GM |
さて、君たちは今日も今日とてのんきに海で遊んでいる。 |
ホクト |
ヒトデ、ひっくりかえしたりー。 |
プレアデス |
意味もなくフナ虫攻撃してみたりー。 |
マリン |
日陰でのんびりテレビ見たりー。 |
フーバー |
やめろー! テレビからはニョモニョモの電波が出ている! だから危険なんだー! |
GM |
……まあ、平和な光景と言えなくもないかな。 |
ルシーネ |
マリン・スノー、頼まれてたケーブルテレビの申し込み終わったよー。 |
マリン |
ありがとう、ルシーネ。 |
GM |
ちょっと待て、契約料はどうした。 |
マリン |
ふ、黒真珠や珊瑚を密猟して資金を作ったなんてことは秘密ですよ。 |
ホクト |
そういう危険な発言はやめろとゆーに! |
GM |
あのね、特別にCPを稼いでいない限り、イルカだって人並みに財産を持っているんだよ。海を守るためにイルカの組合もあるし。海の一部はイルカたちの財産として認められてるんだ。 |
マリン |
じゃあ問題なしです、僕は『浪費家』ですからね。あればあるだけ使ってしまいます。ああ、新しい通販専用チャンネルもできましたからね、注文しておいた「ぶら下がり健康機・復刻版」が楽しみだなあ。届いたら一緒に試してみましょうね、ルシーネ。 |
プレアデス |
なんでそんなものを買いたがるんだわさ! |
ホクト |
それ以前に、どうやってぶら下がる! |
フーバー |
ああああ、やっぱりニョモニョモの電波に冒されて……! |
GM |
四方八方からつっこまれとるなあ。それはともかく、きらきら輝く南の海で、君たちはいつものようにトリトンのルシーネとともに遊んでいる。そしてふと顔を上げると、海岸に見知らぬ男の子が一人ぽつねんと座りこんでいるのに気がつくけど……。 |
ホクト |
おや? |
プレアデス |
見かけない子かい? ちょっと近づいてみよう。ざぱざぱ。(泳いでいる) |
ルシーネ |
あたしも、知らない? |
GM |
うん、この島の住人は、軌道に避難せずに地球環境と共存して、最低限の機械文明しか使わなかった人たちの子孫で、二百人くらいしかいない。でも、初めて見る顔だね。金髪碧眼の美少年だ。容貌に15CPくらいは使ってるねえ。 |
ルシーネ |
え? どきどき。 |
GM |
ルシーネよりも1、2歳年下かな。生まれてこのかた太陽の下で遊んだことがないんじゃないかと思うほど色が白い美少年だ。イルカに例えればマリン・スノーに似てるかもしれないな(笑)。 |
フーバー |
いきなり美少年という説得力がなくなりましたなあ。 |
マリン |
失礼な。 |
プレアデス |
少年……ということはオスのことだわね。これはもしかすると、ルシーネとつがいになってもらえれば、新しいトリトンをゲットできるかもしれない! |
ホクト |
ママ、それ気が早すぎ。ルシーネ、まだ若いし。 |
プレアデス |
繁殖可能年齢にはいっていれば問題なし! |
フーバー |
発情期が来ているかどうかも疑問ですがな。 |
GM |
少年はまぶしそうに君たちを見ているぞ。 |
ルシーネ |
ルシーネが暮らしてるこの島って、よくイイトコのおぼっちゃんが療養にやってきたりするのかな? |
GM |
いや、そんなことはない。 |
ルシーネ |
ふーん、じゃあ一体何しに来たんだろ。住人全員が知りあいみたいな小さな島なのに。でも、なんだかさみしそうだから声をかけてみよう。おーい! |
フーバー |
もしかすると、ニョモニョモに誘拐されてきたのかもしれませんなあ。 |
ホクト |
根拠はないが、それだけはない(きっぱり)。 |
GM |
少年はちょっとびっくりした様子で、君たちを見返している。 |
プレアデス |
ルシーネを乗せた、全長5メートル弱の巨大イルカがゆっくりと少年に近づいていこう。 |
GM |
それは……少年はちょっと腰が引けている(苦笑)。 |
ホクト |
びっくりさせちゃだめじゃないか、ママ。ここは驚かさないようにそっと背ビレだけを海面に出して……。 |
マリン |
ジャージャン、ジャージャン、ジャンジャンジャンジャンジャン……(ジョーズのテーマ)。 |
ホクト |
そして十分近づいたところでおもむろに……! |
フーバー |
めちゃめちゃ驚かしてますがな(ヒレつっこみ)。 |
ルシーネ |
ねえ、君、そこで何してるの? 初対面だよね? |
GM |
イルカたちの奇態に呆然としていた少年は、ルシーネが話しかけてくると気をとりなおしたようだ。「こんにちは……僕、お父さんの仕事の都合で昨日この島に来たばかりなんだ……」と少し恥ずかしそうに、ぼそぼそと答えてくる。 |
ルシーネ |
へーえ。お父さんのお仕事ってなに? って、初めての人にそういうこと聞いちゃ失礼なんだっけ? あんまり人とお話ししたことないからよくわかんないや。 |
マリン |
大丈夫です。そういうときは通りすがりの遊び人です、って自己紹介しておけば、その人は自分の身の上話や事情を、洗いざらい話してくれるものなんですよ。あ、越後のちりめん問屋でも可ですからね(笑)。 |
ルシーネ |
なるほど!(両手、ポン) |
ホクト |
歪んだ知識を広めるな! |
GM/少年 |
「僕のお父さんは、宇宙から帰ってくる人たちのために住むところを用意してあげる仕事なんだ」 |
ルシーネ |
ふうん、そうなんだ。 |
プレアデス |
いい仕事をしてるんだねえ。 |
ホクト |
帰ってきた人間にも、住むところは必要だからな。 |
フーバー |
時々ニョモニョモに操られているのか、海を汚す人もいますがな。 |
ホクト |
うーん。 |
GM/少年 |
「お父さんはいつも仕事で忙しいけれど、僕にはとても優しいんだよ」 |
ルシーネ |
そうなんだ。じゃあ、お母さんは? 一緒にこの島にきたの? |
GM |
少年はさみしそうに、「僕が小さい時に死んじゃったんだ」と答える。 |
ルシーネ |
う。ルシーネもお父さんと2人暮らしだから……ちょっと同情しちゃうかも。 |
GM/少年 |
「ここはとても気持ちのいいところだね。砂浜はぽかぽかと暖かいし、海はとても奇麗だし」 |
ルシーネ |
そうでしょう? 海の中はもっと気持ちいいんだよ、一緒に遊ばない? |
プレアデス |
うまい、ルシーネ。でも、ナンパの基本は名前からだわさ。 |
ホクト |
いや、別にルシーネはナンパしてるわけじゃないし。 |
ルシーネ |
あ、そう言えば名前を教えてなかったね、あたしはルシーネっていうの。こっちはホクトで、大きいのはママ、ほんとはプレアデスっていう名前なんだけど。で、白いのがマリン・スノー。こっちの丸いのはフーバーだよ。 |
GM/少年 |
「よろしく、僕はクリスっていうんだ。……でも、海に入るのは……」。そう言ってクリスは、自分のかたわらにおいてある杖に視線を走らせる。どうも、片足が不自由らしい。 |
ルシーネ |
あ……。 |
ホクト |
オレらが背中に乗せてあげるっていうのは? |
ルシーネ |
そう、そうだよね。ルシーネも一緒に行くし、ホクトかママが下から支えてくれるから大丈夫だよ。ね、遊ぼ? |
GM/クリス |
「……でも」(まだ躊躇している)。 |
ルシーネ |
海に入ったら、もっと健康的になれるよ。誰かの背中に乗っていれば安全だし。 |
GM/クリス |
その言葉にはぐらぐら心が揺れてるようだね。でも、クリス少年はまだ怯えてるみたいだ。「本当は僕、こんなに近くで海を見たのは初めてなんだ。僕が眠りにつく前に見た海は、もっと恐いものだった……」 |
ホクト |
この子、もしかして宇宙からの帰還者か? |
フーバー |
ニョモニョモの手先ですな! |
プレアデス |
ちがう。 |
GM/クリス |
「僕は、何百年も前の〈大撤退〉の時に眠りについた一人なんだ……」 |
ホクト |
やっぱり……。 |
ルシーネ |
そういう人がいて、どんどん地球に帰ってきているとは聞いていたけど。……ということは。 |
マリン |
……かなり、じじい(ぼそ)。 |
GM |
ま、まあそういうことにもなるな(苦笑)。クリスくんはちゃぷちゃぷとしている波をおそるおそる触って、驚いた顔をしたりている。うちとけて色々な話をしたところ、クリスの足は〈大撤退〉の前後の最悪の環境破壊が行なわれた頃に、ある種の化学汚染の影響で、動かなくなってしまったらしい。それでも、命があっただけ儲けものだよ。〈大撤退〉の時にはとにかく生きのびた人間を次々と冷凍カプセルにつめこんで宇宙に放り出していったという経緯がある。もちろん、その時にうまくいかずに事故って死んだ人も少なくない。 |
ルシーネ |
そうなんだ。辛い思いをしたんだね。でももう大丈夫だよ、地球は奇麗になったんだからね。ルシーネがいろいろ教えてあげるよ、ね、みんな。 |
プレアデス |
そうそう。泳ぎかたを教えてあげるわさ。 |
ホクト |
うまい魚のとれる場所も教えてやろう。 |
マリン |
面白いテレビのチャンネルと見所について教えてあげます。 |
フーバー |
ニョ、ニョモニョモの恐ろしさについてをじっくりと……。 |
ルシーネ |
それはいい。(きっぱり) |
GM |
クリスくんはすっかりイルカたちとも仲良くなって、夕暮れに近くなる頃にはみんなの助けを借りながらとはいえ、泳ぐことを覚えはじめたりする。 |
プレアデス |
いい話だわさ。……これでルシーネとのかけあわせができるように話がすすめば……くくく。 |
GM |
ビッグ・ママの遠大な計画はともかく、クリスくんはすっかり君たちと意気投合した。しだいに表情も明るくなり、声を上げて笑ったり、水のかけあいっこをしてふざけたり……えーと、一緒にテレビも見たりするのかな。 |
フーバー |
ニョモニョモについて語りあうもの忘れちゃいけませんな。 |
ホクト |
忘れとけ。 |
GM |
夕日で海が赤く染まる頃、髭もじゃでガタイのいい中年の男性が、浜辺までクリスを迎えに来るよ。ちなみに人相は悪い。 |
フーバー |
面白い、顔に毛が生えている。 |
ルシーネ |
もしかして、あれがクリスのお父さん? |
GM |
うん、そうみたいだ。クリスくんはその男性を見つけると、嬉しそうに「お父さーん!」と声を上げて大きく手を振ってるよ。男も海で遊んでいるクリスを見つけると、ザバンと海に飛びこんで、抜き手を切って泳ぎ始める。 |
プレアデス |
そんなことしなくても、浜まで送るのに。 |
GM |
男はクリスの側までくると、君たちをうさんくさそうに眺め回すけど……。 |
ルシーネ |
こんにちわ。ほら、みんなも挨拶して。 |
イルカ一同 |
かうかうかう。(はじめましてー、とヒレで海面をぱたぱた叩く仕草)。 |
GM |
男はクリスを抱き上げると、「遊んでもらっていたのか?」とか聞いてる。息子が嬉しそうに肯くのを見ると、ちょっと困ったような顔で「そ、そうか……ありがとう」と、ぎこちなく礼を言う。 |
イルカ一同 |
きゅるるーきゅるるー(どういたしまして、と立ち泳ぎでぱたぱた) |
ルシーネ |
また遊ぼうね、クリス。 |
GM/クリス |
「うん! また明日ね」そう言って、イルカたちとルシーネに見送られる中、新しい友達になったクリスくんはお父さんに連れられて、お家に帰っていくのでありました。 |
ルシーネ |
あ。お家の場所聞くの忘れた。 |
ホクト |
また明日聞けばいいよ。一緒に遊ぶ約束をしたじゃないか。 |
ルシーネ |
そう言えばそうだね。 |