田中: |
企画のきっかけになったのは、リプレイ終わるよね、からでしたよね。 |
北沢: |
偶然なんだけど、今年の前半で『新米女神の勇者たちリターンズ』以外のキャンペーンリプレイがほぼ同時期に終わって、新シリーズをまっさらな状態で始められるタイミングだった。
せっかくなら新しく始めるシリーズに何か仕掛けをしていきたいよね、例えば各作品に何かしらの関連付けをしたら面白いんじゃないか、という案が出て。 |
田中: |
ちょうどこの夏で『ルールブック改訂版』と、始まりの剣の名前を冠したサプリ三作が揃ってプレイ環境が綺麗に整ったタイミングだったので、新しい遊び方を見せていくにもいい機会だから新要素も入れましょう、となって。 |
北沢: |
それで議論を重ねた結果、新しい環境を統一テーマにして、それをいろんな視点で皆さんにお見せするべく、各著者がそれぞれの個性を活かして作品を展開する、という形になりました。
緻密なクロスオーバーストーリーというよりは、大まかな設定だけを決めて各自が好きなようにしている感じなので、それぞれがどういう風に料理するのか、その違いも面白い要素の一つになっていますよ。 |
――: |
その新しい環境というのが『ドラゴンレイド』なのですね。今までと違う点はどんなところですか? |
北沢: |
今までは蛮族と人族の対立軸がメインだったので、双方にとって敵対するような新しい対立軸として、ドラゴンを据えました。
ドラゴンそのものが直接敵対するキャンペーンは今までやったことがないし……、ドラゴンに乗ろうというキャンペーンはありましたけどね。 |
――: |
田中さんの『マージナル・ライダー』ですね。 |
田中: |
あれは『ルールブックIII』で追加されたライダー技能の紹介を兼ねたリプレイでした。 |
田中: |
今回、ドラゴンが新しい対立軸になったのにはちゃんと理由があったりします。
ドラゴンは人族や蛮族が生まれる前から存在していて、原初の生物の頂点に君臨しているんだけど、いわゆる魔剣とは関係の薄い種族なんですよ。 |
北沢: |
もちろんドラゴンも魔剣から生まれた存在だけど、ドラゴン自身は魔剣に対して何のアプローチもしていないし、魔剣を巡る人族と蛮族の争いにも必要がない限り無関心だった。
でも『ドラゴンレイド』が始まれば、どうなるかわかりません。強大で両陣営にとって脅威になりうる存在なので、今後は両陣営が共闘することもあるかもしれないし、三つ巴になるかもしれない。 |
――: |
それを、小説とリプレイで見せていくことになるんですね。 |
北沢: |
小説は、企画リーダーでもあり基礎設定を作ったこともあって僕が担当することになりました。
リプレイは三作展開する予定で、第一弾がベーテ君、第二弾が大井君。そして最後に秋田さんという順番です。 |
――: |
藤澤さんは今回はお休みですか? |
北沢: |
藤澤さんには現在、非常に重要なミッションをお願いしているんですよ。
なので、秋田さんとベーテ君という揺るぎない人気を誇る2人に挟まれても十分な個性を発揮できる若者として、大井君が起用されました。 |
――: |
なるほど。 |
北沢: |
作品の傾向としては、いきなりドラゴンが事件を起こすホットスタートのキャンペーンあり、いつになったらそのテーマに辿りつくんですかね? というやわらかスタートなキャンペーンあり、これほんとに『ドラゴンレイド』なの? という不可思議なキャンペーンあり、と各種取り揃えています。 |
ベーテ: |
そのホットスタートなやつを、北沢さんが小説で、俺がリプレイで最初にぶちかましていています。 |
北沢: |
僕の小説とベーテ君のリプレイは、同時発売のよしみで同じ場所が舞台になっています。
プロセルシア地方という、今までリプレイでも小説でもまったく触れられたことがないテラスティア大陸の東の端っこです。 |
ベーテ: |
他の地方とほとんど接していないので、独立した文化や設定の存在する特殊な場所になっているんですよ。 |
++ プロセルシア地方 ++ テラスティア大陸から隔絶された極東の列島で、他の地方では稀少とされるドラゴンが多数生息しており、神聖かつ大切な共存者として敬われています。また、ドラゴンは権力と領地の象徴でもあり、「竜騎士=貴族」「ドラゴンの強さ=爵位」になる、という特殊な風習のある地方です。
6つの島のうち、中央が蛮族領になっているため人族領は南北に分断され、それぞれが明確に統一されることなく小国がひしめきあう状況になっています。 |
|
北沢: |
プロセルシアはドラゴンがたくさん住んでいる珍しい地方で、基本的にドラゴンライダーが領土の偉い人になります。
ドラゴンをとても大切にしているので、ドラゴンを殺すことは大変な罪であり、タブー視されています。
小説の主人公のガルスは元竜騎士だったけど、うっかりドラゴンを死なせてしまって……、うっかりって言うとすごいドジっ子みたいな印象になった(苦笑)。 |
田中: |
ドラゴンをなくすと失騎者と呼ばれるんですけど、そうなったら普通はドラゴンに殉死するのが、この地方のスタンダードな風習なんですよ。 |
北沢: |
でもガルスは殉死せず愛騎の仇を討つために"竜殺し"になります。
"竜殺し"というのは、時々出現する狂った竜――暴竜を討伐する人のことなんだけど、たとえ暴竜でもドラゴンを殺すことがタブー視されているプロセルシアでは、"竜殺し"は底辺の犯罪者であり侮蔑の対象で、いろいろ酷い扱いをうけます。
それでもがんばって仇敵を探していて、その途中で『ドラゴンレイド』的な事件が起きる、そんなお話です。 |
――: |
なかなかにハードな雰囲気のお話ですね。ちなみにガルスさんは"竜殺し"ということは、竜と戦えるレベルってことですよね。 |
北沢: |
はい、15レベルですよ。 |
――: |
15! 強い! |
北沢: |
ただ、15レベルなのはライダー技能だけですけどね。しかもドラゴンに乗ってないので、ライダー技能で出来ることは「ちょっとモンスターのスペックがわかる」以上おわり! |
田中: |
いやいやいや、冒険者レベルあがってるんでHPと抵抗力が増えてますから! 受身判定も振れますから!(笑) |
一同: |
(笑) |
北沢: |
さらに表紙見てもらったらわかりますが、ドラゴンライダー用に戦闘特技は《武器習熟/槍》なのに剣持ってますからね。しかも《防具習熟/盾》もあるのにイラスト的には両手剣! |
――: |
ちょ、ガルスさん!? |
北沢: |
まあ、そこにはちゃんと設定があるんですけども。(笑)
表紙の剣の細部を見てピンとくる方もいるかもしれないですが、この剣にはちょっとした仕掛けがあるんですよ。どんな仕掛けなのかは本編でご確認いただければと思います。
そんな僕の小説がプロセルシアの北側で始まり、同時にベーテ君のリプレイが南側で始まります。 |
|
ドラゴンレイドのこぼれた話 |
ベーテ: |
北沢さんの小説がプロセルシア地方の常識の中で生きる人々の英雄譚とすれば、こちらは異邦人の視点でプロセルシアを描く作品になるでしょうか。
ガリバー旅行記みたいなローファンタジーに近い感じで、航海の護衛に雇われた冒険者がザルツから出航するところから始まります。 |
北沢: |
島国に突然やってきた外国人と……。 |
ベーテ: |
鎖国してる原住民の方々が……、これこそまさに襲来、黒船マスター! |
大井: |
つまりベーテがSNEに入社する話ということですね。 |
一同: |
(笑) |
北沢: |
ようするに、原住民と異国人の異文化コミュニケーションをテーマに、『ドラゴンレイド』的な場所にやってきた『ドラゴンレイド』的じゃない冒険者たちが、自分たちとはまったく違う常識や習慣に戸惑ったり驚いたりする話ですね。 |
ベーテ: |
1巻のコンセプトは、海洋冒険から異境に辿りついての冒険ものです。舞台は特殊ですが、ストーリーは王道を目指したドラゴンと冒険者と騎士の物語で……。 |
――: |
物語で? |
ベーテ: |
これ以上は、ネタバレになっちゃうのでもうダメです! |
――: |
ええー、もうちょっと! もうちょっとくらいいいじゃないですか! ……じゃあ、せめてパーティー構成とかレベルだけでも! |
ベーテ: |
んー……、それくらいだったらいいかな。
まずレベルですが、俺のところは中堅レベルから始まります。少なくともドラゴンと名のつくボス格と戦えるレベルにはしておきたかったので。 |
――: |
つまり、初っ端からドラゴンと戦うような局面があるわけですね。 |
北沢: |
『ドラゴンレイド』リプレイ第一弾、ということでベーテ君には現状で一番最新の、一番エッジな感じのキャンペーンをホットスタートで走ってもらいました。とにかく派手にいこう! ということでサプリメントも全部盛りですよ。 |
ベーテ: |
『ルミエル』だけはセッション時にまだ作業中だったので、2巻から本格導入ですけどね。
パーティー構成は……、種族と性別だけですが、ドワーフの女の子、フロウライトの女の子、エルフの女の子、リルドラケンの男の4人です。 |
――: |
4人パーティーで出航して、現地で1人新たな仲間が増えるわけですね(さらっと何食わぬ顔で)。 |
ベーテ: |
そうそう最後の1人は……、って、これはまだ秘密です! 危ねぇ、雰囲気に乗せられてさらっと言わされるところだった……。 |
――: |
ちっ!(舌打ち) |
インタビュー収録時は教えてもらえませんでしたが、『ドラゴンマガジン』9月号(7月20日発売)でキャラクター紹介が掲載されています! 今すぐ知りたい! という方はP322〜323を開いてみてください。『戦竜伝』の表紙も大きく掲載されていますよ!
また、7月24日には富士見書房公式TRPG ONLINEに『ドラゴンレイド』特設ページがOPEN! 『戦竜伝』のキャラクターが紹介されていますので、そちらもぜひご覧くださいね! |
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――: |
ちなみに、北沢さんの小説と同じ舞台とのことですが、ストーリーに関連性はあるんですか? |
北沢: |
それぞれ1巻の段階ではストーリーに直接的な関連性はないけど、今後の展開次第ですね。
両方読むとプロセルシア地方のことがより詳しくわかって深く楽しむことができると思いますので、あわせて読んでいただければ幸いです。 |