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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > 『魂の戦争 第一部 墜ちた太陽の竜〈上〉』『ルーンロード1 大地の王の再来 〈上・下〉』(2005年2月)
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『魂の戦争 第一部 墜ちた太陽の竜〈上〉』
『ルーンロード1 大地の王の再来 〈上・下〉』

安田均・笠井道子・柘植めぐみ

2.時代はめぐり……
安田: 『夏の炎の竜』では〈竜槍戦争〉から30年経っていて、キャラモンらの子供たちの世代神々をも巻きこんだ大戦争が描かれていた。『魂の戦争』では、そこからさらに38年が経過している。
柘植: 夏の炎の竜』は、神々が去って〈人の時代〉が来る、というところで終わっていましたが……
安田: 意外や意外、神々が去ったと思ったら、今度はなにが来たと思う? ドラゴンなんだ。従来のクリン世界にいたドラゴンよりもはるかに恐ろしい、どこからかやってきたドラゴン。この世界はおれたちのものだ、と暴虐のかぎりを尽くして30年、というとんでもない設定。
柘植: 人にとっては苦難の時代が来ているんですね。
安田: 世界じゅうに竜が君臨している。たとえば、大赤竜マリス〈ケンダー郷〉を破壊して、あの陽気なケンダーが世の中なんて信じられない、と病気になったりしている。それが大陸の東側だとすると、南側は大緑竜ベリリンスラノクス――通称ベリルが支配している。緑竜はヘビみたいにたちが悪くて陰謀が大好きなところがおもしろい。北側は聞いて驚くなかれ、〈竜槍戦争〉のときにキティアラが乗っていたスカイアという青竜が、巨竜になって戻ってきているんだ。いまはケレンドロスと名前を変えて、パランサス周辺を押さえている。
笠井: うわっ、たいへんですね。
安田: 問題は竜だけじゃない。神々が去ったので、従来の魔法は消えていった白ローブの長パリンは奔走してたいへんだったんだよ。それから、『夏の炎の竜』で世界を席巻していた〈暗黒騎士団〉。彼らは南のクォリネスティでとくに力が強くて、〈混沌戦争〉後の会議でも彼らの処遇が問題になった。そこへ大緑竜ベリルがやってきて、クォリネスティはわたしのものだ、と言ったんだ。〈暗黒騎士団〉はセコくて、ならば貢ぎ物を捧げるからわれわれに管理させてください、という形になった。
柘植: クォリネスティに住むエルフたちにとっては災難ですね。
安田: そんななかで、生き残るためにいろいろ画策しているのがギルサス。ほら、『セカンド・ジェネレーション』の中編『わが子のために』に出てきたタニスの通称 "ぼんくら息子" だよ。傀儡(かいらい)の王とも言われているけれど、じつはがんばってる。〈暗黒騎士団〉のボスはメダンというんだけど、こいつがまた田舎者で、エルフの文化ってすばらしいローラナさんって素敵、となっていておもしろい状況なんだ。
柘植: これからどうなるんだろう、という感じですね。
安田: そう、そんなとき、大きな事件が勃発して『魂の戦争』が始まるんだ。ある大嵐の夜、ミーナという美少女が現れて……。
笠井: (冗談めかして)空から落ちてきたりして?
安田: 似たようなもんだよ。雷鳴とともに現れるんだ。
柘植: 今回はかっこいい女の子が主人公ですよ。
安田: このミーナは、もとはワイスたちが作ったキャラクターではないらしいけどね。インタビューを読んでわかったんだけど、彼らが離れていた時期に、僧侶であるゴールドムーンのところに流れついた孤児、という設定があって、それを使おうと思ったらしい。
柘植: へええ。
安田: もちろん、一人の人物として作り上げたのはワイスたちだけどね。
柘植: さすがに最初の『ドラゴンランス』から70年近くも経つと新しいキャラクターたちがメインになりますが、旧来のキャラクターも出てきますよね。
安田: うん。『魂の戦争』のストーリーは、3つの軸を中心に流れていく。1つは、先ほどのミーナと〈暗黒騎士団〉の流れ。騎士団の中核は〈暗黒の女王〉がいたネラーカ近辺にあるんだけど、その近くのサンクションというソラムニア騎士団の町を落とすために、ある部隊が移動しているところに、ミーナが現れる。
笠井: (ぽんと手をたたく)ジャンヌ・ダルクですね!
安田: うわっ、鋭いなあ。まさしくその通り。暗黒のジャンヌ・ダルクなんだ。
柘植: カリスマがあって、奇跡を起こしますからね。
安田: あのシーンがいいよねえ。ミノタウロス――従来は脇役の種族だけど、今回はメインのキャラクターなんだ――がその部隊の副隊長で、しょうもない隊長にいじめられていたんだ。戦いで片腕になっていてね。そこへミーナが来て、あなたの腕を出しなさい、と言う。すると、腕が生えて……ここですばらしいと思う表現が、 "その腕に感じた痛みの実感に歓喜した" というところだね。長いあいだ、なくした腕のありもしない痛みを感じてきた、という。
柘植: あわわ、あまり詳しくは……(焦)。
安田: おっと。で、2つめの軸は、さっきも言った中編『わが子のために』に続くもの。『夏の炎の竜』ではまったくといっていいほど触れられなかった。
柘植: ギルサスは出てこなかったですものね。
安田: それよりも、『わが子のために』で生まれたアルハナとポルシオスの子供だよ。2つのエルフ国のあいだに生まれた、統合国の王子たるシルヴァノシェイ。通称シルヴァン
柘植: 名前はかっこいいんだけどねえ……。
笠井: ダメダメなんですか?
安田: 母親のアルハナがこの子にしか未来はない、とかわいがりすぎて、すっかり浮かれ者のお兄ちゃんになってしまった。彼が苦労していくようすが2つめの軸。両親が故郷を追放された黒エルフの身なので、あちこち放浪して生きてきたんだけど、大嵐の夜、同胞を救うために援軍を呼びにいこうとして……。
柘植: ころころころっと、違う場所に行ってしまう。
安田: 巨竜が入ってこれらないようにシールドを張っていた、彼と本来かかわりの深いある場所へとね。それがもう1つの軸。そして3つめの軸は、おなじみのキャラクターから始まる。お爺ちゃんになったキャラモンが出てくるんだけど、推定年齢90歳を越えているにもかかわらず、かくしゃくとしていて元気がいい。
柘植: あの〈憩いのわが家〉亭の階段を平気で登ってますからね(笑)。
安田: そこへひょっこり、トラブルメーカーがやってくるんだ。
笠井: トラブルメーカーって……まさか○○○○?
安田: それがそのまさか。とっくに死んじゃってたはずなんだけどねえ……とはいえ、じつは『ドラゴンランス伝説』をあらためて読めばヒントが隠されてる
柘植: うんうん(ほくそ笑み)。
安田: というわけで、その人物が突然やってきて、こんな世界のことは知らないやと謎めいたことを言う……そこが世界の大いなる謎の1つなんだけどね。で、その人物の相棒になる新しいキャラクターがまたいいキャラクターなんだ。いいっていうか、初めはすごくイヤなやつなんだけどね(苦笑)。
柘植: ジェラードというソラムニア騎士です。
安田:  醜男とはっきり書いてある。しかもやってることも醜い、と指摘されたり。でもこいつがなかなかいい味を出しているんだ。
柘植: 実は、この物語のヒーローだとわたしは思います。
安田: そうだね。暗黒のジャンヌ・ダルクに不細工な騎士……キャラクターの立て方がじつにおもしろいよね。もっともっと個性あふれる人物も出てくるし、昔のキャラクター、たとえばいままであまりスポットの当てられなかったゴールドムーンも出てくる。彼女は本来なら百歳を超えてるはずだけど、そこにまた秘密があって……。
笠井: うわあ……謎だらけですね。
柘植: 要するに、これから膨大な物語が語られるんですよ。
笠井: 3部作でしたっけ?。
安田: そう。今回出るのは、第1部『墜ちた太陽の竜上巻。このあと中巻下巻と出る予定。第2部はたぶん2分冊第3部3分冊合計8冊になるよ。
笠井: おお(目をみはる)。
安田: 戦記ものが好きな人にはミーナの話を。エルフが気になる人にはシルヴァンを。旧来のキャラクターが好きな人にはジェラードと○○○○のかけ合いを楽しんでほしい。
笠井: さすがにキャラクターがこなれてきていますね。
柘植: ワイスもヒックマンも熟してきたなあ、と思います。
笠井: 最初の『ドラゴンランス』から20年くらい?
安田: うん、今年で21年め。向こうでは支持層もすごくて、売れた部数もすごい。誰もが若いころに読んだ、という感じ。
笠井: 映画にはならないんでしょうかね?
安田: それは……『指輪物語』だって、映画になるまで50年かかったんだから(苦笑)。さて、映画の話題も出たことだし、もう1つの大作に話を移ろうか。

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