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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > GH13TG、GH13リプレイ、タルギ(2013年08月)
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タルギ 完全日本語版

++ 良縁に恵まれること ++

『タルギ』はドイツの新鋭デザイナー、アンドレーアス・シュタイガーのデビュー作にして2012年ドイツゲーム大賞上級部門ノミネートされた2人用の対戦ゲーム


 実はデザイナーの本職は幼稚園の先生で、愛する奥さまと遊ぶための2人用ゲームを日夜研究しているらしい。
 そんな彼の作ったこのゲーム、コンパクトなコンポーネントにシンプルなルールながら、奥が深くがっつりどっしりしたプレイ感覚が味わえる逸品です。
 その日本語版をSNEが制作するに至った経緯には、実はこんなお話が……。

安田 『タルギ』は2人用のボードゲームの面白い形なんだよ。
 特にこのゲームはシステムのアイデアが非常に豊かで、コマを3個交互に置いてその交点にあるカードを取る、という今までなかった形が独特でとてもおもしろい。獲得したカードにもいろんな能力や特典があって、小ぶりなのに中身はすごく詰まっていて、ドイツゲームの最先端部分が2人で遊べるんだ。
――  ほほう。
安田  おそらくこのゲームの原型は、4人ぐらいでじっくり時間をかけて遊ぶようなすごく本格的なワーカー・プレイスメントのボードゲームなんじゃないかな。それが多人数ゲームのような広がりを持ったまま2人で手軽に遊べる形に仕上がっている。
 そこが評価されて、2人用の小さいゲームにも関わらずゲーム大賞でも上級部門にノミネートされたんだと思う。
柘植  今までこういった2人用の小さいゲームが上級部門でノミネートされたことはなかったですからね。
安田  それだけすごいおもしろさが入ってるということなんだ。おススメだよ。
 でも以前、付き合いのある出版社やゲーム会社に『タルギ』の日本語版は出さないんですか? って聞いてみても、どこも出さないという。
 それならSNEで出せたらな、と思って2012年のエッセンで発売元のKOSMOSに話を持って行ったんだ。

++ エッセン ++
 毎年10月ドイツで開催されるゲームのお祭り「Spiel」の開催地。
 とっても大規模なイベントで、毎年この時期に合わせてたくさんの新作が発売される。ボードゲームファンなら一度は行ってみたいイベント。

 http://www.messen.de/de/7696/in/Essen/Spiel/info.html

――  KOSMOSといったら『カタンの開拓』をはじめ、有名なゲームをたくさん出しているドイツでも最大手のゲーム会社ですよね。よく話を聞いてくれましたね。
安田  そこはデザイナーのアンディからもプッシュしてもらっていたからね。いきなり行ってもアンタ誰? ってなる。そうならないようあらかじめ紹介してもらうのは、交渉なんかをする時の基本だよ。
――  なるほど。……あの、そもそもですね、HPのゲーム紹介読んだ時からずっと気になってたんですけど、『タルギ』の作者さんと柘植さんは「ハイ、アンディ!」「ヘイ、メグ!」と呼び合う仲、とのことですけど、どうやってそんなに仲良しになったんですか?
柘植  メールのやりとりをして仲良くなったんですが、ちょっと恥ずかしい、というか何とも言い難いエピソードがあって……(微妙に目線が泳いでいる)。
――  え!? ちょ、その話、ぜひ詳しく!!
柘植  えーと、順を追って話すと……。
 まず『タルギ』が2012年の大賞候補になった時にゲームを取り寄せたんですが、ドイツ語ルールしかなくて遊べなかったんですよ。単語程度なら何とかなるんだけど、言語依存の大きいゲームなので。
――  ふむふむ。
柘植  それでずっと英語ルールを探していたんだけど、もともとKOSMOSのゲームってなかなか英語ルールが出ないから諦めかけていて。
 そんな時にBoardGameGeekっていうボードゲーム愛好家が集まる英語のサイトのフォーラムに「英語に訳したから欲しい人は言ってね」という投稿があがったんです。
 それで投稿者さんに「ぜひ遊びたいから英語のルールを譲ってほしい」とメールを出したのが、交流の始まりでした。
――  ほうほう。
柘植  それで英語のルールをもらって、ああ、なんて親切なお兄さんなんだろうって思っていたんだけど、何度目かのやりとりの後で、相手のお名前を改めて見たら“アンディ”って書いてあって。
 あれ? 『タルギ』の作者の名前もアンディだったよね? と思って、よく見たら名前の綴りがまったく同じ
――  こ、この流れはまさか……?
柘植  そう、そのまさか(苦笑)。
 この人もしかしてデザイナー本人!? とその時初めて気付いて、慌てて確認したら「そうだよ」という返事が返ってきました。
――  わぁお(笑)。
柘植  それまでまっっったく気付いてなくて。
 英語に訳してすごいなぁ、ありがとう、ありがとうってメール送ったけど、途中で、うわっこれ作者やったー! と気付いた瞬間は、本っ当に焦りました。なんて失礼なことをっ! って。
 でもアンディの人柄がとても良かったから、気を悪くすることなくその後も仲良くしてくださって。遊んですごくおもしろかったよって感想を送ったりするうちに、ボスがエッセンに行くからぜひ会おう、という話になったんです。
安田  エッセンで会った時にインタビューをさせてもらった記事がボードゲームナビ2012-03に掲載されているので、興味がある人はバックナンバーをチェックしてみてほしい。
 で、そのやりとりの中で『タルギ』の日本語版を出したいと伝えたらKOSMOSの担当さんを紹介してくれた、というわけなんだ。
――  なるほど〜。すごい偶然が重なっての日本語版発売だったんですねぇ。
柘植  KOSMOSの担当さんもすごくいい方で。アンディの口添えがあったおかげで、KOSMOSとの交渉もすごくスムーズに進みました。本当に、人の縁に恵まれたなと思います。


++ Voila, Targi goes Manga(タルギがマンガになった) ++

――  さて、『タルギ』はルールが日本語になっただけでなく、パッケージイラストも日本オリジナルのものになっていますよね。
安田  元のイラストは、黒いベールを着けて目元だけがあいた男性の顔のアップで、すごくインパクトがある絵でね。
柘植  作品のタイトルである『タルギ』っていうのは、男性がベールを被る砂漠の民族のことなんですが、中東の情勢なんかの影響もあってテロリストみたいでよくない、ということでKOSMOSが新しい箱絵の国際版を作ったんです。
 が、ちょっと日本人にはウケないタイプの絵だったので、せめて箱だけでもオリジナルの絵で出させてもらえないか、と交渉したら快く承諾してもらえて。
安田  それで秋津さんに描いていただくことになりました。
――  秋津たいらさんは、ソード・ワールド2.0リプレイ with BRAVE(北沢慶/グループSNE、富士見書房、全3巻)でイラストを描いて下さった方ですね。淡い色調ですごく爽やかで涼しげで素敵なイラストですよね。
柘植  この絵をドイツにも送ったらすごく喜んでもらえて、アンディもfacebookで「タルギがマンガになった!」ってコメントしてくれています。
――  facebookわたしも見ました! たくさん並んだ国際版の中に1つだけ水色の日本語版があって、すごい目立ってましたよね。

そんなタルギのfacebookページがこちら
 Targi Kosmos Spiel fur Zwei
 https://www.facebook.com/pages/Targi-Kosmos-Spiel-f%C3%BCr-Zwei/395916230424425

安田  しかもイラストの中にちょっとした遊びが入っているというのがまた秀逸だよね。みなさん、どこかおわかりですか? ヒント旧版『タルギ』の箱絵
――  わかった方、興味がある方はこちらの答えで確認してみてくださいね!
 ちなみに、作者さんは喜んでくださったそうですが、KOSMOSの担当さんの反応は?
柘植 「interesting」って言ってた。「うん、いいんじゃない」って。

 interesting
 インタレスティング
 [形動]おもしろいさま。興味のあるさま


++ もっと2人用のゲームを遊ぼう ++

安田  ちなみに、KOSMOSは昔から『タルギ』くらいのサイズで2人用の良いゲームをたくさん出していて定評もあるので、ぜひいろいろ遊んでみてほしい。
―― 『タルギ』は2人で遊べるところも、日本ならいいんじゃないかと思いますね。ボードゲームって3〜4人くらいが適正人数の作品も多くて、人が集まらないとなかなか遊べないんですよね。
安田  2人対戦ゲームというと、日本ではどうしてもトレーディングカードゲームあるいは囲碁将棋やそれに類するものが多くて、少しでも戦術戦略がずれたら終わりっていうきついイメージが強いから、2人で勝敗を争うゲームを敬遠する人もいるでしょう。
――  そうですね。
安田  一般にはあまり知られていないだけで、2人用ゲームだってもっといろんなシステムで様々なテーマを持ったおもしろい作品がたくさんあるんだよ。
『タルギ』もきつい感覚はないので安心してほしい。おもしろいシステムで、いろんな幅があって、こうしたらこうなるよ、というのを2人で楽しみながらじっくり遊べる。
 そして、その楽しみがわかったらもっとこういうゲームが生かされるので、ぜひ遊んでほしい。
――  『タルギ』って、ルールはけっこうシンプルですよね。
安田  全然難しくないし、新しい形なのですごくおもしろいよ。どんどん進められると思う。
柘植  遊んでみたいなと思われたら、SNEホームページに掲載しているゲーム紹介もぜひ読んでみてくださいね。



11月は『王宮のささやき』
今後の予定

――  それではそろそろ、インタビュー恒例の今後の予定などお願いします。
安田 『GH13TG』は枠組みや決まった遊び方のあるゲームじゃないので、誰でも普通に楽しんでほしい。
 そして皆さんが楽しんで買ってくださったら、エクスパンションTRPGも出していきたいので、応援よろしく。
 今回新しく登場した骨相見家相占い師といった役割が、TRPGでどんなふうに活躍するかもぜひ楽しみにしていてほしい。
 
――  藤澤さんは、今後またリプレイのお仕事やシナリオ作成などがあればやってみたいですか?
藤澤  はい。でもほんとうはプレイヤーの方が好きなんですよね。あとがきにも書きましたが、リプレイは書くので、続きを誰か作って遊ばせて!
 
――  あと『GH13』で新しいことといえばiGameBookアプリのお話がありますね!
柘植  はい、2013年10月5日から『ゴーストハンター13ゲームノベル スペイン屋敷の恐怖』iGameBookで配信されています。アプリならではの利便性を活かしてより遊びやすくなっているので、ぜひそちらもチェックしてみてくださいね。

SNEニュース
 ゲームノベル『スペイン屋敷の恐怖』が、 iOSアプリとなって10月5日0時配信開始!

安田  2013年はこういった形でボードゲームを3つ出す予定なんだ。少し発売日がずれたけど『GH13TG』と『タルギ』はすでに出た。
 残りのひとつは、これもすばらしいカードゲーム
王宮のささやき(以下、王宮)を予定しているんだ。

++ 王宮のささやき(原題:Palastgefluster) ++
 2007年アドルング社から発売されたのは、とっても小さな箱のカードゲーム。


旧版の箱は、下の日本語版のカードよりも小さなサイズなんですよ!

 プレイヤーは、権謀術数うずまく王宮で王への忠誠を示し寵愛を得るために暗躍することになります。
 同じ役割の者が集まると悪い噂はまたたく間に町にひろがってしまうので、周囲をよく伺って、細心の注意をはらって動かねばなりません。


 デザイナーはミヒャエル・リーネック
 2007年のドイツゲーム賞を受賞した『大聖堂』が有名です。

安田  日本では紹介タイミングがずれてあんまり話題にならなかったんだけど、これも独特のプレイ感覚ですごくおもしろい。11月のゲームマーケットで発売予定なので期待していてほしい。
――  実はこちらも秋津さんがイラストを描いてくださったんですよね。
安田  そう、『王宮』のイラストはまた違う意味で注目してほしいね。こちらはカードも全部描き下ろしイラストになっているんだけど、ゲームに登場する役割が動物に似せた形になっていてね。どの役割がどんな動物になっているか、というのが興味深いしすごくセンスがいい。
――  もともと秋津さんは動物の絵に定評があるイラストレーターさんだそうで。『タルギ』の箱のラクダもめっちゃいい表情してましたしね。
安田  ちなみに『王宮』はアドルングという、小さなカードゲームをたくさん出しているメーカーの作品。遊びやすくて値段も手ごろな作品が毎年4〜5点出ているんだけど、そのうち1〜2点は絶対おもしろいのが入ってるので、見逃せないメーカーですよ。
――  こちらはどういった経緯で出すことになったんですか?
安田  もともと『王宮』はぼくの大好きなゲームのひとつだったんだけど、日本に留学していたドイツ人の学生さんから「いいメーカーがあるんだけど、日本語版は出さないんですか?」と聞かれてね。話をしているうちにそのメーカーがアドルングだと判明して紹介してもらうことになったんだ。
 で、アドルングなら最初は一番好きな『王宮のささやき』をぜひやりたい、と言ったら快諾してもらえた。
――  わお、向こうの人はおおらかですね。
安田  たぶん会社によるんだと思うけど、今回は出会った人たちにすごく恵まれたおかげだね。
柘植  皆さんすごくいい人ばかりでどの話もスムーズに進んだし、こちらが不慣れでもわからないことは親切に教えてくださったので。
安田  2013年もエッセンに行った時には新しい話をしてくる予定。
 こんなのどうですか、とユーザーさんからも教えていただけたら検討するので、ぜひご意見をいただければ嬉しい。
柘植 『王宮のささやき』も、まもなくゲーム紹介などの記事をHPに掲載予定なので、楽しみにしていてくださいね。Role&Roll vol.109(10月発売)にボスのゲームノベル版『王宮のささやき』が掲載されます。とてもおもしろいのでこちらもぜひご覧くださいね。
安田  今後もオリジナル・翻訳問わずいろんなゲームを作っていきたいと思っているので、みなさん応援よろしくお願いします。


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++ タルギ箱イラストクイズの答え ++
 答えはココ!



 ラクダに積まれた荷物の中に、旧版のタルギが入っているんです。



 facebookでアンディも「古いタルギがここに入ってる、すごい!」ってコメントしていますよ!