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リプレイ執筆にあたって、どういう経緯でこれらのシナリオが選ばれたんですか? |
藤澤 |
まず1話目は遊び方の紹介ということで付属シナリオの一番最初に掲載された入門シナリオを。2話目は手がかりが出る順番によって結果が変わるのでネタバレになりにくい、ということで付属シナリオの6番目が選ばれました。
付属シナリオを2本紹介したのでこれ以上のネタバレを防止するため、3話目はオリジナルシナリオに挑戦しました。 |
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藤澤さんはこのリプレイを書くために遊んだのが、『GH13TG』初プレイだったそうですね。 |
藤澤 |
はい、完全に初めてでした。
初心者の視点で、というのもあるんですが、何より遊んだ時に受けた衝撃やおもしろい! という新鮮な気持ちをリプレイに書きたかったので、わたしの方からお願いしてリプレイ用に遊ぶまでは絶対にやらない、見ない! と必死に目をそらしていました。 |
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初プレイでいきなりリプレイは大変じゃなかったですか? |
藤澤 |
今までボード・カードゲームのリプレイをいくつか書かせていただいた経験から、これが一番書きやすくて伝えられることが多い、と気付いたんです。
自分からルールを説明するリプレイだと説明ばかりを前面に出してしまいがちになるので、誰か他の人に説明をしてもらって少しずつ理解していく方が読者さんと同じ目線に近い状態で書けるかな、というのもあって。 |
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なるほど。『GH13TG』は、遊んでみてどうでしたか? |
藤澤 |
すごくおもしろかったです。おもしろかったのは当然なんですが……、この感覚はなんて伝えればいいのかな? このゲームはみんながひとつのことに向かってがんばるんですけど、でも団結はしないんですよね。その感覚がすごいおもしろくて、不思議なゲームだなって思いました。 |
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例えばそれはどういうところが? |
藤澤 |
絶対にクリアしようと思ったら4人で固まって行動するべきなんですけど、誰もタイルをめくる楽しさの誘惑に勝てない!
リプレイでも、みんながバラバラの方向に部屋を広げて、途中で「あ、やばい!」というのを全話でやりました(笑)。 |
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あはは、わかります! 後半に合流したり脱出しなきゃいけない段階になって「わーマップ広げすぎたー!」て焦るんですよね(笑)。 |
藤澤 |
はい。読んでいただいたらわかりますが、「どうやったら合流できるの? 一緒に行動した方がいいよね?」って言いながら「でもここめくっちゃうから」という会話がすごく多くて。
リプレイの作業が終わってから他の人が遊んでいるのを見てもやっぱり「あ、めくってしまった……」という場面を頻繁に見て、ゲームっていうのは勝つものじゃなく楽しむものだな、というのがすごく伝わってくるゲームだと思いました。 |
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TRPGでいう脱線してる時の楽しさにちょっと似てるかも? |
藤澤 |
そうかもしれないですね。
攻略方法を考えたり勝つためじゃなくて楽しむためのゲーム、というか。勝つために全員が楽しみを我慢することはしない、という。
そもそも、そうじゃないと『GH』じゃないですよね。怖い目にあうためにお化け屋敷に入るんですから。
そういうところが不思議、というか意図せずそうなってしまうところに、すごいこのゲームの力を感じます。 |
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3話目ではオリジナルシナリオに挑戦! とのことですが、作ってみてどうでした? |
藤澤 |
このゲームはタイルをめくるだけで遊べるので、シナリオの内容に注力して他のシナリオにはない要素を入れよう、という部分で頭をひねりました。 |
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最初から13本もバラエティ豊かなシナリオがついてますからね。 |
藤澤 |
はい、そこはひとつのハードルではありましたね。この13本を超えてこそオリジナルに行ける、みたいな。
単なるお化け屋敷にはしたくなかったので最初はどうしようかと思ってたんですが、他のシナリオを読んでみたらピラミッドとか出てきて「あ、何でもいいんだー」と気が楽になったので、じゃあ好きなものにしよう、とドールハウスになりました。 |
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ドールハウスっていう発想は、たぶんSNEのメンツで出てくる人はあんまりいない気がする。たいへん女の子らしくて、藤澤さんらしいシナリオだな、と。 |
藤澤 |
ありがとうございます。このシナリオは本当に好きなことをして、かなり楽しく作りました。
あと、タテルベさんは何でも建ててるらしいんで、世界最小のタテルベ建築って言い張ってみました。 |
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シナリオの中でこだわったところはありますか? |
藤澤 |
役割を作ったところですね。誰が何をしてもいいゲームなので、そこにちょっと何か、せっかくプレイヤーが4人いるんだから、みんながそれぞれに何か違うことができるといいな、と思って。 |
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あの役割が発表された時のインパクトもすごかったんですが、それ以上に今回は配役が神がかっていましたね。 |
藤澤 |
はい。3話は役割を決めて本当によかったです。1話目でルール説明役をしてもらった千秋さんに3話でやっとプレイヤーとして遊んでもらえたのもよかったなと思いますし、とにかくとてもおもしろかったです。 |
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大変だった部分はありますか? |
藤澤 |
ボードゲームのリプレイを書く時に必ず思うんですが、編集が難しいです。
TRPGだと与太話はがっさりカットしたり、ここから30分くらい音声飛ばすかー等できるんですけど、ボードゲームは常に状況が進行するので、どこを短くしてどこを長く書いて、という取捨選択に毎回悩みます。 |
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なるほど。 |
藤澤 |
あと悔やまれるのは、リプレイって音声じゃなく文字なので、狂気カードを引いたり発狂した時のおもしろいロールプレイを完全には再現できないこと。
TRPGでプレイヤーが変なことを言い出すのは流れやキャラクターのイメージがあるので特に説明しなくてもある程度伝わりますけど、『GH13TG』は狂気カードを引いた瞬間に状況が急変するのでどうやったら遊んだ時の臨場感をそのまま伝えられるかな、というのが悩みどころでした。
ここを裏声で、とか入れたりしてできるだけ頑張ったつもりなんですが、きちんと伝わっているといいなと思います。 |
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これからシナリオを自作してみようかな、という人に経験者からのアドバイスなどありますか? |
藤澤 |
シナリオの作成方法は人それぞれだと思いますが、たぶん、自分で言うのも何ですけど、3話のシナリオくらいやらなきゃいけない、とは考えない方がいいです。冒頭にも書いてあるんですけど、あれは本当に盛りすぎなんで(苦笑)。 |
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もっと気軽にやって大丈夫ですよ、と? |
藤澤 |
はい。『GH13TG』はやりたいことを表現するのにとても優秀……、優秀って言い方は変だけど、願いを叶えてくれるものですし、ボスもおっしゃっているように「なぜ館に入ったのか」と「結末」とそこに至るための「手がかり」を決めるだけでシナリオができるので、慣れるまでは欲張らず簡単なところから始めて、あとはやりたいことをやりたいようにやればいいと思います。
好きなホラー映画の再現などもできると思うので、ぜひ皆さんもシナリオを作ってみてくださいね。 |