第六章  なつかしのドイツ・エッセンへ(2000年10月26日(木)〜10月28日(土))

 さて、お忘れのむきもあるだろうが、今回の旅行の主眼はエッセンで開かれる「Spiele2000」である(笑)。
 10月26日(木)、われわれはいよいよ本来の目的地エッセンに到着した。
 新作ゲームや掘り出し物のレポートは、「安田均のゲーム日記7 エッセン2000版」(「AX 00年1月号」<ソニーマガジンズ社>付録CD-ROM連載の「安田均のゲーム・バトルロイヤル」にも一部掲載される)に任せるとして、少しカイの視点から見た会場の様子などを報告しよう。


☆ 年々拡大の一大ゲームフェスティバル

 Spiele2000はテーブルゲームの伝統国であり先進国でもあるドイツで開催される一大ゲーム祭り。新作ゲームの体験会・発表会・販売はもとより、膨大な数の中古ゲームショップが並ぶ。しかも、どの古ゲームもすばらしく保存状態がいい。ドイツでは、使わなくなったゲームはほしい人に譲り渡すのが常識なのだろうか? 伝統を重んじる国ならではの一面だ。
 これまでは会場の大部分をボードゲームが占めていたが、今年はその広大な会場がさらに広がり、アニメ・コミックTRPGのコーナーが拡大されていた。
 ボスによれば、アメリカの二大(非電源系)ゲーム・イベント「オリジン」「ジェンコン」と比べても遜色がない――どころか、すでにその規模を凌いでいるのでは、とのこと。
ひょっとしたら、これからテーブルゲームの中心はアメリカからドイツに移るかも?

入り口付近の人だかり

☆ ゲームは家族団欒のもと

 とにかく会場には乳母車が多い。親子連れはもちろん、逆にかなり年配の人も珍しくない。で、中古ゲーム屋で、うちのボスとレア物のゲームを取り合いっこしたりするわけだ。むしろ中高生の姿は少ないと言える。それが日本のゲーム・イベントとの最大のちがいだ。

古ゲームを物色するボス

 子供向けゲームの良品を多数出しているHABAのブースでは、小さな子供たちが新作ゲームに興じている。もちろん、昨年のドイツ子供大賞受賞作「カヤナック」(磁石を使った魚釣りゲーム)も大人気…と思いきや、白髪まじりのおばさんたちがキャアキャア歓声を上げて遊んでいる。絶対、孫の一人や二人はいるお歳。無邪気だ。

☆ Spiele2000はテーマパーク

 もう一つ驚いたのが、拡張された会場の一角がテーマパークになっていたこと。
巨大トランポリンや巨大滑り台など、いかにも、親がお目当てのゲームを探している間子供たちはここで遊ばせましょう、という親切な作り。
が、ここでもトランポリンで遊んでいるのは、いいお歳のおばさま方。子供たちは大人しく乳母車で眠っていたりする。
ドイツの幅広いゲーム層を支えているのは、こうした無邪気さだろう、とまずは無難にまとめておこう。

会場の一部がテーマパークに… 実物大(?)ヒヨコめくり

☆ 狂乱の「ブリッジ・ブース」

 今回、ボスとカイを狂喜乱舞させたのが、この「ブリッジ・ブース」だった。
 ブリッジ(コントラクト・ブリッジ)というのは伝統的なトランプ・ゲームで、日本で言えばさしずめ「囲碁」「将棋」といったところ。SNEでは昨年末にボスがはまり、江川晃や柘植めぐみ、黒田和人を巻き込んで一大ブームを引き起こした。今にいたるまで飽きられることなく遊ばれている。
 で、このブース。当然、テーブルが用意されていて、本場プレイヤーと一戦まじえる格好のチャンスである。だが、ブリッジは2対2のチーム戦で、コミュニケーションが大きな役割を果たすゲーム(ある意味、TRPG以上かもしれない)。それだけに奥が深くて面白いわけだが、やはり言葉の壁は大きい。
 プレイできない鬱憤を晴らすため、ボスとカイがおりからの円高を存分に活用したのは言うまでもない(なにしろ1マルク52円。カイの感覚では7〜80円が妥当なところなのだが)。
 3日間、毎日通いつめ、スコア・シートやゲーム用の備品、ソフト、名刺入れ、財布、カバンなどを山のように買い込んだ(どの小物もすごく洒落ていて、1つ買うとどれもこれもほしくなってしまうのだ)。

ブリッジ・ブースとボス

第七章  さらば、ドイツ(2000年10月29日(日)―30日(月)関空着)

 トルコ、ギリシャではしゃぎまわったわれわれに、ドイツは優しかった。礼儀正しく、シャイで控えめ
 あるタクシーの女性ドライバーはマコちゃんに「英語、話せますか?」と聞かれると、気の毒なほど慌てて「ノー!」とこたえた。なるほど、だからじっと前を睨んだまま、絶対視線を合わせようとしなかったんだね。よほど英語で話しかけられるのがイヤだったんだ。ボスもカイもその気持ちは痛いほどわかる。
 が、いったん会話がはじまると、身振り手振りで必死にこたえようとしてくれた。
 街の小さなレストランでも事情は同じ。最初は誰もわれわれのテーブルに近づきたがらない。来ても、そそくさと去っていってしまう。
 旅の疲れのたまっていたわれわれはとうとう、「日本人をバカにしてるのか!」ときれてしまったけど、実は英語を話せなかったのだと誤解がとけた後は、みんな「おいしかったか?」「デザートはどうする?」と極上の笑顔で応対してくれた。

 やっぱりドイツは心が安らぐなあ、という感慨を新たにしたわれわれは、こうして11日間の全行程を終え、ようやく帰途についたのだった。
 途中、ドイツ鉄道に乗ってケルンに一泊したりしたけど、で、それはそれで楽しいことがいっぱいあったのだけど、すでにこんなに長いレポートになってしまった。今回書き残したことは、またいずれ別の機会にご紹介できればと思う。

 長時間のお付き合い、ほんとにありがとうございました。今回、ボスの購入したゲームは現在、鋭意翻訳中。SNEコンベンションやJGCで遊んでいただく機会があると思います。楽しみに待っていてくださいね。

 カイからのトルコ・ギリシャ・ドイツ紀行でした。 

「安田均のゲーム日記7 エッセン2000版」を読む。

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