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シエナクェラスは、今回初めて冒険の舞台になる新しい地方ですね。 |
秋田: |
はい。でも実は名前だけは『ツアー リオス』の時から出ていたりします。 |
清松: |
リオスが商業で成り立ってるという設定を作った時に、アイヤールとカイン・ガラだけでは利益の蓄積が足りないと思って名前だけ設定していた貿易先の中のひとつだよ。 |
――: |
そうだったのですね。そんなシエナクェラス地方はどんなところなんでしょうか? まだリプレイでしか紹介されていないので、未読の方用に少し詳しくお願いします。 |
++ シエナクェラス地方史を、秋田みやびはかく語りき ++ シエナクェラスは<大破局>に蛮族に更地にされて、一からの復興と発掘が盛んな地方です。
<大破局>の頃、ひとりの刀鍛冶師がうっかり武器を作って人族の若者に与えたのですが、その武器で蛮族に対抗したら残酷に返り討ちにされてしまい、鍛冶師は「えーん、これ正かったんかなー(泣)?」と深く悩み、その声がキルヒアに届いて刃神マキシム様になりました。
マキシム様は「よっしゃ、神様になったんやから!」と七本の神器を作り……、神になる前とまったく同じことをしやがりました。 |
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北沢: |
よく考えた結果同じことを繰り返した、と。
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秋田: |
「よく考えましょう。よく考えて決めたならがんばりましょう」という誓いと決意の神様ですが、よく考えろと言うわりには学習しない神様です。 |
ともあれ、神器の力で人族は蛮族を退けることができました。
ところが、今度はその神器を巡って人族同士が争い始め、マキシム様は半泣きになって「もう武器なんかやらへんわ」と神器を全て石に変えて眠りについてしまいました。 |
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秋田: |
そんな、まさしく泣き寝入りな状態。 |
藤澤: |
神様になってもうまくいかなかった。よく考えた結果だからしょうがない。 |
人族は神器が再び力を取り戻すことを信じ、1国につき1本を奉じて7つの国を作りましたが、気がつくといつの間にやら国は8つに。
疑惑と憶測飛び交うなか、うっかりとある1国が滅ぼされたのですが、その国から神器は出ず、「他の国が混乱に乗じてこっそり持ち出したのでは?」「複数所持している国があるのかも?」という新たな疑惑の種に。
そうして7つの国が危うい均衡を保ちつつお互いを牽制していると、「お前ら仲よくせいよ」と新興勢力が神器を奉じない8つ目の国を新たに興し、現在に至ります。 |
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清松: |
7国あったのが8国になって1国滅ぼされた後にまったく新しい国が1国増えた、という7と8の間を常にうろうろしてる地方。表面的には新興の1国以外は神器を持っていることになっているけど、疑惑の種はずっと残ったまま。 |
秋田: |
でも噂の真偽が定かではないため大きな戦争をしかけるわけにもいかず、腹のさぐり合いと小競り合いが延々と続いている、そんなどんくさい地方です。 |
――: |
微妙にしょんぼり風味な説明ありがとうございます。しょんぼりな部分はともかくとして、ギミック満載できな臭い雰囲気があっておもしろそうな地方ですね。 |
秋田: |
前作『新米女神の勇者たち』の舞台になったフェイダン地方がスタンダードなファンタジー世界のイメージだったので、今回はちょっと変化球的な仕掛けのある地方の冒険にしたいな、と思ってこの地方を選びました。 |
――: |
しかもこの地方の冒険者は国所属という、今までと違う特殊な設定があるんですよね。 |
秋田: |
冒険者って、世界観的にも荒事に慣れていて強い印象があって、なんだかんだと頼りにされている存在ですよね。特にシエナクェラスみたいな所では、できるだけ冒険者を傭兵代わりに自分の国に抱えておきたいという思惑があるので、有事の際は登録している国からの仕事を優先してもらう代わりに、最低限の衣食住を保障するよ、という登録冒険者制度があるんです。が、そうしたら……。 |
――: |
「人生ゴール!」と。 |
秋田: |
言って積極的に仕事をしてくれなくて困ったことに(苦笑)。 |
――: |
今までの自由奔放な根なし草っていうイメージの冒険者たちとはちょっとメンタリティが違いますね。新刊の帯にある「アンチ王道」という煽りは、秋田さんではなくて。 |
北沢: |
キャラクターがアンチ王道だよね。「お前ら働けよ」みたいな。 |
田中: |
このパーティーのスタンスって「お金がないから仕事する」じゃなくて「仕事せんかったら追い出されるから仕方なく」ですからね。 |
一同: |
(笑)。 |
秋田: |
何とか仕事をさせようと、毎回苦労しています。 |
――: |
そんな地方で始まった冒険は、さすがの秋田みやびクオリティ。そして安定のもっふもふ率! 教官の胸毛をもふりたい! |
秋田: |
イラストレーターさんもノリノリで描いてくださったそうです。見た瞬間きゅんっとなりました……(うっとり)。 |
――: |
『七剣刃』は『CG』発売直後の新シリーズ、ということで新種族と新技能が登場していますね。種族は、灰褐色の肌で三つ目のシャドウ、それからノスフェラトゥと人族のハーフでヴァンパイアの幼体のラルヴァ、ですが……。 |
秋田: |
あ、あの、『七剣刃』のラルヴァについては「これがスタンダードではない」というのを、ちょっと3回くらい書いておいてください! たぶん、北沢さんが考えていたラルヴァは、なんというかもっと耽美で影を背負ったダークヒーローみたいな……。 |
北沢: |
(力強く首肯)うん、うん。 |
秋田: |
それが何をどうしたことか、あんなことに……(遠い目)。 |
北沢: |
何がどうしてそんなことになっているかは、ぜひ本編でお確かめください。 |
――: |
とにもかくにも、《ガルネイ》の登録冒険者として仕事を始め、早くも神器を巡る陰謀の一端に触れてしまった彼らがこれからどうなっていくのか? シエナクェラス地方そのものについても、これからどんどん掘り下げられていくのが楽しみですね。 |
秋田: |
掘り下げる前にさくっとこの地方から飛び出して行ってしまいそうです。しかもばらばらな方向に。 |
――: |
え? |
秋田: |
2巻用のセッションで、仲良くしてもらうための仕掛けをいろいろ用意したんですが、その仕掛けに入る前に人間関係がぐちゃぐちゃに……、まるで全部いっしょくたに洗濯機で回したみたいな、カオスとしか言いようのない状態になってしまって(半泣)。 |
田中: |
傍で聞いてると、全員がそれぞれに「こいつはこいつのことをこう思ってるはずだ」て思ってるんだけど、誰一人それが当たってなくて、いっぱい線はのびてるのにどれ一つ交わってない、という。 |
秋田: |
だから会話の内容が完全にすれ違ってて、一人残らず勘違いの世界に生きてるんです。あとはとある理由からセルヒオとリディが本気で殺し合いを始めたりとか……。 |
――: |
お互いがお互いの面倒見てやってると思ってるコンビな2人が? 単純に「ケンカするほど仲が良い」的なじゃれあいとかではなく? |
秋田: |
本気です。2巻でリディの妹が出てくるんですけど、その妹を巡ってひと悶着あって……、気がついたらセッション開始から3時間くらいまったくシナリオに入れずに錯綜の時間を過ごしていました。 |
――: |
うわー、それは地方のあれこれを解き明かしていくどころの話ではないですねぇ。 |
田中: |
地方よりも人間関係を解き明かした方がいいんじゃないですかね。 |
北沢: |
それは、解き明かすというより解きほぐすと言った方が正しいね。 |
田中: |
で、ほぐしたらみんなそれぞれ別の道に。 |
ベーテ: |
それこそマキシムの聖印みたいにばらばらの方向に。 |
++ コレがマキシムさまの聖印です! ++
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藤澤: |
よく考えた結果だから、しょうがない。 |
北沢: |
(重々しく)それが君の結論なら、尊重しよう。 |
秋田: |
やめてー、やめてー! とりあえずしばらくは1本の道を進んでー!(マジ泣) |
一同: |
(笑)。 |
秋田: |
……そのうちね、みんなで仲よくひとつのパーティーになってくれるといいなと思いながら、GMもよく考えてがんばりますので、応援してください。 |
――: |
そんなよく考えるリプレイ、錯綜の第2巻は3月発売です! |