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8.六道珍皇寺 |
さて、六道珍皇寺のある京都の東、鳥辺野は古くから葬送の地です。その門前は「六道の辻」と呼ばれ、あの世とこの世の境、冥界への入り口にあたる場所と言われています。
さらに、平安時代、小野篁がこのお寺にある井戸から冥府に通っていたという伝説もあります。
そのような曰くつきの六道珍皇寺に一行がたどりつきますと、早朝にもかかわらず、逼迫した事態を感じとったか、住職さんが快く迎えてくれます。 |
サルバトーレ:Oh、お坊さま、井戸と井戸をテレポートできるお札をくだサイな。
これこれ、そんな貴重なもの、そう簡単に渡すわけにはまいりませぬな、異人さん(笑)。
一行から詳しい事情を聞いたお坊さまは、ふと顔を上げます。 |
お坊さま:なるほど、事情はわかりました。ところで、みなさまは「青頭巾」というのはご存じありませぬか?
銀次:いや、とんと。「赤頭巾」なら知り申しておりますが(笑)。
ボケる銀次のとなりで、サルバトーレがぴしゃりと自分のおデコを叩きます。 |
サルバトーレ:Oh、これはうっかり! 「怨霊の館」で坊主と少年の出し物を見たときに、ぴんと来るべきデシたっ! 青頭巾といえば『雨月物語』、少年愛に狂った坊主のお話デスね。
知ってるのかよ? ほんとに変なイタリア人だ(笑)。
もちろん、サルバトーレの推察が正解。なんでもいまの栃木県あたりに、かつて「大平大中寺」という寺があり、そこの僧が弟子の少年をいたく可愛がっていたそうな。しかし、その少年が歳若くして死んでしまうと、僧は少年を愛するあまり、妄執にとらわれ、その骸と添い寝をつづけていたそうです。 |
保助:その僧がこの世ならぬ者と化して地上に甦り、いまも少年を生き返らせようと企んでおるのでしょうか。
日出子:それがつまり了海であり、またの名を大平了介男爵……?
揚羽:あの井戸を異界への入り口にして、美貌の少年少女を連れこんで?
銀次:死んだ少年に生命を吹き込もうと?
お坊さま:そういう可能性もございますな。
保助:となると、ますます、かどわかされた二人のお子の生命が危険ですぞ。
サルバトーレ:でも、お札をもってる揚羽さんとワタシはともかく、ほかの方々はあの井戸を通れませんジョ?
頭を抱える一行に、お坊さまはそういう事情ならば、と貴重な「小野篁 護符」を渡してくださいます。これがあれば「怨霊の館」の井戸を通って異界へと向かうことができるかもしれません。 |
揚羽:それはすごい!
日出子:すごいけど……ありがたいような、ありがたくないような(笑)。
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