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TOP > ユーザーコンテンツ > エッセイ > 安田均の「ゲーム日記」第8回
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安田均の「ゲーム日記」 第8回 (2001年6月版)
最新ゲーム50点!〜TRPG・TCGからボードゲームまでを一挙紹介!!〜

 このページに掲載されているゲーム
  ++ トロイ + ツァップ・ツェラップ + 海賊 + ティトゥス ++
  ++ 反乱者 + キャセイ + ティチュウ + サンフランシスコ ++
  ++ 全速力 + ワイアット・アープ + イシス・オシリス + 沈没世界 ++



トロイ
  TROIA
トマス・ファクラー作
アミーゴ社
評価

トロイ TROIA アイデアはすばらしくいい。でも、地味だ。ひとことで評すると、こうなる。

 トロイの歴史遺跡を発掘し、それを復元するゲーム。でもそれを、遺跡タイルを将棋崩しのようにして遊ぶというのが斬新だ。またタイルもトロイの歴史上5期にわかれていて、古いものほど下に埋もれるようにするというのがおもしろい。引いてきたタイルは、パズルのように4×4のマス目に埋めていく。

 タイルの色が遺跡を表現することから、茶色で見分けがつきにくいのは難点だ。雰囲気はよく出ているが、ゲームがわかりにくくなるのは困る。このあたりはもったいない。

 でも慣れてくると、どの時代の遺跡に狙いをつけるかとか、遺跡タイルの引きがおもしろくなってくる。パズル部分も慣れると、駆け引きがあっておもしろい。

 色合いの地味さを乗り越えられるかどうかだが、ゲームで色合いというのも意外に重要だということがわかる作品。

++ ゲームカタログ目次 ++




 ツァップ・ツェラップ
  ZAP ZERAPP
ハインツ・マイスター&クラウス・ツォッハ作
ツォッハ社
評価


ツァップ・ツェラップ ZAP ZERAPP 年少者向けゲームだが、その馬鹿々々しいおもしろさについ引き込まれてしまう。

 中央に1から13までを裏に書いた円筒群を置く。これが何かというと、中に数と同じだけの粒が入っていて、振るとじゃらじゃら音がする。プレイヤーは全員で一斉にこれらを振ってみて、その回にサイコロ2個で決められた数字以下の筒を見つければ、ボード上のコマを進められるというもの。音と重さでだいたいの当たりをつけるのだが、その回の数字にできるだけ近いものを見つけようとして(もちろん、近いほど先に進めるから)つい粒の多いものを引いてしまうのがたまらない。

 音と重さを利用するゲームは、これまでにも石粒を運ぶ『イースター島という怪作があって、これもそれに劣らず愉快だ。問題は、コマのレースが邪魔のしあいになって、なかなか終わらないところ。画竜点睛を欠いたとはこのことか。

 でも、やっぱり楽しい。子供たちを相手にしたり、酒が入って遊ぶには最適。

++ ゲームカタログ目次 ++




海賊
  STO:RTEBEKER
A・ヴェッター&T・レプマン作
ハンス・イン・グリュック社
評価


海賊 STO:RTEBEKER 海賊船で相手を沈めたり、沈められたりという、わかりやすい作品。サイコロを振って、プレイヤーの誰を狙うかを席順や相対順位などから考えていくゲームだ。

 こうしたシステムはわかりやすいのだけれど、これまでにもよくあったゲームとさして変わらない。

 実際に遊んでみたら損はさせない(現におもしろい)というタイプだが、基本構造がありふれていては、これだけ新しい趣向にあふれかえるドイツボードゲームの中では、やっぱりそんなに評価できない。

++ ゲームカタログ目次 ++




ティトゥス
  TITUS
ウーベ・ローゼンベルク作
アドルング社
評価


ティトゥス TITUS アドルング社こぶりなカードゲームばかりを、毎年10点近く出している。そのうちの1つか2つはかなり優れているし、どうにもならないというゲームは少ない。

 またデザインもきれいで、すぐに遊びたくなるのはなかなかのすぐれものだ。

 このティトゥスは、アイデアのデザイナーローゼンベルクが作ったとあって、いっぷう変わっている。カードの表裏を使って、数字並べをするというもの。

 カードには1〜19までどれかの数字が書いてあるが、裏面はデザインがまったく同じで、数値は±2までの範囲で異なる。つまり、表が15なら、裏は13〜17までのどれか、というわけだ。

 ゲーム中、他プレイヤーからカードをもらってきたときには裏返すので、なかなか大変。当て推量のおもしろさはあるが、記憶しようとしたらどれがどれだったか思い出しにくい。

 遊んでいると、こうした外れカードが散乱し、カードデザインであるローマ皇帝の金貨だらけ、というなんだかシュールな雰囲気になってくる。

 ちょっと±2の範囲が広すぎたのでは、と思う。思いつきはすばらしいが、バランスをとりそこねたか。アイデア倒れで、惜しい。

++ ゲームカタログ目次 ++




反乱者
  MEUTERER
マルセル=アンドレ・C・メルクル作
アドルング社
評価

反乱者 MEUTERER これもアドルング社のカードゲーム。こちらは、よくできている。

 去年ドイツでは『操り人形』というカードゲームの人気が高かったけれど、じつはその作品、キーになるアイデアをこのメルクル裏切者VERRA:TERというゲームから借りている。反乱者は、その『裏切者』の続編にあたる。ゲームシステムとしては、まちがいなくおもしろい。

 つまり、ここでもプレイヤーは『裏切者』『操り人形』のように、役割の選択を毎回行なう。船長側につくか、反乱者側につくか、それとも関係しないでいるか−−裏向いたキャラクターカードが1枚ずつ選ばれていくので、残ったカードを見たプレイヤーは、何ともいえない顔つきになる。

 積荷の多さを比べるのが基本だが、船長には目的地を選べて、それによる加点がある。一方、反乱者は決起に成功すれば、目的地の権利を奪い取れる(次回の船長にもなれる)。

 反乱の成否は武器カードでの比べあいになるが、反乱者に加担して武器を取るか、積荷が大事と無関係を装うか、あるいは、船長に金をもらって懐柔され、味方につくか−−濃厚なゲームというのはこういうタイプを差すのだろう。

 でも、そんなに時間はかからないし、値段は安いし、ちょっとゲーム慣れした人が必要なくらいで、いいゲームとはこういうものだと思う。

++ ゲームカタログ目次 ++




キャセイ
  KATHAI
ミハエル・アンデルシュ作
アドルング社
評価


 砂漠の交易ゲーム。よくある品物交換で稼ぐゲームだが、値段が変動していくので、それをどうカバーするかがおもしろい。

 手札を8枚まで増やし、塩や絹のマークが揃ったところで交換してポイントを稼ごうとするのが常道だろうが、あまり大きく狙うと手札が一気に減ってしまうので、後が大変だ。

 やっぱり、ちびちびと交易しつつ、売却したときの値段変動で思わぬ利益が後々転がり込むのを待つゲームだろう。小味なよさは出ているが、ダイナミックなことをやる人がいないと小さくおさまってしまうと思う。

キャセイ KATHAI

++ ゲームカタログ目次 ++



ティチュウ
  TICHU
ウルス・ホステトラー作
アバクス社
評価


ティチュウ TICHU トランプの大富豪はおもしろい。日本じゃ、三本の指に入るよく遊ばれるカードゲームだろう。ところが、この‘大富豪’、中国原産のせいか欧米ではあまり遊ばれていなくて、この手のゲームが出るとよく評判になる。

 『ティチュウ』はこの‘大富豪’を、本格的なカードゲームに仕立て直したもので、これまでのところ、ぼくは‘大富豪’ものの中ではいちばんおもしろいと思っている。役カードが4枚増えて、しかも、日本じゃあまりなじみのないパートナーゲーム(4人で向い合って組になる)。だから、面倒臭いと思われるかもしれないが、‘大富豪’のユーモアを抜いた替わりに、ゲーム性を高めた点では見るべきところも多い。

 南ドイツスイスではティチュウ協会も多いとか。変わったトランプゲームの好きな人はお試しを。

++ ゲームカタログ目次 ++




サンフランシスコ
  SAN FRANCISCO
A・ヴェッター&T・レプマン作
アミーゴ社
評価


サンフランシスコ SAN FRANCISCO うーん、評価が難しい。期待しすぎたのかもしれないが。

 サンフランシスコの発展の歴史をなぞるゲーム、という先入観を持っていたら、よくあるタイル置き得点ゲームだった。

 もちろん、趣向はあって、街を発展させるための入札は2種類。そして、ボード上の区画を、道でどう囲むかに頭を悩ませる。

 ただし、この種の街発展ゲームは、ここ2年ばかりいくつも登場しているので、遊んでいても‘このゲームで遊んだ’という実感が湧かない。

 本来はテーマどおり、もっとシミュレーションを意識させつつ、ドイツゲームの簡潔な論理性をもったゲームを作りたかったのだろう。

 意図は買うけれども、それを実行するにあたって、デザイナーサイドの独創性が弱く、結局、これまでのゲームメカニズムのバランス調整になってしまったというべきか。

 だから、ゲームとしてはそれなりにおもしろく機能する。

 でも、どこがサンフランシスコだったんだ?

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全速力
  VOLLDAMPF
マーティン・ウォーレス作
TMシュピール社
評価

全速力 VOLLDAMPF 鉄道ゲーム歴史ゲームでおもしろいものを作っているイギリスのデザイナーの作品。根本的な構造は彼の名作ランカシャー・レイルウェイズと同じだ。でも、鉄道はドイツに変わっていて、ベルリンミュンヘンなどおなじみの地名が出てくる。

 このゲームのおもしろいところは、借金をしなければ思うように路線を敷けず、各地の産物を狙ったところに運べないことだろう。運ぶたびに勝利ポイントがたまっていくから、借金とその返済計画とはとても大事だ。

 元がよくできたゲームだから、おもしろさは保証されているが、問題が一つ。勝利条件を『ランカシャー』のように獲得金額ではなく、ボード上での勝利ポイントにしたこと。このゲームはあるプレイヤーの行動によって、他のプレイヤーにもポイントが入ることが多い。そのため最後に、3位以下で順位の決まっているプレイヤーの行動が、明らかに1位2位のどちらかを決定する場合が出てくる。ゲームデザイン上、いわゆるキングメイカーの状況というやつだ。これではトップを競っているプレイヤーが鼻白む。いいゲームだけに残念だ。

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 ワイアット・アープ
  WYATT ARP
マイク・フィッツジェラルド&リハルト・ボルク作
アレア=ラベンスバーガー社
評価

ワイアット・アープ WYATT ARP
 数年前、アメリカでトランプのジン・ラミーを活用したおもしろいゲームが出た。ミステリー・ラミーといって、ミステリーの名作ラミースタイルで遊べるようにしたもの。ゲームも斬新だったが、装丁や雰囲気が見事にヴィクトリア朝時代を表わしていて、結構楽しめるものだった。最初がジャック・ザ・リパー、ついでモルグ街の殺人、そして最近ジキルとハイドが出た。ゲームシステムは簡単には説明できないが、ラミーのように同じ数字の組を作って、手がかり、容疑者、証拠と集めていって先に手札をなくすタイプだ。

 この『ワイアット・アープ』は、同じ作者がそのスタイルを西部劇に当てはめたもの。ウエスタンだからもちろん撃ちあいがキーとなるものの、『ミステリー・ラミー』を髣髴とさせるものがあり、短時間でスピーディに遊べるいいゲームとなっている。

 お訪ね者にどんどん賞金を積み上げていって、いかにそれを仕留めたかを競う。ワイアット・アープのカードはいわば切り札で、この活用がすべてだろう。

 相変わらず、装丁、雰囲気ともにすばらしい。

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イシス・オシリス
  ISIS & OSIRIS
ミハエル・シャハト作
ゴルトジーバー社
評価


イシス&オシリス ISIS & OSIRIS 軽い抽象風ゲーム。15分くらいで終わる。

 ボードは6×6のマス目。そこにプレイヤーは自分の手番で、−4から+4までの数字の書いてあるタイルを置くか、自分のマーカータイルを置くかする。すべてを置き終わって、自分のマーカーの回りを取り囲んだ数字タイルがあれば、その合計が得点になる。ルールはそれだけ。

 なんということのないシステムなのだが、手軽だし、ちょっとした頭の体操という感じで、ついもう1回となる。

 作者のシャハトは、こうしたあっさり目のゲームが得意なようだ。

 そのため、濃いゲーマーの好む分野の作品では物足りない、とよく評されるが、この作品のようにタイプがぴたりと合うと、なかなか得がたい才能のように思えてくる。

 悪くないです。

++ ゲームカタログ目次 ++




沈没世界
  LAND UNTER!
ステファン・ドーラ作
ベルリナー社
評価


沈没世界 LANDUNTER 昔出た森のカッコー』のリメイク。カードゲームとしてはかなりよくできている。

 プレイヤーは1から60までの数字が書いてあるカードを12枚配られる。これが手札で、毎回一斉1枚に出す。場には別種の、1から12まで書かれたカードが、毎回2枚さらされている。

 いちばん大きな数字を出したプレイヤーが、場の低い数字のカードを取り、2番目に大きなカードを出したプレイヤーが、場の高い数字のカードを取る。

 で、毎回いちばん大きな数字をさらしているプレイヤーからは、浮き輪が一つずつ減らされていく、というゲーム。世界は沈没しかかっているので、この浮き輪が尽きると脱落なのだ。

 よくできているのは、悪いカードが多く配られれば、浮き輪も最初から多く持てるという点。逆に、よいカードばかりだと、浮き輪がほとんどないという状況ではじめなければならない。

 さらに凝っているのは、1ゲームが終わると、手札を始めの状態に戻して、浮き輪とともに隣のプレイヤーに渡して、新たにゲームを始める。つまり、ゲームが進むにつれ、他のプレイヤーの手札がどんな状態かわかってくるのだ!

 他者と比較されるので、こうしたデュプリケート形式をいやがる人もいるが、発想はなかなかすごい。まだ遊んでいない人にはお薦め。

++ ゲームカタログ目次 ++

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