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2.高島屋に強力なライバル、現る?! |
梅雨も明けて、夏がはじまろうというころ、氷水の美味しい季節です。
クーラーなど普及していないこの時代、浴衣に団扇姿の娘さんたちが鴨川端で夕涼み。
なんとも心ときめく光景ではありませんか。
そういえば、日出子さん、あなたの勤める高島屋では、今年も夏に向けて「お化け屋敷」の出し物を企画してるんじゃないですか。 |
日出子:あ、そうそう。夏の風物詩といえば、やっぱり「お化け屋敷」! 揚羽ちゃんとも、その取材を通して知り合ったんだ。
そんな日出子さんが今夏の出し物に頭を悩ませながら市電に乗っていると、若い女学生たちの話がもれ聞こえてきます。 |
女学生:なあなあ、知ってる? 京都の北のほうにすごいお化け屋敷ができたんやて。
日出子:なにっ? そんなところにできたら、こっちの客を取られるじゃないか(笑)!
女学生:聞いた話やけど、ものすご怖いらしいえ。
日出子:むうう、気になる……かといって、この子たちに話を聞くのも業腹だな。
……なぜだろう(笑)?
妙なところでキャリア・ウーマンのプライドが頭をもたげてしまった日出子さん、女学生たちには話を聞かずに、家に帰ってから新聞・雑誌を調べます。けれど、これといった情報は見つかりません。 |
外野の銀次:知る人ぞ知るお化け屋敷――ひょっとしたら、ほんまもんの幽霊屋敷やないですか。
日出子:う〜ん、やっぱりあの子たちに聞いておくべきだったか! しようがない。この手のことなら私立探偵が詳しいだろうから、聞きに行ってみよう。というわけで、保助さん、洛北あたりにすんごく怖いお化け屋敷ができたんだって。
保助:おうおう、それは興味がありますな。では、さっそく浮浪者のおじさんに聞いてみましょう。
日出子:なんで浮浪者(笑)?
いやいや、案外それが正解。ゴミを拾い集めていた浮浪者のおじさんは、汚いビラを見せてくれます。それには
「幽霊屋敷ができました。みなさん、お誘いあわせの上お越しください」
と簡単に記されています。場所は京都の北東、出町柳からさらに東に行ったあたりですね。 |
保助:いつもすみませんなあ、今度また煙草でも持ってきますから、と浮浪者さんにはお礼を言って、カクカクシカジカだそうですよ、日出子さん。
日出子:ふ〜ん、そんなとこにそんなのができてたんだ。ちっとも知らなかったよ。同じならもっと大々的に宣伝すればいいのに(百貨店の広報担当らしい発言)。まあいいや、仕事の参考にもなるし、行って写真を撮ってこよう。
銀次:おれ、「映像記録装置」を持ってますよ。
日出子:そうか、銀次に頼めば人形が動くとこを撮ってもらえるんだ。じゃあ、サークルの溜まり場(四条京極にある喫茶店『ドールズ』)に行ってみよう。平日の昼間だけど、集まってるかな?
サルバトーレ:ハイ、みなさん暇そうですカラ。
銀次:おまえが言うな、似非神父(笑)。
サルバトーレ:それはそうと、銀次さん、この時代そんな大仰なもの(映像記録装置)使わなくても、ふつうに8ミリありマスよ?
銀次:なにゆうてんねん、これがええんや! いまのビデオとほぼ同じ性能やから、カラーやし音声も撮れる。すごいんやでっ!(力説)
外野の揚羽:持ちなれない大金を持ったから、使いたくてしょうがないんだ(笑)――わたしはこの場にいませんけど。
日出子:あっ、揚羽ちゃんはわたしが一緒でないと外に出られないんだった。かわいそうだから「超常現象研究所」まで呼びにいくよ。
銀次:すると、電極ずりずり引きずりながら「待って〜」とか(笑)?
揚羽:いいえ、所長さんは日出子さんから話を聞くと「よし行ってこい」って送りだしてくれますよ。わたしが行くと、なにかしら超常現象が起こるし。
日出子:いや、今日のは本物じゃないんだけど、おもしろそうだから連れてってあげるよ。
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