6.情報収集 |
プレイヤーたちは(お金にはならないけれど)、少年・一郎太の頼みを受けて、行方不明のお夢のために情報収集に走ります。
現在わかっている情報をまとめておくと―― |
・お化け屋敷「怨霊の館」の出し物自体に怪しいものはない。ただし、最後の「古井戸」には強烈な妖気が漂う。
・最後まで通り抜けた者は「怨霊の館 勇者の証」のお札をもらう。これには、なんらかの魔力がかかっているらしい。
・行方不明になった一郎太の姉「お夢」と幼馴染み「徳助」も、このお札をもらっている。
・お夢と徳助のそのほかの共通点は――
*お札をもらったあと、沈みこんでいた。
*その後、日暮れにちょっと出てくると言ったきり、もどってこない(お夢は2日前、徳助は一週間前)。
*ふたりとも歳のころ14,5歳で、聡明、器量よしと評判だった。 |
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【五領神社にて】 |
駐在さんによると「怨霊の館」のある敷地は現在、五領神社の管轄だそうです。 |
保助:お化け屋敷の近くにあった神社のことですな。井戸に怪しい気配があったのはたしかですし、行方不明事件と関係あるかどうかはさておき、あれを放置するのは危険すぎますのう。
サルバトーレ:では、さっそく五領神社にて、"たのもう、神主さん"!
サルバトーレの呼びかけに、温厚そうな神主さんが顔を出します。あの「怨霊の館」は1ヶ月ほど前、「大平了介」と名乗る男爵が、夏の間の納涼イベントということで、話をもちかけてきたそうです。上がりの一部を上納するということで話がまとまったものの、子どもには刺激がきつすぎると苦情が出てきて、神主さんもちょっと困っているようです。 |
日出子:じゃあ、子どもがいなくなった事件については?
神主:なんや二人ほど行方不明が出たとかで、聞き込みに来たお巡りさんがあのお化け屋敷も調べていったけど、とくに怪しいものは見つからんかったそうや。わしも開業前に一度、見せてもろたけど、なんも気づかんかったなあ。
揚羽:まあ、直接、結びつく要素はいまのところありませんしね。
日出子:大平男爵という名前にわたしたちは聞き覚えがないんですけれど、神主さんは直接、男爵とお会いになったんですよね?
神主:最初に1回だけな。その後は、週に一度、仙治とかいう、えらい顔色の悪い二十歳くらいの男が上がりを届けにくるだけや。
揚羽:顔色の悪い男? ひょっとして、あのお化け屋敷の井戸のところにいた人かな?
そのとおり、人相風体を聞くと、どうやら同一人物のようです。
プレイヤーたちはとりあえず大平男爵の住所を教えてもらい、神社を辞去します。 |
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【鬼伝説】 |
サルバトーレ:やっぱり、怪しいのはあの五領神社の神主さんデスね。
保助:坊主憎けりゃ袈裟まで憎いと言いますからなあ。
日出子:それ、ちがうし……
銀次:そもそも坊主やないし(笑)。
「怨霊の館」は怪しさ爆発なのですが、行方不明事件とは結びつかず、あれこれ憶測しながら帰途につくと―― |
揚羽:なんだか、村の人がわたしたちを指さして「鬼」とか「人攫い」とか言ってる気がしませんか。
日出子:それってひょっとして……
サルバトーレ:Oh! ワタシが鬼だと思われてマスか?! が〜ん!
いくら文明開化したとはいえ、異人のサルバトーレがいっしょでは、村人は怖れて近寄ってきません。こっそり指さし、ひそひそ話しあってばかりです。
ここは多少とも顔が売れている(かもしれない)芸人の銀次と、一見才女な日出子さんの二人で聞き込みすることにしました。 |
村のおばさん:あら、銀次さんやないの? どないしはったん、そんな恐ろしげなもん連れて。
銀次:恐ろしげなもんって、アレ、おれらの友だちっすよ。
日出子:ええ、身元のちゃんとした神父さんなんです。おツムはちょっと弱いけど(笑)。けど、このあたりではよう石投げられるゆうて困ってるんですよ。
おばさん:そら、しゃあないわ。この辺は昔から「鬼伝説」があってな、若い男女がよう神隠しにおうてるんや。そこへもってきて、あのお化け屋敷に子どもの行方不明やろ。みんな、ちょっと気ィ立ってるんや。
銀次:鬼伝説?
日出子:う〜ん、臭うね(笑)……おばさん、ぜひその話を詳しく聞かせてください。
江戸時代、了海という関東訛りの坊さんがやってきて、いま怨霊の館のあるあたりに「洛北大中寺」という小さなお寺を開いたそうな。
その後、村の若者に行方不明者が続出したので、了海は「鬼」だと噂され、ついに村人に追放されたか、殺されたかしたと言います。ただし、了海のお墓は見つかっていません。また、じっさいに了海のしわざだったのか、濡れ衣だったのかもあきらかではありません。 |
銀次:ようあるっちゃあ、ようある話やけど、気味は悪いですね。濡れ衣を着せられた了海さんの怨念が子どもを攫ってるとか。
日出子:だけど、そんな昔の恨みをいまごろ?
さらに、明治初期、空き地になっていた洛北大中寺跡に、さる大阪の商人が若い妾を住まわせたそうです。しかし、その娘もある日「鬼を見た」といって井戸に飛びこみ、狂死してしまいました。そのさい、「仙治」という14、5歳の若者が行方不明になっています。以後、この土地は市の持ち物となり、現在は「五領神社」の管轄になっている、といういきさつです。 |
日出子:えっ、いま、仙治っておっしゃいました?
揚羽:たしか、お化け屋敷を作った大平男爵の下男みたいな人も仙治って名前だったよね?
保助:あの男は二十歳そこそこでしたから、明治初期に14、5歳ではぜんぜん年齢があいませんの。
銀次:あきらかに怪しいやないか。
「勇者の証」のお札をもらったのは子どもでは行方不明になった二人だけで、あとはごついおじさんが二、三人。おじさんたちはその後、なにごともなく過ごしています。お札は揚羽ちゃんたちのもらったものと同じですが、いまでは魔力は薄らいでいるようです。
さらに、銀次は資料館で「了海の開いた洛北大中寺」について資料検索に成功します。それによれば、大中寺というお寺は日本のあちこちに散見されるようです。しかも、大なり小なり「鬼伝説」と結びついており、住職の名前もほとんど「了戒」とか「了会」とか「了」の字がついています。 |
揚羽:大平男爵の名前も「了介」……
日出子:あ、ほんとだ!
サルバトーレ:鬼伝説と大中寺、「了」のつく人物、年齢不詳の仙治、それに古井戸。なんだか、ちょっとずつ繋がってきた気がしますジョ。
保助:あとは、大平了介男爵に直撃インタビューですかのう?
揚羽:このお札も気になるから、研究所で調べてもらおう。
サルバトーレ:う〜ん、さっきから、なんかモヤモヤしたものがここにあるんデスが――
自分の胸を指して、身もだえする異国人。
そうなんだよ、サルバトーレ。怨霊の館の最後に、寂れた廃寺で坊主と腐った少年の出し物があったでしょ。じつは、あの廃寺には「大平大中寺」と書かれていたんだけど覚えてるかなあ……ちょっと知力で判定してみて。 |
サルバトーレ:ロールロールっと――ダメです。ワタシの頭ではなにも思いだせまセン。
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