1.グループSNEボードカードゲームコンテスト |
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それでは、グループSNEEのボードゲーム製作について、ボス安田均にたっぷりお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします! |
安田 |
ところで、前回著者インタビューでボードゲーム取り上げたのはいつやった? |
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前回は10月の著者インタビューで『ブラインド・ミトス』と『イカロス』を取り上げましたが?(2015年10月著者インタビュー) |
安田 |
わっ、そんな前やった? それからもたくさん出てるよね? |
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じつはそうなんです。まず注目作としてはグループSNE社内コンペ優秀作の『ドラゴンズ・エッグ』と『学園メテオ』。 |
安田 |
そうそう! それから、秋口ぎぐるの話題作『ゾンビタワー3D』と『TATEWARI』でしょ。そして『脳トレゾンビ』。『ロストシティ』も出たぞ。 |
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そして12月には『50のおもしろいゲームカード』と『ブラックストーリーズ4』ですね。 |
安田 |
なんと、それだけ出てるんや。しかも、1月には『マギ vs.ドラゴン』、2月には『ソード・ワールド2.0スタートセット 拡張パック』が出て―― |
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はい、2月には今回取り上げる『ギャンブラー×ギャンブル!』も発売されました。これらの作品についてはグループSNEのウェブサイトで紹介していますので―― |
安田 |
ええー、しゃべりたいよぉ(笑)。10月以降、『ギャンブラー×ギャンブル!』までになんと9点も出てるんよ? |
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おっしゃるとおりです。ただ、1作について5分お話しいただくだけで45分かかってしまいますので(汗)。 |
安田 |
4ヶ月間の9点がなくなった! |
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なくなってませんから(笑)! グループSNEのウェブサイトで随時紹介していますので、ぜひそちらをご覧いただければと思います。 |
安田 |
(渋々)しょうがないね。ぼくとしてはどれも面白いゲームなので、ぜひ遊んでください! と言っておきます。 |
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●コンテスト優秀作について |
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それでは早速ですが、今回取り上げる話題作2点、2月に発売された『ギャンブラー×ギャンブル!』(デザイン:宮野華也)と4月発売予定の『ソラシノビ』(デザイン:寺島由人)についてお話を聞かせてください。 |
安田 |
去年(2015年)に行ったグループSNE公募ゲームコンテスト(以下「公募コンテスト」)の優秀作ですね。約束どおり2016年の、それも初頭にこうして出せるのは、元の作品の完成度が非常に高かったからです。つまり、いろいろ手を加えたり修正する必要がほとんどなかったということです。すばらしいですね。 |
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最終的に応募点数はどれくらいになったのでしょう |
安田 |
60点とちょっとですね。ただ重要なのは点数ではなくて、その募集期間なんですよ。5月末に募集を開始して締め切りが6月末。 |
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なんと、たった1ヶ月! とんでもないスケジュールですね。 |
安田 |
すでにゲームを作り慣れていて、今度ゲームマーケットにでも出展しようという方でないと、ちょっと(時間的に)厳しかったかもしれません。その点は申し訳なかったと思っています。 |
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なるほど。 |
安田 |
あとは本音として、(自分の作品を世に)出したくてたまらないという方々のゲームを見てみたかったというのもあります。 |
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1ヶ月の募集期間で、どれだけ作品が集まるか不安もおありだったと思いますが。 |
安田 |
10点も来なかったらどうしようとドキドキでしたが、ありがたいことにたくさんのご応募いただきました。これだけの勢いがあるのだから、きっとすばらしい作品があるだろうと期待していたら、なんとほとんどが遊んで楽しいものだったので驚きました。 |
―― |
応募作はすべて遊ばれたのですか。 |
安田 |
もちろん! 昨年7月8月をかけて必死で遊びました。しかも、2回3回と遊んだものもあります。そのなかで、実際に製品化できそうなものという基準で、10作を第一次選考で選ばせていただきました。 |
―― |
10作ですか。みなさん、すごいですね。 |
安田 |
正直言いましょう、ぼくはライトノベルの選考委員を30数年分やってきたんですが、応募数じゃないんです。たとえば富士見ファンタジア大賞。第一回の応募作は百数十点だったと思うんですが、そのなかから選ばれたのが『スレイヤーズ』の神坂一さんです。その後、10000点近くにも応募数はふくれあがったけれど、初期のころの熱意というかエネルギー、そのアイディアというのはなかなか越えられなかったものがあると思います。 |
―― |
溜めていたものが一気に噴き出す感じでしょうか? |
安田 |
そうです、そういう爆発力を期待して今回のコンテストを行ったら、まさに期待どおりの結果になりました。 |
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10点もの作品が第一次選考に残った、と。 |
安田 |
小説コンテストなら最終審査に残るレベルの作品と考えてもらっていいんですが、そこからさらに製品として発表できるだろうという作品を5点残しました。 |
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そして優秀作として『ギャンブラー×ギャンブル!』と『ソラシノビ』の2作が選ばれたわけですが、決め手となったのはどんな点でしょうか。 |
安田 |
遊びやすくてだれでも楽しめるというのが基本ですね。そして、そこに斬新なアイディアがあった。また、その作者自身がこれからもいろんなゲームを作れるんじゃないか、という将来性ですね。一言で言うと、どちらの作品も非常に完成度が高かったです。 |
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タイプの異なる2作品が選ばれましたね。 |
安田 |
結果的にカードゲームとボードゲームという代表的なタイプのゲームがそれぞれ1点となりました(カードゲーム『ギャンブラー×ギャンブル!』、ボードゲーム『ソラシノビ』)。 |
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『ギャンブラー×ギャンブル!』は2月に発売されており、すでに遊んでくださった方も多いと思いますが、簡単に紹介していただけますか。 |
安田 |
ルール自体はシンプルでわかりやすいんですが、考えるところや駆け引きの必要なところがあって、とても面白い。 |
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テーマはカジノで、雇ったギャンブラーを使ってたくさん儲けようというのが目的ですね。 |
安田 |
そうです、勝ち方は大きくは、ちびちび稼ぐか、一発逆転を狙うかの2つなんですが、その過程で大きな波がある。あとちょっとで目標額達成というところで、読みがはずれて所持金が半減するとかね。他プレイヤーの思惑も絡んだ読み合いや駆け引きがじつに楽しいゲームです。まだの方はぜひ遊んでください。 |
ギャンブラー×ギャンブル!(Gambler×Gamble!) |
プレイ人数 |
3~4人 |
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対象年齢 |
10歳以上 |
プレイ時間 |
15~30分 |
ゲームデザイン |
宮野華也 |
パッケージイラスト |
平沢下戸 |
ディベロップ |
安田均/グループSNE |
価格 |
1800円(税別) |
発売 |
2016年02月 |
制作/販売 |
グループSNE/cosaic |
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いっぽうの『ソラシノビ』は4月発売が決まり、楽しみにしてくださっている方もあると思います。内容としてはどういったゲームになるのでしょうか。 |
安田 |
「エリアマジョリティ」という言葉がありますが、システムでいうとそれにあたりますね。ある領域で順位を競いあい、一位二位になった人が得点するといったタイプです。
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―― |
舞台は宇宙なんですね。 |
安田 |
そう、惑星に宇宙忍者を送りこんで、そこでの順位によって得点が得られる。だから『ソラシノビ』。得点自体は惑星の人口によって決まるから、それをどう操作するかも考えどころです。 |
―― |
革命が起こるとか、惑星ごとに特徴があって楽しいですね。 |
安田 |
そうそう、他にも住人がどんどん増えてい人口爆発型とか、2つの勢力が対立して覇を競っている惑星とか、隣の惑星に人口を送り込むタイプとか。全部で6種類あって、プレイ人数3人から5人に合わせた枚数分、あるいはそれプラス1枚で遊びます。 |
―― |
ルールは難しいんでしょうか。 |
安田 |
いえ、ルールそのものはシンプルですよ。でも、いろいろ選択肢があり、惑星の特徴もあり、一緒に遊ぶプレイヤーのタイプや人数によっても、プレイ感が変わってくる。そのあたりも、とてもよくできたゲームだと思います。『ソラシノビ』についてはニコニコチャンネルで楽しい紹介動画が配信されていますので、そちらもぜひ見てください。
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ソラシノビ(SPACE NINJA) |
プレイ人数 |
3~5人 |
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対象年齢 |
12歳以上 |
プレイ時間 |
60分 |
ゲームデザイン |
寺島由人 |
パッケージイラスト |
しろー大野 |
ディベロップ |
安田均/グループSNE |
価格 |
3000円(税別) |
発売 |
2016年04月 |
制作/販売 |
グループSNE/cosaic |
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これらの作品をじっさいに製品化するにあたってご苦労などはありましたか。 |
安田 |
どちらも最初から非常に完成度が高かったのですが、われわれも一生懸命ディベロップしましたよ。作者のお二人に相談したら、すぐに「そうしましょう!」とか「いや、こうしたほうがいい」という反応が返ってくる。われわれとしても楽しくやりがいのある仕事でした。 |
―― |
『ソラシノビ』は4月16日(土)発売です。楽しみにお待ちください。それでは、つづいて選外佳作の3作についてもお話しいただけますか。 |
安田 |
先ほども言いましたが、最終選考に残った5作は製品化できるかどうかを基準にで選びましたので、残る3点もぜひ出したいと思っていました。 |
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そのなかでまず『正直者の罠』(デザイン:樫尾忠英)というカードゲームが現在製品化に向けて進行中ですね。 |
安田 |
そうです、タイトルは『アニマルマインド』に決めました。6月ぐらいに出せたらなあ、と思っています。それから、いままであまり話題にしなかったかもしれませんが、『ガリンペイロ』(デザイン:増川和人)というのがね、ものすごくハードで、本格的なボードゲームなんですよ。 |
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ワーカープレイスメントでしょうか。 |
安田 |
ワーカープレイスメント――かな? うん、そうね、ワーカープレイスメントと『テーベ』が合わさったような感じかな。非常にいいゲームなんですが、砂金掘りの道具とか、製品化しようと思うとコストがかかるんですよね。 |
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『ガリンペイロ』砂金掘りの備品 |
『テーベ(Thebes)』(デザイナー:Peter Prinz グラフィック:Michael Menzel/Queen Games/2007)
遺跡発掘をテーマにした名作ゲーム。袋からランダムに発掘品タイルを引くのが楽しい。 |
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―― |
じつは『ガリンペイロ』は筆者(笠井)も大好きなゲームなのですが。 |
安田 |
いや、みんな大好きだよ(笑)。海外のボードゲームにも充分伍しうるゲームだと思っています。だから、なんとかうまく出したいと、いまキックスターターという案で考えたりしています。 |
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本格的ということは対象年齢がいくらか高くなりますか。 |
安田 |
というかね、最初に応募されたときには3人用だけだったんですよ。それではあまりに限定されすぎるということで、いま2~4人用で考えていて、非常にいいものになりつつあります。今年は無理ですが、来年以降にはなんとか出したいですね。 |
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残る1作品についてはいかがでしょうか。 |
安田 |
『王国建設』ですね。これはワーカープレイスメント・カードゲームなんですが、決して複雑なものじゃなく、簡単に楽しく遊べるようになっています。ただ、なにしろこの作者がね、応募名「酢豚」、本名「黒田尚吾」といって、グループSNEのメンバーになったものだから(笑)。 |
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もちろん、メンバーになったのはコンテストが終わってからですね。 |
安田 |
そうです。で、彼の同人作家時代の代表作に『知ったか映画研究家』があるんですが、これが非常に面白いので、まず先にそちらの決定版を出します(詳しくは後述)。『王国建設』を含め、彼の他の作品にはこれからに期待したいな、と――ただ、『王国建設』ってね、英語にすると『キングダム・ビルダー』なんよね(苦笑)。 |
―― |
あー、ほんとだ、そのまんまですね(笑)! |
安田 |
でしょう? なので、タイトルはちょっと変更するかもしれません。 |
『キングダム・ビルダー(Kingdom Builder)』
(デザイナー:Donald X. Vaccarino、グラフィック:Oliver Schlemmer/Queen Games/2011)
2012年ドイツ年間ボードゲーム大賞受賞。ヘックスマップを使った、さくさく遊べる陣取りゲーム。タイルを変更することで、毎回マップが変わる。 |
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●第二回公募コンテストについて |
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というように、記念すべき第一回公募コンテストは無事に終了したのですが、じゃあ、つぎは自分も、と思っている方が―― |
安田 |
そう、『ギャンブラー×ギャンブル!』とか見て、グループSNEはほんとに出してくれるんやな、と思った方が(笑)―― |
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たくさんいらっしゃるかもしれません。 |
安田 |
なんですが、ぼくとしてもちゃんと出せるという保証ができるまでは、第二回開催とはちょっと言えなかったんですね。でも、こうして無事に2作を製品化できたので、言いましょう――グループSNE公募コンテスト、第二回開催します! |
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おおっ、ついに! |
安田 |
応募期間は第一回はわずか1ヶ月でしたが、今回は3ヶ月あります。 |
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お、一挙3倍に(笑)。 |
安田 |
3月末に要項を発表し、6月末が締め切りになります。ぜひみなさん、たくさんの力作をお寄せください! |
詳しくは「グループSNE公募ゲームコンテスト2016開催決定!」でご確認ください |
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応募するにあたってのアドバイスのようなものはありますか。プレイ時間は1時間程度とか? |
安田 |
いや、それはとくに限りません。もし言うとしたら、世界に通用するゲームであれば最高ですね。 |
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あ、それで思い出しました。『ギャンブラー×ギャンブル!』も『ソラシノビ』も英文ルールが入っているんですね。 |
安田 |
ええ、コンセプトとして、できれば世界に向けて発信してたいというのがありますから。 |
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なるほど。ですので、これから応募される方は世界展開を視野に入れて―― |
安田 |
そうやね……(しばし黙考)いや、そこまで考えなくてもいいか(笑)。ご自身が作って、遊んで楽しいと思うものを出していただければ、それで充分です。もちろん、ビジネス面で言えば、コストが安くて、めちゃくちゃ面白くて、しかも独創性があってというのが最高なんだけど。 |
―― |
それ以上望むことはありませんね(笑)。 |
安田 |
でも、そんなことは言いません。たとえば、さっきお話しした『ガリンペイロ』。きっと作者の増川さんはとにかく面白いものを作って、「よし、これだ!」と応募されたんだと思います。だからこそ、ああいう楽しいゲームができた。ただ、そうした(コストのかかる)ゲームを製品化できるかどうかは、わが社の体力にもよるんですけれど。 |
―― |
これは現場からのアドバイスになるんですが、データだけ送ってきて、そちらで作ってください、というのはNGですね。
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安田 |
ええ、ある程度完成したものをお願いします。そっちでテストプレイして、ディベロップもよろしく、というのはちょっと難しい。第一回はほとんどなかったですが。 |
―― |
とくに自分たちでのテストプレイは大事ですね。 |
安田 |
あとは見た目も重要です。見てくれよりも、面白さの核となる部分、つまりじっさいに遊んだときの感覚がいちばん大切というのはわかっていますし、そこを審査の基準にするのはもちろんです。前に挙げた『正直者の罠』などは、フレイバーはなかったけれどシステムがすばらしかったので、選外佳作に選ばれています。ただ、システムとフレイバー(世界観)など、できれば全体がそろっているほうがいいですよ――というのが、ぼくからのアドバイスですね。 |
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そして、ご応募いただいた何十点という作品を遊びますので、カードなどやむを得ない場合は除いて、基本はワープロで作成し、プリントしたものをお送りください。一言でいうと、その作品が製品化された場合(不特定多数の方に遊ばれること)を想定して作成していただければな、と思います。 |
安田 |
あとはこれもいいでしょう、コンテストロゴ! |
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『ギャンブラー×ギャンブル!』ではじめてお目見えしました。
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安田 |
うちのゲームのデザインも手がけてくださってる「タンサンファブリーク」さん(http://www.tansan.co/)にお願いして作っていただきました。 |
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サイコロの目が「1」と「6」になっていますね。 |
安田 |
2016年だからちょうどいいな、と。でも来年どうしましょうね(笑)? |
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それは来年考えましょう(笑)。みなさまにはぜひこのロゴを覚えてくださいね。 |