、数学能力のあるシンキングリーフにすら数えることのできない数で襲ってくるイタチどもには歯が立たなかった。 |
リーフ |
は? 私に数えることができない? ということは、8匹よりもたくさんのイタチなんですね? うあああぁぁ、もうだめだー!(パニックをおこしている) |
タイガー |
未知数の領域に踏みこんでゲシュタルト崩壊をおこしたか。 |
ハービィ |
インテリって、自分に理解できないもの相手には案外もろいんだね。 |
ローズ |
はじめからバカだと気が楽だよね。 |
リーフ |
ふふふ……もうだめです。こうなったら、やはり3日かけて不幸の物語のプロットを……(目がうつろ) |
GM |
ちょっと待て巣穴の勇者! そんなに早々にサジを投げるな。ピョン太くんがこぶしを握りしめて力説するぞ、「この状況を打開するためにも、ボクは伝説の勇者の力を借りにきたんです!」 |
ローズ |
でんせつのゆうしゃ? |
ルー |
それはルーたちのことじゃないよね。 |
ハービィ |
なんなの、その嘘くさいものは? |
GM |
シンキングリーフ、《文学(口承)》で判定してみて。 |
リーフ |
はあ。(ころころ)……うーん、聞いたことはあるような……でも、覚えてないということは、あんまり気にいっていなかった物語なんでしょうね。(出目が少々足りなかったらしい) |
GM |
「馬鹿ものーーっ!」 王様がいきおいよく飛び蹴りかましてくれちゃうぞ。 |
リーフ |
えー、だっていまひとつ地味な物語だったような気がして……。 |
GM |
「うぬぬぬ。ではしょうがない、このワシ自らが語ってくれようぞ。背筋をただして聞くがよい」 |
タイガー |
うむ。用意はいいぞ、語るがよい。 |
GM |
「む……(代々のタイガーリリイはこんなやつばっかりか、と思っている。ちなみに、先々代のタイガーリリイは彼の妻君だ)。ようするにだ。昔々この巣穴には、ものすごい勇者がいた。彼とその仲間は、なにやら謎の力の源を手にいれ、襲いくるきつねの群れをあっといまに追い払ったという話なのだ」 |
ローズ |
すごーい。 |
ハービィ |
昔々……って、その勇者さんって今も生きてるの? |
GM |
「うむ。この『片耳の勇者・シルバーファー』の物語は、すでに干からびかけた語りべオババの、そのまたオババから伝わっているものなのだ」 |
タイガー |
それじゃもう、土に還ってるって。 |
GM |
「いや、話にはまだ続きがある。その『片耳の勇者・シルバーファー』は今もまだ生きていて、なにかあれば我々を助けてくれるというのだ」 |
リーフ |
ああ、なんで私がこの話を覚えていなかったか思いだしましたよ、王様。そんなに長いことうさぎが生きてられるわけがないじゃないですか、ウソくさいなあ(笑) |
GM |
「とにかく。戦いで仲間たちを失った勇者は『なにかあれば俺は帰ってくる』と言い残し、ただ1匹で白いお山へと去っていったそうじゃ」 |
ハービィ |
白い山って、巣穴を出て東を見たらそびえたってる、やたらと高い山のこと? |
GM |
そう、そのクソ高い山のことだ。そして勇者・シルバーファーは、きつねとの戦いに勝利をもたらしたという謎の力の源について知っているはず。 |
リーフ |
その、謎の力の源というものを手にいれれば、イタチなんて余裕バリバリでやっつけられると? |
GM |
ピョン太くんも「きつねを倒せたんだから、おそらく」と力説している。 |
ルー |
ピョン太くんの巣穴にも伝わってたお話しだったんだ。 |
GM |
うん。それで、その伝説の勇者の力を借りれば、今の住みごこちのいい巣穴を離れなくていいかなあ、と思った訳。 |
リーフ |
なるほど、すばらしい考えですね。 |
GM |
すでにピョン太くんの巣穴近辺はイタチに包囲されていて、彼が抜けだすのも命がけ。おかげでこんな怪我まで負ってしまった。 |
ハービィ |
じゃあ、一刻を争うんじゃないの? |
GM |
そう。巣穴にたてこもってはいるけれど、それもいつまで持つことやら……。 |
タイガー |
じゃあ、ヨタ話を信じて、山に登るよりも、このメンツでイタチをぶったおしに行くんほうがいいんじゃないか? |
GM |
あ、言い忘れてたけど、イタチにも拳法使いはいるから。イタチ拳法。 |
ローズ |
……ブルーローズ、お山に登りたいな(イタチと戦うのイヤ)。 |
ルー |
ハイキング、ハイキング。 |
GM |
そう。今の季節、あの白い山には山ブドウが鈴なりだろうねえ。……冬眠前の熊も出るけど。 |
ローズ |
……(青ざめている)。 |
ハービィ |
怖いもののなくなるお薬、いる? ダイエットもできるよ。 |
ローズ |
……後遺症がこわいから、いらない。 |
リーフ |
『伝説の勇者、その後』なんていう物語はウケますかねえ? |
タイガー |
それじゃあ、とっとと出かけて、勇者とやらの干物みつけて。そんでもって、一発どかーんとイタチをぶっ倒して、オレらが伝説の勇者になるかあ! |
リーフ |
うーん、どうやらみなさんに山登りをしていただくしかなさそうですね。あ、私はここで、じっくりプロットを練っていますから、気にしないでください。 |
ルー |
なんか甘いこと言ってるのがいるね。 |
タイガー |
いつものことだ、ほっとこう。 |