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Role&Roll
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『ガープス第4版キャラクター』発売記念イベント |
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執筆:安田均 |
そう、あれは今年8月のJGCのこと。
スティーブ・ジャクソンが来た!
でも、ガープス第4版はまだ出ていなかった。
上巻(キャラクター)の翻訳と監修はもう終わっていたのだが、下巻の完成までにはまだかかりそうだった。
済まぬ、スティーブ−−
−−いいよ、YASUDA-SAN、いいもの出してくれたら。
対談をしたら、スティーブはそう言ってくれた。初めて会ってから、もう20年も経つが、やっぱりいいやつだ。それどころか、ぼくらの創ったカードゲームKING'S
BLOODをめちゃくちゃ気にいってくれ、帰ったらできるだけ早く出す、と言ってくれた。
結果、来年1月に『キングズ・ブラッド』はS・J・ゲームズ社から出る予定。まあ英訳ルールはこちらでも創っていたんだけど、それにしても早い。キャラの名前が、いかにもな外国風にも変わっていて、とても期待大だ。
こりゃ、こちらもガープス下巻を急がないと……必死になったら、9月に基本訳担当の黒田和人があまりの大量のルールに、ついに体調を壊してしまった(いったんは仕上げてくれたんだけど、ほとんど粗訳段階)。こりゃ、大変。下巻はぼくがかかってなんとか監修し、訳し直す。そう言えば、最初に佐脇洋平と元々の第3版をやったんだよな。しかし、最初の文庫の5倍はあるぞ、こいつは。
9月、10月、11月と容赦なく日にちは過ぎていき、ふと気がつくと12月。途中、どうしてもドイツに10日は行かないといけない。気分転換はできたものの、同時に気が気ではなかった。もちろん、上巻の初校や再校、3校のゲラ直しもある。このあたりは柘植めぐみのスーパーサブぶりにもだいぶ助けてもらった。
最後は睡眠不足ならぬ、細かい字の読みすぎで目が疲れ(やっぱり原稿用紙で5000枚強、文庫10冊分はきつい)、動悸が治らないときもあったので軽い精神安定剤にも助けてもらいつつ−−
ついに、12月10日に完成!!!
で、なんと翌11日は、見計らったように『ガープス第4版キャラクター』発売記念イベントがある。
本来なら、大喜び、大暴れしたいところだが、もう体と頭がへとへと。イベントのシナリオも何も読んでない。ここでJGCのときのようにはしゃいだりしたら、後がコワい(まだまだ、下巻のゲラとかあるしね)。しかし、行かないわけにはいかないので、当日のGMは江川晃にしてもらい、イベント会場はトークだけにしてもらった。
ちなみに、『ガープス第4版キャラクター』を買って見てもらえたら、そのデータのすごさはおわかりだと思うが−−有利な特徴、不利な特徴、技能だけで、1000近いんじゃないかな−−下巻『キャンペーン』もいいぞ。
普通に考えたら、下巻は戦闘ルールが中心で、ガープスの細かいリアリズムには定評があるけれど、ほとんどそれくらいで第3版と変わってないと思ってる人が多いんじゃないだろうか?
いやいや、下巻は確かに戦闘関係で半分はあるけれど、ぼくがすばらしいと思ったのは、それと同時に後半部分。
「ゲームマスター」の章はすばらしい。
ここには入門的なことは少ししか載っていないが、ガープスを本当はどう遊ぶかといった点で、目にウロコなことも書いてあるので、RPG好きな人は必読。
驚いたのは、ガープスではロールプレイとゲームシステムで、どちらかを優先させないといけない場合、どちらにすべきかといった点。はっきりと‘ロールプレイ’と述べてある。普通の演技派RPGならともかく、‘システム’のガープスだから、これはなかなかの記述だった。
それと、最後の「ゲームワールド」と「インフィニット・ワールド」。かつてのガープスでは、ゲームワールドの例として、やっぱりファンタジーのイールス世界が最初に例として載っていたのだが、今度のルールでは正面からなんでも扱える‘インフィニット・ワールド’だものね。これがまた、多元宇宙のイメージを見事に表現していて、ぼくは大好きだ。もちろん、S・J・ゲーム社は入りやすさ、なじみ深さから、第4版についてもまずファンタジー展開を行なっているが(サプリメント『ファンタジー』『マジック』『ベインストーム』)、それと同時に『インフィニット・ワールド』もサプリメントで出して補強している。
このうち『マジック』は早期に必要と思うけれど、できれば『インフィニット・ワールド』も早く出てほしいなあというのが、第4版に携わる者として正直な気持ちだ。
ということで、ようやくここからがレポート。
当日は、雑誌『R&R』の新しいショップ「R&Rステーション」というところであるらしい。なんでもRPGやボードゲームを取りそろえた、とてもきれいなお店ということで、そちらにも期待がかかる。
向かってみると、おや、この道は何度も来た覚えが……。
秋葉原だから、そりゃコンピュータゲームの記事を書いていたり、ウォーロックの編集会議をしていた頃からなじみがあるけれど、それにしても。
場所は、なんとイエサブさんのRPGショップから、FEAR社に向かう道のりのちょうど真ん中なのだ。
これはまあ、便利というか、大胆な(笑)。
ついまちがえて、ふらふらと鈴吹太郎(FEAR代表の中島純一郎さん)や菊池たけしを訪ねて行きかけた−−というのは嘘だけど、RPGファンにとってこのあたりは聖地というか、ありがたいことはまちがいないだろう。
ビルに入ろうとして、開店したばかりなので、目印があまりないのに気がついた。神田明神下の交差点、南東角のビルの6Fだからわかりやすいけれど、ビジネスビルみたいに見える建物だから、ついほんとに入っていいのかなと思う人もいるだろう。北沢慶が先週迷ったというのも無理はない。
おお、一つ目印があるそうだ。何でも7Fは、ファンタジー世界ならぬ、現実世界のフェアリーがコスプレしてお茶を出してくれるところだそうなので、その1階下と覚えておくといいらしい。いやあ、さすがアキバだなあ(笑)。
で、6Fに一歩足を踏み入れると、おお、これ。あの懐かしいゲームショップの香りが−−アメリカの西海岸でも、オーストラリアのシドニーでも、イギリスのロンドンでも感じたあれだ。ドイツだけは、でかすぎてちょっとちがうけれども、だいたいこうしたお店の雰囲気は似通っていて、それがここにはある(イエサブさんのRPGショップもそうだね)。
真ん中が両面向きの商品台になっていて、その周囲の壁を取り囲むのは、RPG、ボードゲーム、ゲーム関連小説、資料類の山……また、山……。
こういうのを見ると、本能(煩悩?)が黙っていない。
何をしに来たのか忘れてしまい、ついふらふらと商品棚の回りをうろつきまわること、十数分。
ここはドイツかアメリカか−−。
「おや、またたくさん買い込みましたねえ」
と、ふと集りはじめたファンのうち、顔なじみの人に言われて、はっと我に帰る。
「いやあ、開店祝いのお花とか贈ってなかったからなあ、ははは」
照れ笑いにごまかしたものの、証拠は歴然。友野とか柘植とか仲間は‘ああ、また社長のビョーキが始まった’と誰も止めなかったものね。
そうそう、GMをやらない以上、お店のこととかもインタビューしないといけない。
店長の千代さんは、JGCでもお手伝いしてもらっていた人で、商品知識は大丈夫、応対もソフトなナイスガイだ。
「RPGやボードゲームが中心の商品構成ですが、いろんな人にいつでも来てもらって、気持ちよく遊んでもらい、こうした趣味が楽しいものだという‘広がり’をぜひ作っていきたいですね。普通の人がどんどん入ってこられる状況にならないと」
うん、そう、そうなんだよ。気持ちよく、楽しく、実際に遊べるところがないとね。
というわけでいよいよ、すぐ隣にある、広くてきれいと評判のプレイルームを案内してもらった。
おお、確かに。これなら50人くらいは楽に入れて遊べてしまうなあ。
「でも、基本は6卓くらいにしています。あまり、詰め込んで遊んでもらうのも申し訳ないですし」
そういって上を指し示されたので、見ると、おお! 天井にカーテンレールが縦横に走っている。これで、RPGなんかの場合、カーテンで自由に仕切れるので、大きな声が聞こえて邪魔になるというのは、ほぼ防げるらしい。いやあ、これはアメリカ並みですね。
ということで、以降はこの部屋で、『ガープス第4版』発売記念トーク(内容はこのレポートで最初に書いた部分など)と、その後のユエル・セッション4卓が遊ばれることとなった。
じっさいのセッションの模様はこちら
残念ながら、GMはできなかったが、そこで和気藹藹、悠々と遊んでいる人たちを見るとうらやましくなり、やっぱり無理してでもGMしたかったなあと後悔する。
まあ、いいや。たぶん下巻の『キャンペーン』は3月はじめには出るだろうし、そうなったら、ここへまた来て、そのときは存分に楽しんでやる。
皆さんも、一度ぜひ行って、遊んでみてください、「R&Rステーション」。
ドイツやアメリカの雰囲気が感じられるぞ。 |
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