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近くて遠い未来。
環境破壊が進み、ついに<大いなる災厄>が地球を襲った。多くの生き物が絶滅し、人類の約七割が死滅した。
こと、ここに至って、人間たちは一旦地球から撤退することを決意した。ようやく開発された冷凍睡眠技術を使って、大半を宇宙空間にひきあげさせることにしたのだ。
世にいう<大撤退>である。
地球に残ったのは、痛めつけられた自然を見守る少数の人類だった。彼らは、閉鎖された完全循環の人工環境都市、メガアーコロジーに住むか、あるいは自然と共存して生きた。人間たちの手伝いをしたのは、遺伝子改良によってうみだされた、いくつかの新しい種の生き物たちである。
地球は、ぎりぎりで絶滅を回避した。
そして、長い年月が流れた。地球はその生命力を回復した。眠れる二十億の人間たちが目覚め、地球に帰ってくる日が近づいたのだ。
だが、人類は、つらい試練の時期をのりこえたとき、ふたたび傲慢さを取り戻してしまった。アーコロジーの人々は、人類帰還後の世界における覇権を握るべく、陰謀をたくらみはじめたのだ。眠れる者たちの先遣隊は、新たな住居を得るために、乱開発を行なおうとしている。それに対して、過激な手段で地球を守ろうとするエコテロリストたちもあらわれた。テロリストの中には、人間に代わって、地球を守ってきた動物たちもいる。
そして、人類が留守にしているあいだ、地球にはさまざまな異生命がはいりこんでいた。進化も急激に進んでいる。また、かつての物質文明の負の遺産や、狂暴な改造生物も、いまだ一掃されてはいない。おまけに、超古代文明の遺産まで復活して、もはや世界はなんでもあり状態だ。
このストーリーは、南太平洋の島々で、海とともに生きるイルカたちが出会う、さまざまな神秘と冒険の物語である。
……なんちゃって。
まあ、あんまりちゃんとした科学考証はやってないので……ハードSFじゃなくて、あくまでSFファンタジーってことで。
とゆー設定で一九九七年の夏から一九九八年の夏にかけて、グループSNEでは全4話のキャンペーンセッションを行ないました。うさぎたちの冒険(バニーズ&バロウズ・リプレイ)は、アメリカで発売されたサプリメントをもとにしていましたが、今回のイルカは、GMをつとめた友野詳のオリジナル設定です。
これからみなさんに読んでいただくのは、その第一番目のお話になります。
しかし、あの頃はまさかターンAガンダムが月から還ってくる人間との確執とは夢にも思いませんでしたわ(とゆーか、そもそもガンダムが……)。ちょうどこっちのキャンペーンが終わった頃にアメリカではイルカになれるTRPGが出ちゃうし(あわてて読んでみたらコンセプトが全然違ってたんで安心しましたが)。
ともかく、読んでみてください。あのうさぎたちに負けず劣らずの、ユニークなキャラクターたちが、のびのび海での冒険を楽しんでいます。僕たちの、とても楽しかったひとときを、少しでも共有したいただけたら、と思います。
もしも、みなさんが面白かったと声に出して言っていただけるなら、リプレイの二話以降もお届けしたいと思っていますし、今回は翻訳ではないので、遊ぶためのルールやデータを紹介することもできるかなと思っています(完璧なものではありませんけど)。
もしもそれらも好評だったなら、さらなる動物シリーズも……おっと、これは先走りすぎでしたね。
リプレイの執筆は、うさぎたちの冒険に続いて、今回も秋田みやびが担当しています。もちろん、うさぎたちの時と同様、彼女もセッションに参加していますが、どのキャラクターかは秘密。秋田みやび独自の、ユーモアとあたたかさのあふれる語り口で、では広い海原の冒険を、どうか楽しんでください。 |
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