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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > 『ボードゲーム・ストリート2011』発売記念インタビュー1(2011年04月)
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『ボードゲーム・ストリート2011』発売記念インタビュー


  前作『ボードゲーム・ジャンクション(著:安田均/グループSNE、刊:新紀元社)』から1年。
 お待たせしました。みなさんの熱いご声援にお応えして、『
ボードゲーム・ストリート2011』となって帰ってきました!

 著:安田均/グループSNE、刊:新紀元社

 2010年前後に発売されたボードゲームを、一挙掲載している本作。TRPGを中心としたアナログゲームの情報誌「Role&Roll」(刊:新紀元社・以下、R&R)」に連載していた記事に、大幅な書き下ろしを加えています。
 カラーページでは、20を超えるゲームをジャンル分けし、難易度も設定してわかりやすく掲載。さらに「安田均のボードゲーム紹介」で1つ1つ丁寧に解説しています。より具体的な遊び方は、会話形式の「ボードゲーム・リプレイ」で確認。肩肘を張らず、気軽にわいわい楽しむゲームをお探しなら、「ウニ頭にもできるもん!」を要チェックです。
 前作でも好評だったスタッフによる座談会も新たに収録され、お買い得の1冊。
 日本の同人ゲームや国内外のボードゲームイベント、iPadで注目のiアプリも紹介と充実した内容です!

 そのスタッフであり、執筆を担当した我らがボス安田均をはじめ、同じく執筆担当の笠井道子秋口ぎぐる、そしてルールの翻訳兼レクチャーおよび写真担当である縁の下の力持ち柘植めぐみの4人に話を伺いました。
 さらには、このたび日本ボードゲーム大賞を受賞した『キャット&チョコレート』のデザイナー・川上亮(秋口ぎぐる)へのインタビューも合わせてお届けします。
 聞き手は、最近休み時間にiPadを借りてiアプリを遊びまくっている篠谷志乃。
 それでは少し緊張気味にスタートです。

 ※但し書き※
 本記事に登場するボードゲームやデザイナーは、文末にまとめて出典などを掲載しています。作者や版元等をご確認される場合は、どうぞ文末をごらんくださいね。→こちら
2011年4月
記事作成 篠谷志乃



●発刊への道のり
――: それでは『ボードゲーム・ストリート2011(以下、BGストリート)』の著者インタビューを始めたいと思います。よろしくお願いします。
安田 はい、よろしく。
笠井&柘植
&秋口:
よろしくお願いします。
――: めでたく出版の運びとなった『BGストリート』ですが、前作『ボードゲーム・ジャンクション(以下、BGジャンクション)』に比べると、少しコンパクトになりましたよね。内容も、2009年後半から2010年にかけてのほぼ1年間に絞った形でボードゲームを紹介することになりました。
安田 まさか2冊目が出せるとは思っていなかったので嬉しいです(笑)。
――: といいますと?
安田 まず、収録期間が1年ということ。これって、ボードゲーム自体の数がある程度なかったら紹介できないだろう?
――: あ、それはそうですね。
安田 でも、あいかわらずいろいろと出てくれていて、そこは大丈夫だった。次にニーズかな。『BGストリート』の座談会でも取り上げたけど、日本でも専門店が増えたり、通信販売サイトのアマゾンで売られるようになったりして、ずいぶんボードゲームが手に入りやすくなった。じっさいに遊んでくれる人がたくさんいるから、こういった本も出せる。読者のみなさんには本当に感謝しています。
一同 (お辞儀)
安田 でもよかったよ。ドイツゲームの紹介を十何年、『アクワイア』(注1)の頃からだともう40年以上やってきたけど、ちゃんと流れがこの方面に向ってきた(笑)。
――: そういえば『BGストリート』は『BGジャンクション』に比べて、さらに読みやすく、内容もわかりやすくなっている気がしました。
安田 ぼくは解説部分担当だから、文章は多少難しいかもしれないけど(笑)。とにかくぼくは、「すでにゲームを遊んでる人はもう一度遊びたくなる」「遊んでない人はぜひゲームを遊びたくなる」ものを目指しました。これはSFやRPG、TCGの紹介の頃とスタンスは変わっていないよ。
笠井 内容以外のところでは、文字を大きくして、余裕のあるレイアウトにしていただいています。前作では1ページに納めていたものを、2ページにしたりしていますよ。
――: ああ! そういえば掲載されている写真も大きいですよね。どうりで検索しやすかったわけだ(笑)。


●ゲームの難易度
――: それでは続いて、『BGストリート』の気になる内容についてお伺いしたいと思います。
安田 はい、どうぞ。
――: 私、このインタビューを行うにあたって、前作『BGジャンクション』を見てみたんですよ。そうしたら、過去最高の「難易度8」と判断されたゲームが載っていたんです。それも2つも。次点の「難易度7」もたくさんありました。ところが、今回の『BGストリート』では、最高でも「難易度7」で、それも1つしかなくて(こぼれ話1:難易度と対象年齢)。
安田 お? 鋭いじゃないか。そこはいろいろと指摘されたところだよ。「この作品やあの作品が掲載されていませんが、まあ楽しい本ですね」とかね(笑)。でもぼくはね、『BGストリート』では、わざと難しい作品を少な目にしたんだ。
――: それはなぜでしょう?
安田 まずボードゲーム自体が、もっといろんな人に広がって欲しいと思っている。難易度の高いゲームはプレイしているけど、なにせ時間がかかるからね。そういうのが好きな人は好きな人で、どんどんプレイされたらいいと思うんだよ。たとえば、ワインを作る複雑なボードゲームなんて、去年は2つも3つもあったりする。
秋口 僕とプレイしたやつですね(笑)。
安田 そうそう。はっきり言おう、ぼくはあれらも好きです。非常にいいボードゲームだと思う。でもね……しんどいんだよ(笑)。
一同 (笑)
安田 2時間近くえんえんルールを説明してもらって、3時間かけてプレイする。やりますか?
柘植 (ぽそり)やります
安田 柘植はそうだろうなあ(笑)。ぼくだってね、時間があって一緒に楽しんでくれる仲間がいたらやりたいよ。
――: わ、わたしは正直辞退させていただきたいです(汗)。なるほど、だから『BGストリート』にはあえてそういった骨太すぎるゲームは掲載されなかったというわけですね。
安田 そう。そこは今回の特徴の1つだね。
秋口 あと、新しい要素がちゃんとあるのかどうかという点も大切ですよね。
安田 もちろんそう。複雑なゲームってね、似たようなものになっていくんだよ。データだけ細かくして、似たようなものをちょっと変えましたというような。「バリエーション」と「クリエーション」は違うんだ。でも今の時代、バリエーションが評価されがちでちょっとつらい。ぼくは、クリエーション、はっきりと新しいところがあるものが好きです。
――: 何かキラリと光るものを感じた作品を選んで、紹介されているんですね。
安田 はい。ちょっと言い方は悪いけど、マニアと言われるような、すごくやり込む人はバリエーションでも全然かまわない。少し違っているだけでも嬉しいから。でもね、普通の人はそれぐらいの違いはどうでもいいんだよ。
――: めっちゃ納得してしまいました。


●BGストリートで言いたかったこと
安田 あと、『BGストリート』の中やこのインタビューで、あえてボード・カードゲームファンや従来のRPG、TCGファンの人に言いたかったことが1つあるんだ。言わせてもらっていいかな?
――: もちろんです。なんでしょう?
安田 2010年、さらに2011年に入って、どんどんゲームの流れが変わってきている。このあたりは、従来の分野ファンだけの方も注目されるといいんじゃないかな。
――: ほう。
安田 今まで、ストーリーゲームの流れでRPG、そしてカードゲームの流れでトレーディング・カードゲームがあったよね。最近も、『ドミニオン』や『サンダーストーン』(注2)とか、カードゲームの新しい形が出てきている。
――: デック構築型/セレクトカードゲームですね。

デック構築型/セレクトカードゲーム」は、数種あるカードの中から遊ぶ毎に使うカードの種類をセレクトし、その後ゲームを遊びつつデック(山札)を構築し、作り上げたデックのカードを使って他のプレイヤーと勝利点を競うというもの。

安田 こうした流れを、別の大きな方面から見ると2つにわけて考えられる。1つはシミュレーション、RPG、TCGなどの流れをくむ「データ型ゲーム」、もう1つは「ドイツ型ゲーム」とでも言うべき、簡単でわかりやすくて、みんながすぐに楽しめるボード・カードゲームの流れ。ぼくは後者のドイツ型ゲームを新しい面白さだと、この10年ずっと言ってきたけれど、それが今、さらに加速してより新しい要素が加わってきているんだ。
――: さらに新しい……? いったい、どういったものになったんでしょう?
安田 去年の夏にiPadが出たよね。それを遊び込んだとき、ぼくは「掴めた」と思った。パズルゲームの新しい流れが来つつあるんだよ。ストーリーとパズルが組み合わさった新しい電子エンターテイメントの流れが、ブレイクしはじめている。
――: パズルというと、クロスワード絵合わせ数独みたいなものですか?
安田 そういった従来のものだけでなく、新しい感覚でストーリーとくっつくような形のパズルゲーム。これが、コンピューターゲームでも拡張しているんだ。とくにiアプリではすごく顕著。今回の『BGストリート』でもちらっと書いているけど。
――: 冒頭の「2011年のボードゲーム界の流れ」ですね。
安田 それだけじゃなく笠井にも書いてもらった。でも、iアプリだけじゃない。アナログゲームと相関しだして、ボード・カードゲームでも、パズルと組み合わせたものが出はじめた。これから遊ぶんだけど(笑)。
柘植 狂気の館(マンションズ・オブ・マッドネス)』(注3)ですね。
安田 書籍にもこの流れは来ている。iアプリに見られるタイムマネージメントを再現したような本が、ゲームブックの形になってヒットしたり。
――: タイムマネージメントといえば、時間内に効率よく動いて得点を獲得するタイプのゲームですよね。それが、物語を読んでいく感じで進んでいくんですか?
安田 そう。それに、「脱出ゲーム」って知っているかな? 実際に身体を動かして行うライブのやつ。
――: はい、大好きです! ハマっています!
安田 そうだった(笑)。SNEでも秋口くんや篠谷さん、ほかにも何人か参加しているよね。あれもパズル、イベント型のパズル解きだろう? でも、まだストーリー性が弱い。たぶんこれから、もっとストーリーが入ってくるよ。
秋口 ですね。
安田 つまり、ストーリーとパズルみたいな簡単なゲームが組み合わさったものが、これから1つの分野として拡がっていくと思う。
――: パズルの魅力を再発見といった感じですね。
安田 『BGストリート』でiアプリについても触れたのは、「1ジャンルだけでなく、すべてにおいてそういった流れが来ているんだよ」というのを意識してほしかったから。RPGファンはRPGだけ、ボードゲーム・カードゲームファンはボードゲーム・カードゲームだけでいい……そういったオタク・タコ壺型からの変化は始まりつつある、と伝えたかった。
――: ユーザーに他のジャンルや遊び方にも興味を持って欲しい、ということですか?
安田 もちろん。『カルカソンヌ』や『チケット・トゥ・ライド』(注4)といった有名なボードゲームもどんどんiPadに移植されるようになっているしね。ぼくは、手軽で簡単なゲームだけがいいと言っているわけじゃない。いろんなものが発展し、それらが混ざり合ってさらに、新しいものになる'進化'を見て欲しい。それが、実はこの『BGストリート』で言いたかったことでもあるんだよ。


●ボードゲームとiアプリ
笠井 iPadについては今回、ウニ頭の番外編「ウニ頭が斬る」で書かせていただきました。
――: ああ、あの素敵なイラストの(こぼれ話2:1ページが3ページに
安田 ちょっと面白半分に書いているけど(笑)。
笠井 そんなことないですよ!(笑) 大真面目に書きました。
安田 うん、あの記事はすごく大事なことを書いていると思うんだよね。2つ意味があって、1つは、ボードゲームやドイツゲームがiPadのアプリに次々と入ってきているということの紹介。iPadでのボードゲームって、実際にもやりやすいし、ネットでもできるし、すぐみんなの前に出しても遊べる。
――: 対戦も普通に行えますもんね。ネット越しなら手札とか相手に見えませんし。
安田 そう。でも、コンピュータ化するから元々のボードゲームが売れなくなるかといったらそういうことはないんだ。やっぱり人と直接遊ぶのも面白いからね。
一同 (うなずく)
安田 で、もう1つが、iPadで流行っているゲームの紹介。今ではiアプリのメインと言える、ヒドゥンオブジェクト(絵の中に隠された物を探し出す、絵探しや隠し絵と呼ばれるタイプのゲーム)や、3マッチパズル(同じマークを3つそろえて消すゲーム)などのパズルが、ストーリーとくっついているゲーム。
笠井 iPadとボードゲームは本当に相性がいいですよね。
安田 おかげで今度は、iPadからボードゲームRPGという流れも見え始めているんだ。タワーディフェンス(迫り来る敵をひたすら攻撃したり、いなしたりしつつ、自分や領土を守るタイプのゲーム)のボードゲームとか。『プラントvsゾンビーズ』(注5)っていうiアプリが、ボードゲーム化されるよ。
――: 『BGストリート』にも紹介されていましたよね。すごく楽しみな展開になってきました。


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