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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > オリジナル小説豪華3本立て フラワーカード探偵咲 (2013年01月)
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フラワーカード探偵咲 花妖精、あらわる!
聞き手:柘植めぐみ
 続きまして、グループSNEの中堅、川人忠明の登場です。
 「ソード・ワールド2.0」では主にゲームブック型サプリメント(『ミストキャッスル』他)を手がけ、かつては「ガープス」や「エンドブレイカー!」でもシステム面をサポートしてきたゲームデザイナーですが、小説家としてもかなりの数のオリジナル作品を出しています。
 そんななかでも、今作は驚きの
女の子向け児童書
 どういう思いで執筆したのか……気になります!
 聞き手は、変わりまして柘植めぐみが務めます。


★『フラワーカード探偵咲 花妖精、あらわる!』とは?
―― というわけで、川人忠明さんにお越しいただきました。
川人 よろしくお願いします。
―― まずはざっとしたあらすじを……。

【作品紹介】
 小学5年生の春野咲(はるの・さき)は“
花ガール”。
 花に詳しかったおばあちゃんの影響で、花のことに興味津々。その咲が親友のなっちゃんのために、いなくなった猫のダンディを探そうと思いついたのが、むかしおばあちゃんが持っていた魔法のカードで占いをすること。するとその“フラワーカード”と一緒に現れたのは……。
 夏海秋子の3人の少女が日常の謎を追いかける、冒険友情の物語。

―― 女の子たちがかわいい! 主人公のちゃんといい、スポーツ万能の夏海ちゃんといい、控え目だけれど芯の強い秋子ちゃんといい……。
川人 そうですね。かわいく書きましたから(えっへん)。
―― 小学校5年生の女の子って、描くのが難しくなかったですか?
川人 このくらいの年代の女の子ってどんな感じだろう、とあれこれ想像しました。ちょうど微妙な年頃で、ちょっと背伸びしたくなるころかな、と。
―― そのわりに、みんな素直ですよね。
川人 はい、まっすぐな3人組です。それぞれが目指しているものに向かってまっすぐ。は花が大好きで、夏海はスポーツ大好きで……。
―― 秋子ちゃんだけちょっと事情が複雑ですよね。病気のせいで、将来を悲観しているところがあったりして……。
川人 だからこれまでは夢を見ることができなかった。でも咲と夏海に出会ったことで、変わり始めます。
―― それにしても……この本は“児童書”ですよね? いったいどういう経緯で書かれることになったんですか?
川人 出版元の学研さんとグループSNEは、友野さん執筆の『妖怪コロキューブ』でつながりがありまして、その関係で今回書かせていただくことになりました。
―― なるほど。『妖怪コロキューブ』は小学校低学年向けですが、『フラワーカード探偵 咲』はもうちょっと上かな。
川人 はい、小学校高学年〜中学生を想定して書きました。でも、もっと上の年代でも、あるいは読書好きなら低学年の子どもさんでも楽しめるようにしたつもりです。知り合いの小さな娘さんも読んでくださったと聞いていいますし。
―― おお! それで感想は?
川人 で、続きは?」(笑)

☆神秘的なものが好き?
―― この作品は、“花言葉”や“占い”を使った謎解きストーリーですよね。それにしても、川人さんが花に詳しかったなんて初耳でした。
川人 花とか占いといったものはもともと好きで、いろいろ勉強したんですよ。こういう神秘的なものは、ファンタジー作品を作る上でも資料として大切ですからね。できるだけ知識を集めるようにしてきました。花にまつわる逸話や、星座を巡る逸話とか。
―― そういや第三話で、秋子ちゃんが星座の話をしていたような……。
川人 はい、七夕の織姫と彦星にまつわる話を、みんなに聞かせてあげています。
―― となると……あれこれ薀蓄を書きたくなりません?
川人 もちろん! じっさい、筆が乗るとついつい脱線してしまいそうになって、編集さんにセーブしてもらいました。
―― この話を書く上での苦労話を訊こうと思っていましたが、もしかしてそれ?
川人 ですね。クドく書きたくなるのを抑えるのに、いちばん苦労しました。と同時に、セーブしながらもいかに書きたいことを伝えるのか、作家としてとても勉強になりました。
―― 占いの話に戻りますが、この作品には、オリジナルの“フラワーカード”というものが登場しますよね。
川人 はい。もともと咲のおばあちゃんが花妖精からもらったというカードです。花と女性が描かれたトランプのような感じ。
―― 挿し絵でも1枚1枚丁寧に描かれていて、すごく実物がほしくなりました。このカードを使って、咲ちゃんは友だちの心配ごとを解決してあげるんですよね。
川人 フラワーカードが教えてくれるのはキーワード、いわゆる“花言葉”だけです。それをどう解釈するのかが、咲の仕事。読者のみなさんも、咲と一緒に花言葉の意味を考えて、もしかしたら……とひらめいてくれると嬉しいですね。
―― 知らない花がたくさん出てきたびっくりしました。ええと……(本をめくって)ネモフィラインパチェンスヘリオトロープ……こういう花も、もともと知っておられたんですか?
川人 :はい、知識はありました。とはいえ、あらためて全部調べ直しましたけど。この状況にふさわしい花言葉やそれを持つ花はなんだろう、とか。
―― 巻末の参考文献に、花言葉や占いの本だけじゃなく、『園芸大図鑑』とあるのが面白かったです。
川人 いつ種を植えて、いつ花が咲くのか……そういうことも全部調べ直しました。思いこみだけで書いて、嘘になってはいけませんからね。
―― だからこそ、説得力のある地に足のついた作品になっていると思います。占いのやり方も、咲ちゃんはなかなか堂に入っていますよね。フラワーカードの占いはタロットに似ていますが、やっぱり川人さんは詳しいんですか?
川人 詳しいというほどでも……もともとやっていたんですよ。
―― やっていた?
川人 高校のころ、クラスメートによくタロット占いをしてあげていました。
―― ええっ? 女子高生相手にタロット占い?
川人 はい。
―― それは……モテたでしょう?
川人 いや、そんなことは(苦笑)。
―― 占いの結果はどうでした?
川人 よく当たる」と言われましたね。
―― ほう。もしかして作家をやめても、占い師としてもやっていけるんじゃないですか?
川人 それはない。

☆明るい登場人物たち
―― では、女の子たちに目を向けてみましょう。まず、主人公のちゃんですが……じつに友だち思いですよね。
川人 いい子でしょう? 咲は……自分の娘にしたいタイプかな(笑)。素直だし、お父さんのことも「好き!」って言ってくれそうだし。
―― このおやじ……と思いつつ)夏海ちゃんは?
川人 書いていていちばん楽しかったです。彼女は“ヒマワリ”ですから。
―― ? ……ああ、そういえば巻末の作者紹介で、好きな花はヒマワリって書いておられましたね。どうしてですか?
川人 青空に明るくぱっと咲く感じがいいでしょう? 色も黄色で、金運が上がりそうだし(笑)。
―― 秋子ちゃんは、天然ボケっぷりがかわいいですよね。ネタバレになっちゃうけど、「花言葉の〈いやし〉の逆さまはなんだろう?」と咲に訊かれて、「しやい」と答えるあたりが最高!
川人 秋子だけ、みんなにはない“”の部分を背負っています。ちょっとかわいそうですが、がんばってもらいたいですね。
―― 女の子3人組を取り巻くキャラクターたちも魅力的です。気になるのは、咲と夏海の幼なじみの冬樹くん。四季の名前がついているからには重要人物に違いない! やっぱり咲ちゃんといい感じになっちゃったりするのかな……(すっかりおばさんモード)。
川人 さあ、それはどうでしょう……(フフフン)。
―― あと、すごく印象的なのが猫のダンディ。まるまる太ってるから「大福」とも呼ばれてて、すごくお茶目です。
川人 彼はいわばこの物語の案内役。進行の役割を果たしてくれているというか。ほら……って見えないものが見えるって言うし。 
―― じゃあ、ダンディも、ダラダラなまけているように見えてじつは……?
川人 いや、本当になまけているだけかも。
―― (がくっ)
川人 でも、丸い猫がぼてっと寝ているのはそれだけで絵になりますよね。謎めいた猫ってすごくいい。
―― それから、花妖精フィー。かわいらしい容姿からは想像できないコテコテの関西弁にはびっくりしました。
川人 えっ、そんなに変?
―― 変というか、なんというか……。
川人 う〜ん、なんとなく最初から、イメージした感じが関西弁だったんですよ。不思議と。
―― フィーはとてもいい味を出していると思います。花妖精と人間の関係を絶やさないようにがんばっている姿もけなげだし。
川人 でしょう?
―― あと、どうしても触れておきたいのが、咲ちゃんのおばあちゃん! プロローグにある、おばあちゃんが花妖精たちとくり広げた大冒険ってなに?
川人 そ、それは……書くと長くなるから……。
―― 秘密?
川人 というより、いまの咲たちには関係のないことなんです。咲たちにとっては、いまという時間が大事。もちろんこの先、おばあちゃんの冒険に関係のある事件が起これば、当然語られることもあるでしょう。でもそれまでは、女の子3人と冬樹たちを描いていこうと思います。
―― なるほど。
川人 もちろん、スピンオフ的におばあちゃんの物語もいつか書きたいですけどね。
―― 首を長くして待っています!

☆最後に
―― 忘れちゃいけないのが、付録の特製おまじないカード! 「ヒナギク」と「フェンネルの花輪」と「白いバラ」の3枚のカードと、それらを使ったおまじないのやり方が載っていますよね。これも川人さんの発案?
川人 はい。せっかくなので、花言葉を利用したおまじないを紹介したいと思いました。より作品を楽しんでいただけるかと。
―― このカードのデザインも、イラストレーターの岸和田ロビンさんが全部やってくださったんですよね?
川人 はい、とてもがんばっていただきました。数々の作品に関わっておられる忙しい方なのに、本当にありがとうございます。この場を借りてお礼を申し上げます(深々とお辞儀)。
―― さて、今回は5月、6月、7月の3か月が舞台でしたが、続きを書くならやっぱり8月、9月、10月
川人 それは考え方しだいですね。夏休みだけで1冊あってもいいと思いますし。
―― 夏が舞台だとしたら……どんな花が出てくるんだろう。やっぱりヒマワリ
川人 それは外せないかな(苦笑)。あとは朝顔とか。
―― 続きを楽しみにしています。それでは最後に、読者のみなさんにひと言お願いします。
川人 フラワーカード探偵 咲』は、3人の女の子たちが花をめぐるできごとのなかで、友情を深めたり、ときにはけんかをしたりして成長していく物語です。ぜひ見守ってやってください。それからこれを機会に、花とか星とかに興味を持ってくれるといいな、と思います。作品のなかでも書いていますが、花も星も、それにまつわる物語がたくさんあって、すごく神秘的なんです。そのことを思い出して、子どものころから豊かな感受性を育てていってほしいですね。
―― そうですね……小さなころは咲ちゃんみたいに、花妖精とか自然に信じられたような気がします。
川人 ういう感受性は、きっと誰だって持っているんです。でも、大人になるにつれて忘れてしまうんですよ。でも、ここに登場する女の子たちはずっと忘れないかもしれない。まったく、『ナルニア国物語』のあの子は……いや、その……(もごもご)。
―― (なんだろう、ナルニアになにか一家言あるらしい……深く突っこまないでおこう)
川人 というわけで、『フラワーカード探偵 咲』を、どうぞよろしくお願いします!
―― 本日はありがとうございました!


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