*当日の朝 |
1月29日朝、俺はバーガーキングにいた。
というのも、試験があるという、前日泊まらせてもらった東京の友達とともに彼の家を出たはいいが、コンベンションの入り時間までまだ3時間もあったのだ。
そこで時間を潰そうと思い適当に店を眺めていると、目に入った「BURGER KING」の文字。
な、懐かしい! 思わず入り、モーニングメニューのトリプルソーセージ&チーズなるものを頼んだ。一口食べ――
こ、これはっ!? 大学時代によく食べたアメリカのソーセージの味!!
マクドナルドはどこで食べてもマクドナルドだが、バーガーキングはアメリカの味がした……
思わぬ故郷の味に、不覚にも感動しながら時間を潰した俺は、迷う可能性も計算に入れ、若干早めにコンベンション会場である角川本社ビルに向かった。
――結果、30分ほど早くついてしまった!?(当たり前である)
他社のゲストGMさんはちらほらいたものの、北沢さんと藤澤さんはまだ居ない。うーん……少し心細い(苦笑)。
とはいえ、装備(今回はバトルアックスとマントだけ)やシナリオの確認をしている内に北沢さんと藤澤さんもやってきた。
シナリオの最終的な確認(と雑談)をしている内に開催時間も近づいてき、F.E.A.R.のマスターさん達が2階へ移動(F.E.A.R.さんは2階、俺達とアサルトエンジンの灘信一郎先生が3階でセッションという構成だった)。
目の前には積み上げられたお弁当。……待てよ、セッション開始は12時で、終了までは休憩なしだったような……
富士見の編集さん「そうですよー」
腹が減っては戦(セッション)はできぬ!
俺、北沢さん、藤澤さん、灘先生は大急ぎで弁当を食し、セッション会場へと向かったのだった!
……竜田揚げ弁当、大変美味しゅうございました。
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*セッション開始! |
マントをひるがえし、バトルアックスを肩にかつぎ、洋々とセッション会場に入室。
今日の俺の担当はソードワールド2.0のC卓(因みに、北沢さんがA卓、藤澤さんがB卓)。テーブルの上には各種ルールブックと、発売されたばかりの『ソード・ワールド2.0サプリメント プレイヤーズ・ハンドブック フェイダン博物誌』(な、長い……)。
フェイダン地方の国や風土紹介、各種特産品に固有の魔物、更には脈々と伝えられている武術の流派!
そう、今回のシナリオは『フェイダン博物誌』の要素を様々な形で取り込んだものを用意しているのだ!
結果、対象レベルは5〜6レベル(流派を使うため)と少し高めだが、なに、きっと今回のお客さんも大SNE祭りの時同様、やり込んでくれている方たちだろう。問題ない!
ドラゴンブックの編集さんが開会の挨拶を行い、各GMの紹介も終わり、ようやくセッション開始!
俺「今回TRPGやソードワールド2.0が初めてって人はいるかなー?」
1人、2人居れば嬉しいと思って聞いてみた。実際、初めてのお客さんというのは、嬉しいものなのだ。
しかし――
「あ、はい……」
蓋をあけてみれば、5人中3人が手をあげていた……
WHAT!?
正確に言えば、「前に1回やったことがある程度」の人が3人だったのだが、大差はない。そういった方がコンベンションに来てくださるというのは、クリエイターとして喜びである反面……しまった! プレイヤー層を完全に読み違えてた!?
内心の動揺を必死に押し殺し、なるべく丁寧に用意していたプレロールドキャラクターの性能を説明していく。
流派ルールを使ってできることが増えているとはいえ、やはり前衛系のほうができることがわかり易いため、魔法を使うキャラクター(内1人は魔法戦士)は経験者が、他の前衛は初心者の方が担当することに。
俺「わからないことがあったらなんでも聞いてねー」
PLのみんな「はーい!」
だ、大丈夫だろうか……(ドキドキ)
今回のシナリオはアイヤールの領の1つで、ほとんどが湖に覆われている《紺碧領》キャニャールで、家畜として牧畜されているニュイムイシープという水棲哺乳類が盗まれた……という、珍しい立地でのよくある導入から始まるもの。
水上、という珍しいフィールドでの情報収集に四苦八苦しながらも楽しそうなプレイヤー達。俺も楽しくなって色々と描写していく。気になっていた戦闘も、大きな問題なくこなせている。
そう、一安心した時――
富士見の編集「セッション時間は残り30分ですー」
Holly SHIT!? タイムキープ間違えた!
ベーテ・有理・黒崎、渾身のミス!
結果、なんとかボス戦まではいけたものの、戦闘中にあえなくタイムオーバー。戦闘を省略し、シナリオの真相を伝えたところで終了。
プレイヤーのみんなは口々に「楽しかった」と笑ってくれていたが……内心、申し訳なくて仕方なかった。
後で北沢さんも時間内に終わらせられなかったと聞き、(ダメな話だが)少し心が軽くなったものの、楽しかったが色々と今後の課題が残るセッションだった。精進あるのみ!
(なお、藤澤さんはきちんと時間内に終わらせていた。すげえ)
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*トークショー前 |
セッションをきちんと終わらせられなかった慙愧の念に苛まれながらも、いつまでもそれに囚われているわけにはいかない。
なぜなら、次にはトークショーがあるからだ!
メインで喋る北沢さんと藤澤さんは、菊池たけし先生と矢野俊策先生と一緒に打ち合わせに入り、俺は控え室で着替えることに。
と言っても、マントを脱ぎスーツを着てサングラスをかけるだけ。実はこのトークショー、近作の商品の紹介の際に、俺、田中天先生、そしてドラゴンブックの新人編集である剱持太志さんの巨漢トリオでパネル持ちをする……予定だったのだが、残念ながら田中天先生は体調不良でお休み。
せめて格好は予定通り合わせようと、着替えた次第。
マフィアの用心棒スタイル+バトルアックスで意気揚々と会場に乗り込む俺。
指定の位置に座り、斧に手をかけた状態でお客さんの入りを待つ。
やがて、ちらほらとお客さんが入ってきたのだが、なんと俺のすぐ前に誘導されているではないか。ちらちら、とこちらを横目で見てくる。ふふふ。この大斧が気になるんだね?
俺「持ってみます?」
お客さんも大喜び! やはり我が愛斧、逸物である。
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*トークショー |
そうこうしている内にトークショー開始!
司会は鈴吹太郎先生こと、F.E.A.R.の代表取締役中島純一郎氏。メインゲストは菊池たけし先生、矢野俊策先生、そして我らが北沢慶と藤澤さなえが出されたお題に対して1人ずつトークしていくという流れ。
まずは富士見ドラゴンブック主催のイベントということで、西暦1985年12月から今日まで続いてきたドラゴンブックの歴史を振り返り、400点以上ある発行物の中から、最も印象に残っているもの、というお題。
蛇足ながら、この時点で俺は初めて自分がドラゴンブック発足の年に産まれたことに気付いた(1985年1月生まれ)。奇縁である。
まずは菊池たけし先生が書籍の『モンスター・コレクション』について、続いて北沢さんが『D&Dがよくわかる本』について熱く語り、藤澤さんは初めてGMをすることになった時にこれを読んで勉強したという『実践!RPGゲームマスター道』をあげ、矢野さんは学生時代に夢中になったという秋田みやびのソード・ワールドリプレイ『へっぽこ』シリーズの自分流解釈を滔々と語る。
続いてのお題は「自分が関わったドラゴンブック作品の中で一番印象に残っているもの」。
藤澤さんがあげたのはデモンパラサイトリプレイ『極道☆きらり』。なんと、これが初めて企画からなにから全て自分で決めて作った作品とのこと。
矢野先生はご自身で書いた初めてのリプレイ、『ダブルクロス・リプレイ・オリジン』シリーズを、菊池先生は「未来ある新人の将来を奪う」というプレッシャーの下で書いたという『ダブルクロス・リプレイ 闇に降る雪』をあげた。
しかし、やはり個人的に一番興味を惹かれたのは北沢さんの語る『ソード・ワールド2.0ルールブックT』製作時のマル秘エピソード。頻繁にでてきた水野良先生絡みの話には俺も初めて聞いたものが結構あった。
特に企画段階で水野さんが北沢さんに言い放ったという、「フォーセリアは俺のや。おまえにはやらん」の台詞……ミスター北沢、これ本当に言って大丈夫だったんですかね?(笑)
過去の作品についての話もひと段落し、以降は近々に出版された、もしくは出版される作品の紹介&宣伝タイムに。
OK! やっとパネル持ちとしての本分が発揮できるぜ!
……まあ、うち(グループSNE)の作品の時だけだけどな!!
なお、その作品はSW2.0班全体としては出たばかりだった『プレイヤーズ・ハンドブック フェイダン博物誌』、そして春に発売する川人忠明の『ミストキャッスル』系列の新作『カースドランド―凶夢への反攻―』を紹介。北沢さんは同じく出たばかりだった、『堕女神ユリスの栄光』と、4月発売の『聖戦士物語』の最終第3巻、藤澤さんは今月(2月)発売のSweetsシリーズ第2巻、『はりきり魔剣ははばからない』、そして俺は拙著from USAシリーズの第4巻『魔神跳梁―デーモンランブル―』と、3月に出る新作『鉄姫降臨―アイアンレディ―』について熱く語らせてもらった。 |
そんなこんなで時間ギリギリ(むしろ若干オーバー?)で宣伝タイムも終了。大盛り上がりだったトークショー、更にはコンベンション自体もこれにてEND!
お客様を見送った後、俺は控え室に戻り外を歩いても逮捕されない格好へと戻ったのであった(笑)。 |