――世界は悪で満ちている。 　街の片隅にある小さな修道院の地下。その修道女は、恐怖に震える子供たちを抱きかかえながらそう思った。 　街を守る衛兵たちが倒されて数刻。すでに魔物たちは、街の中を我が物顔で歩いている。 　見つかるのも時間の問題。修道女がそう思ったときだ。荒々しい行軍の音が、修道院の地下に響いてきた。 　修道女は腕の中にいる子供たちを見下ろし、立ち上がった。 　ようやく手に入れた自分の居場所。ここを守るためなら仕方ないと、決意を固めベールを脱ぎ捨てた。 　燃えるような赤い髪が広がり、修道女の前に巨大な剣が現れる。 　一度は捨てた魔剣を、その修道女は再び手に取った。