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さて、それではいよいよ、『ガープス・ユエル』の具体的な内容を紹介しよう。
本書は、前回も書いた通り、一冊だけで完全なルールブックとして機能するように作られている。ただ、枚数の制限もあって、これまでのルナル世界で紹介されてきた何もかもを収録することはできなかった。この『ガープス・ユエル』では、プレイヤーは秩序の青と、解放の赤、双子の月に住まう神々に守護される「人間」族として冒険することになる。
双子の月には多くの神が住んでいるが、そのうち八柱の神が八大神として広く信仰されている。ただし、信仰といってもぼくらが生きている現実の世界とは、ちょっとちがっている。
この世界の「神殿」は宗教組織というだけではなくて、警察や消防署、盗賊ギルドや船員ギルドといった、社会的な役割を果たしているからだ。
つまり、どの神殿に属するかを決めるのは、どういう職業に就くかを決めることに等しい。
それは、冒険に出るキャラクターも同じことである。
所属する神殿を決めると、それぞれの神殿(つまり信仰する神さまだね)ごとに、習得できる技能にボーナスがつき、特別な機能をそなえた特殊武器をもらうこともでき、そして神殿ごとに特徴ある呪文を教わることもできる。
たとえば、法と契約の神ガヤンの神殿は、犯罪捜査や商取引についての技能を効率よく学ばせてくれる。そして、敵の剣を受け止めて折ってしまえる剣や、悪党を捕縛する鎖を、特殊武器として授けてくれるのだ。また呪文は、秩序をもたらす光を操ったり、悪者を弱体化させ自らや仲間を強化したり、あるいは事件の捜査に役立つ呪文がそろっている。
ガープスは、CP(キャラクター・ポイント)を費やして自由にキャラクターを作れるのだけれど、自由度が高いぶん、はじめはどういう風に作ろうか迷ってしまいがちだ。
そこで、『ガープス・ユエル』では、この八つの神殿を選ぶことで、ある程度、キャラクターの方向性が決まるようにしてある。
といっても、タイプが八つしかないのではない。その神殿の中でも技能や戦闘能力を重視したタイプと、呪文に特化したタイプ、その中間と、のぞめば多くのバリエーションが可能だ。
まずは第一章を読んでほしい。そこには、100CPで作成されたサンプルになるキャラクターと、入門シナリオ、そしてルールの概要が用意してある。
GMは、第4章の判定ルールにざっと目を通しておくといいけれど、プレイヤーは自分のキャラクターにできることを参照しておくだけで充分だ。
そして、ガープスがどんなゲームか、舞台であるジャナストラ大陸がどんなところかがわかったら、第2章の作成データを読んで、自分のPCをデザインするといいだろう。
第2章には、七つの月が輝くジャナストラ大陸で、人間キャラクターとなって冒険するのに必要充分なデータが紹介されているぞ。
今回の、ベーシック第四版の改訂を取り入れ、『ガープス・ユエル』に対応したものにしぼって、軽量快速化を実現している。それでも、特徴や技能は充分な幅を持っている。
また、特殊武器は「リアド大陸」を舞台にしていた『ガープス・ルナル』の時代より、さらに使いやすく、種類も増えた。今回、思い切って「神殿の特殊武器は、そうでない武器よりも若干有利」な数値に設定してある。だが、智慧と工夫とダイス運で補えないほどの差ではないはずだ。
そして、それぞれの神殿では、これまでにないタイプのキャラクターを作ることも可能になった。
これまでは智慧袋や、便利な呪文の使い手という役まわりが多かった知識の神ペローマの信者だが、今回は霊薬を浴びせる特殊武器シーリング・シューター(ライフルのような水鉄砲)やブレスパイプ(粉状の霊薬を浴びせる筒)を手にして、戦闘でも活躍できる。
水の神リャノには、どんな怪物でも料理してしまう龍切り包丁なんて武器も追加され、ぐっと戦闘力が増した。
この一冊で全てまかなうためには、呪文のデータも掲載しなければならない。そこで、従来のうち、あまり使われない呪文は『第四版対応マジック』の出版にまわし、今回はぐっとしぼった。それでも、第3章には二百種類近い呪文がリストアップされている。
絞り込むために、魔法の修得ルールは「七つの月の世界」独自のものになった。3〜6個の呪文をセットにして、まとめて覚える段階式になったのだ。そしてセットごとに前提条件が決まっている。これまでのルールに比べると、ぐっと楽になっているし、成長の目標も定めやすい。
第2章にも、少し能力の高い130CPキャラクターが、サンプルとして8体用意されている。しかも、それぞれに技能などが異なったバリエーションも紹介されているのだ。
第1章のサンプルとあわせて、24体のキャラクターから選んで、すぐに冒険をはじめることもできる。
ただし、不利な特徴だけは選んでもらわないといけないが。ここを選ぶ楽しみだけは、プレイヤーから奪うわけにいかない。といっても、これも面倒ならあらかじめセットにした特徴を参考にしてもらえる。
さて、こうして創りあげたキャラクターが冒険する舞台についてだ。
それは、第5章で紹介されているのだが。
続きは7月20日の第3回で!
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水の神リャノは料理も司る。その信徒は、
どんな強大な怪物にもこの龍切り包丁で立ち向かうのだ。
知恵の神ペローマの信徒は、知識を詰めた書物、酸を操る呪文、
そして霊薬弾を打ち出すシーリング・シューターで、
あるいは霊薬の粉を浴びせるブレス・パイプで仲間を助ける。
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