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TOP > ユーザーコンテンツ > イベントレポート
 > 安田均のゲーム日記特別版 シュピール‘14 レポート (3)


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6.久しぶりレーマン
レース・フォー・ギャラクシー かくて2日目
 この日はアメリカのデザイナー、トム・レーマンとの会見から始まる。彼は日本のゲームファンには、主に最近の『レース・フォー・ギャラクシー』で名を知られていると思う。でも、この人のゲームデザイナー暦は長い。アメリカのボードゲームが1990年代はじめ、瀕死の状態にあえいでいたとき(まあ、はっきり言えば、RPGとその後登場するTCGによるもの)、彼らは唯一かつてのシミュレーション・ボードゲームの火を絶やすまいとがんばっていた。SPI社ははるかに過去につぶれ、アバロンヒル社も終わりかけていた時期。レーマンはカリフォルニアで、プリズムゲームズという会社を続けていたのだ。


 ここがすばらしかったのは、シミュレーションといっても従来のウォーゲーム臭いものではなく、『ファストフード・フランチャイズ』といったファミリーゲーム・タイプ時間旅行もの、中世もの本格派を出していて、ぼくなどSFゲームファンタジーゲームが好きな者は、喜んでそれらを遊んでいた。
 その頃、神戸のゲームショップ「ギルド」をやっていた友人の渡辺健君などは、ここにほれ込んで、当時としてはいち早く『ファストフード・フランチャイズ』の完全日本語版を作って売ったりしていたが、やはりこの時期の米のボードゲームは厳しく、そのうちプリズムゲームズも倒産してしまった。


 アメリカのボードゲームが復活するのは1996年メイフェア社ウイニング・ムーブズ社というゲーム会社が揃ってトイバーの『カタン』やクニツィーアの『モダンアート』、クラマー自動車レースゲームなどドイツゲームを集中して出し、ゲームズ誌ファンアゲインゲームズというネットショップらが手を組んで、アメリカが知らないうちにこんなにおもしろいゲームが復活していますよと、キャンペーンしたときからだ。
 やがて、21世紀に入って、レーマン復活する。中心軸をドイツゲーム分野に置き、これまでの経験を生かして、重い米ゲームよりもっとダウンサイズしたユーロゲーム風の作品をつぎつぎと作り出した。
 なかでもぼくも好きだし、日本のゲームファンに愛されているのが、さっきの‘ギャラクシー’と並んで『王への請願』というダイスゲーム。すばらしい作品なのだが、これが絶版になってしまっていたので、ぜひリメイクしたいとレーマンにSNEから連絡したところ、「『ファストフード・フランチャイズ』の頃を覚えている。喜んで『王への請願』をやってくれ」と言ってきてくれた。

『王への請願』

 ついてはエッセンにも行くらしいので、製作進行の報告や、彼の現況なども知りたくて一度会おうということになった。ちなみに『王への請願』は現在快調に制作進行中。遅くとも来年5月のゲームマーケットまでには出るでしょう。
 会ってみたトム・レーマンは実にエネルギッシュだった。いまもシリコンバレーに住んでいるらしい。聞いたところ、彼は一斉を風靡した会社オラクル創設者メンバー50人1人でもあるらしい。いまはゲームデザイン本業だけど(まあ、昔もでしょうね)。
 このエッセンでもアミーゴ社から『キューブ』が出ているし、じつはこれまでにも『パンデミック』や『時代を超えて』の拡張版を作っていたらしい。現在は、『レース・フォー・ギャラクシー』の宇宙を使って、4種のゲームを考えているという。
 1つは拡張版だが協力型という新局面。1つはダイスゲームの新作『ロール・フォー・ギャラクシー』、そして、あと2つのうち、1つは入門用のダウンサイジング版で、最後が『プエルトリコ』をもじった作品になるらしい。もともと『レース・フォー・ギャラクシー』には『サンファン』(『プエルトリコ』のカード版)との類似性はあったわけだからおかしくはないが、これはちゃんと許可を取っての作品だそうだ。
 他にも、スパイものの本格的なデック構築型の作品とか、もっと遊びやすいウノの変形タイプとか、つぎつぎプロトタイプを見せてくれる。彼もライナー・クニツィーアとはちがうタイプだが、アイデアが出まくってじっとしておれないタイプに思える。生まれついての作家が書かずにはいられないように、ゲームデザイナーもゲームを作らないではいられないのだろうか。
 とにかく彼の代表作、ダイスゲームの傑作『王への請願』と、おそらく『ロール・フォー・ギャラクシー』関連も来年出るだろうから、そのおもしろさには注目してほしい。


7.ポーランド・ポーランド
 エネルギッシュなレーマンと別れた後は、ポーランドの大手ゲーム会社グランナのブースへ向かう。ここは去年『CV』という、ダイスを振っての楽しい人生カードゲームを出した会社だ。担当はとってもチャーミングなマルタさん。

下段が『CV:ゴシップ』

 会ってみて意外なことが判明。『CV』は今年はじめ、グループSNE/cosaicで出したいということでメールをやり取りしたが、とても好意的ですぐにでも出せそうだった。ところが、夏から音信がない。おかしいなと思ったら、こちらと向こうが契約書で‘お見合い’をしていたらしい。こちらが待っていたら、向こうも待ってたという次第。なあんだと即契約成立。やはりいくらメールが便利でも、直接顔を合わせるのは大切ですね。ということで、来年5月には先ほどの『王への請願』と並んで『CV』がお目見えします、もう少し待っててください。
 グランナ社はまるでポーランドラベンスバーガー社というのがぴったりなゲームやおもちゃを出している。魅力的なコンポーネント子供向きゲームが主だが、近年は外国(フランスロシア韓国ルーマニア)のゲームや‘エキスパート’と銘打って、ゲーマーたちも喜ぶボードゲームを出し始めた。その第1弾ダイスカードほろ苦い人生ゲームを行う『CV』で、ぼくは絶賛。アメリカでも好調で、見るとブースには早速エキスパンション『CV:ゴシップ』が並んでいるではないか。
 それだけではない。聞いてみると、‘エキスパート’シリーズを監修しているのは『CV』のフィリップ・ミウンスキーで、彼がポーランドの有能なデザイナーに他の作品も作らせているらしい。第2弾は『K2』でドイツゲーム大賞候補になったアダム・カウージャの新作『MR.ハウス』で、ブースにもう並んでいた。早速遊んでみたが、ワーカープレイスメント入門・上級にわけて遊ぶ、建築ごっこのなかなか楽しい作品だった。
 他にもロシア正統派人狼系ゲームマフィア』とか、子供向けだがとても楽しい『UFOファーマー』など、明るいコミュニケーション系ゲームの宝庫でもある。マルタさんに日本のゲームはどうですかと尋ねられたので、いろいろと送る約束をして、きわめて友好的に打ち合わせは終わったのだった。
インペリアル・セトラーズ ポーランドは最近のシュピールでの新興勢力で、去年から力を入れているメーカーが目立つ。デザイナーグループの集団G3とか、レベルゲームズポータルゲームズなど。特にポータルゲームズは『ロビンソンクルーソー』でこのところ話題になっただけに注目していたが、トレウィチェクの新作『インペリアル・セトラーズ』が出ていた。開拓リソースマネージメントものだろうが、コミカルなカードメインのゲームらしく、注目したい。いまのところ、ポーランドは一時のチェコを凌ぐ勢いだ。東欧は、他にもルーマニア、バルト3国のラトビアハンガリーギリシャなど急にボードゲームの華が開きだした感がある。
 そして、大物ロシアも登場してきた。すでに『エヴォルーション』など進化系のおもしろいカードゲームを出していた会社もあったが、今年はホビーワールド社コミュニケーション系のおもしろゲームをいくつか登場させた。お家芸ともいえる『バンパイア・マフィア』のほかに『スパイフォール』『マインドメイズ』など、どれもそのタイプ。特に『スパイフォール』は26の世界のどこかの場所に、1人のスパイプレイヤーを除く全員がいて、スパイはその場所を、他はスパイが誰かを知らず、「一般の会話」をすることで‘どこ’と‘’をそれぞれが当てていくという‘ずれのユーモア’を楽しむ正統派。かなりよいアイデアだ。ただイラストとかグラフィックデザインが、ポーランド勢と比べるとイマイチだなあという印象。
8.おや、スペインでは……
globertrotter こういった諸外国の推移では、従来のイタリアスペインが今年はあまり目立たなかった。イタリアのダヴィンチ社は『グローブトロッター』がおもしろそうだが、ぼくの一番注目した『ダークテイルズ』がちょっと不発気味かな。おとぎ話展開の中で勝利点を稼いでいくというものだが、やはりゲームの勝ち負けが気になって、フレーバーを楽しむ余裕がない。ストーリーゲーム勝ち負けゲーム相克は、まだ永遠のテーマのようだ。
 スペインも去年‘漂流もの’で『カスタウエイ(漂流者)』というかなりおもしろい作品がパスポート社から登場したので期待したが、今年はいまいちピンとこない。でも、別の嬉しい出会いもあった。正確には翌日になるのだが、ブースをぶらぶらしているとGEN−X社を発見。ここは数年前『フルムーン』という一種独特なRPG風協力ゲームを出していて、その斬新さに舌を巻いた覚えがある。テーマも現代の若者たちが魔の森に迷い込んで怪異な出来事に会うという、これまでにないタイプ。でも、ここ数年の作品にはあまりおもしろそうなものはなかったので、注目していなかった。


『フルムーン』

このGEN−X社を見つけたのはよいが、そこでデモされているゲームは----正方形の部屋タイルを並べ、プレイヤーキャラがそこに入るたびに怪異な事件が起こり、狂気点が累積して屋敷側に寝返り、プレイヤーたちに対立する?!----あなた、それぼくたちの『ゴーストハンター13タイルゲーム』じゃない。びっくりして眺めていると、「気に入ったのかい?」とそれなりの歳のおじさんが聞いてくる。それが社長でもあり、『フルムーン』やこの『ポゼッション』のデザイナーであるS・C・ヘイマン氏だった。あわてて、われわれが日本から来たことや『フルムーン』が楽しかったこと、『ポゼッション』がこちらの『ゴーストハンター13』と似たコンセプトだと伝えると、かなり興味を持ってもらえた。じゃあ、どう違うかぜひ遊んでくれということで、持って帰って『ポゼッション』をプレイしたところ、似ていたのは見た目フレーバーだけで、こちらは対立型ゲーム。しかも、敵に寝返って攻撃し、反撃を受けると体がばらばらになっていくという、エグいがおもしろいアイデアもあって、ぼくはとても気に入ってしまった。
ポゼッション GH13 タイルゲーム

 ただ、グラフィックがやはり弱いと思うので、ここは『フルムーン』も含め、こちらでグラフィックを描きなおして紹介してみたいな、と思っている。もしそうなったときはぜひ、スペイン産のRPG風で新テーマの協力ゲームや、別のホラー屋敷探索ゲームに注目してほしい。
9.ヤポンともう一つの日本のブース
 という感じで、2日目の昼からは他社との打ち合わせも2つほど入っていたが、ぶらぶらしながら 買い物よりもそういったブースでの情報を仕入れたりしていた。
 今回は、イギリスのマーティン・ウォーレスは多忙そうでブースで見かけなかったが、新作は相変わらず2つ『ミソトピア』『金星へ!』で健在なところを見せる。
 去年『コンコルディア』で小出版社ながらゲーム大賞候補にまでなったマック・ゲルツは人気爆発で、ゲーム『アンティケ2』のインストに忙しそうだった。聞けば、またロンデルシステムに復帰して、おもしろい新作を出すという。
 いつも、隠れるようにして新作を売っているラグナーブラザーズ社は今回もバーリーゲームズに間借りして、『約束の地』『スティーム・ドンキー』と新作を二つも出していたので、喜んで購入する。いやあ、この韜晦趣味、いかにもイギリスのデザイナーたちですねえ。ハスブロの改悪ルールに腹を立て『ヒストリー・オブ・ザ・ワールド』新版ならぬ『ブリーフ・ヒストリー・オブ・ザ・ワールド』を出した反骨精神は健在か。
 そうそう、わが日本のことも書いておかねば。
 2日目の昼過ぎに、アークライト刈谷圭司君から、この「シュピール」をニコ生で日本へ紹介配信するから顔を見せてほしいと言われていた。場所はヤポンブランド・ブース。ごぞんじかもしれないが、日本のボードゲームを海外に紹介するキーとなるブースだ。最近はカナイセイジの『ラブレター』や林尚志の一連の鉄道ゲームが海外では好評で、そうした元はここヤポンブランドから発信され、海外のメーカー(主にアメリカのZ−MAN社AEG社)経由で、ここシュピールのドイツ大手ゲーム会社から出るようになっている。打ち合わせの合い間にどたばたと駆けつけると、ブース前ではカナイ君や君が新作のデモにいそしんでおり、そばに刈谷君らがカメラを持って待ち構えている。


ヤポンブランド ブース

左:安田均 右:刈谷圭司君

 そこで何をしゃべったのかはよく覚えていない(見てた人、日本に画像届いてましたか?)。ざっとした今年の印象だったような気がするが、まだまだ‘探索’過程だったから、もちろん正確なものではない。ただ、1997年に日本のゲーム関係者として(たぶん)初めてシュピールに来たときとは、特に日本のゲームについて‘様変わりだなあ’という印象は強かった。ヤポンは今年も盛況で、全タイトルがソールドアウトしていた。もちろん、持ち込む量はそんなに多くはないだろうが、あるゲームサイトでの集計結果では他国と比べても、非常に売れ行きがよかったと聞いている。
 アジアの他の国で、こうした国ごとにまとまったブースがあるのは、韓国台湾だろう。どちらかというと、こうした国の方がシュピールでは先行していたようにも思うが、最近では日本が元気のいいのも事実。中国は国としてはそうしたブースを出しておらず、個別のデザイナーが活躍している感じだ。
 意外に目立たないのが、オーストラリア。それと、メキシコ南米大陸アフリカ大陸からの出展もあまり聞かない。昔、南アフリカから来たという会社がファミリーゲームを出していたが、そのうち見なくなってしまった。
 ということで、ヤポンブランドとはまた別に、古くから(といっても2000年代初期から)シュピールに出展し続けている日本の会社があるので紹介しよう。
 それが冒険企画局。ここの代表近藤功司とは、ゲームブックRPGの初期からのつきあいだが、彼はここエッセン会場で毎年ブースを出し、自社の作品(主にカードゲーム)展示に励んでいる。最近日本ではそんなに言葉を交わす機会がないものの、シュピールでは毎年食事を共にし、意見を交換するという間柄が続いている(彼はドイツ語ができる、さすが)。

冒険企画局

右から2人目:近藤功司氏

 今年もホール1とつながるところに、冒険企画局のブースがあって、元気に『シェフィ』などをインストする面々の姿があった。そろそろグループSNEもボードゲームを作っているのだから、こうしたブースを出そうかとも考えているので、彼にいろいろ段取りとかを聞く。毎年、冒険企画局のメンバーは5人前後は来ているということで、なかなか大変だ。そして、毎日7時まで4日間、通常のイベントと同じくブースにへばりつきになる。これはとても大変だが、楽しさもやみつきになるらしく、もう10回近くになるそうだ。グループSNEもこれからオリジナル・ボードゲームが増えるだろうし、そうなると、こうしたブース出展でもいろいろ教えてもらわねばと、例年のごとく、その日もゲームストア・バネスト中野将之君らと夜は会食することとなった。


左から2人目:中野将之氏

 シュピールの会場は広いので、日本から来ている人には‘久しぶり’という感じで会える場合と、そうでない場合がある。今年はバネストの中野君とは会場でよく出くわした(それとアークライト福本社長かな)。逆にメビウス能勢良太さんとは1回も出会わない。小野卓也君とはヤポンのブースで1回きり。テンデイズ田中誠君とは、トイレでばったり。こちらが忙しく各社と打ち合わせているせいもあるのだろうが、興味ある領域がちがうからかもしれない。とにかく込んでる会場だから。さっきもホールナンバーを書いたりしたので、ここで説明しておくと、ホール3が西の入り口から入り、大手メーカーが軒を連ねるいちばん大きなホールホール1は南の入り口に近く、中規模の会社古くからなじみのブースが並ぶ。ホール2は一番奥にあって、新参会社古ゲーム店、ゲーム関係のコスチュームRPG・TCG・コミック関係がずらっと並んでいる。

ホールマップ

フランケンシュタインのボディ

 中野君に言わせると、彼の扱う作品の主戦場はホール2らしい。ごちゃごちゃしていて何があるかわからないが、逆に‘オモロイ!’という変わったものも発掘できるからだろう。実はぼくも似たタイプで、だから彼とよく出会うのか。今回も『フランケンシュタインのボディ』という奇怪ゲームがここにあって、妙に人をひきつけていた。
 2日目もそんなこんなであっというまに経過した。買おうと思ったゲームは前もってのチェックが効いたのか、あらかた収集しつくして、例によってホテルの部屋に鎮座している。このところ、新作はできるだけ持って帰ることにしているので、送らねばならない時間が不要なのはありがたいが、それでもあと1日しかない。しかも、まだまだ会社関係の打ち合わせは5件も残っている。そう思いつつ、その日買ったゲームの一つ『ドゥードルシティ』なんかを即遊んでみたりする。ああ、なんという----至福かな(笑)。その後、爆睡
ドゥードルシティ
『ドゥードルシティ』

戦利品の山


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