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ソードワールド2.0 ボードゲーム&サプリメント インタビュー

◆ さらに広がるソードワールド2.0の世界

 2016年夏、ソードワールドのボックス型ゲームとして
『ソードワールド2.0 カードアドベンチャー』が発売されました。近年のストーリーゲームの流れをくんだ、協力型ゲームです。
 書籍としては蛮族たちの生態を知ることができる
『バルバロスブック』が7月に、9月には新たな博物誌『ディルフラム博物誌』が出ました。これら2冊は、1冊ずつでもゲームの助けになりますが、組み合わせることでより奥深く蛮族世界での蛮族らしいゲームを楽しむことができます。
 どういう世界が広がったのか、デザイナー陣にインタビューを行いました。さらに新たな楽しみ方が増えたソードワールド2.0の世界をご覧ください。
 聞き手は石野力です。

2016年10月
記事作成 石野力


◆ 『ソードワールド2.0 カードアドベンチャー』
―― デザイナーである清松みゆき『ソードワールド2.0 カードアドベンチャー』について伺います。
清松 はい、よろしく。
―― さっそくですが、この作品はどういうゲームでしょう。
清松 SW2.0の世界で冒険者が何か冒険のネタをかぎつけて、首を突っ込んでそれを解決する。設定自体はRPGと同じですね。プレイ人数は3~5人の協力ゲームです。特徴を挙げると、シナリオがカードに記述されており、個人ごとにキャラクターデックがあり、判定には特殊なダイスを使用するということですかね。プレイヤーの目的はクライマックスカードを獲得することです。

―― 順にお聞きします。まず、シナリオがカードに記述されているとはどういうことでしょう。
清松 正確にはシナリオカードと言い、1枚ごとにプレイヤーがクリアすべき試練が書かれているんです。魔物との戦闘や噂話の聞き込み、アイテムの鑑定など、冒険中に起きる様々な出来事です。
―― 1シナリオ、何枚で構成されているのでしょうか。
清松 1つのシナリオは25枚のカードで構成されています。13枚の下段カード11段の上段カード、そして3枚のうちランダムに決定されるクライマックスカード1枚です。これをピラミッド状に組み上げます。上段カードとクライマックスカードを混ぜた12枚を、上から3,4,5枚となるようにランダムに並べ、下段カードを同様6,7枚と積みます。このシナリオピラミッドを冒険者たちは探索します。
 
―― カードを並べるガイドがあります。
清松 ガイドを見ていただければ分かると思いますが、下のカードが上のカードに被さっていますよね。下のカードをクリアしないと、上のカードにはアクセスできません。つまり、立ちふさがっている試練をクリアしないと先に進めないと。

―― 目的はクライマックスカードを獲得するということですが、すべてのカードを開けなくても、クライマックスカードさえ引ければよいのでしょうか。
清松 そうですが、クライマックスカード、いわゆるボスに挑戦するための条件を満たしてなくてはいけません。
―― 条件というと。
清松 カードにはタグというものがついていて、シナリオカードがどのような性質なのかを表します。『ゴブリン』であれば「魔物」と「蛮族」『隠された入り口』であれば「迷宮」と「野外」というように。そして、クライマックスカードには前提タグという形でいくつかのタグが指示されています。
 
―― クライマックスカード内に一列に書かれているものですね。
清松 プレイヤーたちは冒険中に通常のシナリオカードを獲得し、書かれているタグを獲得します。そしてクライマックスカードの前提条件を満たしているならば、ボスに挑戦ができます。
―― シナリオ最後の決戦になるわけですね。
清松 必要な前提条件はボスによって違いますし、ピラミッドの組まれ方も、どこにクライマックスカードが配置されたかも毎回変わるので、同じシナリオであっても何度も遊べるようになってます。
―― ピラミッドの最上部にクライマックスカードがあると、なかなか苦労しそうです。
清松 堀り進め方によってはたどり着く前に誰かが脱落することもあることもあるでしょう。逆に、3段目でクライマックスカードがオープンされると、まだ前提条件がそろっていないために挑戦できないことが多いはず。後から言いますが、あんまり早くオープンされると危なくなるというルールもあるので、どのタイミングでクライマックスカードがオープンされるか、ハラハラしてもらえると思います。
―― シナリオは何本入っているのでしょうか。
清松 チュートリアル的な1レベルシナリオから5レベルシナリオまで5本です。ランダムのクライマックスカード含め、1シナリオ当たり27枚なので計135枚です。
―― 1枚1枚、すべてイラストが入っているんですね。
清松 本当にイラストレーターの方々のおかげです。この作品で新しくイラストが付いた魔物もいますし、こういう雰囲気で冒険しているんだというのもしっかり表されています。
―― どのキャラクターも本当に雰囲気があります。並んでいるのを見ますと、リルドラケンは大きいですねえ。
清松 でしょ。ちなみに、レプラカーンの子もボックスタイプのゲームに出てくるのは初めてです。

―― キャラクターの話が出たところで、先ほど挙げられた特徴の1つ「個人ごとのキャラクターデッキ」について伺わせてください。
清松 まず、このゲームではキャラクターシートそのものは使いません。その代わりに、キャラクターデッキというものを使います。
―― というと。
清松 キャラクターが行える様々なこと、例えば戦闘や聞き込み、探索や鑑定に種族特徴まで全てをカード化しました。それと共にキャラクター基礎カードというどんな技能を持っているかを表したカードがあります。
―― キャラクターごとにかなりデッキの枚数が違いますね。
清松 基本的に前衛であるファイターやグラップラーのキャラクターは多めに、後衛のソーサラーやマギテックは少なめにしています。枚数の多い少ないは、そのままHPの量に直結してます。RPGを遊んだことがある方はイメージしやすいかと思います。
―― カードの枚数がそのままHPということは……
清松 デックが尽きたら冒険から脱落だ!(笑)
―― えっ!
清松 と言っても、最低でも山札が2回尽きるまではリシャッフルするので、すぐに脱落するということはないです。前衛の人は積極的に戦闘をしたり、ダメージを引き受けたりしてあげてください。後衛の人は戦闘の時に前に出ないことやカードを温存しておくことも重要だね。
―― 山札がHPということは。
清松 ダメージは山札のカードを直接削ります。前衛の人は積極的に前に出る勇敢さが、後衛の人は慎重なマネジメントが求められます。ちなみに、ターン開始時に必ず1枚はデックから引かなければならないので、何もせずに山札を温存ということはできません。クライマックスカードがオープンされると、以降はボスを倒すまで手番開始時の補充枚数が2枚になるので、一気にゲームが加速します。
―― キャラクター基礎カードが複数ありますが、どういうことでしょうか。
清松 キャラクターのレベルが上がるごとに新しい基礎カードを使用します。シナリオをクリアすると、技能が成長するのでそれに合わせた基礎カードを使用します。レベルが上がると判定の時に振れるダイスが増えたり、新たなキャラクターカードを獲得して山札枚数、つまりHPが増えたりします。

―― 判定方法についても教えてください。
清松 この6面ダイスを使います。普通のダイスを考えたときもありましたが、せっかくなので特殊ダイスを使って協力要素が強い判定方法を考えました。実は、振ってる感覚としては威力表に近いものがあります。
―― 詳しくお願いします。
清松 ダイスの面はこれだけあるんです。
 
清松 剣のマークが成功、達成値が剣の数だけたまります。カードのマークは「山札から1枚手札に加える」ことを意味してます。ドクロは「誰かがダメージを1点受ける」、星は「運命チットを手に入れる」です。
―― どのように協力要素が強いのでしょうか。
清松 判定にターンプレイヤーだけでなく、ほかのプレイヤーも参加できる点です。判定は基礎能力とカードに応じた個数だけ振るのですが、ダイスの出目を確定させずに時計回りに隣の人に渡せます。いい目は使う、悪い目は使わないということができるんですよ。
―― 渡されたダイスを隣の人が振るのでしょうか。
清松 はい。ただ、振るためには対応したキャラクターカードが必要です。回ってきたダイスをすべて振りなおす。先ほど同様に、いい目は確定して使用、悪い目はまた隣の人に回すと。これをプレイヤーが1周するまで続けて、協力して達成値をためることができます。
―― 全員で協力してシナリオカードに示された「13 戦闘」や「8 聞き込み」などの必要達成値をためていくと。
清松 さっきも言いましたが、前衛の人は積極的にカードを出したり、ドクロからのダメージを肩代わりしたりしてあげるといいでしょう。

清松 そして、重要なのは運命チットの使い方です。このチットを使うと、運命ダイスを振ったり、特殊なカードの取り方ができたりします。
―― 赤いダイスですね。
清松 これは運命をひっくり返せるような強力なダイスです。目はいずれも強力なものが並んでいます。未決ダイスとしては回せませんが、いざという時にはきっと道を切り開いてくれるでしょう。
―― この判定の魅力を教えてください。
清松 ダイス目で一喜一憂できて、みんなで他の人の出目を覗き込んで楽しめる。出目が悪くても、ゴメンって言って他の人に託すことができる。パーティで立ち向かうならではの新しい協力判定であることです。

―― ゲームの舞台はどこでしょう。
清松 ラクシアという世界のテラスティア大陸。さらに言えば、ザルツ地方の自由都市同盟という場所です。ちなみに、暗躍している<教団>というのがあります。
―― それは真相にも関わってきそうですね。
清松 どういう教団なのかはぜひ実際に遊んでみてください。ルールブックとは別に、世界観やフレーバーをまとめたブックも1冊入っています。それを読んでいただけると、より深くこのゲームを楽しんでいただけるのではないかと思いますね。

―― オプションルールは「ハードモード」「ドッペルゲンガー」などが追加されるとか。
清松 まずは「ハードモード」ですが、これはクライマックス挑戦時のタグの並び順が一致している必要があります。通常であれば並び順を気にせず、タグさえそろっていれば挑戦ができます。しかし、このモードではクライマックスカードに書かれている通りの順番にタグを揃えなければなりません。
―― それは大変です。
清松 とにかく1人にタグを集めてクリアするというテクニックが使いにくくなります。クライマックスカード出て、タグの並び順を確認してから、最もボスに近い人のもとにカードを操作して何とかタグを集めてください。ハードモードだと特にボス出現後のカード消費が激しくなるので、緊迫感のあるプレイができるようになると思います。
―― 一通りゲームに慣れたら取り入れてみてほしいですね。
清松 テストプレイの時は、ギリギリでのクリアか惜しいところでの失敗が目立ちました。運命チットの使い方がかなり重要になるでしょう。
―― ドッペルゲンガーについてもお願いします。
清松 まずその前にパーソナルゴール「個人目標」というのがゲームに導入されます。キャラクターごとに非公開の個人目標をシナリオ開始時に渡されます。「シナリオ終了時、最も多く『蛮族』タグを所持」だとか「シナリオ終了時、最も多く運命チットを所持」だとかです。クリアするとちょっとしたボーナスがもらえます。
―― このカードですね。
 
清松 で、この中にドッペルゲンガーというヤツが入ってくるかもしれません。これは無関係なタグを最も集めることが目的だったり、何人かを脱落させた状態でシナリオクリアすることが目的だったりします。いわゆる正体隠匿要素ですね。ちなみに、ドッペルゲンガーがいないという場合もありますので、疑心暗鬼を楽しむことができるでしょう。こちらもゲームに慣れてきたら追加してみてください。
―― 急に相談なしに、「このドクロのダメージくらって」と言われるかもしれないんですね。
清松 「なんでや!」とか言いながらどういうことか推理してみてください。(笑)

―― 最後に一言お願いします。
清松 新しいソードワールド世界を使用したボックス型ゲームとして、初心者から上級者まで誰でも遊べ、同じシナリオでも遊ぶたびに結末が変わるゲームです。近年の、カードを使用する協力ゲームの一つとしても遊んでもらえるんではないかと思います。よくRPGを遊ぶ人もそうじゃない人もこういうソードワールドの楽しみ方もあるんだ! と思っていただければ幸いです。


◆ 『バルバロスブック』
―― それでは北沢慶・田中公侍の両名を加えて『バルバロスブック』について伺います。
北沢 この本はルールブック5冊目という立ち位置です。
田中 『ルールブックEX』を4冊目と言うならそうですね。
北沢 まぁ、そういう意味で本の作りはこれまでのルールブックと同じです。
清松 ただもちろん必須ではなくて、『ルールブックI改訂版』と『バルバロスブック』だけでも遊べます
北沢 ですね。そういう意味ではちょっとした裏ルールブックと言ってもいいかもしれません(笑)
―― この本があると、何ができるのでしょう。
北沢 これまでは人族の冒険者として、悪いことする蛮族を倒したり名声やお金を稼いだりとソードワールドの基本コンセプトであるオーソドックスなゲームを提供してきました。しかしこの本では基本的に人族のデータは載っていません。これまでやられ役だった蛮族としてプレイするためのデータや、蛮族の社会がどんな価値観や行動原理で構成されているかの解説が中心です。あなたも蛮族になれるのです!
田中 この本を読めば蛮族に対する理解と愛が深まること間違いなし!
清松 いろんなサプリで載せられていた蛮族となるためのデータをまとめ、さらに4種類、新しい蛮族もあわせて12種類のプレイヤーキャラ用データがあります。再録データでもサンプルキャラクターを新しく収録したりイラストを描いてもらったり。蛮族世界での蛮族らしい経歴表も追加しています。
北沢 俺たちゃワルだぜ! という蛮族らしい蛮族プレイができます。
―― 蛮族として成り上がるということが目標になるのでしょうか。
北沢 基本的にはそうですが、冒険は人族を襲うというわけではないんです。蛮族なんでシンプルに考えると、人族を襲うってのがすぐ思いつくかもしれませんけど、それは実は面白くない。例えば、平和な農村に蛮族となって襲い掛かるっていうシナリオ、単発では何とかなるかもしれないけど、繰り返すとつまらないんですね。
田中 ゲーム構造的に言うと、そもそも自分より強力な敵を倒すというのがゲームなんです。達成感を得るためですね。自分より弱いやつをいじめても楽しくないわけですよ。
清松 文字通り赤子の手をひねるようなことになって、ゲームとして成立しないし、構造としても楽しくない。
北沢 そこで、蛮族たちの強さ至上主義、個人主義の実力社会であるところに目を付けました。彼らは強者が弱者を力ずくで従わせてます。ということは上のやつを倒せば成り上がれるんです。その結果、蛮族社会は群雄割拠。PCたちには自分より強い蛮族を倒して成り上がっていってもらいたいと思います。
田中 ちょっと面白いのは、構造として蛮族PCとしてキャラを作ると周りには自分より強い奴らばっかりなんですよ。(笑)
清松 敵としてのデータもほぼ全員が持ってるしね。始めはしゃがんで周りのご機嫌伺いや、うまく立ち回るゲームをするんじゃないかな。(笑)
北沢 魔剣持ちドレイクでも初期作成だとボガードにやられたり、グレムリンの魔法に抵抗できなかったり。(笑)

―― シナリオのバリエーションはどんなものが考えられますか。
田中 蛮族PCは基本的に依頼を求めるようにはなっていません。なので、所属する組織や保護してくれてる蛮族の命令を受けて冒険に出るタイプが多いですね。生き抜くためには必死です。
北沢 敵が攻めてくるとか、自分が強くなるために修行に行こうとか、貴重な品物をアイツから奪うぞとか、魔剣の迷宮に行こうとかも考えられますね。
清松 蛮族にとっても、魔剣の迷宮に潜ることはおかしいことではないんでね。
田中 あと、報酬というか通貨はガメルを使っています。本来は蛮族社会なんで物々交換がスジですが、それをPCデータでやるとするとものすごい大変なことになってしまうんで、ゲーム的なことも考えてガメルが流通してることになってます。
北沢 なのでコラムでどうやってガメルが生み出されたのかというのがね。丸々1ページのコラムなってまして。
清松 設定自体は前からあったんですけど、どこで載せようといってるうちにここまで来てしまって。ちょうど蛮族社会でガメルが流通している理由付けとして紹介しないわけにはいかないだろうと。
田中 特殊神聖魔法のネタもちゃんと考えているんですけど……
清松 聞いたけど「ちょっと待ってそれ悪用されるから!」って言わざるを得なかった。錬金術じゃんコレってなっちゃって(笑)
北沢 将来的には形にしようと思っているのでもうちょっと待っててください!

―― そして、魔物の生態と社会についての第2部、すごいボリュームです。
清松 間違いなく1番のウリです。43種18カテゴリー。200ページを超えてます。
北沢 はじめ1魔物ごとにページ取ろうとしたら、3分冊かな? ってぐらいの試算が出てきて。カテゴリーごとに分けることにはなったんですけど、43種族がちゃんと出ています。そいつらのシーンとか社会とか日常とかいろんなものを載せています。
田中 モンスター・コレクションを意識したのはありますね。エピソード→解説の順で、必ずイラストを入れて、と。サンプルキャラクターにも全部イラストついてますし、それだけ見てもものすごい豪華です。
清松 これらの蛮族生態は、担当者が好き放題書いてるんです。読んで「えっ、そうなん!」って僕が驚くという。
北沢 全体の統一をしていたんですけど、書き手のこだわりが強すぎて「こうなりませんかね」「なりませんね」ってやりとりをどれだけしたことやら。(笑)
田中 好き勝手書きました! 我々が思う蛮族はこうである、ってのが書いた人間の数だけ出ているというか、多様性のある記事になったと思います。ロールプレイのお助けとか、冒険に蛮族出すときの方針とか、シナリオソースにしてくれると嬉しいです。
北沢 この本で初めてイラスト化された魔物もいて、やっぱりビジュアルとしてイメージの固定化ができたのは大きいかなと思います。グレムリンがかわいい見た目をしているとかね。
田中 いやーグレムリンってかわいかったんですね。確かに解説には書いてますけど、時々忘れちゃうんですよ。

―― 後半はシナリオとデータになっています。
北沢 最初でも言った、「蛮族対人族」はやめようという話とか、冒険者の宿の話とかも載せてます。シナリオは蛮族社会での冒険ってこんなものだということを知るためにも一度遊んでいただければと思います。
清松 蛮族社会での蛮族とはこういうものなんだということを理解してもらえるかと。データの方では、新しい技能がね。
田中 いやーまさか17種類目の技能ですよ。3年前の自分にまた新しい技能作るぞって教えてやりたい。きっと信じないでしょう(笑)。
北沢 ドレイクとバジリスクっていう変身する種族、しかもこいつら部位増えるぞどうすんねんってことになって。
―― 新しい技能、「フィジカルマスター」ですね。
田中 フィジカルマスターというのは変身後の自分をうまく扱うための技能です。レベルを上げることで魔装っていうのを一つずつ覚えていきます。ライダー技能やバード技能みたいに。魔装を得ることにより変身後のステータスが上がったり能力が増えたりします。
清松 ほとんどの魔装は、変身後しか使いません。なくても変身して戦えますが、基礎ステータスのみのそこらの村人と変わらないってことになっちゃう。
北沢 ちなみにメイン技能とフィジカルマスター技能を両方上げないと、変身前と後で強さが全然違うことになるわけです。フィジカルマスターのみ伸ばすと、変身前は平目で振るだけのキャラクターになっちゃうかも。
―― 1ラウンド目、変身します!
田中 ちょっと待てーい!ってなるわけですよ(笑)。
清松 でもそうしないと何もできない(笑)。一応、フィジカルマスター先行だと変身して奥の手を出したぞという感じにはなると思う。そうは言っても別に必須ってわけじゃない。変身しないぞ方針で遊んでみるのもありです。
北沢 変身したくない人のためにも、人型の時にも特典が付くのもありまして。ドレイクだと魔剣のランクが上がるものや、バジリスクだと邪眼の達成値が上がるものも用意しています。B技能なんで取りやすくはなってるかなと。
田中 この技能を追加したことで、ドレイクナイトとバジリスクっていうキャラのバリエーションがものすごく出たと思います。
―― 魔物データも多く掲載されています。
清松 こいつらは第2部の蛮族の生態部分で出た名前付き魔物が主です。全部ではないですけど結構な数の魔物を載せました。
北沢 名のある魔物は世界に1匹しかいません。名前付きってことで通常の魔物よりはちょっと強くなっています。シナリオフックなどに生かしてください。
田中 一番強いのは…… リャナンシーのレベル17? 13レベルぐらいのパーティなら立ち向かえるかな。弱いのはレベル3からいますので、幅広いレベル帯の名のある魔物を出せました。
清松 レベルは7から13ぐらいの層が厚いかな。キャンペーンなどで一番話を大きく動かしやすいのがそのレベル帯だと思うので。
田中 3レベルのこの名前付きグレムリン、よくここまで生き残りましたよねえ。普通は強い蛮族にズバっと倒されちゃいますからね。
北沢 きっと世渡りがうまかったんだよ!

―― 最後に一言ずつお願いします。
清松 蛮族がたっぷり詰まったこのルールブック、たまには違う視点からの冒険も面白いはず。特に蛮族の生態部分は力が入っていますので、読むだけでもソードワールドの世界を理解する一助になると思います。俺たちゃバルバロス!
北沢 ヒャッハーな下剋上プレイを楽しんでください!
田中 勝手気ままな良き蛮族ライフを!


◆ 『ディルフラム博物誌』
―― さて、ここからは秋田みやびを迎えて『ディルフラム博物誌』について伺います。
秋田 よろしくです。
―― 今年の博物誌は9月なのですね。
清松 従来は8月に大型サプリ、年末に博物誌というスケジュールでした。でも単純にデータの積み上げを延々していくことによる、プレイヤーの負担増が懸念されていて。
北沢 なので今回は巨大なデータブロックをドンと出すのではなく、『バルバロスブック』と組み合わせて、ワールドサポートを厚めにする形をとりました。ざっくり言うと、『バルバロスブック』で新種族と蛮族の生態を紹介、『ディルフラム博物誌』でディルフラムの紹介です。
秋田 単なるデータ増加だけでなく、周りの世界に目を向けた、いわゆる裏側を分厚くするというイメージですね。
北沢 これまでのあわせるとちょっと重いもんね…… 物理的に(笑)
田中 最近キャリーケースに入れて運んでますよ(笑)
清松 僕も今日7冊も運んできて、どんだけあるんやーって(笑)
―― 『バルバロスブック』が7月、『ディルフラム博物誌』が9月刊行です。
北沢 大型アップデートの代わりに、今年は世界観の方を手厚くサポートしようと『バルバロスブック』と『ディルフラム博物誌』を間を置かず刊行しました。
清松 これまでのルールブック改訂版とその次のサプリメントはお互いに被る内容が結構入っていたんですね。これまでのルールブック持っておられる方はサプリだけ買い足していただければ改訂版を買わなくても済むように。
秋田 でも今回はあまり内容的に被りがないんです。扱っているテーマはどちらも蛮族社会なんですけど。
田中 どっかの誰かが(笑)新技能を追加するって言いだしたんで、そのテストにも1か月は欲しいということになりまして。
清松 ちょっと余裕を持たせた分、これまで以上に2冊の密接性の確保と相互補完ができたと思います。

―― それでは内容に移らせていただきます。ディルフラムというのはどこにあるのでしょうか。
秋田 テラスティア大陸の南側で、いまだに蛮族が支配している領域です。
北沢 フェイダン地方ノルダール地方の間ですね。地図で見たら結構広いんです。
田中 あれをしっかり治めているんだからすごいですよねえ。
―― 『ディルフラム博物誌』の内容を教えてください。
秋田 ディルフラムを蛮族あるいは人族で冒険するための手引きです。基本的に従来の博物誌と同じように特産品流派情勢についても書いています。
―― 蛮族領の特産品!
田中 穢れを持つ者専用アイテムとかありますね。
秋田 蛮族用の正体隠匿系アイテムもありますし、人族に化ける人族帽子なんてのまであるんですよ。あ、もちろん人族用の特産品もあります。
―― 流派はどんなものがありますか。
清松 蛮族専用の流派だけじゃなく、人族専用流派、蛮族人族共通流派があります。
北沢 蛮族も人族も嫌いなんでどっちも殺す流派というのもあってですね。
秋田 誰がとるんだ―って話ですよ。
清松 人族と蛮族両方が住んでいるっていう部分に焦点を当てて考えていくうちにこういう流派ができあがりましたね。
田中 蛮族流派にはバルフォール式忍術道場という、ニンジャになるための流派もあります(笑)
清松 あったあった(笑)
北沢 いやぁ、誰が作ったんでしょうねえ(笑)

―― ディルフラムならではの設定を教えてください。
清松 『バルバロスブック』の時にも話しましたが、まず冒険者の宿がありません。それだけじゃなく、ライダーギルドもないんですね。
秋田 騎獣をレンタルするという概念とシステムがないんです。それに対応する解答も用意してみました。トナカイです!
―― トナカイ!?
秋田 ディルフラムはものすごく南にあるんで寒いんですよ。それこそトナカイがいるぐらいに。
北沢 赤いローブを着て乗るのだ!
田中 空は飛ばないですけどね(笑)
清松 でもライダーギルドは無いんで、やっぱり手に入れるときは購入してください。
秋田 あとシロクマですよ、シロクマ。シロクマはとある流派独自の騎獣になるのでその流派がレンタルしてくれます。
北沢 あのシロクマは強いですよ! 上級のシロクマもいますので気になった人は要チェック!

―― 第2部にはどういうことが書かれていますか。
秋田 主に歴史と地理です。ディルフラム地方の地図をはじめとして、かなり詳しく書かれています。
田中 まずディルフラムがどういう歴史をたどってきたのかが語られます。現在のディルフラムとしては魔動機文明時代以降、ぽつぽつと記録が残っていますね。
北沢 そして〈大破局〉です。蛮族の視点から何が起きているのかをなぞっています。ディルフラム地下のフォルミカの広大な巣とは何なのか、誰が侵攻を開始したのかというSW2.0としても重要な話を書いています。その後の蛮族たちの覇権争い、どのように今のディルフラムが建国されたのかが語られます。
―― ディルフラム各地の歴史と地理も詳しいですね。
秋田 5つの地域、東西南北中央について書いています。どんな気候なのか、どんな領主がいるのか、他の地方との関係性、名所、そして著名なNPCなど、国が広いだけあって地方ごとに特色があります。自分たちがどこにいるかによってディルフラム国内でも多様な冒険に出られるようになっています。
北沢 中央部はカーツ・ディルフラムが治め、玉座もある中心地域。わりと豊かな暮らしを送っており、人族は蛮族の財産扱いが当たり前です。食料というわけではなく、どれだけ多くの有能な人族を召し抱えているかがステータスです。
清松 西部は年輪国家アイヤールと接している戦乱中の最前線です。なんか10年ぐらい前からヒャッハーな人族にかなりボコボコにされて、まぁ全部マイザールが悪い(笑) と、これまでの博物誌以上に地域ごとの特色が出ています。
北沢 南部は川人節がさく裂! 突然〈深海帝国〉というのが出てきて読んでて唖然としました(笑)。いったい何なんやこれは!
田中 しかも、深いところには一切触れずに「〈深海帝国〉の侵略と戦っている」で終わってしまってもう何が何やら(笑)
秋田 きっと今後のための大きな布石だと信じています!(笑)
清松 各地域が特色を出しつつ人族への侵攻だとか、十三魔将の陰謀だとかを抱え込んでいます。
―― あの十三魔将。
秋田 実はこの『ディルフラム博物誌』で新たな十三魔将が明らかになりました。ディルフラム地下に住むフォルミカたちの母、フォルミカグランドマザーというやつです。筆頭のカーツ・ディルフラムに次ぐ十三魔将の第二席で、地下の大帝国を統治しています。まだ設定だけでデータは載っていませんが、数百年生きている通常のフォルミカを超えた存在です。
清松 ほかにもダイヤモンドバジリスクというのが新たな十三魔将ですね。これは第四部にデータがあります。
北沢 固有種や名前のある魔物が載せられた四部の話になりますが、4人で1枠の十三魔将もいます。これは『バルバロス・ロワイヤル!』というリプレイで、プレイヤーキャラ4人が1人の十三魔将を倒したんです。で、そのまま成り上がって十三魔将を名乗りました。4人で1枠なので、四合一将と呼ばれています。
清松 多分公式から新しく出すのはここぐらいまでじゃないですかね。プレイヤーの方が自分たちで十三魔将を設定しているのもあるでしょうし。誰かが殺されて下剋上ってのはあるかもしれませんけど。
秋田 固有種も豊富ですよ。おっきいリスとか(笑)
田中 あのデカすぎるやつ!
清松 あと、十三魔将ではないネームドのうち2体は「これどうやって倒すねんデータ」を作りました(笑)
田中 あーー! いたなぁ! 『サーペント』のアレにちょっと関係があるやつ!
清松 超越者でも手こずるかもしれない、歯ごたえのある魔物になったと思います。
北沢 正直、超越者パーティになると十三魔将なんて目じゃないんですよ。なのでそういう超越用のデータも必要だろうと。
秋田 使いたい人は使えばいいよ、ってデータになってますもんね、これもう。
清松 対処間違うと世界が滅ぶって書いてあるんでね!(笑)
田中 実際こんなのが暴れまわったら、世界滅びますよ!

―― 第三部はキャンペーンと超越者についてですね。
秋田 ここは少し『バルバロスブック』と方向性が同じになっていますが、どういう国なのかを知ってもらうためにも簡単なキャンペーンを入れています。
北沢 いきなり蛮族の国で暴れろ! って言われても大半の方は「?」だと思うので、一例として収録しています。これを遊んでもらえたら基本的な国内の情勢はつかめてくると思います。
清松 成り上がるって言ってもギスギスしたシナリオばっかりじゃ息が詰まってしまう。こういう導入はどうですか、こういう展開もありますよと一種のサジェスチョンですね。あ、もちろん蛮族らしいゲスな奴も出てきます。やってもいいよって。
北沢 蛮族キャンペーンで注意するべきなのは、GMとPLの信頼関係を損なわないこと。蛮族なんだから裏切るのや騙すのもアリですけど、それを毎回のようにやっているとゲームになりません。そういうことにならないように注意しようというキャンペーン方針とか、こういう地下組織を使うと情報を出しやすいぞみたいなコラムを随時挟んだキャンペーンガイドにもなっています。
―― 蛮族も超越者になれるそうですね。
田中 はい。これも重要です。人族が超越者になれるようになったのなら、蛮族もなれるべきだろうと。いつ収録するかと言うと、もうこのタイミングしかなかったんです。
清松 そもそも、超越者とは神への階梯を上りはじめたものを指すんです。16レベル以降の冒険者たちがこれに当たります。ですが蛮族が神を目指すっていうのはちょっと違うなと。そもそも力こそすべて、己が強さをどんどん極めるんじゃないかと。
田中 なので、16レベルになった蛮族キャラには問いかけることにしたんです。神を目指すのなら超越者、強さを目指すのなら求道者という道です。どちらかにしかなれません。超越者も求道者も同じぐらい強いです。
秋田 バジリスクに関しては邪眼の色、瞳石によって様々な効果が追加されます。紫色の瞳とかなかなか楽しいですよ。

―― 秋田さんから『ディルフラム博物誌』について一言お願いします。
秋田 これまでとは違う、バルバロスならではの一風変わった冒険ができると思います。リプレイでおなじみのキャラクターはもちろん、新たな魔将や魔物。蛮族として、人族としてぶ厚い冒険を楽しんでください! 『バルバロスブック』と合わせて読んでいただけるとより奥深い世界を楽しめると思います。よろしくお願いします!