|
【16年01月08日 安田均】 |
新年おめでとうございます。
今年は申(さる)年ということで、猿にちなんで考えると、これはもう、西遊記、西遊妖猿伝、孫悟空ですね。アジアはこうしたヒーローですが、西洋で猿のつく作品なら、まずイギリスの怪談、W.W.ジェイコブズの「猿の手」でしょう。これはコワいですよ。でも、ジェイコブズって作品はたくさんあるのに、このほか短編が2〜3篇しか訳されていない。不思議ですね。
と、枕で振ってから、今回はグループSNEよりも安田均の個人的事情から先に書きます。今年は、こうした向こうの怪談やホラー、‘奇妙な味’など異色短編の翻訳を再びやりたいなと思っています。どういう風の吹き回しか(前期高齢者になったせいか)、翻訳人生の最初期に訳して自分がまとめたクラーク・アシュトン・スミス『魔術師の帝国』を、‘ナイトランド叢書’の一冊として復刊してもらうことになったこともあります。その関係でいろいろ調べると-――思考の流れを書くと「C.A.スミス」→「クトゥルフ・ホラー系の流行」→「英米では現在、ニューホラーと言うべき広がり」→「おおもとを探ると英の怪談」→「英では1920年代の年間文芸傑作選などは‘奇妙な味’作家の黄金時代」――要するに、1900〜20年代の英米は、現在にもつながるホラーや‘奇妙な味’、あるいはユーモアなどおもしろい「短編」の黄金時代であるとわかりました。これらは英ではオーモニア、ストックトン、ジェイコブズ、ベリスフォード、ウォルポール、フィルポッツなど作家中心、米ではウィアードテイルズ、ブラックマスクなどパルプ雑誌メインで花開き、クトゥルフ系統やさまざまなミステリになっていきます(もちろんSFやファンタジーもですが、時代的にはもうちょっと遅い。これらは、第2次大戦後の冷戦下の流れにむしろなるでしょう)。
つまり、古いが今でもおもしろい短編も紹介していければ、ということです(フィルポッツなんかは訳したいなあ)。なにぶん、ゲームも忙しいので、できる範囲でと思っていますが、海外の‘奇妙な味’短編やファンタジー/ホラーの好きな方に興味をもっていただければと思っています。
さて、ここからはグループSNEの今年の主にゲームの予定紹介となります。
まず、こうしたホラー分野の新作、ゾンビものの『ダイス・オブ・ザ・デッド』RPGが登場します。ダイスドラフト(振って判定するのではなく、振ったものをプールしてどう使うか考える)とかフラッシュバック(人間かゾンビか悩むハーフゾンビ・システムなので、正体隠匿も必要)とか、新システム満載のおもしろゲームです。これにはもう一つ、ボードゲームで協力型ストーリータイプも4月に同時に登場する予定です。
RPGではもちろん『ソード・ワールド2.0』が春と秋に大型サプリメント。そして、リプレイも強力新人のシリーズを加えて展開します。昨年は『ソード・ワールド2.0 RPGスタートセット』や『SW2.0サウザンドブレイブ』アプリなど新たなタイプが登場しましたが、今年も2月のスタートセット「拡張版」に続き、夏には別の協力型ストーリーゲームが登場します。どんなものになるかはお楽しみ(別といっても、SW2.0の基本は変わりません)。
そして、さらにRPGでは‘伝統と革新’の2作が待っています。
伝統は『トンネルズ&トロールズ完全版RPG』。向こうで40周年記念版として出たデラックス版の翻訳です。世界で2番目にできたRPGに、魅力的な背景世界が付け加わって、遊びやすくなった決定版。これはボックス型で登場します。また、冒険企画局さんからもスタートブック(記念ブック)が出たり、ソロシナリオやアンソロジー小説も夏以降刊行予定です。
革新は、秋以降となりますが『ゴーストハンター03』。なぜ革新かというと、RPGである『ゴーストハンターRPG02』とボードゲームである『ゴーストハンター13タイルゲーム』の双方をつなぐ意味もあるからです。短時間シナリオをタイルも使いながら、新たなRPGシステムとして遊ぶものになる予定。GHシリーズではまた、日本ではまだなかなか見られない本格的‘ヒドゥン・オブジェクト’アプリゲーム『アルケリンガ』が「03」と同時期に登場しますので、ご期待ください。
TCGでは『ドレッドノート』が引き続き、快調に出て行く予定です。2月に第4弾のブースターが出ますが、注目すべきはその後4月からの新たな緑勢力の登場でしょう。これまでは赤と青、黒、黄の4色だった勢力に5番目が付け加わります。ぜひご期待ください。
そして、ボードゲーム/カードゲームですが、人気の海外ゲームも引き続き出ますが(クニツィアの『メディチ』や『ロイヤルターフ』はじめ、『シーヴィライゼーション』や『ラプトル』ほかの新作、定番の『ブラックストーリーズ』シリーズなど)、今年は日本の作品にも注力します。まずは公募コンテストの入選作『ギャンブラー×ギャンブル!』『ソラシノビ』や候補作、あるいは人気の『知ったかxx研究家決定版』ほか、社内コンテストでの『学園メテオ』『ドラゴンズ・エッグ』に続く作品群です。公募コンテストの第2回も行なう予定ですが、詳しくはもうしばらくお待ちください。
また今年は、先にも書いたアプリ新作などのほかに、『ロードス島戦記オンライン』もありますし、コンピュータゲームで他にもおもしろいものを企画しています。年央までに、一つは発表できるかと思うのでお待ちください。
小説は、河野裕や秋田みやび、河端ジュン一ら以外にも、北沢慶が新たな分野で新作を発表の予定。他の作家たちも手ぐすねをひいています。また別に、小説に絡んだ大きな企画の発表があるかもしれません。楽しみにお待ちください。
といった感じで、今年の新作予定。ひと言でいうと、以前からの分野が組み合わさって、よりおもしろいものを出せたらと思います。2月21日にはゲームマーケット神戸もありますし、張り切って楽しいストーリーとゲームを提供できればと考えています。
今年もよろしく!
|
|