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 > 安田均のゲーム日記特別版 シュピール‘14 レポート (2)


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5.そして新作の山
 では、肝心のドイツゲームユーロゲームを中心とするシュピールのボード/カードゲームは?
 結局、第1日の午後を費やして、走り回って買ったのは50点あまり。翌日と2日間で、79点という総量になった。
 おおまかにその特徴をこれから上げていきたいが、その前に今年のフィルターのかけ方の説明をしておこう。
  1. まず続編カードゲーム版ダイスゲーム版、それにリメイク何周年記念版はあまり買わない。近年は話題になったら続編やそのカードゲーム、ダイスゲームが続々作られる傾向にある。これらはとても限られた数しか買えない中に入れるわけにはいかないのだ。でも、ホントにほしいものは『ベガス:ブールバール』みたいに買っちゃいますが(笑)。こうした作品で目立つのは、いつもの『カタン・エジプト』、それに『アンドールの伝説』が海ものでプッシュされていた。
  2. 全体をドイツ大手中堅インディ周辺諸国の4つにわけ、バランスよく買う。これは全体を見渡すときには必要だろう。
  3. できるだけ自分の直感を信じる。PRにはだまされないよう。とはいっても、真に革命的な作品は、最初はとっつきにくいもの。1の逆だね。なかなかむずかしい。
  4. 熱心なところには、注目してあげよう。これはゲームでは特に重要。かつてのRPG、TCGでも、FASAホワイトウルフウィザーズなどあっというまに巨大化するのがゲームの世界(だから、消長も激しい)。ボードゲームでも何年か前、とても熱心に‘初めて作ったので買ってほしい’という顔をした青年がいて、その『カイヴァイ』というゲームを購入したことがある。装丁はダサくて、ゲームもまあまあだったけど、熱意みたいなものは十分に作品から感じられた。去年『テラ・ミスティカ』という無名の作品がドイツゲーム賞を突然取り、デザイナーの名に見覚えがあると思ったら、その『カイヴァイ』の作者だった。
 ということで、下記はそうして選んだ作品。まだ遊べてないのも多いが、簡単に説明を。
『島 (LA ISLA)』
 毎年精力的に作品を発表するフェルト。こちらはアレア・ブランドの看板作品で、南のある島の絶滅動物を集めるゲーム。凝ったボードにカードにと、フェルト節全開かと思いきや、意外にあっさりゲームは終わる。ライトヘビー級?
『ウイッチ (WITCHES)』
 トリックテイキングの名作『ウィザード』を作った作者の久々の新作ということで注目。やはりトリックテイキングで前人気は上々。ところが、目的のこのゲームとレーマンの『キューブ』が会場で見当たらず(売り切れ?)。あわてて、帰国後注文、遊びたい!
『キューブ (CIUB)』
NOW 注文中
 トム・レーマンの新作。レーマンのシンプルなカードゲームはおもしろさに定評あるけれど、これもなぜか会場では見当たらず。アミーゴの残り3つのカードゲームはどれもあったのに、そういうものだ。
『ドッグカード(DOG CARDS)』
 今年のクラマー&キースリング黄金コンビはこぶりなカードゲーム。見たところ、数字並べかえの簡単なゲームみたいだが、この2人ならおもしろいはず。『アブルクセン』という快作もあることだし、大期待。
『ドゥードルシティ(DOODLE CITY)』
『マンモス』や『エスケープ』で名を売ったエストビーの新作。ペン線ゲームで街作りという発想はよいが、イマイチ切れには欠けた。
『ラップダンス(LAP DANCE)』
 ギリシャのストリップクラブをテーマにした作品。脱衣カードゲーム・タイプか。この種の作品はシュピールではあまり見かけないので貴重。
『アーティフィキューム(ARTIFICIUM)』
 ロシアの作品。フランスの新しい会社が出す。資材を集めて、都市を繁栄させる支配者になるべく競うゲーム。カード中心でボードは得点や配置板。
『ハイパーボリア(HYPERBOREA)』
 これもイタリアのビッグゲームをフランスの会社が出す。デザイナーもチアルベシオ、ツィッツィーとなかなか。6つの勢力が古代帝国で眠れる宝を探して、争う。ファンタジー・ファンには魅力的。
『狂王ルートヴィッヒの城(DIE SCHOESSER DES KOENIG LUDWIG)』
『シティビルダー』アルスパッチの新作は、フロアタイルをめくっていく感じで、RPG風のフレーバーがおもしろそう――と思ったら、狂王に気に入ってもらえる城を作ろうという『シティビルダー』のお城版だった。発想はユニーク。
『洗濯物干し(WASH DASH)』
『オムノムノム』で注目されたラトビアのゲームメーカーの新作は、洗濯物干しのゲーム。見た通りの物干しコンポーネントがいい。奇抜な着想がどれだけおもしろいゲームになったか、楽しみ。
『アルケミスト(ALCHEMISTS)』
 チェコの新人によるヘビー級ゲーム。プレイヤーついたての後ろの複雑なゲーム性が興味津々なのだが、毎年よくやるよ。たぶん、そこで触媒とかの組み合わせゲーム。重さは『ゴーストハンター13』並み。
『ダークテイルズ(DARK TALES)』
 ダヴィンチ社のおとぎ話ゲームということで期待したが、ゲーム性の強いもので、フレーバーがゲーム中にあまり生かされていなかった。ちょっと残念。
『酔っ払い島(GROG ISLAND)』
 リーネック久方ぶりの新作ということで、大いに期待した。フェルトの『名誉と酩酊』に雰囲気が似ているユーモアゲームだが、基本は競りを楽しむ。まずまずかな。
『アルルの世界(ARLER ERDE)』
 ローゼンベルクの新作は1〜2人用。相変わらず凝ったことをする。テーマは例によって北ドイツの農場経営ゲーム。ただこのタイプはプレイ人数が減ると、コンピュータゲームと変わらなくなるので、そこにローゼンベルクがどんなおもしろさを持ち込むのか注目だ。
『侍魂(SAMURAI SPIRIT)』
 ボーザの新作は、『タケノコ』『花火』『東海道』に続く、例によっての日本もの。今回は‘7人の侍’がテーマ、好きだねえとしか言えない。
『アクアスフィア(AQUA SPHERE)』
 フェルトのもう一つの大作。『ルナ』と同じ会社から出たせいか、また海底基地を扱う水もの。プラニングを立て、限られたアクションで基地を探り、危険なタコから防御するという楽しそうなゲーム。早くやりたい。
『ピンツ・オブ・ブラッド(PINTS OF BLOOD)』
 ゾンビがバーのカウンターに迫ってくるという協力ゲーム。あまり見たことがないボードの構成がおもしろいので買ってみた。脱出救助タイプのゲーム?
『ドラゴンスレイヤー(DRAGON SLAYER)』
 こちらはひねりの効いたダイスゲーム。『レジスタンス』『アバロン』を出したところだけに、期待大。ドラゴンの体のパーツを狙うというのがおもしろい。
『ムラーノ(MURANO)』
 ヴェニス近郊のガラス細工の島を背景に、ブラント夫妻の熟練の技が見もの。何種類ものゲームを集めて組み立てるタイプらしい。冒険、建築、金もうけ……メイフェア=ルックアウト社の看板作品。
『コルト・エクスプレス(COLT EXPRESS)』
 凝った造りの『ルイス・クラーク探検隊』を出したところからは、打って変わって遊園地列車を組み立てるみたいなコンポーネントの作品。そこで冒険キャラクター・カードのやりとりがある。今度は遊びやすいタイプか。
『約束の地(PROMISED LAND)』
 毎回隠れるようにして新作を売っているラグナーブラザーズ。今回もバーリーゲームズに場所を借りていたので、見落とすところだった。こうしたものは見逃したくない。タイトル通り、イスラエル周辺で王国を造っていくゲーム。
『ネプチュン(NEPTUN)』
 ディルク・ヘンも久々の新作だ。美しい地中海マップ上で、商人となって交易する。オルネッラ『オルターマーレ(古き海)』をどれだけしのげるか。
『オーク・オーク・オーク(ORCS ORCS ORCS)』
 これは微妙。すでに出て一部で話題になった『キャッスル・パニック』にコンセプトがそっくりなタワーディフェンス作品。作者の名がちがうのはハテ?
『スペルカスター(SPELLCASTER)』
 4つの流派の魔道師が呪文で対決――よくあるテーマだが、かつてアラン・ムーンとの合作で名を売ったヴァイスブルムひさびさに登場となると、注目してしまう。果して新しさはどこに?
『スパイク(SPIKE)』
 鉄道ゲームでは、『エンパイアビルダー』に似たタイプのこれに注目したい。産物を運び、稼いでいくゲームだが、線路の配置の仕方がユニーク。ちょっと注目かな。
『オロンゴ(ORONGO)』
 クニツィーアの新作は、モアイ像を立てるため、競りで有利な地所を確保していくという競り+陣取りタイプだった。相変わらずの妙技は見もの。
『ヘルヴェグ(HELLWEG WESTFALICUS)』
 シャハトは主に春のニュルンベルクで新作を出すが、珍しくエッセンでは、自社とも言えるティンブクツから出した。いかにものシャハト風陣取り?
『ミソトピア(MYTHOTOPIA)』
 2人用ウォーゲームの傑作『数エーカーの雪』をファンタジー領土ものに置きかえた注目作。システムはおもしろいとわかっているので、ぼくなどは‘待ってました’の作品。
『金星へ!(ONWARD TO VENUS)』
 こちらはグラフィック・ノベルをもとにした惑星間の冒険ゲーム。遊ぶまでどんなシステムかわからないが、名手ウォーレスに期待。
『ウィットネス(WITNESS)』
 イスタリからは珍しいミステリ・ゲーム。一回性のシナリオ型のようだが、毎回ユニークな作品を出す会社だけに、中身に注目。
『ビースティ・バー(BEASTY BAR)』
 いかにもツォッホ社らしい動物もの。バーに入るために動物たちが、押しあいへしあい。それぞれの能力が強烈。絵柄も同様。しかし、おもしろさも強烈!
『サンクト・ペテルブルク(SANKT PETERSBURG)』
 小ぶりなカードゲームでドイツゲーム賞を受賞した作品のリメイク。ただそこに鬼才シュミールが加わったということで、非常に興味が湧く。おお、でっかいボードと得点版が。
『スタウファー(DIE STAUFER)』
 11〜12世紀ドイツのスタウファー家を扱うストラテジーゲーム。作者がこの手のくどいゲームを得意とするステディングだけにおもしろそう。今年のハンス社の看板作品。
『レルム・オブ・ワンダー(REALM OF WONDER)』
 美しいグラフィックとファンタジー風味満点のフィンランドの作品。内容はまだわからないが、おもしろそうではある。

 これでもまだ半分にも満たないが、まずは遊んでみたかった作品。ついでに、ここに入っていないものについても一言。
アビスアビス』や『ファイブ・トライブズ』などフランスの作品はすでに発表され、プレイしてR&R誌にも書いているものが多かったので省略。
 逆にアメリカは『テンポラム』や『キメラ』のように、クリスマスを睨んでこれからというものも多い。
 コスモス社など訪問しているところの新作後述
 そして重めのゲームは、今年は急いで買い込まなかった。『オルレアン』や『マッシーラ』『デウス』といった作品だ。これは去年、そうしたもの(主にワーカープレイスメントもの)を結構買って延々遊んだが、どれもよくできてはいるものの、時間がかかる割りに似たり寄ったりで斬新さがなく、イマイチと感じるものが多かったから。いわゆるドイツゲームのチュートン臭さというべきか。いまの日本のカジュアルゲームファン向けではないので、後回しということだ。別に嫌いでは全然ないし、ホントは好きだと思う、きっと(笑)。
 全体として、去年ほどワーカープレイスメントへの集中はなく、協力ゲームダイス使用が多いような気がした。それと、競りタイプも復活の兆しがあるようで、個人的には嬉しい。
 各国ではアメリカが自国に戻っている感じ。フランスは絶好調。イタリアチェコスペインに一時ほどの勢いがない反面、ロシア東欧(ポーランド、バルト3国、ギリシャ、ルーマニア)や北欧が盛り上がっていると感じた。
 アジア日本にかなり勢いがあり、台湾韓国も上げ潮、チャイナは国よりも、個人のデザイナーが外国で健闘していると思う。これはイギリスも同じ。
 なぜかオーストラリアが目立たない。これだけは不思議だが、地理的に遠いからか。
 かくして、新作を買い集める目的はだいたい初日で果たしたので、あとは気楽に『ブラックストーリーズ』10周年パーティに出かけた次第。この日も夜遅かったので、気持ちよく眠れた。


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