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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > 『ボードゲーム・ストリート2011』発売記念インタビュー2(2011年04月)
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●プレイ・プレイ・プレイ
――: 『BGストリート』の内容についてはがっつりお話を伺ったので、ここからはせっかくお集まりいただいたことですし、みなさんに1つずつ軽い質問をさせてください。
安田 もうぼくはしゃべらないよ。いっぱいしゃべったから(笑)。
――: あ、でも社長にも1つだけお願いします。『BGストリート』の執筆のため、どのくらいボードゲームをプレイされました?
安田 ひと月に10個ぐらいだから、年120個はプレイしているだろうね。
柘植 ええ? 120個どころじゃないでしょう(笑)。
――: 他にも仕事でやっているからね。新しいボード・カードゲームを考えたりもしているから、平均したらそんな感じだと思うよ。
――: ほわ〜、すごい量ですねぇ。1作品にかかった時間とかもお聞きしていいですか?
安田 あ! これは尋ねられると悲しいな。実は、1プレイしかできていないものがすごく多い。よっぽど好きだったり、内容をしっかり把握したいときは何回もするけど……
笠井 今回、1ゲームに時間のかかる作品も多かったですからね。
安田 うん。それで、どうしても1ゲーム1回になっちゃうんだ。もう1回プレイしたいと思う作品は本当にいっぱいあるよ。うう……悔しい。そういうことで判断をミスしているものもあるかもしれない。
――: ミス?
安田 「プレイした内容で」ということじゃなく、おもに「人数を変えてプレイできていない」ということ。
――: ああ! 「3〜5人推奨」と書かれたゲームであっても、実は「4人」が群を抜いて面白くなる、とかですか?
安田 そう。明らかに、人数で面白さや難易度が変わることがある。1プレイすることでおよその推測はできるけど、実際に人数を変えてプレイしてみないと自信は持てない。ゲームによって最適人数は違ってくるので。
――: それをルールや1プレイだけから読み切るのはムリですよね……。
安田 でも、プレイヤーの向き不向きからなら、ゲームごとにきちんと計算しているよ。細かい計算が好きな人とか、楽しくサイコロを振っていたい人とかタイプって分かれるよね。ゲームをするとき、そういった好みをわかったうえで、このゲームに向いているのは誰かと考えて、いつもプレイはしている。
――: それを1作品1作品ですか。あの量で(呆然)。お、お疲れさまです〜。


●伝えたいけど伝わらない
――: 続いて、秋口さんにも軽いと思う質問を。リプレイで、いつもわかりやすくボードゲームを紹介していらっしゃいますよね。そこで質問です。すごく面白いし好きだけど、リプレイで表現するには難しいため、とりあげなかった。でも絶対面白いんで遊んでほしい……みたいなゲームってありますか?。
秋口 そりゃあ、めっちゃいっぱいありますよ。(一同に)ねえ?
安田&笠井
&柘植
うん(笑)。
――: たとえばどんなものが?
秋口 『BGストリート』の座談会で行ったベスト3にも挙げましたけど、『ロンドン(注6)なんかはリプレイで書いても、ねえ?
安田 文章にして、ウケを取れるのが「貧困」カードあたりに集中するだろうね。他は書きにくい。
秋口 そのとおりなんですよ。「このカードを下ろしました」「このカードでどうしました」しか言うことないし、そのあたりの面白さは文章では伝えにくいんですよ。
柘植 ゲームはすっごく面白いんですけどね。
秋口 はい。まあ、そんな感じなので、まず『ロンドン』はリプレイにしにくいゲームの中に入ってきますね。あとは、『オートモビール』(注7)なんかも、リプレイで伝えるには難しいですよね〜。
――: とても楽しそうにプレイされていたように思いましたが。
秋口 ええ、すごく面白いんですが……。
柘植 50ページぐらい書いていいのなら、書けるんじゃない?
秋口 (しばし考え)……50ページ書くのがですね(笑)。50ページ書くという話なら、ルールが多すぎて4ページのリプレイでは取り上げられないんだけど大好きという作品がありますよ。「難易度5」以上がついているような、『エンデバー』『コミュニ』『シップヤード』『ヴァスコ・ダ・ガマ』(注8)とか。このあたりは、ぜひお伝えしたい……。
安田 いやいや、その辺もムリだろう(笑)。『コミュニ』は取り上げたいけど、面白いのは交渉の部分だし、ページを多く書いても伝わらないだろうし。
秋口 そうですよね、リプレイでは伝えにくいですよねえ。
――: 書きたいけど表現しにくい、もしくはページが足りないんですね。よくわかりました。では、もし50ページでボードゲーム・リプレイを書く機会がありましたら、ぜひ挑戦してみてください(笑)。
秋口 はーい。……正直、イヤですけど。(こぼれ話3:狂気の館
一同 (笑)


●ウニじゃなくてイクラ
――: では、続いて今度は笠井さんにもちょびっと質問を。秋口さんと同じような質問になるんですが、「ウニっぽいけど、これウニじゃない!」と思った作品とかありますか?
笠井 (周囲に)それは……ありますよねえ。むしろ、「ウニじゃないけど、ウニで書きたかった」というものがたくさんありますよ。そっちの方が多いかもしれない。
柘植 周りが「これ、ウニでしょ?」って勧めても、違うって言われる作品はたくさんありますよね。
安田 ウニのチョイスは難しいんだよ。ウニくさい……ウニじゃなくて、「イクラ」とか「ナマコ」みたいなズレ方なんだけど(笑)。
笠井 ウニ頭にもできるもん!(以下、「ウニ頭」)」は、別にゲームをくどく、丁寧に専門的に紹介するコーナーではないでしょう? 楽しく読んでいただくためのコラムだと私は思っていますので、背景とかフレーバーとかがとても大事なんです。ゲーム自体はすっごく面白いんですけど、抽象ゲームっていうのは「ウニ頭」では書けない。
安田 たとえばクニツィーア注9)の作品とかね。いつも書きにくいって言ってるよね。
――: でもクニツィーアの作品は、笠井さんはすごくお好きでしたよね?
笠井 好きですよ。クニツィーアフリーゼ注10)は好きです。でも、どっちもウニでは書きにくい。ゲームをやっているその場で、ちゃんとストーリーなり物語なり……ええと、ダイナミズムが動かないと、コラムとしてはすごく書きにくいんです。「ゲームを遊んでいたら、こんな面白いことがありました」と、分かりやすく伝えられる作品でないとつらい。ルールを説明して、「このルールはこのためにあるんです」っていうのを書いても、たぶん誰も読んでくれないでしょう?
――: なるほど。
笠井 なので、割と「ウニ頭」で紹介する作品を選ぶのは難しいんです。
安田 ぼくがウニ頭にぴったりだと思ったのは、『BGジャンクション』でも紹介した『手抜き工事』(注11)。あの、粘土で建物を作って、棒をぷすーって差し込むやつ。ただ粘土に棒を指して手抜きかどうかを見るだけのゲームなのに、なんかね、粘土で凝ったビルを作っちゃったりするんだよ(笑)。
笠井 でも、あれはあれで非常に書きにくかったんですよね。
安田 おや、あれこそ、ウニゲーそのものやと思ったのに。
笠井 実際にその場で起こったプレイヤーのアクションが面白いゲームって、文章で表現するのが大変なんですよ。なので『手抜き工事』はゲーム自体はウニなんですが、コラムとして取り上げるには難しいんです。
――: 篠谷:秋口さんのジレンマと同じですね(笑)。


ボードゲームの目利き
――: お待たせしました。いつもボードゲームの翻訳とレクチャーをなさっている柘植さんにも、お話を伺わせてください。
柘植 わたしも? うん、どうぞ。
――: 柘植さんは、2010年のゲームをほとんど見てこられたわけじゃないですか。そこで質問なのですが、2010年のゲーム全体で、「これは特徴的だったな」と思われたものってありますか? たとえば、取り上げられていることが多かったテーマとか単語とか。
柘植 ん〜、難しいですね。よく使われたテーマがあるというよりは、バラエティに富んでいた気がします。ただ、すごく変わったゲームというものも少なかったかな。ちゃんとしたゲームが多かったというイメージです。
――: そうだったんですね。
柘植 先ほど、社長がバリエーションが多いとおっしゃっていたことと繋がるかもしれません。そういうゲームが増えてきてしまうと、「それをするんだったら、前のこっちをするよね」というような気がしてしまうことがありました。仕方がないかもしれませんが。
安田 柘植はね、『1830』(注12)タイプをまだやれてないから不満なんだよ(笑)。
柘植 (部屋の一角を指さして)そこにね、未プレイの鉄道ゲームが積んであるんですよ。
一同 (爆笑!)
柘植 そういう意味では、去年は鉄道ゲームはほとんどやっていないですよね。出ていないわけではなくて、手にも入れているんですけど。
笠井 やっぱり時間? 株のやり取りが入ると3時間とか?
柘植 いえ、そうじゃないやつもあるんですよ。逆に『1830』をカードだけにして、1時間や30分で終わるようにしたゲームとかあるんですけど。……たぶん、それは物足りないと思うんですよ(ポソリ)。
一同 (笑)
安田 でも、そういったバリエーションの中から、ひょこんと2つの要素が融合した『ドミニオン』みたいな新しいものが出てきたりするんだ。これまでドイツゲーム、アメリカゲームといった印象のものはあったけど、今は、フランスのゲームがわりと遊びやすくて面白い。他にもイタリアとか、チェコとか、日本アジアのゲームも面白いものが出てきているから、ボードゲームそのものの懐が広くなっている感じがするね。
――: そうなんですか。
安田 うん。現在のボードゲームは、英米とドイツという2大ボードゲームの産地から、その周辺の面白いものを捜すという段階になってきている。それなら我々も負けてられないなというところで、楽しみなんだけどね。
――: どんどんワールドワイドになってきているわけですね。
安田 発想、アイディアが優れた人の作品なら万国共通で面白いので、各国からすぐに出てくると思うよ。言葉の壁が少ないからね、ゲームは。
――: なるほど。そうなると、今まで見たことのないような国のものも目に留まるようになるのか……。
柘植 あ! そうですね。デザイナーの名前を見て、「これなんて読むんだろう?」「これ、どこの人なんだろう」って首をかしげることは、この2010年から特に多くなった気がします(笑)。


●日本の新しい流れ
安田 日本でも、そういった流れを受けた新しいボードゲームが出てきているよ。これは秋口くんに聞くといいんじゃないかな? 日本ボードゲーム大賞を受賞したんだって?
秋口 はい、そうなんですよ。
安田&笠井
&柘植
おめでとう〜!(拍手)
――: おめでとうございます! ご存じの方はご存じなのですが、秋口さんはゲームのデザインもされていて、川上亮名義で、今回『キャット&チョコレート(以下、C&C)』(注13)というゲームを制作し、日本ボードゲーム大賞を受賞されました。せっかくなので、ぜひその辺りのお話も聞かせてください。

『日本ボードゲーム大賞』  NPO法人「世界のボードゲームを広める会 ゆうもあ」さんが発表されている、「日本国内で流通した、この1年もっとも面白かったボードゲーム」に贈られる賞のこと。  国産・海外産、難易度を問わず、とにかくベスト1だと思う作品を、日本全国のボードゲームショップやインターネットを通じて一般の投票を募り、得票数の多かったゲームが受賞します。

安田 ね、『C&C』って何だったの?
秋口 な、何だったの、ですか?(汗)
安田 いや、何にヒントとか得たのとか、どうして作ったのとかを聞きたかったんやけど。
秋口 ああ! ええと、『C&C』は、RPGを作ろうとして作ったボードゲームなんです。社長には、最初、「論理的ではない」と厳しい評価を受けましたね。実際その通りだと思いますが(笑)。
安田 あれは意外だったんで(笑)。『世界の七不思議』(注14)とか、データ型ゲームとドイツ型ゲームのハイブリッドみたいなゲームも出ているでしょ? あっちの流れを追っかけて、論理的に面白いゲームを作ったのかなと思って『C&C』をプレイしてみたら、全然違うものだったんで、あんぐりと口を開けてしまっただけ。「面白いけど、ぼくの思ったものとは違う」と言っただけのことなんだよ(こぼれ話4:ファーストコンタクト)。
――: そういえば、今まで秋口さんが作られていたのって、がっちりしたボードゲーム風のものが多かったですもんね。
安田 だろう? 秋口くんとはボードゲームをいろいろ遊んでいて、彼はそういうゲームも好きだし、作ろうともしていたから、よもやこんな形で作るとは思っていなかったんで驚いたんだよ。
秋口 確かに、『C&C』の前に作って出したのが、『エムブリオマシンRPG(著:秋口ぎぐる/グループSNE、刊:JIVE)』ですからねえ。あれはRPGって言いながらも、実際はほとんどボードゲームですから。
安田 だね。同時プロッティング形式のシミュレーションゲーム
秋口 はい。で、『C&C』は、河野(『サクラダリセット(刊:角川スニーカー文庫)』シリーズの著者。エムブリオマシンRPGのスタッフでもある)やSNEメンバーと、「GMのいらないRPG」の話をしていて、じゃあ作ってみよう、ということになったんです。行動の判定をパラメーターとか使わずに、その場にいる人間の多数決で決めたらどうか、と。で、まずは一番簡単なものを作ってみようと作ったものが……。
――: 『C&C』だったんですね。なるほど。
秋口 今回、日本ボードゲーム大賞を頂けたということは、非常にありがたいと共に、恐縮なんですけれども、僕は「優れたものだから賞を頂けたのだ!」と主張するつもりはそんなにないんです。
――: 実際、得票数は多かったんですよね?
秋口 プレイしてくださった方がツイッターで広げてくださったんですよ。それに値段も手ごろで買いやすかった。『C&C』は、確かに大賞を選考する票をたくさん頂いたんですけど、それは遊んだことがある人の数が、純粋に多かったからじゃないかと思うんですよね。遊んだことのないゲームに誰も投票できないですから。まあ、そこでラッキーだったんじゃないかなって思います。
――: 2010年4月に行ったSNEコンベンションでも、いろんな方が買われて、その場で開けて遊んでくださっていましたもんね。女性の方も多く見られましたし、やっぱりとっつきやすいというのが大きな要因だったんでしょうね。


●挑戦、これから
――: では、これからの話を聞かせてください。2011年、これからのSNEでは、どのようなゲームの企画が進行しているのでしょうか?
安田 iアプリに代表されるパズルの面白いゲームが、電子の枠を越えて広がりつつあるというのはもう話したよね。我々としても、そこのところをアナログ形式でうまく表現できないかと、今、タワーディフェンス型のボードゲームを考えている。それから、ヒドゥンオブジェクト型のゲームブックなんかもやりたいな。
――: なんと。それは楽しみです。
安田 まだあるよ。ぼくたちはドイツから拡がったユーロゲームの流れも好きだから、そういうものも作って勝負がしたい。でも、日本的な作品も作りたい。
笠井 日本的なものというのは、「テーマ」がですか? それとも花札のような「遊び方」ですか?
安田 どちらも、かな。そういうものを、いかに国際的な形で表現するのかという話になるね。まあ、下手したらイロモノになるけど(笑)
――: 人狼』(注15)は、確かロシアの伝統的な遊びを元にしているんですよね。あれが世界的に広まった……。
安田 フランスのデザイナーが広げたんだよね。フランス人は新しいものが好きで、世界の変わったゲームにも目を光らせている。今、フランスにわりと新しいゲームの流れが来ているから、日本のゲームもクローズアップして出してもらえたりしそう。インターナショナル化は間違いない。
――: フランス人は、情報を受けて発信する力がすごくあるんですね。
安田 相撲とかとか、忍者とかも大好きだよ。だから、その辺りをテーマにしても作りたいと思っているんだけどね、ちと恥ずかしいが(笑)。
――: 了解しました(笑)。秋口さんも、その辺りはニヤニヤする感じなんですか?
秋口 僕はまあ、いろいろ……考えて、ます。
安田 1つあるだろう? 秋口くんは、JGCでライブの脱出ゲームをやります。河野裕も一緒に。期待していてください。
――: 楽しみです。ぜひテストに参加させてください!


●SNEから発信すること
――: では、そろそろ締めに入りたいと思います。最後になりますが、ボードゲーム情報発信者として、みなさんから一言ずつお願いいたします。
笠井 では、わたしから。R&Rでずっとコラムの連載もしていますし、それをこれからもできれば続けていきたいです。みんなで、毎年『BGストリート』のような本を出していきたいな。
安田 出していけるような状況があれば間違いなくできるんで、そうあって欲しいよね。
秋口 僕は「いいものを作っていく」ということですね。僕自身が飽きっぽいところがあるので、いろいろやってみたいという思いが強いんですよ。。
――: 留まらず、常に挑戦し続けたい、と?
秋口 だから、ゲーム会を半年くらい前から開いてみたりとか、最近自分が『リアル脱出ゲーム』が面白いと感じているんで、それとボードゲーム的な要素を加えたものを今度のJGCでやってみようと考えてみたりとかしています。なので、そうした方向性で、まだ誰もやっていないようなことを何かやっていけたら面白いなと思っています。
柘植 わたしは海外で作られたものを、誰よりも早く読める翻訳という立場に置いていただいているので、「いいな」「これは珍しいな」と思う作品に鼻が利くようになりたいです。
安田 狂気の館』も、柘植が「何かパズルが入っていますよ」と言ってくれたから、即「やろう!」という話になったもんなあ。
柘植 社長より先にこっそり読んでいたら、「あれ?」って(笑)。そういう風に、いち早く気づいて、今後もお伝えできればいいなあと思っています。
――: ボードゲームの紹介も、作品そのものも、どんどんSNEからも発信していく、と。
安田 はい。いい作品を我々が作ったり、広めたりすることが肝心だと思うので、まずはそこからがんばっていきます。応援よろしく!
――: ――といったところで、お開きとさせていただきます。お忙しいところ、みなさんありがとうございました。
安田・笠井・
柘植・秋口
ありがとうございましたー!



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