―― |
KOSMOSといったら『カタンの開拓』をはじめ、有名なゲームをたくさん出しているドイツでも最大手のゲーム会社ですよね。よく話を聞いてくれましたね。 |
安田 |
そこはデザイナーのアンディからもプッシュしてもらっていたからね。いきなり行ってもアンタ誰? ってなる。そうならないようあらかじめ紹介してもらうのは、交渉なんかをする時の基本だよ。 |
―― |
なるほど。……あの、そもそもですね、HPのゲーム紹介読んだ時からずっと気になってたんですけど、『タルギ』の作者さんと柘植さんは「ハイ、アンディ!」「ヘイ、メグ!」と呼び合う仲、とのことですけど、どうやってそんなに仲良しになったんですか? |
柘植 |
メールのやりとりをして仲良くなったんですが、ちょっと恥ずかしい、というか何とも言い難いエピソードがあって……(微妙に目線が泳いでいる)。 |
―― |
え!? ちょ、その話、ぜひ詳しく!! |
柘植 |
えーと、順を追って話すと……。
まず『タルギ』が2012年の大賞候補になった時にゲームを取り寄せたんですが、ドイツ語ルールしかなくて遊べなかったんですよ。単語程度なら何とかなるんだけど、言語依存の大きいゲームなので。 |
―― |
ふむふむ。 |
柘植 |
それでずっと英語ルールを探していたんだけど、もともとKOSMOSのゲームってなかなか英語ルールが出ないから諦めかけていて。
そんな時に『BoardGameGeek』っていうボードゲーム愛好家が集まる英語のサイトのフォーラムに「英語に訳したから欲しい人は言ってね」という投稿があがったんです。
それで投稿者さんに「ぜひ遊びたいから英語のルールを譲ってほしい」とメールを出したのが、交流の始まりでした。 |
―― |
ほうほう。 |
柘植 |
それで英語のルールをもらって、ああ、なんて親切なお兄さんなんだろうって思っていたんだけど、何度目かのやりとりの後で、相手のお名前を改めて見たら“アンディ”って書いてあって。
あれ? 『タルギ』の作者の名前もアンディだったよね? と思って、よく見たら名前の綴りがまったく同じ。 |
―― |
こ、この流れはまさか……? |
柘植 |
そう、そのまさか(苦笑)。
この人もしかしてデザイナー本人!? とその時初めて気付いて、慌てて確認したら「そうだよ」という返事が返ってきました。 |
―― |
わぁお(笑)。 |
柘植 |
それまでまっっったく気付いてなくて。
英語に訳してすごいなぁ、ありがとう、ありがとうってメール送ったけど、途中で、うわっこれ作者やったー! と気付いた瞬間は、本っ当に焦りました。なんて失礼なことをっ! って。
でもアンディの人柄がとても良かったから、気を悪くすることなくその後も仲良くしてくださって。遊んですごくおもしろかったよって感想を送ったりするうちに、ボスがエッセンに行くからぜひ会おう、という話になったんです。 |
安田 |
エッセンで会った時にインタビューをさせてもらった記事が『ボードゲームナビ2012-03』に掲載されているので、興味がある人はバックナンバーをチェックしてみてほしい。
で、そのやりとりの中で『タルギ』の日本語版を出したいと伝えたらKOSMOSの担当さんを紹介してくれた、というわけなんだ。 |
―― |
なるほど〜。すごい偶然が重なっての日本語版発売だったんですねぇ。 |
柘植 |
KOSMOSの担当さんもすごくいい方で。アンディの口添えがあったおかげで、KOSMOSとの交渉もすごくスムーズに進みました。本当に、人の縁に恵まれたなと思います。 |
安田 |
日本では紹介タイミングがずれてあんまり話題にならなかったんだけど、これも独特のプレイ感覚ですごくおもしろい。11月のゲームマーケットで発売予定なので期待していてほしい。 |
―― |
実はこちらも秋津さんがイラストを描いてくださったんですよね。 |
安田 |
そう、『王宮』のイラストはまた違う意味で注目してほしいね。こちらはカードも全部描き下ろしイラストになっているんだけど、ゲームに登場する役割が動物に似せた形になっていてね。どの役割がどんな動物になっているか、というのが興味深いしすごくセンスがいい。 |
―― |
もともと秋津さんは動物の絵に定評があるイラストレーターさんだそうで。『タルギ』の箱のラクダもめっちゃいい表情してましたしね。 |
安田 |
ちなみに『王宮』はアドルングという、小さなカードゲームをたくさん出しているメーカーの作品。遊びやすくて値段も手ごろな作品が毎年4〜5点出ているんだけど、そのうち1〜2点は絶対おもしろいのが入ってるので、見逃せないメーカーですよ。 |
―― |
こちらはどういった経緯で出すことになったんですか? |
安田 |
もともと『王宮』はぼくの大好きなゲームのひとつだったんだけど、日本に留学していたドイツ人の学生さんから「いいメーカーがあるんだけど、日本語版は出さないんですか?」と聞かれてね。話をしているうちにそのメーカーがアドルングだと判明して紹介してもらうことになったんだ。
で、アドルングなら最初は一番好きな『王宮のささやき』をぜひやりたい、と言ったら快諾してもらえた。 |
―― |
わお、向こうの人はおおらかですね。 |
安田 |
たぶん会社によるんだと思うけど、今回は出会った人たちにすごく恵まれたおかげだね。 |
柘植 |
皆さんすごくいい人ばかりでどの話もスムーズに進んだし、こちらが不慣れでもわからないことは親切に教えてくださったので。 |
安田 |
2013年もエッセンに行った時には新しい話をしてくる予定。
こんなのどうですか、とユーザーさんからも教えていただけたら検討するので、ぜひご意見をいただければ嬉しい。 |
柘植 |
『王宮のささやき』も、まもなくゲーム紹介などの記事をHPに掲載予定なので、楽しみにしていてくださいね。Role&Roll vol.109(10月発売)にボスのゲームノベル版『王宮のささやき』が掲載されます。とてもおもしろいのでこちらもぜひご覧くださいね。 |
安田 |
今後もオリジナル・翻訳問わずいろんなゲームを作っていきたいと思っているので、みなさん応援よろしくお願いします。 |